2018年9月14日 (金)

膨張し続ける軍事費 敵基地攻撃可能兵器も

 防衛省の2019年度予算の概算要求は5兆2986億円。安倍政権になって急膨張して過去最大を更新しています。概算要求のおおよその中身が「我が国の防衛と予算 平成31年度概算要求の概要」に出ていますので、主な点を見ておきたいと思います。

 
「平成31年度概算要求の考え方」(p.1)

 冒頭で「本年中に予定される防衛計画の大綱の見直し及び次期中期防衛力整備計画策定にかかる省内の検討状況を踏まえ」と安倍政権の軍拡方針を先取りして予算要求していることを明らかにしています。
 つづいて、「厳しい安全保障環境の中・・・防衛力を大幅に強化する」と、米朝会談・南北会談など平和への動きにはいっさい触れず、平和への期待もしない「考え方」が書かれています。
 
「概算要求の考え方」(p.2)

 ここでは、「陸・海・空という従来の領域にとどまらず、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域の活用が死活的に重要になっている」として、新しい領域(宇宙・サイバー・電磁波)での軍事強化を掲げています。
 これまでの「海空領域の能力強化」では、「脅威圏外からの対応」が新しく掲げられました。「脅威圏外」とは敵からの攻撃を受けない所ですから、遠く離れた所から長距離巡航ミサイル(後述のスタンド・オフ・ミサイル)などで敵基地を先制攻撃することも可能になるということです。
 さらに「弾道・巡航ミサイル攻撃対処能力の強化」と何が何でも陸上配備型イージス・システム(イージス・アショア)を導入しようとしています。
 
「防衛関係費」(p.3~)

 p.3の下の方に「新規後年度負担」が書かれていますが、その額が2兆5141億円と巨額になっています。今後何年もかけて税金から払うことになります。
 p.4に「総額の推移」がグラフで示されていますが、安倍政権になってから「防衛関係費」の急膨張が連続していることがよくわかります。
 p.5からは、具体的な事項と金額が出ています。その中から注目しなくてはならないと思われるところをピックアップしてみます。
 
1 新領域の能力強化(p.5~)

(1)宇宙領域の能力強化
 ・宇宙状況監視(SSA)システムの取得(268億円)など
 先行している米軍と「連携」して宇宙の監視と宇宙から地上の監視をするものです。トランプ政権の宇宙軍創設という方針に沿っているのかもしれません。
(2)サイバー領域の能力強化
 ・サイバー体制の充実・強化(約150名→約220名)など
 通信ネットワークのかく乱は軍事だけでなく国民生活の破壊にもなりますが、すでに米軍との間で「日米サイバー防衛政策ワーキンググループ」などの形で進められています。
(3)電磁波領域の能力強化
 これには電磁波攻撃からの防御という面もありますが、電磁波による攻撃は敵基地攻撃の一つでもあります。
 
電磁波攻撃

 今年の初めに次のような報道がありました。
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 政府は電磁波を使って敵の防空網や指揮通信システムを無力化する電子戦用の攻撃機を導入する検討に入った。米ボーイング社の「EA18G」などを候補とし、2018年末に改定する中期防衛力整備計画(中期防)に盛りこむ方向だ。地上の標的も狙えるため、敵基地攻撃能力の保有を巡る議論にも発展しそうだ。
 電子攻撃機は大量の電磁波を送り込み、敵の通信網やレーダーを機能不全にする。日本周辺では中国軍が電子戦などを担当する「戦略支援部隊」を新設し、電子攻撃機の配備を進めている。日本も中国軍の航空機や艦船が日本周辺に展開するのを阻む「接近阻止・領域拒否(A2AD)」戦略の一環に活用し、防衛能力を高める。
 現在、防衛省は電波情報を集める測定機や訓練機をもつが、攻撃機は保有していない。EA18G(通称グラウラー)は大量の電波を発射する装置をもち敵のレーダーを壊すミサイルも備える。(日経 2018年1月1日)
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2 海空領域の能力強化(p.9~)

 ここにも敵基地攻撃に使える兵器が書かれています。
 ・戦闘機(F-35A)の取得(6機:916億円+整備用器材等475億円)
 ・スタンド・オフ・ミサイルの取得(73億円)
 「相手の脅威圏外(スタンド・オフ)から対処できるF-35Aに搭載するスタンド・オフ・ミサイル(JSM)の取得」という説明がついています。
 
3 弾道・巡航ミサイル攻撃対処能力の強化(p.14)

・陸上配備型イージス・システム(イージス・アショア)の整備(2基 31年度計上額:2,352億円)
 ここには北朝鮮とは明記されていませんが、「ロフテッド軌道への対応能力等」と北朝鮮への対応であることがわかります。
     ◇
 注目しなくてはならない点がまだたくさんあると思いますが、割愛させていただきます。なお、「主要な装備品等」がp.45~に出ています。
 冒頭にも書きましたが、(1)安倍政権になって軍事費の急膨張が続いています。(2)敵基地攻撃可能な兵器の導入が進められようとしています。
 トランプ政権が今年1月に策定した「国家防衛戦略」は中国とロシアを軍事的な主要脅威としています。上記で見た新領域(宇宙・サイバー・電磁波)での軍事強化や「脅威圏外からの対応」はトランプ政権の戦略に呼応したものと思われます。安倍政権はトランプ政権に追従するとともに、アメリカと一緒に海外で戦争できることを目指していると言えるのではないでしょうか。
 
   日本共産党三菱重工広製支部 2018年9月14日 

2018年8月31日 (金)

日経ビジネスの三菱重工特集

  日経ビジネス(2018.08.27)が「三菱重工 巨艦はこうして蘇った」という20ページにわたる特集記事を掲載しました。中を見ますと、「20年に及ぶ経営改革が着実に実を結びつつある」という好意的な見方で経営方針や事業の状況が書かれています。
 特集記事が「経営改革」の起点を20年前に置いている理由を宮永社長が次のように説明しています。「日本は戦後の復興期から高度成長期にかけて、国が長期計画を作ってインフラ整備や産業基盤を整えてきました。それらに役立つ重機械を作ってきた三菱重工にとっては、需要の予測がしやすく、それに合わせて人材教育や技術開発を進めることができた。欧米などから導入した技術を改良し、ある程度の技術力を確保できれば、うまくやれたのは事実です」。「そうした中で、事業所が強い体制は社内で健全な競争を生み出し、需要に応えてきました。ただ、日本の社会インフラが成熟してくると、我々のこれまでの役割は小さくなっていった。商習慣、言語も違う世界に打って出なければいけなくなったのです。そういう競争の環境が変わった時に、適応できるような体制になっていなかった。それが問題だったのです」。
 事業を取り巻く環境の変化を経営者として的確にとらえていると思いますが、国内産業の空洞化を意に介さず世界に打って出た20年と言えるのではないでしょうか。しかも、この20年の間に三菱重工の経営方針は大きく変化していますから20年間を一本調子で見るのではなく、もっとよく見る必要があると思います。

