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2017年4月 6日 (木)

今後の高速炉開発と三菱重工

 今回のブログでは、先ず、難しい言葉の意味を確認しておきたいと思います。

原子燃料サイクル、再処理
 原子力発電の燃料となるウランは、ウラン鉱山から採掘された後、様々な工程を経て燃 料集合体に加エされ、原子炉に装荷されます。発電を終え、使い終った燃料の中には、まだ燃料として利用できるウランや発電中にウランから生まれるプルトニウムといった資源が含まれているため、これらを回収して再処理することにより、再び燃料として利用することが可能です。
この採掘から再利用という流れを 「原子燃料サイクル」と呼んでいます。(三菱重工のホームページより)

高速増殖炉
 高速増殖炉とは、スピードが速い中性子を用いて、発電しながら消費した以上の核燃料(プルトニウム239)を生成し、資源の利用効率を飛躍的に高めることができる原子炉のことを言います。スピードが速い中性子で核分裂を起こすと、発生する中性子の数が多くなります。さらに冷却材として使われるナトリウム は、軽水の場合と比べて、冷却材として吸収する中性子の数が少ないことから、炉内の中性子の数がより多くなります。中性子の数が多くなると、ウラン238 がプルトニウム239に変わる割合が大きくなり、当初の核燃料プルトニウムよりも多くのプルトニウムを得ることができます。(三菱重工のホームページより)

高速炉
 プルトニウムを燃やしやすくした原子炉。普通の原子炉は核分裂で出る中性子を水で減速させるが、ナトリウムなどを使うことで中性子を高速のままプルトニウムに衝突させる。プルトニウムを消費した以上に増やす高速増殖炉も高速炉の一つ。開発のステップは4段階で実験炉、原型炉、実証炉を経て商用炉で実用化する。(朝日新聞 2016年12月14日より)

ウラン235、ウラン238
 ウラン235もウラン238もウランの同位体の一つ。
 ウラン235は、ウラン238とは違い、核分裂の連鎖反応をおこす。
 ウラン238は中性子が衝突するとウラン239となる。ウラン239は不安定でβ-崩壊しネプツニウム239になり、さらにβ-崩壊(半減期2.355日)しプルトニウム239となる。天然のウランの99.284%がウラン238である。(ウィキペディアより)

プルサーマル
 プルサーマルとは、プルトニウムで燃料を作り、従来の熱中性子炉で燃料の一部として使うことを言う。(注:軽水炉も熱中性子炉の一つ)
 通常、軽水炉ではウラン235とウラン238を混合したウラン燃料(二酸化ウラン)を核分裂させることで熱エネルギーを生み出すが、ウラン238が中性子を吸収し2度のβ-崩壊を経てプルトニウム239が生成され、そのプルトニウム239自体も核分裂する。その結果、発電量全体に占めるプルトニウムによる発電量は平均約30%となる(プルサーマル発電を行わない場合でも、運転中の軽水炉の中にはプルトニウムが存在している)。それに対し、プルサーマルではMOX燃料と呼ばれるウラン238とプルトニウムの混合酸化物 (Mixed Oxide) を燃料として使用する。プルサーマルで使われるMOX燃料はプルトニウムの富化度(含有量)が4 - 9%であり、MOX燃料を1/3程度使用する場合、発電量全体に占めるプルトニウムによる発電量は平均50%強となる。(ウィキペディアより)

高速炉開発会議で何が話し合われたか
 前回のブログで、政府が4回にわたって開催した高速炉開発会議のメンバー、開催日時、議題などを見ました。今回は、どのようなことが話し合われたのかを少し見ておきたいと思います。
 資料はインターネットで見ることができます。
経産省→政策について→審議会・研究会等→エネルギー・環境(このページの下の方に高速炉開発会議のリンクが貼られています)

原子力は不可欠
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 資源に乏しい我が国として、エネルギーの安定的かつ低廉な供給と気候変動問題への対応を同時に実現していくためには、やはり安全最優先で取り組むことを前提に原子力はどうしても欠かすことのできないエネルギーということになります。
   世耕経済産業大臣(第1回会議)の発言
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 原子力はどうしても欠かすことのできないエネルギーでしょうか? 電力需給のデータを示して言ってもらいたいものです。

高速炉を巡る国際動向
 1960年代以降、アメリカ、ロシア、フランス、イギリス、ドイツなどが開発を開始しましたが、アメリカ、イギリス、ドイツは撤退。今も続けようとしている国は、ロシア、中国、インド、フランスと日本です。(第1回配布資料「高速炉を巡る国際動向」)

