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2012年3月 8日 (木)

(4)広島の新会社は不安がいっぱい

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 「三菱重工を分析する」のブログ(1)~(4)を再編集して「日本共産党三菱重工広製支部」のホームページに 「分社化の嵐」作戦と事業本部制 として掲載しました。
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 三菱重工ユース(2011年11月30日発行)は次のように発表。少し長くなるが全文を引用する。
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     搬送システムやゴム・タイヤ機械などの事業を担う新会社
         俊敏で強靭な事業体制構築を目指す

 三菱重工業は2012年4月1日付で、搬送システムやゴム・タイヤ機械などの事業を担う新会社を発足させる方針を決定した。当社機械事業部のそれら事業と、エムイーシーエンジニアリングサービス株式会社(MEC、本社:広島市中区)など既存グループ会社3社を統合して発足する当社100%出資会社で、これにより、厳しい市場環境の変化に対応した俊敏で強靭な事業体制を構築、事業の強化と収益基盤の安定化をはかっていく。

 新会社は、機械事業部の搬送システムやゴム・タイヤ機械事業などを会社分割により当社100%出資子会社のMECに承継させると同時に、広島菱重エンジニアリング株式会社と株式会社リョーセンエンジニアズを統合して発足する。本社は広島市西区に置き、主な事業として、搬送システム、ゴム・タイヤ機械のほか、製鉄機械上流設備、化学機械、その他製品の販売・設計・製作・据付・アフターサービスを手掛ける。

 新会社の事業のうち、搬送システムやゴム・タイヤ機械は生産の海外シフトを推進、国内は営業・エンジニアリングの拠点として体制強化をはかる。製鉄機械上流設備は開発に注力し、関連装置の製品化を加速する。化学機械は設計強化をはかり、大型の化学機械や熱交換器の製造を拡大する。

 当社機械事業部は、これまでに主力製品である製鉄機械を2000年に、また、コンプレッサを2010年にそれぞれ本体から切り離して事業会社化するなど、連結経営を推し進めている。今回の新会社発足はこれらに続くもので、当社とグループ会社に分散していた諸機能を統合するとともに、重複業務を廃して、スピーディで効率的な事業の展開を目指す。

 なお、新会社は機械・鉄構事業本部が直接管理する体制とし、機械事業部は解消する。
 当社は新会社と密接に連携し、その事業展開を全面的に支援していく。
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 発表内容のポイントを整理すると、
 ・搬送システムやゴム・タイヤ機械などの事業を担う新会社を4月に発足させる
 ・陣容は、三菱重工(機械事業部)のそれらの部門と、広島にある既存グループ会社3社を統合する
 ・新会社の事業のうち、搬送システムやゴム・タイヤ機械は生産の海外シフトを推進する
 ・狙いは、重複業務を廃してスピーディで効率的な事業の展開
  その目的は、俊敏で強靭な事業体制を構築、事業の強化と収益基盤の安定化
  厳しい市場環境の中で確実に利益を得るため

 統合する既存グループ会社3社は次のとおり
 ・エムイーシーエンジニアリングサービス株式会社(略称:MEC)
   資本金:8000万円 売上高:約85億円 従業員数:約180人(約4700万円/人)
   主な事業:計測装置、制御装置、監視装置、物流設備、水域浄化装置、クレーン、クレーン用吊具の設計・製作
 ・広島菱重エンジニアリング株式会社
   資本金:3,000万円 売上高:約45億円 従業員数:170人(約2600万円/人)
   主な事業:ゴム・タイヤ機械・その他機械の計画・設計・製作・据付・アフターサービス
 ・株式会社リョーセンエンジニアズ
   資本金:1億円 売上高:約85億円 従業員数:334人(約2500万円/人)
   主な事業:設計(製鉄機械・風力機械・鋼構造物ほか)、システムエンジニアリング、解析、設計・製作(住宅産業関連設備ほか)
   (注:リョーセンエンジニアズの従業員はすべてが新会社に移されるのではなく、他のグループ会社に移される者もいる。)

 広島菱重エンジニアリングとリョーセンエンジニアズの1人あたりの売上高がMECに比べて低いのは、全コストに占める人件費の割合が比較的大きい、すなわち事業の多くが技術分野における親会社の下請けという面が大きいことによると思われる。これらの会社は、MECを含めて三菱重工が機能分離会社と呼んでいるが、100%出資の第1次下請けという性格が強い。これに対して、2010年に分社化した三菱重工コンプレッサなどは事業会社と呼ばれる、言わば兄弟会社で、従業員1人あたりの売上高も1億円以上である。

 今回の新会社は分社化(事業会社)の一つであるために、統合される機能分離会社3社は、今回の統合で事業会社に格上げされることになる。しかし、このことは従業員の待遇が良くなることを意味しない。なぜなら、第一に、「重複業務を廃してスピーディで効率的な事業の展開」が狙いであり、「厳しい市場環境」の中で確実に利益を得るために「効率的な事業の展開」をするということは、コスト競争力の強化が最大限に重視されるからである。「重複業務を廃して」ということは、リストラの危険さえある。
 第二に、三菱重工が分離する搬送システムやゴム・タイヤ機械などの事業は売上高が小さく、コンプレッサのようなドル箱ではない。むしろ、コストダウンのために、「生産の海外シフト」が推進される。

