2018年11月12日 (月)

三菱重工の新方針「グローバル・グループ経営への移行」

 三菱重工は、中間決算(2018年4月~9月)と新方針「グローバル・グループ経営への移行」を発表しました。

 
中間決算は「堅調に推移」 増配も変わらず

 三菱重工の受注・売上げ・利益は見通しどおりに進んでいて、年度計画は基本的に修正がありません。増配(130円/株)も変っていません。
 火力事業の受注減やMRJ(三菱リージョナルジェット)の開発遅れなどの問題はありますが、それらを含めて見通しどおりに進んでいるようです。
 なお、MRJについては、カナダの航空機メーカー・ボンバルディア社から、機密情報を不正入手したと提訴されていますが、「ボンバルディアの主張に根拠がない」、「開発遅れなどの影響はない」と社長が表明しています。
 
新方針「グローバル・グループ経営への移行」

 今回発表した新方針「グローバル・グループ経営への移行」については、すでに「2018事業計画」の中で考え方が示されていました。
 この新方針を十分に理解するには難しいところがありますが、まとめると次のようになるのではないでしょうか。
 「グローバル経営」と「グループ経営」を強化して「コングロマリット経営の改革・進化」をはかる。そのために、それにふさわしい「体制・制度」に移行する。
 
コングロマリット経営とは

 「コングロマリット(conglomerate)は、直接の関係を持たない多岐に渡る業種・業務に参入している企業体のこと。複合企業とも」(ウィキペディアより)。
 三菱重工の業種は製造業の中の輸送用機械等製造業、一般機械器具製造業などで、製品はロケット、ミサイルからフォークリフト、ターボチャージャまで多岐にわたっていますからコングロマリット(複合企業)と言えるのでしょう。
 今回の新方針は、かつてはそれなりの成果を上げてきた事業本部/事業所制のコングロマリット経営を、事業環境の変化に合わせてドメイン制に変えて効率化と規模拡大を進めてきたが、さらに「改革・進化」が必要、というスタンスです。
 
新方針「グローバル・グループ経営への移行」の概要


 新方針の説明資料の構成は次のようになっています。
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グローバル・グループ経営への移行
 1. 成長のための中長期的課題
 2. 成長軌道の第一歩
 3. グローバル・グループ経営への移行
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 この順に中をざっと見ていきたいと思います。
 
1. 成長のための中長期的課題(p.3~)

 ここでは、1980年以降における各国のGDPの変化をグラフで示して、アメリカ独り勝ちの中で中国が急成長する一方、日本が長期にわたって低迷していることを明らかにしています。
 次に、業種別の成長率を示して、この10年余りの間に業種によって成長率は大きく変化していること、その影響を受けて三菱重工の中にも伸びている事業と後退している事業があることを述べています。
 これらのまとめとして、グローバル市場にもっと出て、新しい成長領域への参入を加速しなくてはならない。そのために過去のコングロマリット経営から脱して「改革・進化」が必要と説いています。
 
2. 成長軌道の第一歩(p.8~)

 ここではコングロマリット経営を「改革・進化」させる第一歩として、現状のドメイン制(大ぐくり化による流動化)に加えて、「事業の類型化」+「グローバル拠点事業と日本拠点事業の2分化」を掲げています。
 具体的には、現状のすべての事業を「日本拠点事業(約1.7兆円)」と「グローバル拠点事業(約2.4兆円)」に分け、さらにそれぞれ3つ、計6つの「事業類型」に分けて「事業の特徴」「課題と対策」などを示しています。
 たとえば、「日本拠点事業」に含まれる「防衛・宇宙、原子力」の対策は「堅実な成長施策」、「グローバル拠点事業」に含まれる「火力」の対策は「抜本的な対策(事業構造転換)」となっています。
 さらに、「ポートフォリオマネジメントの高度化」をはかるとして、今後も事業を継続的に組み換えて成長力を維持するために「戦略的事業評価制度」を改良して引き続き実施していくとしています。
 
3. グローバル・グループ経営への移行(p.13~)

 
ここでは、組織・人員構成が過去10年間に大きく変化したことを示しています。
・国内のグループ会社:22,000人(198社)→ 38,000人(164社)
・海外のグループ会社:  8,000人(105社)→ 28,000人(246社)
・三菱重工単体   :34,000人    →14,700人
 これら3つそれぞれの役割分担を明確にするとともに、新しい組織体制として「海外地域統括会社」を新設するとしています。具体的には、北米/中南米、アジア太平洋/インド、欧州/中東/アフリカ、中国の4地域に作って各地域内共通の施策(成果主義の促進など)を進めて行くとしています。
     ◇
 新しい方針は、外部環境の変化に機敏に対応しながらグローバルに企業を成長させていくことを狙っています。そのために「戦略的事業評価制度」によって、すべての事業を伸ばす事業と切り出す事業に分けて手を打つというやり方は変わっていません。
 ですから、職場では、効率向上が求められ、自分がいつどこへ行かされるかわからないという厳しい状況が続くことになります。中でも、受注が減少した火力事業は「抜本的な対策(事業構造転換)」を打つと言いますから、三菱日立パワーシステムズ(MHPS)やその下請けで働いている人たちは大変ではないでしょうか。
 「防衛・宇宙、原子力」については「堅実な成長施策」をはかるとしていますから、兵器の生産、原発の再稼働・輸出という国民の願いに逆らう事業にひきつづき力を入れようとしています。
 さらに、グローバル経営を強化することは国内産業の空洞化をさらに進めることになり、上記で見た日本経済の低迷が続くことになります。
 
   日本共産党三菱重工広製支部 2018年11月12日

2018年10月26日 (金)

米国軍産複合体が創る「新冷戦」

 前回のブログの続きです。月刊「経済」(11月号)に「トランプ政権と軍産複合体〈下〉」が掲載されました。トランプ政権はイラン核合意から一方的に離脱して軍事的緊張を高めていますが、その背後には「新冷戦」を創ろうとする米国軍産複合体が・・・。「トランプ政権と軍産複合体〈下〉」の一部分をご紹介します。