「分社化の嵐」作戦

 三菱重工のホームページに掲載されている過去の事業計画を見てみますと、「2010事業計画」で初めて「自前主義脱却」として「積極的事業分離・吸収」をかかげました。

 2010年には三菱重工コンプレッサ(株)を設立、分社化しています。これが最初の業績不振でない事業の分社化でした。これについて当時の日経ビジネス(2011.04.04)は、宮永副社長(現社長)が大宮社長の全面的な支援を受けて、「分社化の嵐」作戦を展開していることを伝えました。その中で、分社化の狙いについて宮永副社長(現社長)は、「三菱重工の社員には、分社化などで本当の危機感を持たせることが必要だ」とも言っていました。
 実は、この日経ビジネスの記事こそ、「三菱重工を分析する」のブログを書いて本当のことを知らせなくてはならないと私たちを突き動かすきっかけになりました。
 こうして三菱重工の分社化は、2010年を境にすっかり様子が変わりました。それまでの分社化が業績不振の事業を切り離すためにやられてきたのに対して、2010年以降は資本効率の向上を徹底的に追い求めるための分社化です。中でも、広島地区は最も早くすべての事業が分社化されました。
 一方、三菱重工の「グローバル化」はもっと前から始まっていました。

事業本部制と資本効率向上

 三菱重工は、1964年の3重工合併以来、事業本部と事業所のそれぞれが権限を持つ2本立ての組織運営をとってきました。
 2011年には「柔軟で機動的な事業運営体制の確立」のためとして事業本部制に移行し、同時にROE(自己資本利益率)の向上を打ち出しました。これは、資本効率向上を第一義とする株主資本主義宣言でした。

ドメイン制と事業格付制度

 2012事業計画では「事業規模の拡大」のために、「シナジー発揮」ができる組織として「顧客・市場を重視した」ドメインに組織を再編し、同時に、すべての事業を64のSBU(戦略事業単位)に分けて、SBUごとに「戦略的付加価値(事業性と効率性を合わせた価値評価基準)」を割り出して「事業の選択と集中の判断材料」とする方針を打ち出しました。株主偏重はさらに深まったといえるでしょう。

時価総額を重視

 今年の5月に発表した「2018事業計画」では、売上:総資産:時価総額の比率を1:1:1とする目標をかかげて株価の時価総額を重視する方針を打ち出し、株主偏重が極まった感じさえします。

日経ビジネスの三菱重工特集に書いてないこと

 この20年、三菱重工にとっては安い労働力、原材料、新しい市場を求めて世界に打って出た20年でした。そのために、経営環境に合わせて三菱重工の経営者が考え方を変えたり、事業の立て直しや切り出しをしてきたことが三菱重工特集に書いてあります。
 一方、書いてないことは、大企業が世界に打って出ることによる国内産業の空洞化です。それから、大企業の多くが株主資本主義へと変化したことも書いてありません。これら2つは、日本の経済的困難と国民の貧困化・格差拡大の要因になっています。
 さらに、この三菱重工特集に書いてないことは、三菱重工で働いている人たちのことです。組織再編や分社化は職種変更や勤務地変更を伴います。その上、海外に労働力を求めることによって、自己都合退職に追い込まれた人や家族と別れて単身赴任をしている人がたくさんいるはずです。人生を狂わされてしまった人もいるかもしれません。非正規の人たちは一顧だにされずに追い出されたことでしょう。下請けで働いている人たちも苦労を強いられていることでしょう。

   日本共産党三菱重工広製支部 2018年8月31日

2018年8月17日 (金)

時価総額を重視する経営方針

 時価総額は、その時の株価の合計(株価×発行済株数)です。三菱重工の場合、発行済株数は約3.37億株で、8月16日午前11時30分時点で株価は4129円でしたから、この時の時価総額は約1兆3900億円となります。
 三菱重工が時価総額を重視する経営方針は、今年5月、「2018事業計画」の中で「TOP比」という名前で打ち出されました。この方針は時価総額を重視すると直接言ってはいませんが、現実には時価総額の向上が大きな課題にならざるを得ません。

TOP比とは

 TOP比とは(TOP:Triple One Proportion 訳:3つの1という比率)、売上:総資産:時価総額の比率を1:1:1と目標設定することを意味しています。三菱重工独自の考え方ですが、なぜ1:1:1が良いのか具体的な説明はありません。
 現在の時価総額は約1兆3900億円ですから、昨年度の売上と昨年度末時点の総資産を並べますと、TOP比は次のようになります。
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          現在のTOP比
      売上          総資産       時価総額
 4兆0856億円    5兆2487億 円    1兆3900億円
         1      :    1.28          :  0.34
      -----------------------------

第1四半期決算に今年度見通しのTOP比

 三菱重工は、2018年8月3日に発表した第1四半期(2018年4月~6月)決算説明資料の中で、今年度見通し(2019年3月末時点)のTOP比を書いています(p.13)。ただし、MRJ投資(900億円)を除外した「定常収益におけるTOP比」というもので、実際のものではありません。

      -----------------------------
   2018年度見通しの「定常収益におけるTOP比」
      売上   総資産   時価総額
     4.2兆円  5.1兆円   2.8兆円
      1     :  1.2    :  0.7
     -----------------------------

 この時価総額の予想は、2018年度の純利益を1700億円と予想し、その16.7倍がほぼ時価総額だとしています(1700億円×16.7=約2.8兆円)。
 同じ算定式で、実際にありそうな、MRJ投資(900億円)を除外しない場合の時価総額を計算しますと、(1700億円-900億円)×16.7=約1.34兆円となって、TOP比は次のようになります。
    -----------------------------
   2018年度見通しのMRJ投資を除外しないTOP比
        売上     総資産     時価総額
       4.2兆円    5.1兆円     1.34兆円
          1      :  1.2       : 0.32
    -----------------------------

意味のない時価総額算定式

 時価総額を純利益の16.7倍と算定して話を進めてきましたが、三菱重工は今年度から国際会計基準(IFRS)を適用していますので、ここでちょっとわかりにくい話をしなくてはなりません。
 国際会計基準(IFRS)適用前、ということは日本基準の2017年度の当期純利益は704億円でした。ところが、国際会計基準(IFRS)を適用して2017年度の当期純利益を求め直すと△73億円と赤字だったと「第1四半期決算説明資料」(p.12)で公表しています。ということは、同じ算定式を当てはめると昨年度の時価総額はマイナスというあり得ないことになってしまいます。会計基準の違いで利益は大きく異なります。

 
算定式はどうやって求めた?

