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2014年8月23日 (土)

(60)三菱重工が関係する武器輸出案件の現状

        公表された資料をもとに三菱重工の過去と現在を分析し、日本の代表的製造業
       の一つである三菱重工の経営陣が何を考え、会社をどこへ導こうとしているのか、
       それが日本の経済や国民にどのような影響を与えるのか、皆さんと一緒に考えた
       いと思います。

        皆さんからのご意見・ご感想をお待ちしています。

                      日本共産党三菱重工広製支部 経営分析チーム

(60)三菱重工が関係する武器輸出案件の現状
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まとめ
 今年(2014年)4月、安倍内閣が武器輸出を原則解禁してから、三菱重工についても新しい動きが
いくつも出ているので、現時点(2014年8月)の状況を整理しておきたい。
 これらの動きに共通することは、安倍首相が先頭に立って政府主導で進められていることである。
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 武器輸出は、1976年、三木内閣によって事実上全面禁止とされたが、2011年に野田内閣が例外の幅を広げて緩和し、今年(2014年)4月、安倍内閣は原則解禁を閣議決定した。 前回のブログで見たように、4月以降、武器輸出をめぐる動きはせきを切ったように激しくなっている。三菱重工についても新しい動きがいくつも出ているので、現時点(2014年8月)の状況を整理しておきたい。

 解禁の前から武器輸出案件はあったが、最近になって浮上したものを含めて、三菱重工が関係している案件は次の5項目である。
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     三菱重工が関係する武器輸出案件      (現状)

   (1)戦闘機F35の共同生産に参画      (IHIと三菱電機は国内分を契約済、三菱重工は未契約)
   (2)オーストラリアと潜水艦技術で協力  (6月、協定交渉が実質合意)
   (3)アメリカへミサイル部品を輸出     (7月、これが解禁第一弾となった)
   (4)フランスと武器の共同開発・輸出拡大 (商談が5月に急浮上)
   (5)トルコと戦車用エンジンの共同開発  (これは破談となった)
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 なお、三菱重工が関係している武器輸出案件は、これらのほかに水面下で進められているものもあるであろう。それらは表面化し次第取り上げていきたい。

(1)戦闘機F35の共同生産に参画

 F35は2011年に民主党野田内閣が次期主力戦闘機に選定し、42機の導入を決定。2013年には、安倍内閣がF35の部品生産に日本の企業が参画することを決定。日本で作られた部品を使ったF35の機体が今後各国へ売られる可能性があるが、安倍内閣は武器輸出三原則の例外とした。なお、販売先として予定されている国にはイスラエルもある。
 政府の計画では、三菱重工業が主要部位の胴体、IHIがエンジンの部品、三菱電機が電子機器の製造・輸出に参画することになっている。すでに、防衛省は自衛隊機の製造について2013年度に、IHI、三菱電機の2社と契約。しかし、三菱重工業については、設備投資の負担をめぐって防衛省との交渉が折り合わなかったと、朝日新聞DIGITALが次のように伝えている。
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     最新鋭ステルス戦闘機F35の部品の製造・輸出に国内企業を参画させる政府のプロ
    ジェクトに、三菱重工業が今年度に続いて来年度も参画を見送ることが防衛省への取材
    でわかった。設備投資の負担をめぐり、同省との交渉が折り合わなかったという。

     関係者によると、三菱重工業が自衛隊機と外国機向けを年間計24機つくるケースで
    試算したところ、工作機械などの設備投資に100億円近くかかることが判明。費用負担を
    めぐって、外国機向けの費用を負担しないとの立場の防衛省側との協議が物別れに終わ
    ったという。                 (朝日新聞DIGITAL 2014年8月4日)
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   (注)F35はアメリカのロッキード・マーチン社が開発し、量産にあたってはアメリカを
      中心に9カ国が共同で部品の製造・組み立てを行うことになっている。