巨大金融機関主導の軍産複合体復活

 1989年の東欧諸国の体制転換・ベルリンの壁崩壊に伴う冷戦終結は、アメリカ国民が求める国防費削減の圧力をさらに強めることになり、米国軍産複合体にとっては「大災害」であった(p.116)。
 そのため、「米軍事当局―航空宇宙軍需企業は、軍事能力の保持強化を正当化する理論の構築が急がれた」。そこで打ち出されたのが「ならず者国家」で、「旧ソ連に代わる仮想敵国として位置付けられた」。1990年の湾岸戦争は、「仮想敵と位置付けた「ならず者国家」の現実の脅威とされ」、国民への説得力となった(p.117)。
 一方、国防省は、国家兵器市場縮小のなかで国防産業基盤強化に向けて軍事企業の再編統合化を求めた。それを受けてウォール街の巨大投資銀行・巨大ファンドと大手軍事企業が業界統合化を推進。1993年から大型企業買収・合併が続き、26社の軍事企業が2006年には次の6社に統合された(p.118)。
・ジェネラル・ダイナミックス
・ロッキードマーチン
・L3コミュニケーションズ
・ノースロップ・グラマン
・ボーイング
・レイセオン
 これらの企業は世界の軍事企業Top100の上位を占めています。どれも巨大企業ですが、全社売上に占める兵器の売上は、ボーイングが31%、ジェネラル・ダイナミックスが61%、その他は86~95%という軍事専門の巨大企業です。アメリカの軍事企業はこれだけではありませんが、これら6社だけで2016年の兵器売上高合計は1427.70億ドル(×112円/ドル=15兆9902億円)にもなります(ストックホルム国際平和研究所のデータより)。

 なお、2016年の世界の軍事企業Top100に、日本の企業は5社(三菱重工、川崎重工、IHI、NEC、三菱電機)入っていますが、5社の2016年の兵器売上高合計は82.20億ドル(×112円/ドル=9206億円)です。

巨大金融機関主導の垂直統合

 1993年から1996年に大きな再編の動きがあったあと、2000年から再び再編統合が進んだが、今回はJ.Pモルガンなど巨大機関投資ファンド主導で進められた。その結果、2005年には「米国兵器産業大手の機関投資家による株式所有比率」は、ロッキードマーチンの95%を筆頭に、平均79.24%を占める決定的な支配力を持ち、「軍事企業は魅力的な収益をもたらすオファー(国からの発注)でない限り、自国の国防省との契約に乗るべきではない」(つまり、国防よりも収益を優先)というまでになった(p.124)。
 2001年の9.11とその後のアフガニスタン戦争(2001年~)、イラク戦争(2003年~)は軍事産業拡大の商機となり、「米国政府の軍事化」が進み、ICT、AI、ロボットなどの企業と軍事企業とのつながりや吸収・合併も進んだ。こうして巨大金融機関に主導された米国軍産複合体はアメリカの政治・経済にも大きな影響力を持つとともに、グローバルに影響力を広げている(p.125)。

北朝鮮危機の次にイラン危機を演出

 少し長くなりますが引用させていただきます。「北朝鮮リスク・緊張は、冷戦期の大型戦略兵器復活の大いなる商機となった。ポスト冷戦期に縮小ないし廃止され始めた大型戦略兵器、戦術核兵器の復活と新型兵器開発が始まった」(p.125)。
 「そして、この北朝鮮「特需」による「ウィンド・フォール(棚ぼた)」を得て、ウォール街はじめ全米の投資家たちの「信用を得て」、株価は史上最高値を実現したことをもって、これ以上、危機の深海に入ることを避けた」(p.125)。
 「北朝鮮問題に代わる「危機創設」はイラン危機の演出である。冷戦後世界で最も成功した核拡散防止の国際協定である「イラン核合意」(2015年6月成立。イラン・中国・ロシア・米国・EU・英・独・仏)からの一方的な米国の離脱で、イランと中国・ロシアを敵方にまわし、その脅威に対応する「新冷戦」が準備されている」(p.126)。
      ◇
 このあと「トランプ政権と軍産複合体〈下〉」は、「中・露を戦略的競争者とする戦術核軍拡の危険度」、「新核戦略に向けた新たな枠組み」、「新冷戦に向けた新たな買収合併再編」と豊富な内容が続きますが割愛させていただいて、最後の部分に行きます。

日本の憲法改悪にも米国軍産複合体が
 「北朝鮮危機は緩和したとしても、トランプ政権下での米国軍産複合体による圧力は強まり、日本政府は、迎撃ミサイル、イージス・アショアの設置を強行に進めようとしている。その過程で、憲法改悪へ向けた国民世論への圧迫が激しさを増している。グローバル化する軍産複合体に操られる政権は、国民生活を破局へ導くことになる」(p.133)。

   日本共産党三菱重工広製支部 2018年10月26日

2018年10月12日 (金)

史上最強となった米国軍産複合体

 月刊「経済」(10月号)に掲載された「トランプ政権と軍産複合体〈上〉」は、世界の軍事情勢を理解し、平和を求めるたたかいに示唆となるところがあると思いますので、その一部分をご紹介したいと思います。
 
軍産複合体とは

 
軍部と軍需産業が結びついて軍事予算を増やし軍部の政治力を強め、公的機関をはじめ社会の隅々に影響力を浸透させて軍国主義を進める、そのような軍部と軍需産業の結びつきを軍産複合体と言ってよいのではないでしょうか。
 アメリカだけではありませんが、特にアメリカの軍産複合体は強大で、上下両院にも強い影響力を持っているので「軍産議会複合体」と呼ばれたり、多くの大学や研究機関と結びついているために「軍産学複合体」とも呼ばれるようです。
 日本でも憲法9条が破壊されたら、自衛隊と軍需産業が力を増して軍産複合体が生まれ、安倍政権が狙っている軍国主義化が急速に進む危険があります。
 
史上最強となった米国軍産複合体

 冒頭に書きました「トランプ政権と軍産複合体〈上〉」の第1章は「史上最強となった米国軍産複合体」です。
 トランプ大統領は、「その誕生以前から、史上最強と自他ともに認める軍産複合体に取り囲まれ、その指導を受けて登場してきた」(p.119)。トランプ政権の下で、軍事費は拡大し、今後も拡大の一途を続けようとしています。
 
広域資源地帯―「不安定の弧」の確保

 「冷戦終結・ソ連崩壊後に米国が新たに支配領域に組み込んだ広域資源地帯(西・北アフリカ、中東、中央アジア、南西アジア)は、イスラム過激派が活動する「不安定の弧」を形成しており、国際石油資本をはじめ多国籍企業とウォール街にとっては、この地域に「アメリカの秩序」を確立することが最大の国家利益である」(p.123)。
 「不安定の弧」の確保は、アメリカを支配している総資本にとって最も重要というわけですが、それは高コストの「ローテク戦争」であって、「冷戦型戦略兵器を必要としないため、軍事企業にとっては利益率の低い不採算ビジネスでしかない」(p.123)。
 