 時価総額の予想値を純利益の16.7倍とした根拠は示されていませんが、上記「現在のTOP比」の時価総額(1兆3900億円)を16.7で割ると832億円となって、上記「2018年度見通しのMRJ投資を除外しないTOP比」で見た純利益(1700億円-900億円=800億円)に近くなりますから、三菱重工の場合、考え方によっては時価総額は純利益の16.7倍というのはだいたい現状にあっているのかもしれません。

日本の株価は公的資金に支えられています

 しかし、株価は企業の利益だけで決まるものではありません。景気の動向や外国為替の変化や、もろもろのことが影響します。その上、よく注意しなくてはならないのは、現在の日本の株価は公的資金に支えられているということです。
 「アベノミクスによって国内株式市場に投入されている公的資金の時価総額が6月末時点で66兆5000億円に達している」ことを赤旗(2018年8月8日)が伝えています。その内訳は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が40兆4000億円程度、日銀が26兆1000億円程度と推計され、その額は、東証1部の時価総額の10.3%程度という大きさだそうです。もし、公的資金が株式市場から引上げられたら株価は暴落するでしょう。
 算定式が現状にあっているとしても、現状の株価は公的資金に支えられた虚構の株価です。
     ◇
 時価総額を経営目標の中心に入れる経営方針は、経営努力だけではどうにもならないところがあるやりがいのない経営方針です。時価総額に一喜一憂する株主におもねる経営方針でもあります。

   日本共産党三菱重工広製支部 2018年8月17日

2018年8月 3日 (金)

高速炉開発にブレーキ

6月にアメリカ政府が、日本が保有するプルトニウムの削減を求めてきたことからプルトニウム保有問題がクローズアップされました。
 プルトニウムは、原発の使用済核燃料を再処理して取り出すことができます。そのプルトニウムを燃料とする高速炉の開発を多くの国が目指してきましたが、技術的困難と経済的に成り立つ見通しが立たないことから、アメリカ・イギリス・ドイツは開発途中で撤退しました。
 高速増殖炉「もんじゅ」も高速炉の一種ですが、「もんじゅ」が破たんし、廃炉が決定されたあとも安倍政権は高速炉の開発に固執しています。高速炉ができないとプルトニウム保有問題が解決せず、原発から全面撤退しなくてはならなくなるからでしょう。
 安倍政権の高速炉開発の方針は、「もんじゅ」の破綻・廃炉決定後は、フランスの高速炉開発計画(ASTRID)に参加して、そこから技術情報を得ながら進めようとしています。そのために開発方針案の検討・策定作業を進める高速炉開発会議を発足させました。

高速炉開発会議の状況
 

高速炉開発会議は、2016年12月の第4回会合で「高速炉開発の方針」を決定し、その方針を具体化するために「戦略ワーキンググループ」を発足させました。そこまでは昨年4月のブログ「今後の高速炉開発と三菱重工」でお知らせしましたので、今回はその後どうなっているかを見ておきたいと思います。
 なお、高速炉開発会議には三菱重工も参加して積極的な役割を果たそうとしています。

戦略ワーキンググループとは

 戦略ワーキンググループの目的は、「我が国の高速炉開発を進めるにあたって、今後10年程度の開発作業を特定する「戦略ロードマップ(仮称)」の策定に向けて、実務レベルで技術的な検討を行う」とされています。
 構成メンバーは、経産省・文科省・三菱重工・電気事業連合会・日本原子力研究開発機構の「実務レベル」で、三菱重工からは原子力事業部長などが出席しています。
 目的の「戦略ロードマップ」ですが、高速炉開発は技術的に困難だけでなく、たとえ実現しても経済的に成り立たないと言われていますから、そのような計画を具体化するのは並大抵なことではありません。そのことは当事者が一番よく知っているのではないでしょうか。それを思うと、単に「ワーキンググループ」と言わずに「戦略ワーキンググループ」と言い、「ロードマップ」を「戦略ロードマップ」と言うのは何か意味深なものがあるような感じがしてきます。

開催状況

 戦略ワーキンググループの会合は、2017年3月30日に第1回が、2018年7月26日に第11回会合が開催されました。これまでの議題は「有識者からのヒアリング」と、中国・ロシア・インド・アメリカ・フランスにおける高速炉開発の状況などが中心で、まだ具体的なロードマップの話にはなっていないようです。

ASTRIDが計画縮小

 戦略ワーキンググループの第10回会合(2018年6月1日)で「仏国の高速炉開発の状況について」が議題となりました。
 日本は、フランスの高速炉(実証炉)を開発するASTRID計画に協力して、基本設計を終える2019年までの共同研究をフランス政府と合意していますが、最近になってフランス側がこの計画を大幅に縮小する方針を明らかにしました。縮小する理由を戦略ワーキンググループの第10回会合でフランスの原子力・代替エネルギー庁の担当者が説明しています。
 これについて日経(2018年6月29日)は「高速炉開発にブレーキ 仏政府が共同事業で縮小表明 核燃料サイクルに影響も」という記事を書いています。

高速炉は高コスト

 「第10回戦略ワーキンググループ 議事要旨」にはコストについても出ています。

 日本側からASTRID計画について「現時点で、安全性や信頼性のターゲット、コストターゲット等想定しているものがあれば伺いたい」という発言にフランス側からは、まだ示すことができないと回答しています。
 会議ではこのあと日本原子力研究開発機構の佐賀山理事長シニアアシスタントが技術評価などに関する配布資料を説明した後、次のように発言しました。「ナトリウム冷却炉の実用化が世界的に遅れている理由はコスト。今後信頼性を向上させるとともに、さらにコストを下げていくことが必要」。 信頼性向上とコスト低減を同時に追求するのは難しいことです。現在の原発の場合、福島の事故後は安全性向上のために何倍も建設費がふくらんでいます。

