2024年4月 5日 (金)

日本の武器輸入は世界第6位に

 
 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は「国際武器移転の動向、2023年」(TRENDS IN INTERNATIONAL ARMS TRANSFERS, 2023)という報告書を発表しました。
https://www.sipri.org/sites/default/files/2024-03/fs_2403_at_2023.pdf
 
米ソ冷戦後に、世界の武器移転は再び増加
 報告書は最初に、過去40年間における世界の武器移転の増減と近年の状況をまとめています。
 そこに示されているグラフを見ますと、世界の武器移転は、米ソ冷戦終結(1989年12月)後に急減し、その後2004年から漸増傾向を示しています。
 
世界の武器輸出の42%はアメリカから
 次に報告書は、直近の5年間(2019-23年)の武器輸出のシェアを、大きい順に25カ国について表にしています。そこでは変化がわかりやすいように、その前の5年間(2014ー18年)のシェアを並べて記載しています。
 武器輸出シェアの上位6カ国は次のとおりです。
2019 2014
-23年 -18年
     1    アメリカ 42 % (34 %)
     2    フランス 11 % ( 7.2%)
     3    ロシア    11 % (21 %)
     4   中国        5.8% ( 5.9%)
     5   ドイツ     5.6% ( 6.3%)
     6   イタリア  4.3% ( 2.2%)
 アメリカの武器輸出が突出していることと、過去5年にシェアを大きく伸ばしていることがわかります。フランス、ドイツ、イタリアもシェアを伸ばしているのに対して、ロシアが大きく後退しています。
 
アメリカからの輸出先
 各輸出国からどこに輸出されているのか、主な輸出先(3カ国)も記載されています。
 アメリカからの主な輸出先は次のとおりです。
  サウジアラビア 15%、 日本 9.5%、 カタール 8.2%
 武器輸出に関する説明の中で、アメリカは直近の5年間に420機の戦闘機を輸出し、その内249機は最新鋭のF-35で、輸出先は10カ国であること、戦闘機の輸出はアメリカの武器輸出全体の重要な部分を占めている、と書いています。
 
日本の武器輸入は155%増加
 報告書は次に、直近の5年間とその前の5年間について、武器輸入の上位40カ国のシェアを表にしています。武器輸入シェアの上位6カ国は次のとおりです。
2019 2014
-23年 -18年
   1   インド            9.8% (9.1%)
   2   サウジアラビア 8.4% (11 %)
   3   カタール         7.6% ( 1.5%)
   4   ウクライナ      4.9% ( 0.1%)
   5   パキスタン      4.3% ( 2.9%)
   6   日本               4.1% ( 1.5%)
 日本は、シェアが1.5%から4.1%へと急増しています。もし、1.5%のままですと20位くらいですが、4.1%になったため6位におどり出ました。
 説明文には、日本の武器輸入は直近の5年間に155%増加(2.55倍化)したと書いてあります。日本の大軍拡は武器の輸入も急増させていることがわかります。
 
アメリカへの依存・従属
 武器輸入については、どこから輸入したか相手国(輸出国)も表示されています。
 日本の直近の5年間の輸入相手国は、
  アメリカ 97%、イギリス 1.8%、ドイツ 0.4% です。
 日本の武器輸入が2.55倍化したほとんどすべてがアメリカからの輸入であることがわかります。米中対立の中で、アメリカへの異常な依存・従属の下にあることもわかります。
 報告書の説明の中では、直近の5年間にアメリカは日本に29機の戦闘機を輸出したこと、2023年に日本は射程1000Km以上の対地攻撃ミサイル400発をアメリカに発注し、さらに50発を発注予定であること、これらにより日本は中国や北朝鮮の奥深くを攻撃する能力を得たとも書いています。
 
   日本共産党三菱重工広製支部

2024年3月29日 (金)

米中対立の最前線に自衛隊の次期戦闘機が

 次期戦闘機の輸出については、自民・公明両党が輸出を認めることで合意し、「防衛装備移転三原則の運用指針」の改定を閣議決定しました。殺傷能力の高い次期戦闘機を輸出することは日本が「死の商人」国家になるとともに、経済の軍事化を大きく進めることになります。
 さらに、次期戦闘機の開発は「対中国」を意識して進められていますから、日本の自衛隊が米中対立の最前線に立つという問題もあります。その場合、次期戦闘機は無人機と連携して戦うことが計画されています。
 
次期戦闘機は無人機と連携
 「次期戦闘機は第5世代機よりも優れたステルス性やセンサー技術に加え、無人機や人工衛星などと連携する高いネットワーク戦闘能力を持つことが期待されている」(日経 2024年3月26日)。
 無人機と連携するのは次期戦闘機だけではありません。日本よりも、アメリカ・中国などで開発が先行しています。
 
日米が戦闘機と連動する無人機の開発を計画
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 政府は戦闘機を支援して飛ぶ無人機の開発に乗り出す。戦闘機に代わって接近する敵機やミサイルの早期探知に使い、警戒監視の効率を高める。迎撃用のミサイル搭載も検討する。日米が技術協力して開発し、作戦の連動性を高める。
 米欧や中国などは空軍の作戦の幅を広げるため、無人機を単独で使うのではなく、有人の戦闘機と組み合わせる高度な戦術づくりに着手している。日本も無人機を生かした作戦が空中戦の主軸となるとみて、米国とともに開発を急ぐ。
 中国は35年を軍隊の現代化を実現する目標年としており、日本はそれまでに有人機と無人機が情報共有などで連携する体制を整えて対抗する。
(日経 2022年6月3日「戦闘機支援の無人機開発 日米、防空網強化へ技術協力」)
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 この記事は2022年に書かれたものですが、2022年にはアメリカがIAMD(統合防空ミサイル防衛)を同盟国と共同で推進することを始めました。この年には、岸田政権による大軍拡も始まっています。
 
無人機はAIで自律飛行も
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 防衛省は12月22日、無人機の自律飛行にかかわる人工知能(AI)技術を米国防総省と共同研究すると発表した。無人機が空中や標的の状況にあわせて自動で方角を変えるといった技術の開発をめざす。英国やイタリアと共同開発する次期戦闘機と連動して飛ぶ無人機への採用を想定する。
(日経 2023年12月22日「次期戦闘機と連動の無人機、自律飛行のAI技術 日米研究」)
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 共同研究といっても、先行している米国防総省の指導の下で次期戦闘機に適用する研究をすることが日本側の主な役割になるのではないでしょうか。
 