ロシアと中国を戦略的競争者に

 トランプ政権は、総資本が重視する「不安定の弧」の確保をしなくてはならないものの、軍産複合体の申し子であるトランプ大統領にとっては高額な戦略兵器や新兵器で巨大な軍需産業をうるおすことを優先させる政策をとっています。
 そのため、トランプ政権が昨年末から今年のはじめにかけて打ち出した「国家安全保障戦略」から「核戦略見直し」までの一連の新しい安全保障政策は「中国とロシアを「戦略的競争相手」として、脅威の最上位に置くこととした。いわゆる「新冷戦の始まり」という軍事戦略を打ち出した」(p.124)。
 「北朝鮮危機を契機として、ポスト冷戦期に細々と生きるか、縮小ないし廃棄され始めた大型戦略兵器、核兵器の復活と新規拡大開発が始まっている」(p.125)。
 その結果、軍需大企業の影響力が増して「外交政策の軍事化をもたらし」、「ニューヨーク株式市場では機関投資家や金利生活者投機筋にも商機となり、彼らの熱狂は収まる気配はない」(p.125)。
 このようにして、「中国とロシアを戦略的脅威と見立てた「核戦略見直し」は、新たな高度破壊型の戦略・戦術兵器の開発・製造をめざすこととなった」(p.125)。
 「ただし、中国とロシアの間に、米国としては冷戦時代のような対立があるわけではなく」、「中国・ロシアとの核限定戦争を「理論上」可能にしようというのである」(p.126)。
 
核限定戦争の危険性

 「理論上」といっても、使おうと思えば使える核兵器はこの上なく危険なものです。トランプ政権は同盟国を巻き込んで新戦略を進めており、「中国やロシア軍産複合体も、核兵器の高度化をはかりつつ武器市場拡大を求めて、外交の軍事化」(p.126)をはかっています。今日の軍拡競争は、かつての米ソ「2国間ではなく複数国間で競い合うことになる。現今の核戦争の危険性は旧冷戦時よりも高くなっている」という指摘もあるそうです。
 
   日本共産党三菱重工広製支部 2018年10月12日

2018年9月28日 (金)

三菱重工がかかわる敵基地攻撃可能兵器

祝 広島東洋カープ リーグ3連覇

 前回のブログで防衛省の「我が国の防衛と予算 平成31年度概算要求の概要」の主な点を見ました。

 そこに出ている考え方や政策は次のような点が特徴的と言えると思います。
(1)平和への動きを無視した軍拡志向
(2)新領域(宇宙・サイバー・電磁波)での軍事強化
(3)長距離巡航ミサイルなど敵基地攻撃可能兵器の導入
(4)何が何でもイージス・アショアの導入
 今回は、そこに出ているさまざまな兵器の中で三菱重工が関係しているもの、中でも新領域(宇宙・サイバー・電磁波)の兵器や敵基地攻撃可能兵器はないか見ておきたいと思います。

三菱重工が作っている兵器

 三菱重工のホームページで、「製品情報」→「防衛」と進みますと、三菱重工が作っている主な兵器を見ることができます。そこには、特殊車両(戦車など)、艦艇(護衛艦・潜水艦)、戦闘機、誘導機器(ミサイル)などが掲載されています。
 防衛省が装備品(兵器など)をどの企業から調達しているか、主な調達先については防衛装備庁のホームページの「調達実績及び調達見込(中央調達分)」というページから過去の調達実績を見ることができます。毎年の調達実績の中に調達先(企業など)が出ています。

新領域の能力強化(p.5~p.8)

 「我が国の防衛と予算 平成31年度概算要求の概要」にもどります。

 新領域は、宇宙領域・サイバー領域・電磁波領域に分けられています。この内、宇宙領域は今のところ人工衛星を使用して宇宙状況の監視、地上の監視、指揮系統に関係する通信が主な目的ですが、将来的には敵国の人工衛星を破壊または機能不全にする攻撃も考えられているのではないでしょうか。サイバー領域と電磁波領域については、自国の通信網やレーダーの防御と敵国の通信網やレーダーを機能不全にする攻撃を目的としていますから敵基地攻撃の一つと言ってよいのではないでしょうか。
 これらの内、三菱重工は人工衛星を軌道に投入するための大型ロケットの製作と打上げを独占的に実施していますから、宇宙領域には強く関係していると言えます。
 電磁波領域については、「戦闘機(F-15)の電子戦能力の向上」が出ています(p.8)。F-15は、米国ボーイング社とのライセンス契約で三菱重工が製作しています。これを「能力の高い新たな電子戦装置を搭載するなどの改修を実施」と記載されています。

海空領域の能力強化(p.9~p.13)

 ここでは、敵基地攻撃に直接かかわる兵器を見ていきたいと思います。

(1)航空領域の能力強化(p.9)
 ここには、「戦闘機(F-15)の能力向上」が再度出ています。前出の「電子戦能力の向上」だけでなく、「スタンド・オフ・ミサイル(JASSM等)の搭載」もすることになっています(p.9)。スタンド・オフ・ミサイルは、「相手の脅威圏外(スタンド・オフ)から対処」するミサイルですから敵基地攻撃可能兵器そのものと言えます。
 そのほかには、滞空無人機、早期警戒機などの増強が出ています。

(2)海上領域の能力強化(p.11)
 ここには、哨戒機、護衛艦、潜水艦などの増強が出ていて、三菱重工が作っているものもいろいろあります。これらは敵基地攻撃と無関係ではないと思いますが、具体的にはわかりません。

(3)スタンド・オフ火力の強化(p.13)
 ここには、「相手の脅威圏外(スタンド・オフ)から対処」する項目が並べられています。
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○ 戦闘機(F-35A)の取得(再掲)
○ 戦闘機(F-15)の能力向上(再掲)
○ スタンド・オフ・ミサイルの取得(再掲)
○ 島嶼防衛用高速滑空弾の研究(138億円)
 島嶼防衛のための島嶼間射撃を可能とする、高速で滑空し、目標に命中する島嶼防衛用高速滑空弾の研究
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 この内、戦闘機(F-35A)はステルス性に優れていますから、敵に気づかれずに近づいて敵基地攻撃が可能なのではないでしょうか。戦闘機(F-35A)は三菱重工が組立てを担当しています。
 島嶼防衛用高速滑空弾はイメージ図が出ていますが、ロケットモータで上空に打上げられたあとロケットモータを切り離して滑空型弾頭だけが目標に向かうようです。この研究を担当する企業は明記されていませんが、ロケットも滑空する機体の設計も三菱重工は得意なはずです。
 島嶼防衛用高速滑空弾については、p.47の「2 主な研究開発」にも出ています。さらに、このページの最下段には「極超音速誘導弾の要素技術に関する研究」が出ていますが、これも明確な敵基地攻撃可能兵器と言えます。
     ◇
 新領域(宇宙・サイバー・電磁波)の兵器も敵基地攻撃可能兵器も導入がすでに始まっていて、三菱重工もかかわっていると言えます。これは宇宙軍を創設するなどのトランプ軍拡に組み込まれているのではないでしょうか。安倍首相の軍拡志向と相まって今後あからさまに強化されていく危険を感じます。

