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2017年4月27日 (木)

三菱重工はなぜアレバを救済

 福島の原発事故以後経営難に陥っているフランスのアレバからの要請に応えて「三菱重工業と日本原燃が仏原子力大手のアレバへの約10%の出資で最終調整に入った」とき、日経は「三菱重工、仏アレバに苦渋の出資 原子力から引くに引けず」(2016年12月8日 日経)と報じました。三菱重工と取引のあるサプライヤーは「正常な経営判断とは思えない」と言ったことも伝えられました(2017年3月14日 日経)。

出資の経過
 2015年10月:日本政府とフランス政府による原子力分野における日仏協力に関するハイレベル対話。
 対話結果を受けて、三菱重工は「今回の日仏間対話の結果に従い、原子力産業の一員として、両国の協力関係の更なる発展と強化に貢献し、・・・」と態度表明しました(2015年10月5日 重要なお知らせ)。

 2015年11月:三菱重工、「仏アレバNP社への出資に向けた具体的提案の検討を開始」(2015年11月6日 ニュースリリース)と発表。
 アレバNP社は、アレバ社のグループ会社で原発プラントの設計・製造をしています。今後、フランス電力会社(EDF社)の傘下となる予定です。
 アレバNP社と三菱重工は2007年に合弁会社ATMEA社を設立しています。

 2016年 6月:三菱重工はフランス電力会社(EDF)と原子力発電事業での協調に向けた覚書を締結(2016年6月28日 ニュースリリース)。
 フランス電力会社(EDF)は世界最大の原子力発電事業者で、アレバの救済にも深くかかわっています。
 覚書の協調関係強化には、フランス電力会社(EDF)がATMEA社に出資することも検討されることになっています。
 三菱重工の宮永社長は覚書の締結に当たって、「ATMEA社の事業に対するEDFの参画は、その将来に向けた開発、および高い競争力を持つ技術によるグローバル市場での展開にとって、非常に重要な一歩です」と述べています。

 2017年 2月:三菱重工、「仏アレバグループ新会社への出資に向けた条件で大枠合意」と発表(2017年2月3日 ニュースリリース)。
 三菱重工は、アレバグループが設立する新会社(仮称:NewCo)に約2億5,000万ユーロ出資することで大枠合意しました。
 新会社(仮称:NewCo)は、アレバ社がウランの採掘、濃縮、転換や使用済み燃料の再処理を中核とする燃料サイクル事業を分社して新たに設立する会社です。

 2017年 3月:三菱重工、「仏アレバグループ新会社(NewCo)向け出資に係る最終合意について」を発表(2017年3月21日 ニュースリリース)。
 三菱重工の出資額は、大枠合意の際に決定したとおり、総額約2億5,000万ユーロで、出資比率5%の株主になります。

 なお、日本原燃も同額の出資を決めています(日本原燃のホームページ トピックス2017年3月21日 )。
 
さらに400億円を出資

 4月になると、新たに設立するアレバの原子炉子会社「アレバNP」に三菱重工が約400億円を出資することでフランス電力会社(EDF)と大筋で合意したことが報じられました(「三菱重がアレバ追加出資 総額700億円に、原発継続の意思示す」2017年4月24日 日経)。この「アレバNP」にはフランス電力会社(EDF)が51%以上を出資して筆頭株主に就くことも伝えられました。
 なお、この出資は前から出ていた話によるもので、新しく出てきたものではありません。
 
原発継続の意思示す

 出資対象に「アレバNP」と「NewCo」があって、フランス政府もフランス電力会社(EDF)も関係していますので話が大変ややこしいですが、三菱重工は総額700億円の出資を決めたというのが一つの結論です。
 これは日経も書いたように、原発継続の意思を示していると言ってよいのではないでしょうか。それも、世界的に原発建設が低調になっているときに、経営難に陥っているアレバに出資するとはどう考えたらいいのでしょうか。
 三菱重工の宮永社長は、「独シーメンスは原子力事業から撤退しました」が、という記者からの問いかけに次のように答えました。
 「当社は事業を続けていく。国のエネルギー安全保障という意味でも長期的に必要な事業と考えている。安全性を追求しながら、原子力のコア技術を維持しておくことが重要だ。自社が持つ能力で施工しきれればビジネスとしても十分に成り立つ。トルコで事業可能性調査を進めているのは原発建設の能力を維持するという目的もある」(三菱重工社長「原発事業、続ける」2017年4月15日 日経)。

国のエネルギー安全保障のため?
 社長が原子力事業を続ける理由の第一にあげたのが「国のエネルギー安全保障」です。風力発電など再生エネルギーの重要性が増しているときに原子力が本当に必要でしょうか。
 理由の第2が「自社が持つ能力で施工しきれればビジネスとしても十分に成り立つ」ということですが、なんとも歯切れの悪い感じがします。「2015事業計画」の基本方針との関係はどうなんでしょう。基本方針の2「財務基盤の更なる強化と高収益性追求」との整合性はどう説明するのでしょうか。700億円の出資はフリーキャッシュフローの減少になりますから。

引くに引けない?
 このブログの冒頭に紹介した日経の記事、「三菱重工、仏アレバに苦渋の出資 原子力から引くに引けず」(2016年12月8日 日経)というのが真実味を持って響いてきます。
 原子力事業から引くに引けない背景を次のように指摘する記事もありました。
 「同社の決断の背後には、苦境に喘ぐアレバが「中国核工業集団」(CNNC)に支援を求め、その代償として最先端の原子力関連技術が中国に流出することを恐れる日本政府からの強いプレッシャーがあったとも囁かれている」(瀕死の仏原子力大手「アレバ」に巨額出資する「三菱重工」への疑問 - 杜耕次 新潮社フォーサイト 2016年12月27日)。
 今回の出資が、2015年10月の「日仏協力に関するハイレベル対話」から始まったように政府側から強い力がはたらいていることは間違いありません。

    日本共産党三菱重工広製支部 2017年4月27日

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