三菱重工も戦闘機の無人機化
 三菱重工の防衛事業説明会資料(2023年11月22日)の中に「無人アセット防衛事業」があって、その中に「戦闘機の無人機化」が書かれています。
 三菱重工の「無人アセット防衛事業」は、安倍政権の安全保障3文書にある「無人アセット防衛能力」に対応しています。
 三菱重工は、偵察・監視に使用する無人機の開発を早くから進めていますが、攻撃能力を持ち、有人戦闘機と連携する無人機(無人戦闘機)が事業説明会に登場したのはこれが初めてです。
 
無人戦闘機の危険性
 人間による操作ミスはよく言われますが、機械にもミスはあります。機械の故障・システムのエラー・AIの判断ミスなどが考えられます。
 さらに、無人機は、有人機に比べるとより危険なところに侵入させることが考えられ、場合によっては「おとり」として使うことも考えられます。その結果、武力衝突が発生する機会が非常に大きくなると考えられます。
 
無人機と連携するのは自衛隊の次期戦闘機
 無人機によって発生する武力衝突は、無人機と連携している自衛隊の次期戦闘機を巻き込むことになります。
 その結果、米中対立は武力衝突が発生しやすい状況になり、その最前線に無人機と連携する自衛隊の次期戦闘機が立つということになります。
 
   日本共産党三菱重工広製支部

2024年3月 8日 (金)

次期戦闘機の輸出は「戦争の輸出」

 次期戦闘機は、防衛省が2035年配備を目指す最新鋭の戦闘機で、日・英・伊3国による共同開発が進められています。
 完成後には、日・英・伊が自国で使うだけでなく、他国への輸出も考えています。英・伊については輸出することに問題はないのですが、日本の場合は、現状では第3国への輸出ができません。そのため、輸出を可能にするよう与党(自・公)内で調整しています。
 
ライセンス生産した武器につづいて
 岸田政権は昨年12月、「防衛装備移転三原則の運用指針」を改定して、ライセンス生産した武器をライセンス元の国へ輸出可能にしました。これについてはブログ「三菱重工の殺傷武器・輸出解禁」で触れました。
 これをさらに改定して、国際共同開発をした武器は第3国に輸出可能にしようとしています。なし崩し的に武器輸出の全面自由化を進めています。
 
戦闘機とは
 戦闘機は、敵対国の軍と最前線で戦闘する兵器です。今はミサイルが発達していますので様々なミサイルを組み合わせ、ネットワーク技術を活用した総合的な戦闘ができるように作られています。そのほか、戦闘能力で敵対国に勝るように最新技術を駆使しています。戦闘機は戦争する国にとって非常に重要な兵器です。
 
X-2(先進技術実証機)を三菱重工取り纏めで開発
 次期戦闘機の試作機として、X-2(先進技術実証機)の開発が三菱重工取り纏めで2009年度から始まり、2016年に初飛行をしました。
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   X-2(先進技術実証機)初飛行を実施
 X-2は、国産初のレーダーに探知されにくいステルス性能や極めて高い運動性能など、将来の戦闘機に適用される機体、エンジン等の各種先進技術のシステム・インテグレーションを図った試作機です。当社は機体の取り纏め企業として、防衛装備庁のご指導の下、220社に及ぶ国内企業のご協力を得ながら、2009年度から開発に取り組んできました。世界に誇れる日本独自の最先端技術が随所に採り入れられています。
(三菱重工のニュースリリース 2016年4月22日より)
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 このころから、次期戦闘機の開発は三菱重工を中心に、先進技術を組み込んだ高性能機を目指して進められてきました。

 

次期戦闘機の開発を三菱重工に正式発注
 その後、防衛省は次期戦闘機の開発を三菱重工に正式発注します。
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 防衛省は航空自衛隊の「F2」後継となる次期戦闘機の開発を、三菱重工業に正式発注した。今回の契約はF2の時と異なるシングル・プライム方式で、機体を担当する三菱重工がエンジンを担当する企業やアビオニクスを担当する企業も下請けとして束ねて主導する。
(日刊工業新聞 2020年11月2日より)
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(注)アビオニクス(Avionics)とは、航空機に搭載され飛行のために使用される電子機器です。
 
米軍との相互運用性を確保
 同じ頃、防衛省はアメリカと協議を進め、「米国のロッキード・マーチン社をインテグレーション支援の候補企業に選定するとともに、日米間の相互運用性(インターオペラビリティ)の確保のため、令和3年度から新たな事業を米国と協力して開始する」と発表しました(「次期戦闘機(F-X)に係る国際協力について」防衛省 2021年12月22日)。
 「次期戦闘機と連動する無人機を共同研究」することを日米両政府で合意したことも報道されています(産経新聞 2023年12月21日)。
 
日英伊3ヵ国による次期戦闘機の共同開発を発表
 アメリカとの強固な関係のもとで、開発は日英伊3ヵ国共同で進めることが話し合われ、2022年12月に正式発表しました。三菱重工のニュースリリースは次のように伝えています。
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 日本政府は本日、英国政府およびイタリア政府との間で、次期戦闘機を共同で開発することを発表しました。
 当社はこれまで、先進技術実証機(X-2)をはじめとする各種関連研究を通じて戦闘機の最先端技術を獲得、2020(令和2)年10月末には防衛省と次期戦闘機開発に係る契約を締結し、構想設計等開発作業を推進してきました。また、この中で防衛省とともに英伊両国との協力の可能性についても検討を行ってきたところです。
(三菱重工のニュースリリース 2022年12月9日より)
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アメリカが支持・協力
 共同開発の発表と同じ日(2022年12月9日)に外務省は2つの文書を発表しました。
 一つは「次期戦闘機に係る協力に関する防衛省と米国防省による共同発表」です。その中で、「米国は、日米両国にとって緊密なパートナー国である英国及びイタリアと日本の次期戦闘機の開発に関する協力を含め、日本が行う、志を同じくする同盟国やパートナー国との間の安全保障・防衛協力を支持する」と述べています。
 もう一つは「グローバル戦闘航空プログラムに関する共同首脳声明」です。その中で次のように述べています。
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 このプログラムは、まさにその本質として、我々の同盟国やパートナー国を念頭において設計されてきたものである。我々がこのプログラムに冠した「グローバル」という名称は、米国、北大西洋条約機構(NATO)、欧州やインド太平洋を含む全世界のパートナーとの将来的な相互運用性を反映したものであり、そのコンセプトは、この共同開発の中心となる。我々は、この戦闘機が、複数の領域を横断して機能する、より幅広い戦闘航空システムの中心的存在になるという希望を共有している。
(「グローバル戦闘航空プログラムに関する共同首脳声明 仮訳」(2022年12月9日)より)
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 これは、次期戦闘機の協同開発が、ヨーロッパからインド太平洋にわたるアメリカ主導の軍事ブロックにおいて非常に重要な役割を果たすことと、軍事ブロックとしての結束の強化を意味しています。
 軍事ブロック対軍事ブロックの対立は、平和の構築に逆行するものです。戦争を呼び寄せ、不安定な国際情勢を作り出す危険があります。次期戦闘機の輸出は「戦争の輸出」と言っても過言でないのではないでしょうか。その中で三菱重工は重要な役割を果たしています。
 