   日本共産党三菱重工広製支部 2018年9月28日

2018年9月14日 (金)

膨張し続ける軍事費 敵基地攻撃可能兵器も

 防衛省の2019年度予算の概算要求は5兆2986億円。安倍政権になって急膨張して過去最大を更新しています。概算要求のおおよその中身が「我が国の防衛と予算 平成31年度概算要求の概要」に出ていますので、主な点を見ておきたいと思います。

 
「平成31年度概算要求の考え方」(p.1)

 冒頭で「本年中に予定される防衛計画の大綱の見直し及び次期中期防衛力整備計画策定にかかる省内の検討状況を踏まえ」と安倍政権の軍拡方針を先取りして予算要求していることを明らかにしています。
 つづいて、「厳しい安全保障環境の中・・・防衛力を大幅に強化する」と、米朝会談・南北会談など平和への動きにはいっさい触れず、平和への期待もしない「考え方」が書かれています。
 
「概算要求の考え方」(p.2)

 ここでは、「陸・海・空という従来の領域にとどまらず、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域の活用が死活的に重要になっている」として、新しい領域(宇宙・サイバー・電磁波)での軍事強化を掲げています。
 これまでの「海空領域の能力強化」では、「脅威圏外からの対応」が新しく掲げられました。「脅威圏外」とは敵からの攻撃を受けない所ですから、遠く離れた所から長距離巡航ミサイル(後述のスタンド・オフ・ミサイル)などで敵基地を先制攻撃することも可能になるということです。
 さらに「弾道・巡航ミサイル攻撃対処能力の強化」と何が何でも陸上配備型イージス・システム(イージス・アショア)を導入しようとしています。
 
「防衛関係費」(p.3~)

 p.3の下の方に「新規後年度負担」が書かれていますが、その額が2兆5141億円と巨額になっています。今後何年もかけて税金から払うことになります。
 p.4に「総額の推移」がグラフで示されていますが、安倍政権になってから「防衛関係費」の急膨張が連続していることがよくわかります。
 p.5からは、具体的な事項と金額が出ています。その中から注目しなくてはならないと思われるところをピックアップしてみます。
 
1 新領域の能力強化(p.5~)

(1)宇宙領域の能力強化
 ・宇宙状況監視(SSA)システムの取得(268億円)など
 先行している米軍と「連携」して宇宙の監視と宇宙から地上の監視をするものです。トランプ政権の宇宙軍創設という方針に沿っているのかもしれません。
(2)サイバー領域の能力強化
 ・サイバー体制の充実・強化(約150名→約220名)など
 通信ネットワークのかく乱は軍事だけでなく国民生活の破壊にもなりますが、すでに米軍との間で「日米サイバー防衛政策ワーキンググループ」などの形で進められています。
(3)電磁波領域の能力強化
 これには電磁波攻撃からの防御という面もありますが、電磁波による攻撃は敵基地攻撃の一つでもあります。
 
電磁波攻撃

 今年の初めに次のような報道がありました。
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 政府は電磁波を使って敵の防空網や指揮通信システムを無力化する電子戦用の攻撃機を導入する検討に入った。米ボーイング社の「EA18G」などを候補とし、2018年末に改定する中期防衛力整備計画(中期防)に盛りこむ方向だ。地上の標的も狙えるため、敵基地攻撃能力の保有を巡る議論にも発展しそうだ。
 電子攻撃機は大量の電磁波を送り込み、敵の通信網やレーダーを機能不全にする。日本周辺では中国軍が電子戦などを担当する「戦略支援部隊」を新設し、電子攻撃機の配備を進めている。日本も中国軍の航空機や艦船が日本周辺に展開するのを阻む「接近阻止・領域拒否(A2AD)」戦略の一環に活用し、防衛能力を高める。
 現在、防衛省は電波情報を集める測定機や訓練機をもつが、攻撃機は保有していない。EA18G(通称グラウラー)は大量の電波を発射する装置をもち敵のレーダーを壊すミサイルも備える。(日経 2018年1月1日)
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2 海空領域の能力強化(p.9~)

 ここにも敵基地攻撃に使える兵器が書かれています。
 ・戦闘機(F-35A)の取得(6機:916億円+整備用器材等475億円)
 ・スタンド・オフ・ミサイルの取得(73億円)
 「相手の脅威圏外(スタンド・オフ)から対処できるF-35Aに搭載するスタンド・オフ・ミサイル(JSM)の取得」という説明がついています。
 
3 弾道・巡航ミサイル攻撃対処能力の強化(p.14)

・陸上配備型イージス・システム(イージス・アショア)の整備(2基 31年度計上額:2,352億円)
 ここには北朝鮮とは明記されていませんが、「ロフテッド軌道への対応能力等」と北朝鮮への対応であることがわかります。
     ◇
 注目しなくてはならない点がまだたくさんあると思いますが、割愛させていただきます。なお、「主要な装備品等」がp.45~に出ています。
 冒頭にも書きましたが、(1)安倍政権になって軍事費の急膨張が続いています。(2)敵基地攻撃可能な兵器の導入が進められようとしています。
 トランプ政権が今年1月に策定した「国家防衛戦略」は中国とロシアを軍事的な主要脅威としています。上記で見た新領域(宇宙・サイバー・電磁波)での軍事強化や「脅威圏外からの対応」はトランプ政権の戦略に呼応したものと思われます。安倍政権はトランプ政権に追従するとともに、アメリカと一緒に海外で戦争できることを目指していると言えるのではないでしょうか。
 
   日本共産党三菱重工広製支部 2018年9月14日 

2018年8月31日 (金)