 新会社の規模を推定するために機械事業部の製品別受注高(2009年3月期、連結)を見ると、
 ・コンプレッサ・タービン 531億円 
 ・ゴム・タイヤ機械     47億円 
 ・搬送システム      71億円
 このように、分離される事業の規模は47億円+71億円=118億円と、コンプレッサ・タービンに比べてきわめて小さい。機械事業部のこの部門の従業員数200人余りで割ると、1人あたり推定5000万円から6000万円と、機能分離会社と大差のないレベルである。これに、統合される3社の規模を単純に加えると、売上高約330億円、従業員数約900人(約3700万円/人)という規模になる。
 新会社の主な事業は、搬送システム、ゴム・タイヤ機械のほか、製鉄機械上流設備、化学機械、その他製品の販売・設計・製作・据付・アフターサービスである(上記の三菱重工ニュース参照)。搬送システムは、レードルクレーンなどの製鉄物流システム、コンテナクレーンなどの港湾荷役システム。ゴム・タイヤ機械は文字通りゴムを練りタイヤを作る機械。製鉄機械上流設備は連鋳が中心であろう。化学機械といえば、大型ボイラなど。新会社の中身は比較的小さな様ざまな事業で構成されており、技術的にも市場(客筋)も様ざまである。このような、いわば「多角経営」は、製品ごとの繁閑に応じて従業員を移動させるというメリットが考えられるが、厳しい経営環境の中ではどうなるか心配が先立たざるをえない。その上、トップの方針である事業ごとに事業性・効率性を評価する“事業格付制度”を導入して「事業の選択と集中」を加速させるということと合わせ考えると、新会社に移される労働者の不安は大きいと推測される。

 「ドル箱」と言われ、「三菱重工のコンプレッサーは世界で5位か6位。分社化すれば必ずトップスリーに入れる」と副社長が言った三菱重工コンプレッサー(株)でさえ、ヨーロッパの金融不安や激しい円高もあって苦戦を強いられている。
 別の例では、2008年のリーマショックのあと、需要が極端に落ち込んだ印刷・紙工機械事業を分社化し、関連する機能分離会社4社を統合して、2010年に三菱重工印刷紙工機械(株)を設立している。三菱重工ニュース(2009年11月27日)は「印刷・紙工機械事業専業の新会社 市場環境の変化に対応したスリムで俊敏な事業体制へ再編」という見出しをつけて発表しているが、狙いも目的も今回の広島の新会社とそっくりである。印刷紙工機械の需要はその後大きく伸びていないので、この会社も苦しい状況が続いているようであり、設立時にいた950人の従業員のその後が心配される。
 このような状況を見ても、新会社に行かされる労働者の不安は大きいと推測される。

 「分社化の嵐」作戦は、三菱重工広島を完全に解体し、すべての事業を分社化した。残っているのは製造現場部門とごく少数の新製品開発部門で、それらは機械・鉄構事業本部直轄の組織となり、機械事業部という組織はなくなる。
 分社化の狙いは、ブログ(2)、(3)で見たように「(従業員に)本当の危機感を持たせる」ためであり、グローバル化(多国籍企業化)を進めるためである。グローバル化は、日本国内の経済発展を促すものではなく、三菱重工が海外進出をはかり、他国から利益を吸い上げるためであり、日本の産業の空洞化・国内経済の低迷にも通じる。日経ビジネス(2011年4月4日号)に出ていた「国内の雇用を守る」だけでは「会社を守れない」という取締役の言葉が現実味をおびて迫ってくる。

 なお、ゴムタイヤ機械については、すでに中国江蘇省に三菱重工100%出資の会社「常熟菱重機械有限公司」を設立し、中国でゴムタイヤ機械の現地生産に乗り出している。
搬送システムについては、インドに大型搬送機器の合弁製造会社「Anupam-MHI Industries Ltd」をすでに設立。ここでコンテナクレーンやアンローダ等の各種搬送機器の設計・製作を行うと発表している。

参考資料:機械事業部のグループ会社(24社)・・・2012年4月から22社となる

事業会社(5社)・・・2012年4月から新会社が加わって6社となる
 三菱重工コンプレッサ株式会社
 三菱日立製鉄機械株式会社
 SES連鋳エンジニアリング株式会社
 三菱重工鉄構エンジニアリング株式会社
 三菱重工食品包装機械株式会社 パッケージング機械事業部

設計・製造・制御・情報(5社)・・・2012年4月から2社となる
 株式会社リョーセンエンジニアズ       (今回の新会社に統合される)
 エムイーシーエンジニアリングサービス株式会社(今回の新会社の継承企業)
 広島菱重エンジニアリング株式会社      (今回の新会社に統合される)
 MHIソリューションテクノロジーズ株式会社
 広島ダイヤシステム株式会社

アフターサービス・建設(1社)
 三菱重工プラント建設株式会社

不動産・サービス(6社)
 広島菱重興産株式会社
 株式会社広自センター
 ダイヤモンドトラベル株式会社
 株式会社ダイヤエコテック広島
 株式会社リョーイン広島営業所
 株式会社春秋社 広島支店

海外グループ会社(7社)・・・いずれも三菱日立製鉄機械(株)が資本参加する子会社
 常州宝菱重工機械有限公司(中国)
 上海宝菱冶金設備工程技術有限公司(中国)
 Mitsubishi-Hitachi Metals Machinery USA, Inc(米国)
 MHCG, Inc.(米国)
 三菱日立製鉄機械(上海)有限公司(中国)
 Mitsubishi-Hitachi Metals Machinery South Asia Private Limited.(インド)
 三菱重工(常熟)機械有限公司(中国)

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コメント

申し訳ありませんが、外注図面単価表がございましたら、メ-ルかファックスにて教えてもらえないでしょ うか。と言いますのは、2月オオミヤテックの図面を書きましたが、図面代を払ってもらえないので、現在 訴訟中です。エンドユ-ザ-は三菱様で、ラ-メン袋の搬送ラインです。裁判所に提出しなくてはいけ
 ないのです。決してご迷惑はお掛けいたしません。TEL.FAX 082-818-5655です。宜しく御願い申し
 上げます。

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