次期戦闘機の輸出の必要性を首相が言い立てる
 これまで口にしてこなかった「輸出」を、最近になって政府は言い出しました。岸田首相は、日本から輸出できないと「日本が求める戦闘機の実現が困難となる」などと根拠も示さずに言い立てました。
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 首相は3月5日の参院予算委で、公明党の西田実仁参院会長の質問に答えるかたちで輸出解禁が必要だと訴えた。輸出によるコスト低減に努めなければ「日本が求める戦闘機の実現が困難となる」と話した。
 航続距離の長さなどの日本の要求性能を搭載するには共同開発する英国、イタリアと同等の貢献が要ると提唱した。
 第三国輸出を認めなければ「国際共同開発・生産のパートナー国としてふさわしくないと国際的に認識されてしまう」と発言した。
(日経 2024年3月7日「公明、戦闘機輸出容認へ意見集約 高木氏、首相答弁を評価」より)
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 岸田首相の発言とは逆に、もしかしたら、日本が第3国への輸出をしなければ、英・伊は輸出先が増えるために喜んで「日本が求める戦闘機」を作ろうというかもしれません。
 輸出で最も喜ぶのは、三菱重工を中心とする軍需産業と自民党の防衛族ではないでしょうか。その結果は、日本の軍産複合体の本格的確立につながっていくのではないでしょうか。
 
   日本共産党三菱重工広製支部

2024年2月26日 (月)

三菱重工の軍需部門・再び上方修正

三菱重工の業績見通し
 今年度のはじめ(期首)に発表された昨年度の実績と今年度の見通しは次のようになっていました。
        2022年度実績   2023年度見通し
受注高 : 4兆5,013億円   4兆6,000億円
売上収益: 4兆2,027億円   4兆3,000億円
事業利益:    1,933億円      3,000億円
当期純利益:  1,304億円     1,900億円
 このように、今年度は受注も売上げも利益も増加する好調な見通しになっていました。
 
その後、2度の上方修正
 その後、第2四半期決算(2023年11月6日)と第3四半期決算(2024年2月6日)のときに上方修正の発表がありました。上方修正は軍需部門である「航空・防衛・宇宙」だけでなく4部門すべてに及び、2023年度見通しは次のようになりました。
    修正後の2023年度見通し
受注高 : 6兆0,000億円(+1兆4,000億円)
売上収益: 4兆4,000億円(+  1,000億円)
事業利益:    3,000億円(変更なし)
当期純利益:  1,900億円(変更なし)
 このように、受注高の見通しが年度の途中で1兆4,000億円増・1.3倍化という上振れです。受注高の上振れは、来年度以降の売上げと利益にプラスの影響を与えると推測されます。
 
航空・防衛・宇宙の受注が9,000億円上振れ
 全社の受注高見通し増加・1兆4,000億円のうち、航空・防衛・宇宙部門が9,000億円を占めています。
 そのほかの部門については、エナジー部門が4,000億円増、プラント・インフラ部門が500億円増、物流・冷熱・ドライブシステム部門が500億円増とすべての部門で受注高見通しが上振れとなりました。
 
最初の上振れは敵基地攻撃兵器の整備を前倒し
 航空・防衛・宇宙部門の受注高・9,000億円上振れのうち8,000億円は第2四半期決算(2023年11月6日)で発表されました。その背景についてはブログ「爆発的展開となった三菱重工の軍需部門」(2023年12月23日)で触れましたが、国産長射程ミサイルなどの敵基地攻撃兵器の整備を前倒しをしたからと考えられます。
 
2度目の上振れはパトリオット?
 それに続いて、第3四半期決算(2024年2月6日)の際に航空・防衛・宇宙部門の受注高見通しが1,000億円上方修正されました。このときなぜ上振れしたか発表されていませんが、一つの可能性としては、迎撃ミサイル・パトリオットの生産を防衛省が発注したのかもしれません。
 岸田政権は2023年12月22日、「防衛装備移転三原則の運用指針」を改定して、殺傷武器についてもライセンス生産した武器をライセンス元の国へ輸出可能にしました。その中にパトリオットが含まれています(参考:前回のブログ「三菱重工の殺傷武器・輸出解禁」)。
 アメリカは多数のパトリオットをウクライナに供給しましたので在庫不足になっていると伝えられています。同時に、日本の自衛隊もパトリオットが不足しているとも伝えられています(東京新聞 2023年12月26日「「不足している」はずのパトリオットをアメリカに輸出する?」)。そのため、政府は、アメリカへの輸出を正式決定する前に、とりあえず自衛隊にも必要なパトリオットの増産を三菱重工に伝えたのかもしれません。
 近いうちにパトリオットはアメリカに輸出される可能性が大きいですが、日本からアメリカに輸出されたパトリオットはウクライナに渡る可能性があります。そうなれば、三菱重工は再び「死の商人」と呼ばれる道を歩むことになるのではないでしょうか。
 なお、パトリオットミサイル1発当たりの価格は日本円で数億円と言われていますから、三菱重工の上振れ1,000億円はパトリオット数百発に相当します。
 
国民にはさらに負担増へ
 防衛省は2月19日、安保3文書に基づく大軍拡を推進するための「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」の初会合を開催しました。
 座長に就いた榊原定征日本経団連元会長は、2023~27年度で約43兆円とする軍事費(防衛省予算)について、物価高騰や円安の影響をあげ、「見直しをタブーとせず、現実を踏まえたより実効的な水準や国民負担の在り方について議論すべきではないか」と述べ、さらなる軍拡のための「国民負担」に言及しました(赤旗 2024年2月20日)。
 政府は、物価高騰や円安にあえいでいる国民に負担増を押し付けて軍拡をさらに進めようとしています。
 