日経ビジネスの三菱重工特集

  日経ビジネス(2018.08.27)が「三菱重工 巨艦はこうして蘇った」という20ページにわたる特集記事を掲載しました。中を見ますと、「20年に及ぶ経営改革が着実に実を結びつつある」という好意的な見方で経営方針や事業の状況が書かれています。
 特集記事が「経営改革」の起点を20年前に置いている理由を宮永社長が次のように説明しています。「日本は戦後の復興期から高度成長期にかけて、国が長期計画を作ってインフラ整備や産業基盤を整えてきました。それらに役立つ重機械を作ってきた三菱重工にとっては、需要の予測がしやすく、それに合わせて人材教育や技術開発を進めることができた。欧米などから導入した技術を改良し、ある程度の技術力を確保できれば、うまくやれたのは事実です」。「そうした中で、事業所が強い体制は社内で健全な競争を生み出し、需要に応えてきました。ただ、日本の社会インフラが成熟してくると、我々のこれまでの役割は小さくなっていった。商習慣、言語も違う世界に打って出なければいけなくなったのです。そういう競争の環境が変わった時に、適応できるような体制になっていなかった。それが問題だったのです」。
 事業を取り巻く環境の変化を経営者として的確にとらえていると思いますが、国内産業の空洞化を意に介さず世界に打って出た20年と言えるのではないでしょうか。しかも、この20年の間に三菱重工の経営方針は大きく変化していますから20年間を一本調子で見るのではなく、もっとよく見る必要があると思います。

「分社化の嵐」作戦

 三菱重工のホームページに掲載されている過去の事業計画を見てみますと、「2010事業計画」で初めて「自前主義脱却」として「積極的事業分離・吸収」をかかげました。

 2010年には三菱重工コンプレッサ(株)を設立、分社化しています。これが最初の業績不振でない事業の分社化でした。これについて当時の日経ビジネス(2011.04.04)は、宮永副社長(現社長)が大宮社長の全面的な支援を受けて、「分社化の嵐」作戦を展開していることを伝えました。その中で、分社化の狙いについて宮永副社長(現社長)は、「三菱重工の社員には、分社化などで本当の危機感を持たせることが必要だ」とも言っていました。
 実は、この日経ビジネスの記事こそ、「三菱重工を分析する」のブログを書いて本当のことを知らせなくてはならないと私たちを突き動かすきっかけになりました。
 こうして三菱重工の分社化は、2010年を境にすっかり様子が変わりました。それまでの分社化が業績不振の事業を切り離すためにやられてきたのに対して、2010年以降は資本効率の向上を徹底的に追い求めるための分社化です。中でも、広島地区は最も早くすべての事業が分社化されました。
 一方、三菱重工の「グローバル化」はもっと前から始まっていました。

事業本部制と資本効率向上

 三菱重工は、1964年の3重工合併以来、事業本部と事業所のそれぞれが権限を持つ2本立ての組織運営をとってきました。
 2011年には「柔軟で機動的な事業運営体制の確立」のためとして事業本部制に移行し、同時にROE(自己資本利益率)の向上を打ち出しました。これは、資本効率向上を第一義とする株主資本主義宣言でした。

ドメイン制と事業格付制度

 2012事業計画では「事業規模の拡大」のために、「シナジー発揮」ができる組織として「顧客・市場を重視した」ドメインに組織を再編し、同時に、すべての事業を64のSBU(戦略事業単位)に分けて、SBUごとに「戦略的付加価値(事業性と効率性を合わせた価値評価基準)」を割り出して「事業の選択と集中の判断材料」とする方針を打ち出しました。株主偏重はさらに深まったといえるでしょう。

時価総額を重視

 今年の5月に発表した「2018事業計画」では、売上:総資産:時価総額の比率を1:1:1とする目標をかかげて株価の時価総額を重視する方針を打ち出し、株主偏重が極まった感じさえします。

日経ビジネスの三菱重工特集に書いてないこと

 この20年、三菱重工にとっては安い労働力、原材料、新しい市場を求めて世界に打って出た20年でした。そのために、経営環境に合わせて三菱重工の経営者が考え方を変えたり、事業の立て直しや切り出しをしてきたことが三菱重工特集に書いてあります。
 一方、書いてないことは、大企業が世界に打って出ることによる国内産業の空洞化です。それから、大企業の多くが株主資本主義へと変化したことも書いてありません。これら2つは、日本の経済的困難と国民の貧困化・格差拡大の要因になっています。
 さらに、この三菱重工特集に書いてないことは、三菱重工で働いている人たちのことです。組織再編や分社化は職種変更や勤務地変更を伴います。その上、海外に労働力を求めることによって、自己都合退職に追い込まれた人や家族と別れて単身赴任をしている人がたくさんいるはずです。人生を狂わされてしまった人もいるかもしれません。非正規の人たちは一顧だにされずに追い出されたことでしょう。下請けで働いている人たちも苦労を強いられていることでしょう。

   日本共産党三菱重工広製支部 2018年8月31日

2018年8月17日 (金)

時価総額を重視する経営方針

 時価総額は、その時の株価の合計(株価×発行済株数)です。三菱重工の場合、発行済株数は約3.37億株で、8月16日午前11時30分時点で株価は4129円でしたから、この時の時価総額は約1兆3900億円となります。
 三菱重工が時価総額を重視する経営方針は、今年5月、「2018事業計画」の中で「TOP比」という名前で打ち出されました。この方針は時価総額を重視すると直接言ってはいませんが、現実には時価総額の向上が大きな課題にならざるを得ません。

TOP比とは

 TOP比とは(TOP:Triple One Proportion 訳:3つの1という比率)、売上:総資産:時価総額の比率を1:1:1と目標設定することを意味しています。三菱重工独自の考え方ですが、なぜ1:1:1が良いのか具体的な説明はありません。
 現在の時価総額は約1兆3900億円ですから、昨年度の売上と昨年度末時点の総資産を並べますと、TOP比は次のようになります。
      -----------------------------
          現在のTOP比
      売上          総資産       時価総額
 4兆0856億円    5兆2487億 円    1兆3900億円
         1      :    1.28          :  0.34
      -----------------------------

第1四半期決算に今年度見通しのTOP比

 三菱重工は、2018年8月3日に発表した第1四半期(2018年4月~6月)決算説明資料の中で、今年度見通し(2019年3月末時点)のTOP比を書いています(p.13)。ただし、MRJ投資(900億円)を除外した「定常収益におけるTOP比」というもので、実際のものではありません。