放射性廃棄物は残ります

 高速炉は、完成すると発電しながら高レベル放射性廃棄物を減容化し有害度を低減します。日本の場合は、この高レベル放射性廃棄物の減容化と有害度の低減が第一の目的と言われていますが、決してゼロになるわけではありません。減容・低減してもまだ残りますから、後世にツケを回すことになります。
 高速炉の運転中に放射能漏れの事故を起こす危険も当然あります。現在の軽水炉に比べると、高速炉はナトリウムを冷却材として使用するために事故発生の危険は一層大きいと考えられます。
 経済性の点でも、高速炉は現状では成り立たないことを当事者が認めています。
 現在の軽水炉でさえ既に成り立たなくなっています。三菱重工が受注を目指しているトルコの原発建設計画は「建設費が想定の2倍近くとなるとの見通し」となったのではないか、そのため「トルコ側は計画に難色を示している」のではないかと伝えられています(日経 2018年8月2日「トルコ原発に暗雲 三菱重工、建設費2倍 報告書を提出」)。
 三菱重工が、原発から一日も早く手を引くことを願わざるを得ません。

   日本共産党三菱重工広製支部 2018年8月3日

2018年7月22日 (日)

三菱重工の株主の変転

 2017年度の有価証券報告書が公表されましたので、過去の有価証券報告書と比較して三菱重工の株主がどのように変化してきているかを見ておきたいと思います。

株主の分類

 三菱重工の「有価証券報告書(平成29年度)」のp.44に株式の「所有者別状況」として、所有者の種別ごとに株主数、所有株式数、所有割合が出ています。所有割合が大きいものを過去にさかのぼって見てみます。

           三菱重工の株式の所有者別状況
                    1990年3月 2000年3月 2010年3月 2018年3月
金融機関 株主数      562社   397社      263社    196社 
      所有割合        46.5%    37.3%     32.53%    29.75%
 
その他    株主数     4,673社  2,943社  2,973社  2,217社
の法人  所有割合      11.3%    10.1%   9.67%   8.24%
 
外国法人 株主数     1,027社   741社   585社   698社
        所有割合      17.9%    21.3%  19.49%  27.93%
 
国内個人 株主数   291,517人 314,802人 364,651人 256,286人
     所有割合         25.0%    30.7%    36.74%   28.80%
(注)所有割合の小さいものを省略していますので、合計は100%になりません。
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 この表から次のことが言えます。
(1) 国内の「金融機関」と「その他の法人」は株主数・所有割合ともに減少を続けています。これは企業グループ内で株式の持ち合いをしなくなっていることが大きく影響しているのではないでしょうか。
(2) 「外国法人」の「所有割合」は、2010年3月に減少していますが、これはリーマンショックの影響と思われます。リーマンショック直後の2009年3月には606社・16.50%まで減少しています。その後の急速な増加はアメリカなどでふくらんでいる金融資産が利益を求めて流れ込んでいるのではないでしょうか。
(3) 「国内個人」については、合計の「所有割合」は大きいですが、人数が「金融機関」の1000倍以上いますから、個々人の「所有割合」は微々たるものと言えます。

大株主

 三菱重工の「有価証券報告書(平成29年度)」のp.45には「大株主の状況」が出ています。大株主は経営方針に口出ししてくる可能性があります。
 これも過去にさかのぼって見てみます。有価証券報告書は大株主として10人(10社)を表示していますが、ここではトップの3人(3社)の名前と所有割合、10人(10社)合計の所有割合を抜き出してみます。
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 1990年3月の大株主と所有割合
三菱信託銀行            6.8%
三菱銀行                3.6%
明治生命保険            3.0%
・大株主10人(10社)の合計 26.1%
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 このころは株式の持ち合いが続いていましたからトップは三菱系列で占められていました。
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 2000年3月の大株主と所有割合
東京三菱銀行           3.7%
明治生命保険           3.5%
ザ チェースマンハッタン
 バンク エヌエイ ロンドン   2.8%
・大株主10人(10社)の合計  24.1%
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 1990年代に金融に関する規制緩和(金融ビッグバン)が進行して、大きな変化が始まったことが伺えます。
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 2010年3月の大株主と所有割合
日本トラスティ・サービス
 信託銀行株式会社信託口     4.60%
日本マスタートラスト
 信託銀行株式会社信託口     3.91%
野村信託銀行株式会社退職給
 付信託三菱東京UFJ銀行口    3.72%
・大株主10人(10社)の合計       21.52%
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 日本トラスティ・サービス信託銀行は、三井住友トラスト・ホールディングスとりそな銀行が出資して、2000年に設立されました。
 日本マスタートラスト信託銀行は、三菱UFJ信託銀行株式会社、日本生命保険相互会社などが出資して2000年に設立されました。
 どちらも企業・団体から従業員の退職年金給付にあてる資金の管理・運用の業務などをおこなっています。信託とは他人(他社)のお金や株式などを預かって管理・運用することを言います。
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 2018年3月の大株主と所有割合
日本マスタートラスト
 信託銀行株式会社(信託口)    4.89%
日本トラスティ・サービス
 信託銀行株式会社(信託口)    3.44%
明治安田生命保険            2.37%
・大株主10人(10社)の合計      22.63%
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 30年近く前・1990年の頃と比べますと、三菱重工の大株主はすっかり様変わりしていることがわかります。他の大企業も同じような傾向が見られます。川崎重工もIHIも大株主のトップの方には、日本トラスティ・サービスや日本マスタートラストが出ています。このような大株主は、他人(他社)から預かっているお金を運用するために配当や株価の値上がりを求めて、こっちの株を売ってあっちの株を売るなど移り変わります。企業の事業内容や働いている人たちには関心がなくて、この企業は当面どれくらいの利益が出るか、株価と配当はどうなるかということだけに関心があります。
       ◇
 株式会社は株主のものと言う株主偏重の経営はアメリカ発祥ですが、安倍政権は「日本企業の稼ぐ力を取り戻す」として、コーポレートガバナンスの強化など株主偏重の旗振りをしています。安倍政権にとって株価は支持率と直結しているからでしょう。
 市民と野党の共闘で安倍政権を倒す闘いは、三菱重工の株主偏重主義をやめさせて働く人たちを大切にすることにもつながっているようです。

   日本共産党三菱重工広製支部 2018年7月22日

2018年7月 6日 (金)

軍需生産 国内の上位企業の状況

 防衛装備庁から「中央調達における、平成29年度調達実績及び平成30年度調達見込」が発表されましたので、最近の状況を整理しておきたいと思います。

 資料は、過去のものを含めて、防衛装備庁のホームページを「調達・公募情報」→「中央調達」→「中央調達トップページ」→「調達情報の公表」→「調達実績及び調達見込(中央調達分)」と進むと出てきます。インターネットで「調達実績及び調達見込」を検索することもできます。
 中央調達とは何か?「中央調達の概況 平成29年版」に出ています。
 それを見ますと、「防衛装備庁においては、自衛隊の任務遂行に必要な装備品等及び役務で大臣の定める主要なものの調達を一元的に実施しており、これを中央調達と呼んでいます」。 ここで「装備品等」とは、火器、誘導武器、電気通信、船舶、航空機、車両、機械、弾火薬類、食糧、燃料、繊維及びその他の需品と説明されています(p.13)。中央調達でないものは地方調達と呼ばれています。

