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2016年4月 1日 (金)

日本の軍需産業 2016 (5)ミサイル防衛システム

 戦争法が施行された3月29日、戦争法の発動を許さないとともに、廃止を求めて、国会正門前で行動が取り組まれました。午後7時半まで行われた「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の行動には、3万7000人が参加。その直後から行われたシールズ(自由と民主主義のための学生緊急行動)と「安全保障関連法に反対する学者の会」の行動では、さらに参加者がふくれあがりました。この日、全国各地で行動が取り組まれました。 

 今回のブログでは、北朝鮮による弾道ミサイル発射と、それに対する日本のミサイル防衛を取り上げました。2月に北朝鮮が沖縄の上空を通過する弾道ミサイルを発射しましたが、その経路判明後も日本政府は迎撃ミサイルPAC3の首都圏配備を維持するというミサイル防衛体制の宣伝以外に意味のない過剰な対応をとりました。

       日本共産党三菱重工広製支部 2016年4月1日

  banana 

(5)ミサイル防衛システム

北朝鮮への対応として

 北朝鮮が長距離弾道ミサイルを発射するなど挑発をエスカレートさせていますが、このような動きの始まりは1993年の「ノドン」の発射にさかのぼります。
 日本のミサイル防衛(BMD)システムはこれへの対応として始まり、今もシステムの強化を続けています。防衛白書はその変遷を次のように示しています。
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1995年  「日米
弾道ミサイル防衛共同研究」 開始
1998年 北朝鮮が日本上空を越える弾道ミサイルを発射
1999年 能力向上型迎撃ミサイルを対象とした共同研究開始
2002年 米国がBMDの初期配備を決定
2003年 わが国BMDの整備を開始
2005年 自衛隊法改正 (弾道ミサイル等に対する破壊措置)
2006年 北朝鮮が日本海に向け7発の弾道ミサイルを発射
2007年 ペトリオット PAC-3の部隊配備開始 イージス艦によるSM-3発射試験開始
2009年 北朝鮮が日本上空を越えるミサイルを発射
(以下割愛)

 (防衛白書2015の資料50「わが国のBMD整備への取組の変遷」から抜粋)
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(注)弾道ミサイルとは、大気圏の内外を弾道を描いて飛ぶ対地ミサイルのこと。弾道弾とも呼ばれる。弾道ミサイルは最初の数分間に加速し、その後慣性によって、いわゆる弾道飛行と呼ばれる軌道を通過し、目標に到達する。(ウィキペディアより)

 上記の引用の中に「共同研究」、「BMDの整備」がありますが、これらについて防衛白書は次のように述べています。
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 わが国は、弾道ミサイル攻撃などへの対応に万全を期すため、平成16年度から弾道ミサイル防衛(BMD)システムの整備を開始した。05(平成17)年には、自衛隊法の所要の改正を行い、同年、安全保障会議と閣議において、弾道ミサイル防衛用能力向上型迎撃ミサイルの日米共同開発に着手することを決定した。現在までに、イージス艦への弾道ミサイル対処能力の付与や
ペトリオットPAC-3の配備など、弾道ミサイル攻撃に対するわが国独自の多層防衛体制の整備を着実に進めている。

 (防衛白書2015(平成27年版)第Ⅲ部 第1章 3 弾道ミサイル攻撃などへの対応 より)
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(注)ペトリオット(patriot)は、マスコミなどではパトリオットと呼ばれています。ペトリオットの方がアメリカでの発音に近いと言われています。

多層防衛とは

 上記の引用中に「多層防衛」という言葉が出ていますが、これについて防衛白書は次のように説明しています。
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1 わが国の弾道ミサイル防衛

(1)基本的考え方

 わが国の弾道ミサイル防衛は、イージス艦による上層での迎撃とペトリオットPAC-3による下層での迎撃を、自動警戒管制システム(JADGE)により連携させて効果的に行う多層防衛を基本としている。

 (防衛白書2015(平成27年版)第Ⅲ部 第1章 3 弾道ミサイル攻撃などへの対応 より)
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 アメリカのミサイル防衛システムも共通した考え方です。防衛白書2015には次のような説明があります。
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3 米国のミサイル防衛と日米BMD技術協力

(1)米国のミサイル防衛

 米国は、弾道ミサイルの飛翔(ひしょう)経路上の①ブースト段階、②ミッドコース段階、③ターミナル段階のそれぞれの段階に適した防衛システムを組み合わせ、相互に補って対応する多層防衛システムを構築している。
 日米両国は、弾道ミサイル防衛に関して緊密な連携を図ってきており、米国保有のミサイル防衛システムの一部が、わが国に段階的に配備されている。