      -----------------------------
   2018年度見通しの「定常収益におけるTOP比」
      売上   総資産   時価総額
     4.2兆円  5.1兆円   2.8兆円
      1     :  1.2    :  0.7
     -----------------------------

 この時価総額の予想は、2018年度の純利益を1700億円と予想し、その16.7倍がほぼ時価総額だとしています(1700億円×16.7=約2.8兆円)。
 同じ算定式で、実際にありそうな、MRJ投資(900億円)を除外しない場合の時価総額を計算しますと、(1700億円-900億円)×16.7=約1.34兆円となって、TOP比は次のようになります。
    -----------------------------
   2018年度見通しのMRJ投資を除外しないTOP比
        売上     総資産     時価総額
       4.2兆円    5.1兆円     1.34兆円
          1      :  1.2       : 0.32
    -----------------------------

意味のない時価総額算定式

 時価総額を純利益の16.7倍と算定して話を進めてきましたが、三菱重工は今年度から国際会計基準(IFRS)を適用していますので、ここでちょっとわかりにくい話をしなくてはなりません。
 国際会計基準(IFRS)適用前、ということは日本基準の2017年度の当期純利益は704億円でした。ところが、国際会計基準(IFRS)を適用して2017年度の当期純利益を求め直すと△73億円と赤字だったと「第1四半期決算説明資料」(p.12)で公表しています。ということは、同じ算定式を当てはめると昨年度の時価総額はマイナスというあり得ないことになってしまいます。会計基準の違いで利益は大きく異なります。

 
算定式はどうやって求めた?

 時価総額の予想値を純利益の16.7倍とした根拠は示されていませんが、上記「現在のTOP比」の時価総額(1兆3900億円)を16.7で割ると832億円となって、上記「2018年度見通しのMRJ投資を除外しないTOP比」で見た純利益(1700億円-900億円=800億円)に近くなりますから、三菱重工の場合、考え方によっては時価総額は純利益の16.7倍というのはだいたい現状にあっているのかもしれません。

日本の株価は公的資金に支えられています

 しかし、株価は企業の利益だけで決まるものではありません。景気の動向や外国為替の変化や、もろもろのことが影響します。その上、よく注意しなくてはならないのは、現在の日本の株価は公的資金に支えられているということです。
 「アベノミクスによって国内株式市場に投入されている公的資金の時価総額が6月末時点で66兆5000億円に達している」ことを赤旗(2018年8月8日)が伝えています。その内訳は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が40兆4000億円程度、日銀が26兆1000億円程度と推計され、その額は、東証1部の時価総額の10.3%程度という大きさだそうです。もし、公的資金が株式市場から引上げられたら株価は暴落するでしょう。
 算定式が現状にあっているとしても、現状の株価は公的資金に支えられた虚構の株価です。
     ◇
 時価総額を経営目標の中心に入れる経営方針は、経営努力だけではどうにもならないところがあるやりがいのない経営方針です。時価総額に一喜一憂する株主におもねる経営方針でもあります。

   日本共産党三菱重工広製支部 2018年8月17日

2018年8月 3日 (金)

高速炉開発にブレーキ

6月にアメリカ政府が、日本が保有するプルトニウムの削減を求めてきたことからプルトニウム保有問題がクローズアップされました。
 プルトニウムは、原発の使用済核燃料を再処理して取り出すことができます。そのプルトニウムを燃料とする高速炉の開発を多くの国が目指してきましたが、技術的困難と経済的に成り立つ見通しが立たないことから、アメリカ・イギリス・ドイツは開発途中で撤退しました。
 高速増殖炉「もんじゅ」も高速炉の一種ですが、「もんじゅ」が破たんし、廃炉が決定されたあとも安倍政権は高速炉の開発に固執しています。高速炉ができないとプルトニウム保有問題が解決せず、原発から全面撤退しなくてはならなくなるからでしょう。
 安倍政権の高速炉開発の方針は、「もんじゅ」の破綻・廃炉決定後は、フランスの高速炉開発計画(ASTRID)に参加して、そこから技術情報を得ながら進めようとしています。そのために開発方針案の検討・策定作業を進める高速炉開発会議を発足させました。

高速炉開発会議の状況
 

高速炉開発会議は、2016年12月の第4回会合で「高速炉開発の方針」を決定し、その方針を具体化するために「戦略ワーキンググループ」を発足させました。そこまでは昨年4月のブログ「今後の高速炉開発と三菱重工」でお知らせしましたので、今回はその後どうなっているかを見ておきたいと思います。
 なお、高速炉開発会議には三菱重工も参加して積極的な役割を果たそうとしています。

戦略ワーキンググループとは

 戦略ワーキンググループの目的は、「我が国の高速炉開発を進めるにあたって、今後10年程度の開発作業を特定する「戦略ロードマップ(仮称)」の策定に向けて、実務レベルで技術的な検討を行う」とされています。
 構成メンバーは、経産省・文科省・三菱重工・電気事業連合会・日本原子力研究開発機構の「実務レベル」で、三菱重工からは原子力事業部長などが出席しています。
 目的の「戦略ロードマップ」ですが、高速炉開発は技術的に困難だけでなく、たとえ実現しても経済的に成り立たないと言われていますから、そのような計画を具体化するのは並大抵なことではありません。そのことは当事者が一番よく知っているのではないでしょうか。それを思うと、単に「ワーキンググループ」と言わずに「戦略ワーキンググループ」と言い、「ロードマップ」を「戦略ロードマップ」と言うのは何か意味深なものがあるような感じがしてきます。

開催状況

 戦略ワーキンググループの会合は、2017年3月30日に第1回が、2018年7月26日に第11回会合が開催されました。これまでの議題は「有識者からのヒアリング」と、中国・ロシア・インド・アメリカ・フランスにおける高速炉開発の状況などが中心で、まだ具体的なロードマップの話にはなっていないようです。

ASTRIDが計画縮小

 戦略ワーキンググループの第10回会合(2018年6月1日)で「仏国の高速炉開発の状況について」が議題となりました。
 日本は、フランスの高速炉(実証炉)を開発するASTRID計画に協力して、基本設計を終える2019年までの共同研究をフランス政府と合意していますが、最近になってフランス側がこの計画を大幅に縮小する方針を明らかにしました。縮小する理由を戦略ワーキンググループの第10回会合でフランスの原子力・代替エネルギー庁の担当者が説明しています。
 これについて日経(2018年6月29日)は「高速炉開発にブレーキ 仏政府が共同事業で縮小表明 核燃料サイクルに影響も」という記事を書いています。

