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2017年8月10日 (木)

敵基地攻撃能力は全面戦争能力

自民党の提言
 自民党政務調査会は今年3月末、「北朝鮮の新たな段階の脅威」に対処するためとして、敵のミサイル基地などをたたく「わが国独自の敵基地反撃能力の保有」を直ちに検討するよう求める提言(「弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な強化に関する提言」)をまとめ、安倍晋三首相に提出しました。
 提言は、「弾道ミサイル防衛能力強化のため」として「常時即応体制の確立や、ロフテッド軌道の弾道ミサイル及び同時多発発射による飽和攻撃等からわが国全域を防衛するに足る十分な数量を検討し、早急に予算措置を行うこと。また、将来のわが国独自の早期警戒衛星の保有のため、関連する技術開発をはじめとする必要な措置を加速すること」などを求めています。
 この提言をまとめたのは自民党政務調査会の「弾道ミサイル防衛に関する検討チーム」で、チームの座長は今回の内閣改造で再び防衛相になった小野寺五典氏です
 
防衛相「敵基地攻撃能力」の保有を検討

 小野寺五典防衛相は、就任の翌日、次のように話しました。
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 小野寺五典(いつのり)防衛相は8月4日、報道各社のインタビューで、北朝鮮の弾道ミサイル発射への対応強化の一環として、敵のミサイル発射拠点を破壊する「敵基地攻撃能力」の保有を検討する考えを示した。小野寺氏は就任前、能力保有の検討を政府に求める提言を、自民党の検討チーム座長としてまとめた経緯があり「提言の観点を踏まえ、対処能力向上の検討を進めたい」と話した。(2017年8月5日 朝刊 東京新聞)
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防衛大綱の見直しを指示
 安倍晋三首相は8月6日、広島市での記者会見で防衛大綱の見直しが必要との認識を示し、すでに小野寺五典防衛相に指示したことを表明しました。日経は次のように伝えています。
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 防衛省が検討する敵基地攻撃能力については「現時点で具体的な検討を行う予定はない」としながらも「国民の生命と財産を守るために何をすべきかの観点から、常に現実を踏まえながら様々な検討を行っていくべきだ」と説明した。
  (首相、防衛大綱見直し表明 敵基地攻撃「現実踏まえ検討」2017年8月7日 日経)
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 敵基地攻撃能力の保有については、以前から議論がありましたが、安倍政権は議論を超えて実際に踏み出すことを本気で考えているようです。

防衛省防衛研究所の研究論文
 少し古い資料ですが、2005年に発表された防衛省防衛研究所の研究論文が防衛省のホームページに出ています。
   専守防衛下の敵地攻撃能力をめぐって
   ―弾道ミサイル脅威への1つの対応―

     防衛研究所紀要第8巻第1号(2005年10月)
 ここには、防衛省内の専門家が敵基地攻撃をどのように考えているのか、その一端が示されています。17ページにわたる研究論文の中からポイントと思われるところを拾い出してみました。
・わが国が他国の弾道ミサイル発射基地に対する攻撃を検討する場合、中距離弾道ミサイルのほとんどが移動式ランチャーから発射されることに注意しなければならない。移動式ランチャーはリアルタイムで追尾しなければ位置が把握できないし、リアルタイムで高精度の攻撃兵器を使って攻撃しなければ破壊できない。これは決して容易な作戦ではない。
・1991年の湾岸戦争において、スカッドミサイルを地上で撃破するための大規模な空爆を展開した。しかし、移動式ランチャーを発見することは予想以上に難しく、戦後に行われた調査では、そのほとんどがデコイやタンクローリーなどを誤認したものと結論づけられた。ただし、大規模な空爆を繰り返すことによって、ランチャーを破壊することはできなくとも、彼らの自由な行動を制約し、発射される数を減らすことはできた。
・その後、米軍は情報革命を基盤に軍事能力を大きく高め、移動目標攻撃能力は大きな改善を見せた。2003年のイラク戦争においては、開戦前にイラクが保有していたランチャー約80基のうち、46基を空爆で破壊することに成功した。その結果、ミサイルの発射そのものを先制的に阻止することはできなかったが、湾岸戦争と異なり、かなりの損害を相手に対して強いることができた。ただし、当時のイラク空軍は戦力レベルがきわめて低くなっていたこと、ランチャーの位置を特定するために投入された特殊部隊が隣接するクウェートからの支援を受けることができたという特殊条件の下で行われた戦争であることにを留意しておく必要がある。
・わが国が敵地攻撃能力の保有を考える場合、こちらからの第一撃によって相手の弾道ミサイル攻撃戦力を無力化しようとしても、残存ランチャーから報復攻撃が加えられるか、わが国が第一撃を発動する前に相手国が先制攻撃を行うことが考えられる。
・弾道ミサイルに対する防衛システム全体の1つの構成要素として敵地攻撃能力を位置づければ、弾道ミサイルの飛来そのものを食い止めることはできなが、敵地攻撃能力が制圧効果を発揮して相手の行動を制約して飛来する弾道ミサイルの数を減らすことができる。ただし、相手は初期の段階で集中的にミサイルを発射しようとするだろうから、迎撃システムだけでなく、民間防衛などを含めて備えておかなければならない。
・結論:「弾道ミサイルおよびWMD(大量破壊兵器)の拡散は進み、脅威としての深刻さを増している。しかし、これらの脅威を一挙に低減するワイルドカード(万能の策)は存在しない。結局のところ、我が国にとっての最適解とは、我が国の周辺で弾道ミサイルを配備している国家についての情報収集・分析能力を強化するほか、軍備管理、不拡散、地域情勢安定のための信頼醸成をはじめとする安全保障協力のような外交的努力と、高性能のミサイル防衛システム開発や日米防衛協力をさらに進めることによる抑止力の強化などの軍事的努力を並行して一歩ずつ進めていくことであろう。弾道ミサイルの脅威が増大していく中で、我が国の安全保障政策に求められているのは、政治的、戦略的な創造性を持って、これらの手段をうまく組み合わせていくことなのである」。
    ◇
 防衛省のこの研究者は日米同盟を不動のものとする前提に立って考えていると思われますが、それでも、「外交的努力」や「政治的、戦略的な創造性」が必要であり、弾道ミサイル防衛も敵基地攻撃能力もそれだけでは国民を守ることができないと考えているようです。

ご参考:
対北朝鮮「ミサイル防衛」も「敵基地攻撃」も驚くほど非現実的である
 現代ビジネス(講談社 2017年4月5日 半田 滋)
対北朝鮮の「敵基地攻撃論」には実効性がない
 東洋経済ONLINE(2017年04月05日 薬師寺 克行 :東洋大学教授)
ブログ:「弾道ミサイル防衛」で国民を守れるか?

    日本共産党三菱重工広製支部 2017年8月10日

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