 (防衛白書2015(平成27年版)第Ⅲ部 第1章 3 弾道ミサイル攻撃などへの対応 より)
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 どちらも「多層防衛」ですが、日本のシステムにはなくて、アメリカのシステムにあるのは「ブースト段階」です。これは、発射後にロケットが加速する段階で迎撃しようとするものです。
 ミサイル発射を最初に捉えるのはアメリカの早期警戒衛星です。早期警戒衛星は、偵察衛星よりも高い静止軌道から常時監視をして、ミサイルの発射を検知します。このことから、上記の引用中に「日米両国は、弾道ミサイル防衛に関して緊密な連携を図ってきており」とありますが、主導権はアメリカが握っていることがわかります。

 ではなぜ、多層防衛なのでしょうか? それは、迎撃は一発必中・百発百中ではないということです。ブースト段階で阻止できなかった場合はミッドコース段階で、それでも阻止できなかった場合はターミナル段階で、それでも阻止できない場合があるということになります。
 現在の技術では弾道ミサイルの攻撃から国民を確実に守ることはできないし、高度な技術によって百発百中の迎撃ができるようになっても、それを回避する弾道ミサイルが開発されるだろうと言われています。

 防衛省が発表した「弾道ミサイル防衛」には、「迎撃の課題」をあげてその難しさを示しています。
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  迎撃の課題

速い速度
  ・相対速度は、小銃で小銃の弾を撃つ場合よりも格段に速く目標を迎撃することが必要。

短い到着時間
  ・極めて短い時間で、迎撃ミサイル発射のための一連の対応を行う必要。

高い到達高度
  ・地表から遠く離れた高度まで迎撃ミサイルを精密に誘導する技術が必要。

小さな高速目標
  ・小さく高速である目標を、探知追尾するためにはレーダ能 力を向上させ、確実に破壊するためには直撃させることが必要。

→ 極めて精度の高い迎撃システムが必要

  (弾道ミサイル防衛 ―平成20年3月 防衛省― より)
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 しかし、日本政府はさらなるミサイル防衛システムの強化に乗り出しています。
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  政府、ミサイル防衛強化 3段階の迎撃検討  撃ち漏らし防ぐ

 北朝鮮による事実上の弾道ミサイル発射を踏まえ、政府はミサイル防衛システムの強化に乗り出す。より高高度の迎撃が可能な海上配備の次世代型ミサイルを米国と共同開発し、2017年度の生産開始をめざす。同時に現在は2段階となっているミサイル防衛システムの迎撃のタイミングを3段階に増やすことを検討する。ミサイルの脅威が増しているとみて、撃ち漏らすリスクを減らす。

 (日経 2016年2月9日)
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ばく大な費用

 ミサイル防衛システムの開発にはばく大な費用がかかります。開発後の調達費も多額にのぼります。

 防衛省発表の資料には、日米共同開発について次のように書かれています。
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      BMD用SM-3ブロックⅡAの日米共同開発

○開発経費:現時点で、日本約10~12億ドル、米国側11~15億ドル程度

○開発期間:9年間(2006年度~2014年度)

日米開発分担
  システム設計:アメリカ主導 日本サポート
  各部分の開発は分担
    アメリカ 弾頭・ミサイル誘導部などを担当
    日本   ノーズコーン、第3段ロケットモータなどを担当
  ミサイル統合:アメリカ
  発射試験  :アメリカ主導 日本サポート

 (誘導武器の開発・調達の現状 ―平成23年5月 防衛省経理装備局 システム装備課― より)

(注)SM-3 ブロックⅡAとは:SM(Standard Missile)は、アメリカ海軍を始め西側諸国で運用されている艦対空ミサイル。能力向上をはかるブロックⅡから日米共同で開発されている。(ウィキペディアより)
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 これを見ると、開発経費は日本側が半分近く出す計画になっていますが、開発はアメリカ主導で進められ、肝心なところはアメリカが握ることがわかります。

 上記の開発経費の内、日本の負担が「現時点で約10~12億ドル」(当時の為替レートで900億円~1100億円)と記載されていますが、同じ資料の「誘導武器関係予算の推移」を見ますと、共同開発の2年前(2004年度)から始めた日本の「BMD事業」の費用は、2011年度までの8年間で累計4,800億円前後となっています。同じ期間における日本の誘導武器関係予算は累計1兆3500億円前後にのぼっています。