   日本共産党三菱重工広製支部

2024年2月 9日 (金)

三菱重工の殺傷武器・輸出解禁

 岸田政権は殺傷武器の輸出解禁に突き進んでいます。ライセンス生産した武器をライセンス元の国へ輸出を可能にしたことに続いて、国際共同開発する武器を第三国に輸出できるようにしようとしています。
 
ライセンス生産とは
 ライセンス生産とは、開発した企業にライセンス料を支払い、生産に必要な技術や特許などの使用を許諾してもらって生産し販売します。製品に関する技術を獲得し、メンテナンスも自社でできることになります。
 
武器(防衛装備品)のライセンス生産
 武器の場合、日本の軍事企業が他国の軍事企業が開発した武器をライセンス生産して自衛隊に納入します。自衛隊に納入するだけでなく、輸出できれば企業にとってなお好都合ですが、それには「防衛装備移転三原則」(武器輸出三原則)の制約を受けます。
 
「防衛装備移転三原則の運用指針」を改定
 岸田政権は2023年12月22日、「防衛装備移転三原則の運用指針」を改定(閣議決定)して、ライセンス生産した武器をライセンス元の国へ輸出可能にしました。
 それまでは、アメリカの企業がライセンスを持つ武器の部品に限りアメリカにのみ輸出できたのですが、今はそれだけでなく殺傷武器を含めて完成品もライセンス元の国ならどこにでも輸出できるようにしました。
 日本がライセンス生産している武器は79品目に上り、輸出対象国になるライセンス元の国は米英仏独伊など8カ国に拡大します。
 
パトリオットは三菱重工がライセンス生産
 三菱重工がライセンス生産している殺傷武器に地対空ミサイル・パトリオットがあります。今回の「防衛装備移転三原則の運用指針」の改定ではこのパトリオットが主役になったようです。
 改定当日の記者会見で林芳正内閣官房長官は次のように述べています。
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・・・本日、国家安全保障会議四大臣会合を開催し、今般見直した防衛装備移転三原則の運用指針を適用する案件として、米国からのライセンス生産品であるペトリオット・ミサイルの米国への移転について、特に慎重な検討と厳格な審査を経て、認め得るということを確認いたしました。本件は日米同盟の強化の観点から大きな意義を有するものでありまして、我が国の安全保障及びインド太平洋地域の平和と安定に寄与するものでございます。
(首相官邸のホームページ 令和5年12月22日 内閣官房長官記者会見より)
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(注:「パトリオット」はマスコミなどで使用されている表現です。自衛隊は「ペトリオット」と表記しています。)
 
アメリカ政府は大歓迎
 日本政府がパトリオットをアメリカに輸出することを決めたことにアメリカ政府は直ちに歓迎の意を表しました。
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 米ホワイトハウスのサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は22日、日本政府が防空用の迎撃ミサイル「パトリオット」を米国に供与すると決めたことを歓迎する声明を発表した。「日本の安全保障とインド太平洋地域の平和と安定に貢献する」と記した。
 サリバン氏は日本から提供されるパトリオットを米国の在庫に補充すると表明。「米軍は自衛隊と緊密に協力し、抑止力と対処能力を維持し続けることを保証する」と強調した。
(日経 2023年12月23日「米ホワイトハウス、日本のパトリオット供与「歓迎」より)
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三菱重工製パトリオットがウクライナへ?
 サリバン大統領補佐官が「日本から提供されるパトリオットを米国の在庫に補充する」ということですが、アメリカ政府はウクライナにパトリオットを提供しているために在庫不足になっているとも伝えられていますから、三菱重工は大急ぎでパトリオットを生産することになるでしょう。そして、アメリカに渡ったパトリオットがウクライナに提供されるということも考えられます。「防衛装備移転三原則」は紛争当事国への移転を禁じていますが。
 
ロシアはパトリオット輸出で日本に警告
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 ロシア外務省のザハロワ情報局長は27日の会見で、日本政府が地対空誘導弾パトリオットの米国への提供を決めたことについて「日本のミサイルがウクライナに渡る可能性も否定できない。そのような行動はロシアに対する明確な敵対行為とみなされる」と述べた。
(日経 2023年12月27日「ロシア、パトリオット輸出で日本に警告」より)
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 岸田政権が進めている殺傷武器の輸出解禁は戦争を呼び寄せると言わざるを得ません。
 
次は、「次期戦闘機」の輸出
 2035年完成を目指して日英伊の3国で共同開発を進めている「次期戦闘機」は、現状では日本から第三国に輸出することができません。それでは日本にとって大変不利と、自民党は国際共同開発した武器は輸出を可能とすることを強く求めています。これについて岸田首相は「2月末を与党間の結論を得る時期として示している」と言っています。
 なお、「次期戦闘機」の国際共同開発で三菱重工は日本側の中心的役割を果たしています。
 
   日本共産党三菱重工広製支部

2024年1月28日 (日)

大軍拡に沸く日本の軍需企業(その2)

 岸田政権の大軍拡が動き出して、三菱重工・川崎重工・三菱電機の軍需部門が爆発的な展開を見せていることを前々回と前回のブログで見ました。今回は、日本電気、IHIについて見ておきたいと思います。
 
日本電気
 日本電気の会社名は「日本電気株式会社」、英訳名は「NEC Corporation」です。略称をNECとしていますので、国内でもNECと呼ばれることが多いようです。
 連結子会社は284社、NECグループの主要事業をITサービス事業と社会インフラ事業としています。防衛事業は社会インフラ事業に含まれています。
 
ミサイル防衛の中枢部を受注
 防衛省の「中央調達の概況(令和4年版)」の契約相手方別契約高順位を見ますと、日本電気は三菱重工、川崎重工、三菱電機につぐ第4位に出ています。契約金額は900億円、主な調達品として次のように記載されています。
 ・自動警戒管制システム等(03機能付加等)、
 ・防衛省OAシステム基盤借上(03換装)
 ・野外通信システム
 このうち自動警戒管制システムは、弾道ミサイル防衛を構成するイージス艦とPAC-3の迎撃ミサイルを連携するシステムです。ミサイル防衛の中枢部と言えます。
 