高速炉は高コスト

 「第10回戦略ワーキンググループ 議事要旨」にはコストについても出ています。

 日本側からASTRID計画について「現時点で、安全性や信頼性のターゲット、コストターゲット等想定しているものがあれば伺いたい」という発言にフランス側からは、まだ示すことができないと回答しています。
 会議ではこのあと日本原子力研究開発機構の佐賀山理事長シニアアシスタントが技術評価などに関する配布資料を説明した後、次のように発言しました。「ナトリウム冷却炉の実用化が世界的に遅れている理由はコスト。今後信頼性を向上させるとともに、さらにコストを下げていくことが必要」。 信頼性向上とコスト低減を同時に追求するのは難しいことです。現在の原発の場合、福島の事故後は安全性向上のために何倍も建設費がふくらんでいます。

放射性廃棄物は残ります

 高速炉は、完成すると発電しながら高レベル放射性廃棄物を減容化し有害度を低減します。日本の場合は、この高レベル放射性廃棄物の減容化と有害度の低減が第一の目的と言われていますが、決してゼロになるわけではありません。減容・低減してもまだ残りますから、後世にツケを回すことになります。
 高速炉の運転中に放射能漏れの事故を起こす危険も当然あります。現在の軽水炉に比べると、高速炉はナトリウムを冷却材として使用するために事故発生の危険は一層大きいと考えられます。
 経済性の点でも、高速炉は現状では成り立たないことを当事者が認めています。
 現在の軽水炉でさえ既に成り立たなくなっています。三菱重工が受注を目指しているトルコの原発建設計画は「建設費が想定の2倍近くとなるとの見通し」となったのではないか、そのため「トルコ側は計画に難色を示している」のではないかと伝えられています(日経 2018年8月2日「トルコ原発に暗雲 三菱重工、建設費2倍 報告書を提出」)。
 三菱重工が、原発から一日も早く手を引くことを願わざるを得ません。

   日本共産党三菱重工広製支部 2018年8月3日

2018年7月22日 (日)

三菱重工の株主の変転

 2017年度の有価証券報告書が公表されましたので、過去の有価証券報告書と比較して三菱重工の株主がどのように変化してきているかを見ておきたいと思います。

株主の分類

 三菱重工の「有価証券報告書(平成29年度)」のp.44に株式の「所有者別状況」として、所有者の種別ごとに株主数、所有株式数、所有割合が出ています。所有割合が大きいものを過去にさかのぼって見てみます。

           三菱重工の株式の所有者別状況
                    1990年3月 2000年3月 2010年3月 2018年3月
金融機関 株主数      562社   397社      263社    196社 
      所有割合        46.5%    37.3%     32.53%    29.75%
 
その他    株主数     4,673社  2,943社  2,973社  2,217社
の法人  所有割合      11.3%    10.1%   9.67%   8.24%
 
外国法人 株主数     1,027社   741社   585社   698社
        所有割合      17.9%    21.3%  19.49%  27.93%
 
国内個人 株主数   291,517人 314,802人 364,651人 256,286人
     所有割合         25.0%    30.7%    36.74%   28.80%
(注)所有割合の小さいものを省略していますので、合計は100%になりません。
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 この表から次のことが言えます。
(1) 国内の「金融機関」と「その他の法人」は株主数・所有割合ともに減少を続けています。これは企業グループ内で株式の持ち合いをしなくなっていることが大きく影響しているのではないでしょうか。
(2) 「外国法人」の「所有割合」は、2010年3月に減少していますが、これはリーマンショックの影響と思われます。リーマンショック直後の2009年3月には606社・16.50%まで減少しています。その後の急速な増加はアメリカなどでふくらんでいる金融資産が利益を求めて流れ込んでいるのではないでしょうか。
(3) 「国内個人」については、合計の「所有割合」は大きいですが、人数が「金融機関」の1000倍以上いますから、個々人の「所有割合」は微々たるものと言えます。

大株主

 三菱重工の「有価証券報告書(平成29年度)」のp.45には「大株主の状況」が出ています。大株主は経営方針に口出ししてくる可能性があります。
 これも過去にさかのぼって見てみます。有価証券報告書は大株主として10人(10社)を表示していますが、ここではトップの3人(3社)の名前と所有割合、10人(10社)合計の所有割合を抜き出してみます。
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 1990年3月の大株主と所有割合
三菱信託銀行            6.8%
三菱銀行                3.6%
明治生命保険            3.0%
・大株主10人(10社)の合計 26.1%
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 このころは株式の持ち合いが続いていましたからトップは三菱系列で占められていました。
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 2000年3月の大株主と所有割合
東京三菱銀行           3.7%
明治生命保険           3.5%
ザ チェースマンハッタン
 バンク エヌエイ ロンドン   2.8%
・大株主10人(10社)の合計  24.1%
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 1990年代に金融に関する規制緩和(金融ビッグバン)が進行して、大きな変化が始まったことが伺えます。
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 2010年3月の大株主と所有割合
日本トラスティ・サービス
 信託銀行株式会社信託口     4.60%
日本マスタートラスト
 信託銀行株式会社信託口     3.91%
野村信託銀行株式会社退職給
 付信託三菱東京UFJ銀行口    3.72%
・大株主10人(10社)の合計       21.52%
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 日本トラスティ・サービス信託銀行は、三井住友トラスト・ホールディングスとりそな銀行が出資して、2000年に設立されました。
 日本マスタートラスト信託銀行は、三菱UFJ信託銀行株式会社、日本生命保険相互会社などが出資して2000年に設立されました。
 どちらも企業・団体から従業員の退職年金給付にあてる資金の管理・運用の業務などをおこなっています。信託とは他人(他社)のお金や株式などを預かって管理・運用することを言います。
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 2018年3月の大株主と所有割合
日本マスタートラスト
 信託銀行株式会社(信託口)    4.89%
日本トラスティ・サービス
 信託銀行株式会社(信託口)    3.44%
明治安田生命保険            2.37%
・大株主10人(10社)の合計      22.63%
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 30年近く前・1990年の頃と比べますと、三菱重工の大株主はすっかり様変わりしていることがわかります。他の大企業も同じような傾向が見られます。川崎重工もIHIも大株主のトップの方には、日本トラスティ・サービスや日本マスタートラストが出ています。このような大株主は、他人(他社)から預かっているお金を運用するために配当や株価の値上がりを求めて、こっちの株を売ってあっちの株を売るなど移り変わります。企業の事業内容や働いている人たちには関心がなくて、この企業は当面どれくらいの利益が出るか、株価と配当はどうなるかということだけに関心があります。
       ◇
 株式会社は株主のものと言う株主偏重の経営はアメリカ発祥ですが、安倍政権は「日本企業の稼ぐ力を取り戻す」として、コーポレートガバナンスの強化など株主偏重の旗振りをしています。安倍政権にとって株価は支持率と直結しているからでしょう。
 市民と野党の共闘で安倍政権を倒す闘いは、三菱重工の株主偏重主義をやめさせて働く人たちを大切にすることにもつながっているようです。