 今年になると、ミサイル防衛システムの導入経費が当面、約2兆円に達することが日本共産党の宮本徹議員の質問への回答で明らかになりました。これを受けて宮本議員は、「軍拡競争という形で、日本の国民の税金を注ぎ込むのではなくて、国際社会が結束して外交的努力と圧力で北朝鮮を6カ国協議の枠組みに戻して、核開発の放棄を迫る。それしか道はない」とただしました(2016年2月25日、衆院財務金融委員会)。

三菱重工の役割

 三菱重工のカタログに、同社がBMD(弾道ミサイル防衛)の日米共同開発に加わっていることが記載されています。
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 防衛省と米国防総省が推進するBMD(弾道ミサイル防衛)日米共同 研究・開発に参画し、最先端技術の研究開発に取り組んでいます。2006年3月には共同発射実験に成功しました。また、2006年11月、12月に固体
サイドスラスタを用いた空中浮上実験に2回続けて成功しています。

(三菱重工のカタログ2014(防衛・宇宙ドメイン)より)

(注)サイドスラスタはミサイルの飛翔制御方式の一つ(ウィキペディアより)
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 同社のホームページの製品情報には「地対空誘導弾システムペトリオット」が掲載されていて、「「ペトリオット」は、ミサイル本体、レーダー装置、射撃管制装置、発射機、アンテナマスト・グループ等で構成される地対空誘導弾システムで、アメリカのレイセオン社が開発。わが国でも航空自衛隊が導入、ライセンス生産され、当社はその主契約会社」という説明がついています。

 ペトリオットの価格をインターネットで調べますと、「海洋国防記」の中に「PAC3はミサイル本体だけではなく、移動用の車両やレーダーなどの装備とセットで運用します。1ユニットは10両以上の車両で運用されるため、かなりの大所帯になります。PAC3の価格は1発あたり約5億円のようです」と出ています。

 防衛省の「平成24年度予算の概要」には、
   地対空誘導弾(ペトリオット(PAC3を除く))111億円
   ペトリオット・システムの改修  (3式)  345億円
という記載もあります。

     ◇

 弾道ミサイルや核兵器という北朝鮮の挑発に対してはいろいろなご意見があるのではないと思います。コメント欄にご自由にご意見をご記入ください。

  banana 

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コメント

先ず北朝鮮のを弾道ミサイルと呼ぶ所から間違えています。あれは何所までもロケットです。これはあの田母神氏も指摘しています。だから検察に捜査されたんでしょう(笑)液体燃料の核飛翔体なんて使っている国は有りません。日本だってその為にイプシロンを開発してるんです。
「ブースト段階」 の件ですが、日本のイージス艦はそこの発射時点を特定できませんよね?何故ならアメリカら搭載拒否されてる筈です。米国は貴殿も書いてるように早期警戒衛星と米国のイージス艦搭載アレイレーダと津軽半島と京丹後のXバンドレーダとの三次元探査で発射時と場所を特定している筈です。そのデータの内xバンドなんか自衛隊基地内に在るのに、防衛省は直接取りだす事も出来ません。
もう完全に下請けで有り、警戒されてるんでしょう。
今トランプ氏が日韓に核兵器所持をさせても良いのではないかなんて、トンデモ発言してますが、彼はこういう問題も知らずに発言してるのでしょう。日本は運搬のイプシロンと再突入技術も持っています。核弾頭部分も作れます。
更に安倍日本会議の連中は、今でもアメリカを恨んでいる筈です。第一列島線から第二までを奪われた事や硫黄島での自害。更に天皇を現人神から引き摺り下ろしたマッカサーの態度等にです。彼らは何時かはワシントンに着弾と思ってるんじゃないでしょうか?こういう事米国の情報機関はトランプに大統領になってからレクチャーするんですかねぇ(笑)それにしても鈴木貴子への質問主意書答弁閣議決定や法制局長官発言といい、トランプの発言と機を一にし過ぎですよね。裏で協議でもしてるのかなぁ、、?

コメント、ありがとうございました。
武尊さんは詳しいですね。脱帽です。
ところで、安倍首相は極右でありながらアメリカへの従属も辞さないというか、軍拡など極右としての思いを成就するためには、今はアメリカについていくのが一番と思っているのではないかと推測しています。
ただし、それは戦争への道を進むもので、断固反対です。

  日本の軍需産業 2016 編集子

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