日本電気の軍需部門も爆発的な展開
 日本電気は昨年11月30日の投資家向け説明会で、防衛事業を強化するために約200億円を投じて新工場建設や人員増を急ぐと発表しました。
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 新工場は着工済みで、2025年3月までに完成させる。人員も2026年3月期までに1000人規模を新たに増やす。
 藤川修・最高財務責任者(CFO)は「中計策定時には政府の防衛予算増を想定していなかった。需要拡大の機会を着実にとらえてより早く成長する」と話した。
(日経 2023年11月30日「NEC、防衛事業で200億円投じ新工場 1000人増員」より)
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 売上げ・営業利益については、航空・宇宙・防衛事業の売上げを、2025年度には2022年度の1.5倍の3500億円に、営業利益率は10%から12%に引き上げるとしています。
 
IHI
 IHIの会社名は「株式会社IHI」、英訳名は「IHI Corporation」です。連結子会社は34社。
 航空・宇宙・防衛部門について、ホームページには次のように出ています。
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 IHIは日本のジェットエンジン生産の約7割を担うリーディングカンパニー。防衛省が運用する航空エンジンの開発・生産を主契約者として担い、戦闘機用は全機種を担当しています。
(IHIのホームページより)
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 防衛省が2035年導入を目指している次期戦闘機の開発は日本、イギリス、イタリアの共同開発で進められていますが、エンジンの開発にはIHIが参画することになっています。すでに、2018年にIHIは次期戦闘機用を目指したジェットエンジンのプロトタイプ(XF9-1)を防衛省に納入しています。
 
防衛部門の人員を1.5倍に
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 IHIは12月26日、2025年度までに防衛人材を1.5倍に増やすことを検討していると明らかにした。約550人から300人増やして約850人体制にし、戦闘機向けのエンジン開発を強化する。中途採用や社内の配置転換で増員する。
(日経 2023年12月26日「IHI、防衛人材の増員検討 次期戦闘機の開発強化」より)
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ミサイルの高性能化にも注力
 IHIは昨年9月20日、航空・宇宙・防衛事業領域の説明会を開き、政府の大軍拡に対応してミサイルの高性能化に注力する方針を明らかにしました。
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 オンライン会見した盛田英夫取締役常務執行役員航空・宇宙・防衛事業領域長は「今後5年ではミサイルが一番伸びる」と販売拡大への意気込みを示した。IHIは大型ミサイルの推進系を手がける。政府の防衛力整備計画を受け、ミサイルを当面の成長分野に位置づける。
(日経 2023年09月22日「ミサイルの高性能化に注力、IHIが政府方針に対応」より)
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 IHIの軍需部門も爆発的展開を見せています。
 
富士通、東芝インフラシステムズ
 防衛省の「中央調達の概況(令和4年版)」の契約相手方別契約高順位は次のとおりです。
  1位 三菱重工
  2位 川崎重工
  3位 三菱電機
  4位 日本電気
  5位 富士通
  6位 東芝インフラシステムズ
  7位 IHI
 IHIは7位で、5位に富士通、6位に東芝インフラシステムズが出ています。富士通は通信機器を、東芝インフラシステムズはミサイルやレーダを防衛省から受注していますので、大軍拡によって軍需部門は爆発的に伸びていくのではないかと思います。両社とも大きなニュースが届いていませんので今回は割愛しました。
 
   日本共産党三菱重工広製支部

2024年1月12日 (金)

大軍拡に沸く日本の軍需企業

 岸田政権の大軍拡が動き出して三菱重工の軍需部門が爆発的な展開を見せていることを前回のブログで見ました。今回は、そのほかの日本の主な軍需企業である川崎重工と三菱電機について見ておきたいと思います。
 
川崎重工も大軍拡を歓迎
 川崎重工が生産している主な兵器には、P-1固定翼哨戒機、Cー2輸送機など大型航空機に関連したものが多くあります。
 同社の「航空宇宙システム」は、「事業環境・受注動向」を「防衛省向け:抜本的な防衛力強化という防衛省の方針のもと、今後の需要増や採算性の改善が期待できる」と、岸田政権の大軍拡を歓迎しています。
 
川崎重工の軍需部門も爆発的な展開
 川崎重工の「航空宇宙システム」のうち、「航空エンジン」を除く「航空宇宙」を見ますと、受注高が2022年度の2,539億円(実績)から2023年度には4,750億円(予想)へ2,211億円(87%)増と爆発的な展開を見せています。
 
2030年度には売上高2~3倍化、利益率2倍化以上
 川崎重工の「航空宇宙システム」は今後の見通しを、
・多次元統合防衛力の抜本的強化に伴う防衛費増額を契機として受注は拡大
・契約の制度改正により、適正な利益を確保
として、売上を2022年度約2,400億円から2030年度には5,000~7,000億円へ2~3倍化、事業利益率を5%未満から10%以上へ2倍化以上の見通しを立てています。(グループビジョン2030進捗報告(2023年12月12日)より)
 
敵基地攻撃用兵器の開発
 このように川崎重工は事業規模と利益を爆発的に伸ばす見通しを立てていますが、その事業内容は、政府の「国家防衛戦略」に書かれている「スタンド・オフ防衛能力」、「統合防空ミサイル防衛能力」など7つの「重視する分野」すべてにわたっています。
 中でも、「スタンドオフ防衛能力」では「新SSM(島嶼防衛用新対艦誘導弾)」、「スタンド・オフ電子戦機」、「次期潜水艦の開発」、「高出力レーザ兵器」など敵基地攻撃用兵器の開発が並んでいます。
 
三菱電機は電子技術を活かした兵器で
 三菱電機が生産する兵器は主に、誘導弾(ミサイル)、レーダーなど電子技術を活かした兵器です。
 防衛省の契約相手方別契約高で、三菱重工、川崎重工に次いで概ね3位を占めています。
 
大口案件の受注が増加
 三菱電機の半期決算では、防衛・宇宙システムに関して「受注高は防衛システム事業の大口案件の増加により前年同期を上回ったが、売上高は防衛システム事業の大口案件の減少により前年同期を下回った」と受注増・売上げ減の報告をしています。大口案件の受注が増加したことはこの先売り上げが大きく伸びることを示しています。
 