 これとは別に、自衛隊に納入する機体の組み立てについては三菱重工が担当し、そのための設備を小牧南工場(愛知県豊山町)に整備することが決まっている。これにつては、日刊工業が次のように伝えている。
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     F35の最終組み立てラインは、現在の第1格納庫(1格)がある場所に今夏をめどに
    新設する。建屋にかかる費用は三菱重工が負担。内部の生産設備などについては国が拠
    出すると見られる。
     防衛省は2013年度予算でF35取得に関連し「国内企業参画に伴う初度費」として830
    億円、14年度予算では「国内企業参画の範囲を拡大することに伴う初度費」として425
    億円を計上。一部は今回の最終組み立てラインの生産設備に手当てされる見通しだ。
                              (日刊工業 2014年6月23日)
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(2)オーストラリアと潜水艦技術で協力

 前回のブログで見たが、今年4月、安倍首相はオーストラリアのアボット首相と会談し、防衛装備・技術に関する交渉開始を決定している。これを受けて、小野寺防衛相はオーストラリアと潜水艦に関する共同研究について交渉を進め、6月11日、外務・防衛担当閣僚級協議(2プラス2)で防衛装備品の共同開発に関する協定交渉で実質合意している。「共同研究」といっても、実質は、三菱重工(神戸造船所)と川崎造船で建造している「そうりゅう型潜水艦」の技術供与といわれている。

(3)アメリカへミサイル部品を輸出

 これは前々回のブログで見たが、武器輸出の第一弾となったのもで、地対空ミサイルPAC2の目標を探知するセンサー部分の部品。ミサイルの製造元である米国のレイセオン社と契約した三菱重工が製造しているが、すでに米軍はPAC2を使っておらず、レイセオン社もセンサーの製造を中止している。しかし、アメリカはPAC2を中東のカタールに輸出することを決めており、そのために日本側に輸出を求めてきた。安倍内閣は7月17日、輸出することを決定した。

(4)フランスと武器の共同開発・輸出拡大

 これは、ブログ「(53)フランスと武器の共同開発・輸出拡大」で見たが、安倍首相が5月にフランスのオランド大統領との会談で「武器の共同開発や輸出拡大など防衛装備品協力に関する政府間協定の締結に向け交渉に入ることで一致」というニュースの中で伝えられたものである。そこでは「水中を航行する無人機」(日経)とか「海中の機雷を破壊する無人潜水機などを想定」(毎日新聞)といわれている。
 日本側の企業名は出ていないが、三菱重工は「水中航走式機雷掃討具(S-10・1型)」を製造している。さらに、フランス側が高く評価している「無人潜水機の動力源となる燃料電池に関する日本の技術」については三菱重工が「新発想の海中燃料電池システムの実海域試験に世界で初めて成功」している(ニュースリリース 2013年11月13日)。そのため、この案件を三菱重工が関係している武器輸出案件の一つと考えられる。

(5)トルコと戦車用エンジンの共同開発は破談に

 安倍首相は昨年(2013年)トルコを2度訪問して、原発輸出を実質合意し、さらに、トルコの企業と三菱重工が合弁会社を設立して戦車用エンジンを共同開発する商談も進めていた。この商談が「破談」になったことを7月30日の日経が報じている。
 「破談」になった理由の一つは、開発した戦車をトルコが、パキスタンやアゼルバイジャンといった紛争国を含むイスラム諸国に売りたいと言い出したこと、もう一つの理由は、トルコが昨年9月に中国精密機械輸出入総公司と防空システムの導入をめぐって協議に入ると発表するなど、「安全保障面で中国に近づくそぶりを見せたこと」だと伝えている(―「破談」の裏に中国の影 武器輸出、トルコと幻の1号案件 供与技術の流出懸念― 日経 2014年7月30日より)。

    (注)三菱重工の戦車
       三菱重工は最新鋭の10式戦車(ひとまるしきせんしゃ)を陸上自衛隊に
      納入している。この戦車は機動力をはじめ戦闘力が非常にすぐれていると
      言われている。

 三菱重工が関係する武器輸出案件の現状は以上である。これらに共通することは、安倍首相が先頭に立って政府主導で進められていることである。もちろん、その背景には武器製造企業をはじめとする財界の強い要請がある。国民からの批判が強い武器の輸出を強引に切り開いていくために首相が先頭に立っているのではないだろうか。

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