   日本共産党三菱重工広製支部 2018年7月22日

2018年7月 6日 (金)

軍需生産 国内の上位企業の状況

 防衛装備庁から「中央調達における、平成29年度調達実績及び平成30年度調達見込」が発表されましたので、最近の状況を整理しておきたいと思います。

 資料は、過去のものを含めて、防衛装備庁のホームページを「調達・公募情報」→「中央調達」→「中央調達トップページ」→「調達情報の公表」→「調達実績及び調達見込(中央調達分)」と進むと出てきます。インターネットで「調達実績及び調達見込」を検索することもできます。
 中央調達とは何か?「中央調達の概況 平成29年版」に出ています。
 それを見ますと、「防衛装備庁においては、自衛隊の任務遂行に必要な装備品等及び役務で大臣の定める主要なものの調達を一元的に実施しており、これを中央調達と呼んでいます」。 ここで「装備品等」とは、火器、誘導武器、電気通信、船舶、航空機、車両、機械、弾火薬類、食糧、燃料、繊維及びその他の需品と説明されています(p.13)。中央調達でないものは地方調達と呼ばれています。

中央調達の実績(過去3年間/単位:億円)
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              2017年度  2016年度  2015年度  合計  比率(注)
三菱重工       2,457       4,532      1,998    8,987   17.2%
川崎重工       1,735        994      2,778    5,507   10.5%
日本電気       1,177        905       739    2,821     5.4%
三菱電機        957        767      1,083    2,807     5.4%
富士通          479        783       364    1,626     3.1%
IHI               100        355        1,147    1,602     3.1%
東芝(注)         632        348        573    1,553     3.0%
FMS調達       3,808       4,797       4,405   13,010    24.9%
年間調達額    15,764     18,397       18,126   52,287    100.0%
 (注)比率は、年間調達額に対する比率です。
 (注)東芝については、2017年度は東芝インフラシステムズ(2017年7月 株式会社東芝から分社)としてのデータです。
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FMS調達とは
 「中央調達の実績」の中でFMS調達がダントツですが、これは企業名ではありません。アメリカからの兵器購入です。
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 FMS調達は、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定」に基づいて、 装備品等及び役務を日米両政府間の直接取引によって調達するものです。この調達においては、取引の条件、手段等が、米国政府の方針、規制等に従って定められていることがあり、 一般的な商取引による契約とは性格を異にしています。
  「中央調達の概況 平成29年版」p.31
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「取引の条件、手段等が、米国政府の方針、規制等に従って・・・」とは、アメリカの言いなりということです。「対価は前払いに限られ、納期が年単位で遅れることもあり、価格は当初は見積もりということもあり支払い時は高騰することもあるなど・・・」(ウィキペディアより)。

企業別の主な調達品

 各社はどんな兵器を作っているのか、過去3年間の中から金額の大きいものを取り出してみました。
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三菱重工 地対空誘導弾ペトリオット     1式 1,867億円
         SH-60K哨戒ヘリコプター   17機  619億円
         潜水艦                    1隻  456億円
 
川崎重工 固定翼哨戒機(P-1)        20機 2,073億円(*1)
         C-2輸送機                3機  491億円
        輸送ヘリコプターCH-47JA    6機  445億円
 
日本電気 Xバンド衛星通信中継器等    1式  112億円
         可変深度ソーナーシステム     1式   85億円
          広帯域多目的無線機       1式   47億円
 
三菱電機 03式中距離地対空誘導弾   1式  310億円
              シースパローミサイル     1式  138億円
           99式空対空誘導弾         1式  162億円
 
IHI 固定翼哨戒機のエンジン             80個  708億円(*2)
    SH-60K用エンジン              34個  119億円
    戦闘機用エンジンの研究試作       1式  141億円
 
富士通 防衛情報通信基盤             1式  106億円
      ネットワーク監視器材の借上       1式    60億円
 
東芝  基地防空用地対空誘導弾        1式  165億円
         電波監視装置1号機           1式    83億円
 
FMS調達 戦闘機(F-35A)                1式  940億円(*3)
          ティルト・ローター機             1式  709億円(*4)
    E-2D早期警戒機の取得            1式  248億円
 
(*1) 2015年度にまとめ買いの契約がありましたので、この年の中央調達の金額は川崎重工が三菱重工抜いてトップになりました。
(*2) 川崎重工の固定翼哨戒機(P-1)20機に付けるエンジンです。
(*3) 戦闘機(F-35A)は、2015年度に1,065億円、2016年度に1,091億円、2017年度に940億円の契約をしています。
(*4) ティルト・ローター機とはオスプレイのことです。2015年度に585億円、2016年度に754億円、2017年度に709億円の契約をしています。
(注)字数の多い品名などは省略して転記していますので正確ではありません。
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アメリカへの従属的一体化

 FMS調達は近年急増しています。2年つづいて4,000億円を超えていますが、2018年度の調達見込も4,036億円となっています。トランプ政権は対日貿易赤字削減のために日本に高額の兵器購入をせまっていますから、ますます増える可能性があります。
 しかし、問題は貿易赤字という経済的な問題だけでなく、軍事的に日本がアメリカへ従属的に一体化されるという大きな問題があります。アメリカからハイテク兵器を導入すれば、アメリカの指導を受け、アメリカの上位の軍事システムにより強く組み込まれることになりますから。
 軍事技術の点でも、前回のブログ「三菱重工 軍需部門の新戦略」でも見ましたように、アメリカへの従属が進んでいます。報道によれば、「日米両政府は弾道ミサイル防衛を担うイージス艦向けの次世代レーダーを共同開発する検討を始め」ました(2018年7月6日 日経)。これは、「北朝鮮や軍備を増強する中国を念頭にミサイル防衛網を強化する。迎撃システムの根幹に関わるレーダーでの協力は日米同盟が新たな段階に入ることを示す」とも指摘しています。

   日本共産党三菱重工広製支部 2018年7月6日

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