大軍拡に合わせて大規模設備投資・人員増
 三菱電機は、防衛・宇宙システム部門の大口案件の受注増加に見られるように、大軍拡に合わせて大規模設備投資・人員増を計画しています。
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 三菱電機は10月25日、鎌倉製作所(神奈川県鎌倉市)など3カ所で防衛装備品を生産する工場を新設すると発表した。約220億円を投じる。計8棟の生産棟を2025年4月以降に順次完成させる。政府が防衛予算を拡大させることを受け、レーダーシステムなど防衛装備品の生産能力を強化する。
 5月には防衛・宇宙事業で配置転換を含めて1000人規模を増やす方針を示したほか、鎌倉製作所などでの約700億円の設備投資計画を発表している。
(日経 2023年10月25日「三菱電機、防衛装備品の工場新設」より)
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防衛省の「新たな利益率の算定方式」を大歓迎
 防衛省が兵器生産の利益率を最大15%とする「新たな利益率の算定方式」について三菱電機・防衛システム事業部の洗井昌彦事業部長は「企業としても利益率を高められるように努力していくのは当然のことで、新しい仕組みは画期的だと考えている」と大歓迎しています(日経産業新聞 2024年1月8日)。
 事業規模も利益率も爆発的に伸びそうです。
 
三菱電機は武器輸出も大きく展開中
 警戒管制レーダーの初号機をフィリピン空軍へ2023年10月に納入し、「本件は、2014年4月に日本政府の防衛装備移転三原則が制定されて以降、初めての海外政府に向けた国産完成装備品の移転となります」と発表しました(ニュースリリース 2023年11月2日)。
 
米海軍のレーダーの製造に参画する方向で調整中
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 三菱電機が、米海軍の空母やミサイル駆逐艦などの艦船に搭載するレーダーの製造に参画する方向で調整していることが11月8日、分かった。レーダーの基幹部品を生産する。同社は防衛装備品の海外展開で、フィリピンに防空レーダーを輸出した実績などがある。米軍向けが実現すれば4例目となる。
(共同通信 2023年11月8日「三菱電、米軍装備品の製造参画へ」)
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オーストラリア国防省とレーザー技術で共同開発事業
 三菱電機の子会社・三菱電機オーストラリアは、オーストラリア国防省と共同開発事業の契約を締結してレーザー技術を活用したシステムの開発に参画します。
 この事業は「防衛分野において日本企業と外国政府の間で共同開発契約に至った初めてのケース」ということです(ニュースリリース 2023年10月19日)。
 
次期戦闘機の開発でも
 次期戦闘機は、日本では三菱重工を中心に日・独・伊3カ国で共同開発を進めていますが、三菱電機は次期戦闘機に搭載するミッションアビオニクスシステムの開発担当企業となっています。ミッションアビオニクスは戦闘機に必要な電子装置です。
     ◇
 軍需部門が爆発的な展開を見せているのは三菱重工だけでないことがわかります。各社の軍需部門の占める割合は、これまで数%から10数%でしたが、数年以内に2倍化することが確実です。軍需部門の占める割合が大きくなると、それを維持・拡大しようとする企業側からの圧力が強くなって経済の軍事化がさらに進むことになりかねません。その先に待っているのは戦争です。
 大軍拡を阻止して国民の生活を守る。そのために岸田政権打倒のたたかいを急がなくてはなりません。
 
   日本共産党三菱重工広製支部

2023年12月23日 (土)

爆発的展開となった三菱重工の軍需部門

 
 岸田政権の大軍拡が動き出して三菱重工の軍需部門が爆発的な展開を見せています。その実態を三菱重工自身が「防衛事業説明会」(2023年11月22日)で明らかにしました。
 
三菱重工の「防衛事業説明会」(2023年11月22日)
 4年前の「航空・防衛・宇宙ドメイン事業戦略説明会」(2019年7月12日)では従来の延長線上に戦略を描いていましたが、今回はすっかり変わりました。従来の延長線ではない爆発的展開です。
 
事業規模は2倍以上に
 防衛事業説明会で防衛・宇宙セグメント⻑の江⼝執行役員は次のように述べています。
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(これまで)概ね5,000億円弱の事業規模でほぼ伸びなかったというところでありますが、防衛費の倍増を受けて、年間の事業規模を2倍、つまり1兆円規模に伸ばしていきたいと思っています。その次の事業計画については、さらに伸ばしていきたいと思っています」と述べています。
 具体的には、現状の5000億円/年規模の売上げが、2024~26年度に1兆円/年規模となり、2027~29年度には1兆円/年以上と想定しています。
(三菱重工の「防衛事業説明会」より)
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2倍以上とは、社長は予想していなかった
 泉澤社長は今年の4月、日本の防衛予算が2倍化しても三菱重工の軍需部門の事業規模が2倍にはならないと発言していました。
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 防衛に関しては、国がどのような装備品をいつ必要とするかによるため、予想が難しい。但し、防衛予算がGDP比1%から2%になれば、それに呼応して当社の事業規模が2倍になることはないと思うが、10~20%の増加率ということでもないと思う。(2021事業計画推進状況説明会で泉澤社長 2023年4月5日)
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 社長にとっても爆発的展開のようです。
 
2016年に描いた夢を超える
 今から7年前の「防衛・宇宙ドメイン事業戦略説明会」(2016年6月10日)では、2018年から「飛躍のステージ」に入って、弓なりのカーブを描いて軍需部門の事業規模が伸びていくという夢を描いていました。
 振り返ってみますと、武器輸出を原則自由化する防衛装備移転三原則が閣議決定されたのが2014年4月。その1年前から安倍首相(当時)は武器の売り込みに海外を奔走していました。2015年10月には防衛装備庁が発足し、武器輸出を目指して軍需企業の応援に力を入れました。
 このような政府の並々ならぬ奮闘努力を見て、三菱重工が軍需部門の事業規模が大きく伸びていく夢を描いたのも当然のことかもしれません。しかし、現実は「概ね5,000億円弱の事業規模でほぼ伸びなかった」のです。
 
SIPRIのデータで確認
 三菱重工の決算報告は軍需部門を航空・防衛・宇宙部門をひとまとめにしていて、軍需部門だけの売上げを公表していませんので、SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)のデータベースを見てみたいと思います。そこには世界トップ100の軍需企業の売上げがドル表示で出ています。
      三菱重工軍需部門の売上げ
2019年 391億ドル 約4300億円(110円/ドルで換算)
2020年 442億ドル 約4860億円(110円/ドルで換算)
2021年 406億ドル 約4470億円(110円/ドルで換算)
2022年 325億ドル 約4225億円(130円/ドルで換算)
 このようにSIPRIのデータは、「概ね5,000億円弱の事業規模でほぼ伸びなかった」ことを裏付けています。
 