中央調達の実績(過去3年間/単位:億円)
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              2017年度  2016年度  2015年度  合計  比率(注)
三菱重工       2,457       4,532      1,998    8,987   17.2%
川崎重工       1,735        994      2,778    5,507   10.5%
日本電気       1,177        905       739    2,821     5.4%
三菱電機        957        767      1,083    2,807     5.4%
富士通          479        783       364    1,626     3.1%
IHI               100        355        1,147    1,602     3.1%
東芝(注)         632        348        573    1,553     3.0%
FMS調達       3,808       4,797       4,405   13,010    24.9%
年間調達額    15,764     18,397       18,126   52,287    100.0%
 (注)比率は、年間調達額に対する比率です。
 (注)東芝については、2017年度は東芝インフラシステムズ(2017年7月 株式会社東芝から分社)としてのデータです。
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FMS調達とは
 「中央調達の実績」の中でFMS調達がダントツですが、これは企業名ではありません。アメリカからの兵器購入です。
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 FMS調達は、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定」に基づいて、 装備品等及び役務を日米両政府間の直接取引によって調達するものです。この調達においては、取引の条件、手段等が、米国政府の方針、規制等に従って定められていることがあり、 一般的な商取引による契約とは性格を異にしています。
  「中央調達の概況 平成29年版」p.31
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「取引の条件、手段等が、米国政府の方針、規制等に従って・・・」とは、アメリカの言いなりということです。「対価は前払いに限られ、納期が年単位で遅れることもあり、価格は当初は見積もりということもあり支払い時は高騰することもあるなど・・・」(ウィキペディアより)。

企業別の主な調達品

 各社はどんな兵器を作っているのか、過去3年間の中から金額の大きいものを取り出してみました。
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三菱重工 地対空誘導弾ペトリオット     1式 1,867億円
         SH-60K哨戒ヘリコプター   17機  619億円
         潜水艦                    1隻  456億円
 
川崎重工 固定翼哨戒機(P-1)        20機 2,073億円(*1)
         C-2輸送機                3機  491億円
        輸送ヘリコプターCH-47JA    6機  445億円
 
日本電気 Xバンド衛星通信中継器等    1式  112億円
         可変深度ソーナーシステム     1式   85億円
          広帯域多目的無線機       1式   47億円
 
三菱電機 03式中距離地対空誘導弾   1式  310億円
              シースパローミサイル     1式  138億円
           99式空対空誘導弾         1式  162億円
 
IHI 固定翼哨戒機のエンジン             80個  708億円(*2)
    SH-60K用エンジン              34個  119億円
    戦闘機用エンジンの研究試作       1式  141億円
 
富士通 防衛情報通信基盤             1式  106億円
      ネットワーク監視器材の借上       1式    60億円
 
東芝  基地防空用地対空誘導弾        1式  165億円
         電波監視装置1号機           1式    83億円
 
FMS調達 戦闘機(F-35A)                1式  940億円(*3)
          ティルト・ローター機             1式  709億円(*4)
    E-2D早期警戒機の取得            1式  248億円
 
(*1) 2015年度にまとめ買いの契約がありましたので、この年の中央調達の金額は川崎重工が三菱重工抜いてトップになりました。
(*2) 川崎重工の固定翼哨戒機(P-1)20機に付けるエンジンです。
(*3) 戦闘機(F-35A)は、2015年度に1,065億円、2016年度に1,091億円、2017年度に940億円の契約をしています。
(*4) ティルト・ローター機とはオスプレイのことです。2015年度に585億円、2016年度に754億円、2017年度に709億円の契約をしています。
(注)字数の多い品名などは省略して転記していますので正確ではありません。
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アメリカへの従属的一体化

 FMS調達は近年急増しています。2年つづいて4,000億円を超えていますが、2018年度の調達見込も4,036億円となっています。トランプ政権は対日貿易赤字削減のために日本に高額の兵器購入をせまっていますから、ますます増える可能性があります。
 しかし、問題は貿易赤字という経済的な問題だけでなく、軍事的に日本がアメリカへ従属的に一体化されるという大きな問題があります。アメリカからハイテク兵器を導入すれば、アメリカの指導を受け、アメリカの上位の軍事システムにより強く組み込まれることになりますから。
 軍事技術の点でも、前回のブログ「三菱重工 軍需部門の新戦略」でも見ましたように、アメリカへの従属が進んでいます。報道によれば、「日米両政府は弾道ミサイル防衛を担うイージス艦向けの次世代レーダーを共同開発する検討を始め」ました(2018年7月6日 日経)。これは、「北朝鮮や軍備を増強する中国を念頭にミサイル防衛網を強化する。迎撃システムの根幹に関わるレーダーでの協力は日米同盟が新たな段階に入ることを示す」とも指摘しています。

   日本共産党三菱重工広製支部 2018年7月6日

2018年6月22日 (金)

三菱重工 軍需部門の新戦略

平和へのプロセスの中で

 米朝首脳会談によって平和へのプロセスが始まりました。それは安倍政権の軍拡志向にも、三菱重工の軍需部門の戦略にも何らかの影響を及ぼさざるを得ないでしょう。しかし、安倍政権は別の問題を持ち出して軍拡を合理化するかもしれません。なぜなら、これでアメリカの侵略性が一路後退するとは言えないようですから。西川純子氏(獨協大学名誉教授)は、次のように述べておられます。
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 「『2018年国家防衛戦略』において、アメリカの繁栄と安全を脅かす仮想敵国と断定されているのは、中国とロシアである」。「アメリカにとっての最優先課題は中国とロシアの軍事力をいかに凌駕するかであり、それに比べれば、軍事力において各段に劣る北朝鮮やイラン」などは「物の数ではないのである」。
(月刊「経済」6月号「軍拡の大義と核戦力の見直し-トランプの新国防戦略に見る-」p.32より)
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 トランプ政権は宇宙軍の創設を指示しました。もし宇宙が戦域になったらどんなことが起こるか、・・・。とはいえ、米朝首脳会談によって始まった平和へのプロセスが前進すれば世界の平和にも大きな影響を及ぼすに違いありません。
 そのような変化の中ですが、今回のブログでは最近発表された三菱重工の軍需部門の戦略を見ておきたいと思います。

