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2017年7月20日 (木)

「弾道ミサイル防衛」で国民を守れるか?

増え続ける防衛費
 先日の3連休最後の日に日経は次のように報じました。
 ・防衛省が2018年度予算の概算要求で過去最高額を計上する方針であること
 ・概算要求のポイントの第一は北朝鮮への対応である弾道ミサイル防衛で、その主な中身は、
   ・陸上配備型「イージス・アショア」の研究費増額
   ・イージス艦搭載の迎撃ミサイル「SM-3ブロック2A」の生産
(日経 2017年7月17日「防衛費4年連続5兆円超 来年度予算、過去最高要求へ 」より)

イージス・アショアとは
 イージス・アショア(Aegis Ashore)とは、イージス・システムの陸上配備です。イージス・システムは弾道ミサイル防衛を含む艦載用の兵器システムで、これを搭載する艦船をイージス艦と言います。このイージス・システムを陸上で使おうというのがイージス・アショアです。
 イージス・システムはアメリカ製で、中身はブラックボックス(マル秘)です。価格は500億円とも言われています(ウィキペディア「イージス・システム」より)。
 防衛省の平成24年度中央調達実施概況には「イージス艦へのBMD機能の付加(器材等調達)1式 341億円 米海軍省(契約相手方)」という記載があります。
 (注)BMD:弾道ミサイル防衛(ballistic missile defence)

SM-3ブロック2Aとは
 SM(スタンダード・ミサイル)はアメリカ製の艦対空ミサイル。その中で、SM-3シリーズは弾道ミサイルを迎撃するための艦船発射型迎撃ミサイルです。その中でも、「SM-3ブロック2A」は大陸間弾道ミサイルの迎撃を目的に日米共同で開発されました。日米共同開発には三菱重工も参画しています(詳細は「日本の軍需産業 2016 (5)ミサイル防衛システム」をご参照ください)。
 イージス・アショアも「SM-3ブロック2A」も、早期警戒衛星をはじめとする米軍の情報システムのもとで運用されますから、日本の自衛隊が米軍に深く組み込まれることを意味します。

どうなる日本のミサイル防衛
 NHK NEWS WEB(7月3日)「どうなる日本のミサイル防衛」は、日本のミサイル防衛の現状と新しいシステムを導入する意味を伝えています。
 ・日本は現在、日本海に展開するイージス艦に搭載された迎撃ミサイル「SM3」と、東京・新宿区の防衛省などに配備されている迎撃ミサイル「PAC3」を組み合わせた2段階の態勢をとっています。防衛省の担当者は「ミサイル防衛は着実に整備が進められており、万全に対応できるので大丈夫だ」と言いますが、「『2層防衛』となっているのは日本のごく一部で、十分とはいえない」という指摘もあります。
 ・新システムとしてTHAAD(高高度地対空ミサイル)の導入が検討されています。THAADは、同時に飛んでくる複数の弾道ミサイルへの対処能力が高いとされ、「2層防衛」から「3層防衛」となることから、防衛省は、これらのシステムが導入されれば、迎撃態勢が強化されるとしています。
 ・さらに革新的な技術として「高出力レーザー」と「レールガン」の研究も進められていますが、日本で弾道ミサイル防衛に活用されるまでには、まだまだ時間が必要で、20年以上はかかると見られています。
 ・多額の費用がかかることも紹介しています。
   イージス・アショア1基当たりの価格は800億円程度
   SM3を改良した新型の迎撃ミサイルは、1発あたりが40億円程度
   THAADも1基当たりの価格は800億円程度、迎撃ミサイル1発の価格が10億円余り
 ・さらに大きな問題を紹介しています。防衛省関係者は「(THAADを導入する)新型の迎撃ミサイルシステムを運用できるようになるには、5年くらいかかるだろう。だが、運用が開始されたときに北朝鮮のミサイルの能力が、迎撃能力を上回っていればシステムを導入する意味がない」と。
 ・最後に、自民党が安倍総理大臣に提出した提言に盛り込まれている「敵基地反撃能力」の保有を紹介しています。

当たるのか? 米ミサイル防衛
 日経ビジネス(2017年7月10日)「当たるのか? 米ミサイル防衛」は、ミサイル防衛先進国アメリカの事情を紹介しています。
 まず、現行の米ミサイル防衛システムで北朝鮮からの弾道ミサイル攻撃を迎撃できる「確かな保証は存在しない」こと。そのため、米政権は次世代システムの開発・テストを急いでいると。
 そして、どんなにミサイル防衛を強化しても、迎撃能力を超える多数のミサイルによる攻撃(飽和攻撃)には太刀打ちできないということ。
 オペリングMDA元局長は、もし北朝鮮が明日攻撃を仕掛けてきたら、迎撃ミサイルが敵の弾頭を本当に迎撃できるかどうか誰にも分らないと認めていると。

対北朝鮮「ミサイル防衛」も「敵基地攻撃」も驚くほど非現実的である
 現代ビジネス(講談社 2017年4月5日 半田 滋)は「対北朝鮮『ミサイル防衛』も『敵基地攻撃』も驚くほど非現実的である」と説得力を持って喝破しています。
 まず、自衛隊のミサイル防衛システムは、イージスアショア(陸上配備型イージスシステム)やTHAAD(高高度地対空ミサイル)で充実させても、守ることができない実情を具体的に示しています。
 「軍事的合理性や費用対効果の面から当初、自衛隊の制服組はMD(ミサイル防衛)導入に反対した。これに対し、2002年当時の守屋武昌防衛事務次官は『米国はMD開発に10兆円かけた。同盟国として支えるのは当然だ』と主張して導入の旗を振り、『防衛庁の守護神』といわれた山崎拓元防衛庁長官が後押しする形でMD導入は翌03年に閣議決定された。きっかけは対米追従だったのだ」。
 「一から導入するイージスアショア、THAADが極めて高額の防衛費を必要とするのは自明だろう。しかも米政府の提示する価格、納期で購入が義務づけられる対外有償軍事援助(FMS)となるのは確実なため、『いつ、いくらでどう提供するか』は米政府次第となり、武器を媒介にした米国による日本支配が強化されるのは間違いない」。
 今回の自民党の提言にある「敵基地反撃」も、潜水艦発射弾道ミサイルの開発や北朝鮮の基地は7割が地下化されていることなどから北朝鮮の戦闘能力を容易に壊滅することはできず、全面戦争に発展しかねないと警告しています。
 「結局、日本がやるべきことは」北朝鮮が米朝間の平和協定締結を望んでいることから、「安倍政権に求められるのは、以下のように米国を説得することだろう。『北朝鮮との対話に乗り出し、交渉の過程で核放棄とミサイル開発の中止を求め、見返りに平和協定を結んで北朝鮮に《米国は攻撃しない》という保障を与えるべきだ』と」。

際限ない軍拡競争
 日本がアメリカに組み込まれる形で進められている「弾道ミサイル防衛」は非現実的で、際限ない軍拡競争と言えるようです。米ソ冷戦時代の核兵器開発競争の悪夢が思い出されます。

    日本共産党三菱重工広製支部 2017年7月20日

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