航空・防衛・宇宙部門の実績と見通し
 航空・防衛・宇宙部門をひとまとめにしたデータも見ておきたいと思います。
          受注高   売上収益   事業利益
2021年度実績 7,742億円  6,052億円   240億円 
2022年度実績 7,036億円  6,194億円   399億円
2023年度見通し 1.0兆円    0.7兆円    400億円 期首(5月)の見通し
2023年度見通し 1.8兆円     0.7兆円    500億円 期央(11月)の修正見通し
 期首(5月)の見通しが半年後に、受注高が80%増! 売上収益は変わらないのに事業利益が25%増!100億円増です! トンデモナイことです。
 
敵基地攻撃兵器の整備を前倒し
 このようなトンデモナイことが起こったのは、受注高80%増については岸田政権が敵基地攻撃兵器の整備を前倒ししたことが考えられます。
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 木原稔防衛相は10日の記者会見で、2026年度からの配備を狙う国産の敵基地攻撃兵器=長射程の「スタンド・オフ・ミサイル」全種類について、整備の前倒しを検討するよう指示したことを明らかにしました。4日(日本時間5日未明)のオースティン米国防長官との会談で、米国製長距離巡航ミサイル「トマホーク」を1年前倒しで25年度から取得することで一致したのに続き、違憲の敵基地攻撃兵器取得に前のめりの姿勢をあらわにしました。
(赤旗 2023年10月11日「国産長射程ミサイル 全種類 整備前倒しへ」)
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利益率を大幅引き上げ・世間の常識では考えられない
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 防衛省は、国内の防衛産業を支えるため、装備品調達で同省が算定する利益率を最大15%にする仕組みを2023年度から導入する。各企業の品質管理などの取り組みをポイントで評価し、利益率に反映させる。防衛産業からの企業の撤退防止につなげる狙いがある。
 浜田靖一防衛相は1月30日の衆院予算委員会で、新たな利益率算定の方法を説明し、「国内防衛産業は防衛力そのものだ。基盤の強化は急務だ」と意義を強調した。
(時事通信 2023年2月4日「装備品利益率、最大15%に=企業撤退防止へ防衛省」)
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 これまで防衛省が発注する武器の利益率は平均8%と言われていますから2倍近くになります。三菱重工側から見れば、作るもの・納入するものが変わらないのに、お客さんから突然「価格を100億円引き上げなさい。全部利益にしなさい」と言われたようなものです。
 常識的に考えると、民間企業は少しでも高く売りたいと思い、お客さんは少しでも安く買いたいと思って価格交渉するのですが、防衛省がお客さんになると世間の常識では考えられないことが起こるということです。
 
社長「人員を2~3割増やす」「生産設備の増強も」
 軍需部門がこのような爆発的展開となることを予想していなかった社長は、報道各社のインタビューに応じて「しっかり対応」すると次のように話しています。
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 政府の防衛予算増額を受け、同社の防衛事業の売上高は2026年度に現状の2倍の1兆円規模になる見通しで、泉沢氏は「国内では防衛のリーディングカンパニーと自負しており、国の要請にしっかり対応できるように体制をつくっていく」と述べた。
 現在、同事業の人員は6000~7000人程度。神奈川や愛知、兵庫、岡山、長崎各県の工場で戦車や戦闘機、ミサイル、護衛艦などを製造している。今後、社内の配置換えや中途採用などで人員を2~3割増やす方針で、生産設備の増強も必要に応じて検討するという。 
(時事通信 2023年12月7日「防衛1兆円へ体制整備 予算増に「しっかり対応」 三菱重工社長」)
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     ◇
 
 軍需部門が爆発的展開になっているのは三菱重工だけではありません。SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)のデータベース・世界トップ100の軍需企業に出てくる川崎重工・IHI・三菱電機なども軍需部門の事業規模の拡大、利益率アップの計画が報じられています。
 莫大な税金が注ぎ込まれて危険な方向へ突進して行くことになります。これを止めるに、自民党政治終わらせる国民的大運動を起こさなくてはならないようです。
 
   日本共産党三菱重工広製支部

2023年12月 5日 (火)

中国地方で最大の石炭火力発電所の停止を

 国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)が11月30日~12月12日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催されます。
 地球全体の今年の平均気温は観測史上最高を記録しました。破壊的な暴風雨、洪水、熱波、山火事などが世界各地で発生。気候危機に歯止めをかける取り組みに一刻の猶予もありません。
 
大幅に立ち遅れる日本
 日本の取り組みは世界から大きく立ち遅れています。21年の日本の温室効果ガス排出量は1990年と比べ8%しか減っていません。欧州諸国が47~20%減っているのに桁違いの少なさです。2030年に向けた削減目標もドイツが65%削減なのに日本は37%削減にとどまります。主要7カ国の中で石炭火力発電からの撤退期限を決めてない国は日本だけです。(赤旗 2023年11月27日「主張 COP28の焦点 気候危機の打開へ行動を急げ」より)
 
CO2の排出量が最も大きいのは石炭火力発電
 前回のブログで見ましたように、温室効果ガスであるCO2の排出量が最も大きいのは石炭火力発電です。気候危機に歯止めをかけるために、まず、大きな石炭火力発電所を停止しなければなりません。先進国では、2030年までに石炭火力発電をゼロにすることが求められています。
 
運転中の石炭火力発電所で100万Kw以上は16基
 16基のうち、中国地方にあるのは次の2基です。
   三隅発電所1号機(100万Kw)
   三隅発電所2号機(100万Kw)
 どちらも中国電力の発電所です・
 所在地は、島根県浜田市三隅町岡見です。
 中国地方では、まずこの2基の運転を停止することが、気候危機に歯止めをかけるために最重要です。
 