事業戦略説明会

 三菱重工の軍需部門は昨年4月から「航空・防衛・宇宙ドメイン」に含まれています。ドメインの中の「航空」は民間航空機の分野で、MRJ(三菱リージョナルジェット)も含まれています。「宇宙」には民需も含まれますが軍需としての色彩は濃く、先日打上げられたH2Aロケットは、事実上の偵察衛星である情報収集衛星の軌道投入に使われました。そのため、「宇宙」も軍需部門に含めて、「防衛・宇宙」部門の事業戦略を見ることにします。
 新しい事業戦略は6月5日に開催された「航空・防衛・宇宙ドメイン事業戦略説明会」の説明資料に出ています。その中の「4. 防衛・宇宙セグメント」を中心に見ていきたいと思います。

事業規模の拡大計画

 先ず、事業規模を表す売上高の現状と計画は次のとおりです。
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                 航空・防衛・宇宙  その内防衛・宇宙
                 ドメインの売上高  の売上高(推定)
2017年度(実績)   7,229億円          約4,800億円
2020年度(計画)   7,200億円          約5,000億円
 (注)推定は、掲載されているグラフから行いました。
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 このように軍需部門の事業拡大を狙っていますが、当面急速に拡大させる計画ではなく、着実に前進しながら「次の拡大ステップへの準備」をしているようです。

3つの成長戦略

 2018事業計画の期間(2018~20120年度)の戦略として3つの成長戦略をかかげています。
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   3つの成長戦略
成長戦略① 国内既存分野・周辺分野の拡大
成長戦略② 海外事業拡大
成長戦略③ デュアルユース展開事業の確立
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 ここで昨年度の「航空・防衛・宇宙ドメイン事業戦略説明会」(2017年6月12日)を振り返ってみますと、これとよく似た3つの成長戦略をかかげていますが、順序が違っています。今回トップにかかげている「成長戦略① 国内既存分野・周辺分野の拡大」の重要性が増したようです。

成長戦略① 国内既存分野・周辺分野の拡大

 この中の(1)「既存分野」には「次期基幹事業の着実な立ち上げ」という基本方針を示して、具体的には次の2点をかかげています。
・「MSEミサイルの確実な製造・納入」
・「イージスアショアとMSE等を統合化してBMD能力向上を図る事業提案」
 MSEミサイル(ミサイル部分強化型のミサイル/Missile Segment Enhancement)は、パトリオットミサイルPAC-3の機能向上型です。アメリカで開発され、日本では三菱重工がライセンス生産をしています。2016年度に防衛省からまとめ買いの発注を受けましたので、「確実な製造・納入」によって売上げと利益を実現しようとしているようです。
 次に、このMSEとイージスアショアの統合を提案しています。イージスアショアはイージス艦に搭載されている迎撃ミサイルのシステムを地上に配備するものです。北朝鮮からの攻撃の心配が後退する中で、秋田県と山口県への配備を執拗に進めようとしています。

次期基幹事業

 三菱重工の軍需部門はこれらを「次期基幹事業」としていますが、弾道ミサイル防衛(BMD)にはばく大な費用がかかる上に、飛んでくる弾道ミサイルを100%落とせる保証はないので、いつまでも「BMD能力向上」が続くことになります。もし提案どおりに進められることになれば、三菱重工は政府(防衛省)から長期にわたって多額の予算を引き出すことになります。それは、三菱重工にとって「次期基幹事業」にふさわしいかも知れませんが、「平和へのプロセス」に逆行するものであり、不必要になる可能性もあります。このような事業に注力するのは企業にとってリスクが大きいと言えます。

米軍の兵器の修理

 成長戦略①の(2)「周辺分野」では、
・「駐留米軍のMRO事業に進出」をかかげています。
 MRO(Maintenance, Repair and Overhaul)は米軍の兵器の修理を意味しています。

成長戦略② 海外事業拡大

 ここでは次の2点をかかげています。
・F-35戦闘機
・SM-3共同開発・生産

 F-35戦闘機はアメリカのロッキード社を中心に開発され、日本の自衛隊向けに三菱重工(小牧南工場)で最終組み立てをしています。
 「これからの取り組み」として、次の2点をかかげています。
・機体の着実な納入
・MRO&Uのための整備拠点立上げ準備

 MRO&Uは、修理と機能向上(Maintenance, Repair,Overhaul, and Upgrade)です。アメリカはF-35のアジア太平洋地域の整備拠点を、機体は三菱重工の小牧南工場、エンジンはIHIの瑞穂工場にすることを発表していますから、その立上げ準備を重視しているようです。
 その次の「SM-3共同開発・生産」は、弾道ミサイル迎撃に関するもので、すでに日米共同で進められています。これから「日米共同生産体制下で円滑な量産の開始」をするとしています。日米共同と言っても技術的に重要な誘導部や弾頭はアメリカが握っています。

参考資料

 上記のF-35戦闘機とSM-3共同開発については、防衛装備庁の次の資料に、分担や予算を含めて図解付きで出ています。
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「総合取得改革に係る諸施策について(平成28年度予算案)」(平成28年2月 防衛装備庁)

p.23 F-35A取得関連経費及び製造参画範囲
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成長戦略③ デュアルユース展開事業の確立

 デュアルユース展開とは、軍事技術を民生品に利用することですが、これも海外展開を狙っています。
 

アメリカへの技術的従属

 成長戦略①と成長戦略②に出ているすべての項目が、アメリカ製兵器のライセンス生産・組立て・修理・改良に関するもので、技術的にアメリカへの完全な従属になっています。それが株主偏重路線を歩む三菱重工の軍需部門にとって事業拡大と資本効率向上を確実にもたらすと考えているのでしょう。
 同時にこれは、日本の軍需産業がアメリカの軍産複合体に吸収されつつあることを示しているのかも知れません。

   日本共産党三菱重工広製支部 2018年6月21日

2018年6月 8日 (金)

3重工の決算・内部留保・配当

  日本の大手3重工と言われる三菱重工、川崎重工、IHIの2017年度の決算・内部留保・配当を、各社の決算説明資料と決算短信(決算概要)から整理しておきたいと思います。
 3社とも重工業としてエネルギー・環境、インフラ、航空・宇宙・防衛の部門を有しており、海外売上も多くグローバル化している点で共通です。近年、経営環境が厳しい上に経営上の問題もあって業績は思うように伸びていないようです。それでも内部留保を3社ともに増加させています。
 3社とも株主第一主義の立場に立っていますが、その中でも三菱重工の配当がダントツに大きく、株主第一主義の先頭に立っています。さらに三菱重工は2018年度から国際会計基準(IFRS)を適用しますが、これは海外の機関投資家(ファンドなど)重視の方針なのでしょう。