日本では高速炉が不可欠
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 我が国は、資源の有効利用、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減等の観点から核燃料サイクルを推進しており、その効果を最大化する観点からは、プルサーマルによる当面の軽水炉サイクルのみならず、高速炉サイクルの実現が不可欠です。
   松野文部科学大臣(第1回会議)の発言
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 「もんじゅ」は高速増殖炉でした。なぜ「増殖」ぬきの高速炉になったのか明確な説明はありません。
 
「もんじゅ」の経緯

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 これまでに総額で1兆410億円を支出してございます。
 平成6年1月に初臨界の後、平成7年12月に40%出力試験中に2次冷却系のナトリウム漏えい事故を起こし、また平成22年5月に試運転を再開いたしましたが、22年8月、炉内中継装置の落下トラブルが発生しまして、以降運転を停止してございます。
   田中文部科学省研究開発局長(第1回会議)の発言
   第1回配布資料「高速増殖炉「もんじゅ」の経緯と経験
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「もんじゅ」の反省から
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 これを踏まえますと、実証炉の設計・建設や保守点検等について縦割りを防ぐとともに、技術的にも実証炉の設置者をサポートして全体を掌握できる管理会社、いわゆるプライムコントラクターを特定することが1つの解決策になるものと考えております。
   田中文部科学省研究開発局長(第1回会議)の発言
 私ども「もんじゅ」の教訓を踏まえまして、その後の高速炉の開発におけるメーカーの体制ということにつきましては、国、電気事業者殿、それからJAEA殿とも連携させていただきまして、中核メーカー1社が取りまとめを行う体制の中で明確な責任を持って開発を進めるということで進めさせていただいてまいりました。御協力をさせていただきました。(中略)
 この中核メーカーに選定されました当社は、国家基幹技術の開発を担っていることを強く認識しておりまして、これまでにも蓄積してまいりました技術をさらにこれから生かしまして、当該開発会議にて策定されました開発方針がございましたら、それに従いまして、さらに国内高速炉の開発を実現できるような技術を確立するために努力を続けさせていただければありがたいと思っております。
   宮永三菱重工業代表取締役社長(第1回会議)の発言
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 三菱重工は積極的です。責任はますます大きくなるのではないでしょうか。

 第2回の会議では、「今後の高速炉開発に当たっての考え方」などが話し合われました。
 第3回の会議では、「実証炉開発に向けた今後の取組」と「高速炉開発の方針の骨子(案)について」話し合われました。

「高速炉開発の方針(案)」
http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy/fr/pdf/004_01_00.pdf
 第4回の会議では「高速炉開発の方針(案)」を多田資源エネルギー庁次長が説明し、異論なく了承されました。
 その中を少し見てみたいと思います。
 先ず、「常陽」と「もんじゅ」で得られた技術の蓄積があることを述べています。
 配布資料「「もんじゅ」を廃止措置に移行する場合の 工程及びコスト試算」には、廃止措置には30年の年月と、合計約3,750億円+αのおカネが必要と書いてあります。
 今後は、「もんじゅ」なしで、「国内外の大型ナトリウム試験施設の活用等による模擬試験、ASTRIDを含む海外炉の類似の大型機器の運転データ蓄積等により、「もんじゅ」を再開した場合と同様の知見の獲得を図る」という方針です。
 次に、新たに掲げる目標と4つの原則を掲げています。
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1.新たに掲げる目標
   第一に、東電福島原発事故後の要請に応える、更なる安全性の向上である。
   第二に、開発段階を含めた経済効率性の追求と、本格導入時の市場環境への適合である。
   第三に、国際協力を通じた最先端の知見の獲得と国際標準の探求である。
2.高速炉開発の4つの原則
  【原則1】国内に蓄積した技術・知見・人材の徹底活用
  【原則2】国際ネットワークを利用した最先端知見の吸収
  【原則3】費用対効果の高い、コスト効率的な開発の推進
  【原則4】国、メーカー、電力、研究機関が密に連携し、責任関係を一元化した体制
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 「更なる安全性の向上」と言われても、むなしい感じがしますし、経済性も現実的ではないのではないでしょうか。「核燃料サイクルの推進」という政府の基本方針を無理やり具体化しているように感じられます。
 フランスの実証炉ASTRIDの計画に協力して推進する方針も、開発費をフランス政府が総額約50億ユーロ(約5700億円)と試算し、その半額を日本に要請する意向だそうですが(毎日新聞2016年10月22日)、金額はさらにふくらむ可能性もあり、日本側が実際に技術を習得できるのか不安があるようです。
 最後に、「開発体制の確立」として、当面、「戦略ワーキンググループ」を立ち上げ、今後の「ロードマップ」を策定していくとしています。
 第1回 戦略ワーキンググループが3月30日に開催され、中核メーカーとして三菱重工と、子会社の三菱FBRシステムズが参画しています。

    日本共産党三菱重工広製支部 2017年4月6日

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