中國電力は再エネを中心とするビジネスモデルに転換を
 三隅発電所1・2号機の停止に中国電力は進んで応じることはないでしょう。しかし、気候危機に歯止めをかけるために、世界の人びとのために、応じてもらわなくてはなりません。
 それは決して不可能なことではありません。中国電力はすでに太陽光発電に取り組んでいますし、社長は再エネ導入に積極的な発言をしています。
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  中国電力の新社長「洋上風力に注力」 再エネ導入へ強調
 6月に就任した中国電力の中川賢剛社長は7月12日、東京都内で記者会見し、再生可能エネルギーの導入に向けて特に洋上風力発電に力を入れると強調した。現時点では国内で参入していないが、中国地方のほか全国のその他の地域での開発も検討する。
(2023年7月13日 NIKKEI GXより)
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三隅発電所の経済効果
 三隅発電所の1号機は1998年に、2号機は2022年11月に運転を開始しています。2号機新設工事の経済効果が次のように伝えられています。
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 中国電力三隅発電所2号機新設工事の経済効果は約140億円―。こんな推計を地元島根県浜田市と益田市、経済3団体でつくる「三隅発電所地域経済対策協議会」がまとめた。新型コロナウイルス禍と重なる時期の工事で「地域に大きな効果をもたらした」とみている。
(中国新聞 2023年4月20日「中国電力三隅発電所2号機の新設工事、経済効果は140億円」より)
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 このような経済効果があったために島根県浜田市の人たちは、大量のCO2を排出する三隅発電所の運転停止を求めるということは難しいかもしれません。
 
石炭の価格は大きく変動
 経済効果を考える場合、中国電力管内に住む人たちの電気料金も考えなくてはなりません。
 石炭の価格を調べてみますと、大きく変動しています。その上に為替レートの変動も加わってきます。
 新電力ネットのホームページに石炭価格の推移が出ていますので、1年ごとの為替レート考慮の価格を抜粋します。石炭は安いとは、単純には言えないようです。
         オーストラリア産   南アフリカ産
2020年10月  6.15円/Kg    6.42円/Kg
2021年10月 26.79円/Kg   22.58円/Kg
2022年10月 57.30円/Kg   48.01円/Kg
2023年10月 21.25円/Kg   14.88円/Kg
 経済効果がどうであろうと、気候危機をとめるために石炭火力発電はやめなくてはなりません。

 

   日本共産党三菱重工広製支部

2023年11月13日 (月)

2030年までに石炭火力発電をゼロに

 ガザでのジェノサイドを許すな!
   イスラエルのガザ攻撃中止と即時停戦を!
 
2030年までに石炭火力発電をゼロに
 
 国連のグテーレス事務総長は7月27日、地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が始まったと警告を発して、各国のリーダーたちが先頭に立って今すぐ効果的な気候変動対策を取るよう呼びかけました。
 日本も2030年までに石炭火力発電をゼロにすることが各方面から求められています。
 
CO2排出量のもっとも大きい石炭火力発電の停止を
 温室効果ガスであるCO2の排出量がもっとも大きいのは石炭火力です。
 環境省の資料によれば、1Kwhの電気を作るときに発生するCO2の排出量・CO2排出原単位(Kg-CO2/KWh)は次のとおりです。
  石炭火力(従来型)0.867
  石炭火力(USC)0.795~0.836(USC:超々臨界圧石炭火力発電)
  石炭火力(IGCC)0.733(IGCC:石炭ガス化複合発電)
  石油火力(従来型)0.721
  LNG火力(従来型)0.415(LNG:液化天然ガス)
  最新型LNG火力(GTCC)0.320~0.360(GTCC:ガスタービン・コンバインドサイクル)
 石炭を使って発電する場合は、もっとも効率の良いIGCCでも、LNG(液化天然ガス)を使うGTCCの2倍以上のCO2を排出するということです。
 
日本のCO2排出は発電部門が最大
 環境省の資料を見ますと、CO2排出量はエネルギー転換部門が40%以上を占めて最大となっています。エネルギー転換部門はほとんどが発電部門で占められていますから、日本のCO2排出は発電部門が最大と言えます。
 
日本の発電に占める石炭の割合は大きい
 日本は電源構成のうち石炭火力が32.7%も占め(2021年)、横ばいを続けています。欧米の主要国は一貫して割合を減らしてきましたから、この世界の流れに日本は逆行しています(JAPAN BEYOND COALのホームページより)。
 
運転中の石炭火力発電所 100万Kw以上は16基
 日本で運転中の石炭火力発電所は171基で、設備容量の合計は5548.9万Kwです。
 その中で、100万Kw以上の大きな発電所は次の16基で、設備容量の合計は1617万Kwです。
 
企業名   所在地   発電所名称(設備容量)
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東北電力 福島県 原町発電所1号機(100万Kw)
東北電力 福島県 原町発電所2号機(100万Kw)
相馬共同 福島県 新地発電所1号機(100万Kw)
相馬共同 福島県 新地発電所2号機(100万Kw)
JERA 茨城県 常陸那珂発電所1号機(100万Kw)
JERA 茨城県 常陸那珂発電所2号機(100万Kw)
JERA 愛知県 碧南発電所4号機(100万Kw)
JERA 愛知県 碧南発電所5号機(100万Kw)
JERA 愛知県 武豊発電所5号機(107万Kw)
中国電力 島根県 三隅発電所1号機(100万Kw)
中国電力 島根県 三隅発電所2号機(100万Kw)
電源開発 徳島県 橘湾発電所 電源開発1号機(105万Kw)
電源開発 徳島県 橘湾発電所 電源開発2号機(105万Kw)
電源開発 長崎県 松浦発電所 電源開発1号機(100万Kw)
電源開発 長崎県 松浦発電所 電源開発2号機(100万Kw)
九州電力 長崎県 松浦発電所2号機(100万Kw)
    (japan beyond coalのデータベースより)
(注:相馬共同は相馬共同火力発電の略記)
(注:JERAは東京電力フュエル&パワーと中部電力との合弁企業)
(JAPAN BEYOND COALのホームページより)
 
大きな石炭火力発電所から停止を
 国連グテーレス事務総長の、今すぐ効果的な気候変動対策をという呼びかけに応えるには、まず大きな石炭火力発電所から停止することが必要です。
 上記の100万Kw以上の発電所16基の設備容量は1617万Kwになりますから、すべての石炭火力発電所の設備容量5548.9万Kwの29%を占めます。
 
電力会社は再エネを中心とするビジネスモデルに転換を
 COP28(国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議/11月30日~12月12日・ドバイで開催)の議長国であるUAE(アラブ首長国連邦)は世界第7位の産油国ですが、「脱石油」再エネ促進に舵を切ったと言われています。国レベルでビジネスモデルの転換をはかる、まして企業レベルで転換できないことはありません。
 三菱重工もこれまで何度も事業のポートフォリオを変えて生き抜いてきています。企業は、条件が変われば新しい条件のなかで生き抜いていくものです。ただし、そのときに働いている者や下請けにしわ寄せすることなく話し合いのうえで進めることが必要ですが。
 
   日本共産党三菱重工広製支部

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