三菱重工

             2016年度実績   2017年度実績   2018年度計画
 受注高        42,756億円      38,757億円      41,000億円
 売上高        39,140億円      41,108億円      42,000億円
 営業利益        1,505億円       1,265億円        1,600億円
 純利益           877億円        704億円          800億円
 ROE              5.1%        3.9%              4%
 内部留保      14,184億円      14,584億円     -
 配当         120円/株        120円/株        130円/株

 
  (注)ROE:純利益÷株主資本(%)

 (注)内部留保=利益剰余金+資本剰余金 としました。
 (注)株式併合(10株→1株)を実施したため、1株当りの配当は2016年度についても10倍しています。
 (*注)2018年度から国際会計基準(IFRS)を適用しますので、営業利益は2018年度計画については事業利益(営業利益+金融収支以外の営業外損益+特別損益)になっています。2018年度計画のROEは、国際会計基準(IFRS)を適用すると6%と記載されています。
 なお、(*注)以外の(注)は、川崎重工・IHIにも共通です。

 三菱重工はすべての事業を「伸長・維持事業」「変革・縮小事業」「新規事業」に分けて力を入れる事業・入れない事業を明確にしています。
 その中で、「伸長・維持事業」の収益力は安定しているとしています。「伸長・維持事業」には次の事業があります。
  ・火力
  ・ターボチャージャ、冷熱等の量産品
  ・民間航空機
  ・防衛・宇宙 他
 これら合計の売上高は約27,000億円、営業利益は約2,100億円で営業利益率は約8%と発表しています。主力製品である火力は世界的に需要が減少して厳しい状況ですが、利益率は維持しているようです。
 ドメイン別では、売上高はインダストリー&社会基盤ドメインが最も大きいですが、営業利益(事業利益)はパワードメインの方が大きい状態が続いています。三菱重工の中で主役が交代とは言えないようですが、企業の性格が変わりつつあるのかもしれません。

川崎重工
 

              2016年度実績     2017年度実績    2018年度計画
 受注高        13,487億円      16,080億円      15,900億円
 売上高        15,188億円      15,742億円      16,500億円
 営業利益         459億円         559億円        750億円
 純利益           262億円         289億円        470億円
 ROE              6.0%         6.4%             9.7%
 内部留保       3,418億円         3,626億円     -
 配当            60円/株         60円/株       70円/株

 
純利益やROEを見ますと、3社の中では最も順調に行っているようです。しかし、三菱重工のような高配当はしていません。

 売上げ・営業利益のトップは航空宇宙部門です。
 「モーターサイクル&エンジン」部門は、消費者に届ける最終商品を大量生産している点で他の2社にはない特徴を有しています。この部門も堅調なようです。

IHI
  

                    2016年度実績     2017年度実績    2018年度計画
 受注高       13,898億円        15,050億円     15,000億円
 売上高       14,863億円        15,903億円     15,000億円
 営業利益       473億円           722億円       850億円
 純利益            52億円           82億円       320億円
 ROE         1.6%                2.6%
 ROIC         5.0%               7.7%
 内部留保      2,033億円        2,070億円 
 配当         0円/株          60円/株          60円/株

 
経営指標としてROIC(投下資本利益率)を重視しています。

 2016年度は海洋構造物事業で損失が発生して、配当をゼロにしましたが、その後回復傾向にあるようです。
     ◇
訂正とお詫び
 ブログ「新・中期事業計画は株主偏重」(2018年5月11日)に誤りがありました。申し訳ございません。
 このブログで「ROEは、純利益÷株主資本×100ですから、分子の純利益が2000億円から1700億円に減少するにもかかわらずROEを向上させるということは、分母の株主資本を減少させることを意味します。株主資本を意図的に減少させるには、市場から自社株を買い上げて消却することでできます」と書きましたが、株主資本が減少する場合はそれだけではありません。
 株主資本には、株主が払い込んだ資本金のほかに利益を内部留保した利益剰余金なども含まれます。ブログで比較したのは、2015事業計画の目標値と2018事業計画の目標値です。その内、2015事業計画の目標は大きな純利益を続けて利益剰余金も非常に大きくする目標でしたが、結果はそうはいかずに利益剰余金は少なく、今後についてもさほど大きな利益剰余金を目標とすることができないこと、さらにIFRS(国際財務報告基準)を適用するために自己資本(株主資本)が小さくなることもあって、結局、市場から自社株を買い上げなくても株主資本が大幅に小さくなっています。したがって、市場から自社株を買い上げるように書いたのは間違いです。
 なお、事業計画の数値は次のとおりです。
  2015事業計画の目標:純利益2,000億円、株主資本20,500億円、ROE10.2%
  2018事業計画の目標:純利益1,700億円、自己資本(IFRS適用後)16,500億円、ROE11.0%

   日本共産党三菱重工広製支部 2018年6月8日

2018年6月 1日 (金)

日立の原発輸出も難航

今2件の原発輸出案件が動いています。一つは日立がイギリスのアングルシー島に建設するプロジェクト、もう一つは三菱重工がトルコのシノップに建設するプロジェクトです。
 この内、三菱重工のプロジェクトについてはブログ「トルコへの原発輸出 その後」(2018年4月6日)で状況をお知らせし、その後新しい情報は公表されていません。今回は、最近新聞などで報じられている日立のプロジェクトについて状況を整理しておきたいと思います。
 
日立の原発輸出
 
  日立は福島原発事故の翌年・2012年11月に原発輸出を目指して、原発の新設計画を持っているイギリスの電力企業ホライズン・ニュークリア・パワーを買収しました。
 2017年4月には、自社の改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)2基の建設・運営に必要な許可申請をイギリスの原子力規制当局に提出し、2017年12月に包括的設計審査が計画通り完了しました(ニュースリリース 2017年12月14日)。総事業費は3兆円と言われています。
 
総事業費3兆円の捻出
 
  3兆円の捻出について日経(2018年5月11日)は次のように伝えています。
 ・英政府が約2兆円を融資する譲歩案を示した。
 ・日英それぞれの政府・企業連合と日立が各3,000億円ずつ出資する支援案を英政府が示した。
 整理しますと次のようになります。
  日立              3,000億円を出資
  英政府・企業連合   3,000億円を出資
  日本政府・企業連合 3,000億円を出資
  英政府           約2兆円を融資
 
事故時の賠償責任と電力買取りの価格保証

 上記の「日本政府・企業連合 3,000億円を出資」は、どの企業が出資するのか決まっていませんが、3兆円あればそれでいいのかというとそうでもありません。
 日立は事故が発生した時の賠償責任を回避しようとしていますし、事業で確実に黒字が出るように英政府に電力買取りの価格保証を求めています。
 日経は次のように伝えています。
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 日立社内で譲れない条件として浮上しているのが、原子力損害賠償責任の軽減・免除だ。日立は現在、英原発事業の開発会社の全株を保有しているが、段階的に出資を引き下げる方針だ。
 
 英政府による電力の買い取り価格についても引き続き協議する。買い取り価格は事業採算に直結するため、日立側は英政府に長期間にわたる価格保証を求めている。
  (日経 2018年5月29日「日立、事故時の賠償責任が焦点 英政府と原発協議継続」より)
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 日立は原発事業会社であるホライズン・ニュークリア・パワーを買収して全株を保有していますから、このままでは事故時の賠償責任が大きくかかってきます。それを回避するために出資比率を引下げようとしています。
 
原発は経済的にも成り立たない

 このようにイギリスと日本の政府が資金を出して応援してもすんなりとはいきません。原発は危険な上に経済的にも成り立たないと断言できるのではないでしょうか。
 しかし、政府が関与するために企業にとっては確実にもうかる事業になります。価格保証によって利益を得て、損失は両国の国民に負担してもらうことになりますから。
 
インドへの原発輸出交渉を隠蔽

 話が変わりますが、3月26日にインド・ムンバイで開かれた原発輸出に関する作業部会の議事録が「黒塗り」「白ヌキ」されて情報公開要求者に提出されたことを、5月30日の衆院経済産業委員会で日本共産党の笠井議員が告発しました。この作業部会には原発メーカーである日立GEニュークリア・エナジー、三菱重工、東芝エネルギーシステムズも出席しています(赤旗 2018年5月31日より)。
 
   日本共産党三菱重工広製支部 2018年6月1日

2018年5月18日 (金)

わかりにくい「2018事業計画」

  三菱重工の新しい中期事業計画「2018事業計画」が株主偏重であることを前回のブログで見ました。数値目標を見ればそのことがわかりますが、今回は経営の考え方そのものが株主偏重であり、「2018事業計画」はファンドに見せるために作られたのものということを指摘しなくてはなりません。

 社長の顔が、大株主であるファンドの方を向いていて働く者や国民の方を見てはいないので、社長が作った事業計画は働く者や国民にとって大変わかりにくいのではないでしょうか。
 三菱重工のホームページで、「IR情報」→「経営方針」→「中期経営計画」と進みますと、「2018事業計画」の説明資料と説明会動画を見ることができます。説明会動画は決算の説明と「2018事業計画」の説明があります。その内、「2018事業計画」の説明は宮永社長がやっています。

 
TOP比とは
 
  「2018事業計画」のp.11「Ⅱ-2. 基本方針・戦略(1/3)」に「TOP比」という言葉が出ています。その意味をその次のページ(p.12)で説明しています。
 その説明によりますと「TOP比」とは「Triple One Proportion」(訳:3つの1という比率)の略で、その中身は「経営目標(比率)として、売上:総資産:時価総額=1:1:1を設定」と書いてあります。
 これら3つの金額(売上・総資産・時価総額)を同じ規模にするというのが第一にかかげる基本方針・戦略だということです。ただし、「2018事業計画」で一気にその目標に行くのではなくて、中間的な目標をかかげています。
 なお、時価総額とは株価の時価総額(=1株当りの株価×発行株数)です。
 
売上・総資産・時価総額の現状
 
   現状は「15事計実績」として「1 : 1.3 : 0.3」と書いてあります(p.11)。
 これらの数値を確認するために2017年度決算を見ますと、売上は4.1兆円、総資産は5.5兆円です。時価総額を計算するために発行株数を有価証券報告書で見ますと33.7億株(2017年3月末)です。ただし、このときは10株→1株とする前ですから、今では3.37億株になります。最近の株価をインターネットで調べますと、過去1年間における三菱重工の株価は4,000円~4,600円です。そうしますと時価総額は概ね1.3兆円~1.5兆円になります。
 その結果、売上:総資産:時価総額は、4.1兆円:5.5兆円:1.3兆円~1.5兆円となって、概ね「1 : 1.3 : 0.3」であることが確認できます。
 
 「TOP比」の目標
 
   当面する「2018事業計画」の目標は「1 : 1.1 : 0.6」です(p.11)。そして、事業規模(売上)は「5兆円」、総資産は「5.3兆円以下」と出ていますから、時価総額の目標は(5兆円×0.6=)3兆円ということになります。時価総額3兆円を実現するには、発行株数が変わらなければ株価は現状の2倍にならなくてはなりません。3兆円÷3.37億株=8,900円/株ですから。
 「2018事業計画」のあとは1 : 1 : 1を目指すというのですから、そのとき株価は1,500円/株くらい、現在の3倍以上ということになります。
 
実現方法
 
 このような「TOP比」の目標を達成する方法、言い換えれば株価を2倍・3倍にする方法は「成長戦略に基づくポートフォリオの継続的組換え」が第一だと書いています(p.11)。常に成長が期待できる事業に事業の組合せを変えていくということです。そうすることで利益を上げ、その結果、株価が上がるということです。
 これまでもそのような考え方で他社の事業を吸収合併したり、利益率の低い事業を外部に切出したりしてきました。それをこれからも積極的に続けるということです。働いている人たちは職場変更・職務変更と動かされまくる日々が続きます。それに応じることができない人は自己都合退職に。
 
なぜこのような目標?
 
   説明会動画の中で社長は、当面の目標として1:1:1が理想形で、売上は5兆円規模がちょうど良いといっていますが、それ以上の根拠を示していません。さらに社長は、このような考えは、これまで三菱重工にはなじまなかったとも言っています。
 それは当然のことではないでしょうか。株価は自社の業績を反映しますが、自社の努力だけではどうにもならない面もあります。過去1年間における三菱重工の株価が4,000円~4,600円の間を上がったり下がったりしています。三菱重工の業績がそんな変化をしたのでしょうか。株価は、世界の経済の動きにも政治の動きにも左右されます。ファンドは安く買って高く売ることを狙っています。そのような株価をなぜ基本方針のトップに組み込むのか? だれもが疑問を感じるのではないでしょうか。しかし、ファンドは大喜びしているかもしれません。
 ところで、「TOP比」「Triple One Proportion」(訳:3つの1という比率)という言葉をインターネットで検索しても経営関係の用語としては出てきません。きっと英語の得意な社長の自作ではないでしょうか。
 社長が打ち出した新しい基本方針を周囲に納得させるのも大変だったのではないでしょうか。
 
   日本共産党三菱重工広製支部 2018年5月18日

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