2019年7月 8日 (月)

日本の労働生産性は本当に低いか?

日本の労働生産性は低いと言われますので、調べてみました。
 
日本生産性本部のデータ
 日本生産性本部のホームページを調べてみました。
 ホームページに「労働生産性の国際比較 2018」が出ています。その[要約]には次の3点が書いてあります。

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1. 日本の時間当たり労働生産性は47.5ドルで、OECD加盟36カ国中20位。
2. 日本の1人当たり労働生産性は、84,027ドル。OECD加盟36カ国中21位。
3. 日本の製造業の労働生産性は99,215ドルで、OECDに加盟する主要31カ国中15位。
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 このように、先進国の中で日本は労働生産性が非常に低いということが書かれています。ただし、製造業は他業種と比較すると少し良いようです。
 ところで、1人当たり84,027ドルは、850~900万円。日本の労働者は賃金の1.5~2倍を稼ぎ出しているということも意味しているようです。

労働生産性とは
 労働生産性は、企業を対象にする場合、次のように定義されます。
  ・労働生産性=付加価値÷労働量
  ・付加価値=売上高-外部調達費=売上高-原材料費・仕入原価・外注加工費・・・
  ・労働量=労働者数×就業時間
 次に、国レベルの話になりますと、付加価値の合計はGDP(国内総生産)になりますから次のように定義されます。
  ・労働生産性=GDP÷就業者数(または就業者数×労働時間)

日本の労働生産性の推移
 日本生産性本部の「日本の労働生産性の動向 2018」に出ている「図1 日本の時間当たり名目労働生産性の推移」を見ますと、次のようなことが言えます。

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 日本の時間当たり名目労働生産性の推移より
   1995年度 4,179円/時間
   2017年度 4,870円/時間
 このように増加していますが、増加率は0.75%/年(単純平均)。
 途中、2005年度から2007年度まで停滞(正確には微減)
 2008年度に急減し、2012年度まで停滞
 2013年度から再び上昇
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 2008年度にはリーマンショックがあって、日本の経済は大きく落ち込んで停滞し、その後GDPは微増していますが、時間当たり労働生産性はGDPよりも大きく伸びています。
 次に、「図4 日本の名目労働生産性(1人当り)の推移」を見ますと。
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日本の名目労働生産性(1人当り)の推移より
   1995年度 799.6万円
   2017年度 835.5万円
 増加率は0.2%/年(単純平均)。
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 時間当たりの生産性は0.75%/年で増加し、1人当りの生産性は0.2%/年で増加。これは何を意味しているのでしょうか?
 これらの数値は、賃金や労働分配率には直接の関係ありませんので、1人当りの年間労働時間が減少したとしか考えられません。ということは、短時間勤務の労働者(パート、アルバイトなど)が増加したことによる影響なのかもしれません。
 それにしても、時間当たり労働生産性の増加率0.75%/年に比べて賃金の増加率は低いと言わざるを得ません。賃金は稼ぎに取り残されていると言えます。

日本のGDPの増加率
 内閣府のホームページの「国民経済計算(GDP統計)」の「年次GDP実額」に毎年のGDP(国内総生産)が出ています。
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     GDP(国内総生産)
  1995年度 516兆2017億円
  2017年度 547兆4954億円
 増加率は0.28%/年(単純平均)。
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賃金の増加率
 厚生労働省の「賃金構造基本統計調査の概況」のp.4に出ているグラフと表を見ますと 1995年度(平成7年度)から2017年度(平成29年度)の間、対前年増減率はプラスだったりマイナスだったりして結局まったく増加していません。1995年度(平成7年度)以降の10年間、増加率はほぼゼロです。

資本装備率(労働装備率)の推移
 資本装備率とは労働装備率とも呼ばれ、投入されている資本(機械や設備)の量を労働者数で割った値(資本装備率=有形固定資産÷従業員数)です。
 機械や設備への投資は労働生産性を向上させる有力な手段ですから、資本装備率の向上は労働生産性と密接な関係にあります。
 そのデータが内閣府のホームページに出ています。「産業別生産性の動向等について - 内閣府」に出ているグラフを見てみますと、日本の製造業の資本装備率は、1980年代・1990年代には増加し、2000年以降横ばいないし微減となっています。非製造業も1980年代・1990年代に大きく増加したものの、2000年以降ははっきりと低下しています。
      ◇
 以上、労働生産性に関係ありそうなデータを羅列しました。これらを眺めてみますと、日本経済の低迷の中では作っても売れないために資本装備率も低下傾向にになって、労働生産性の伸びも弱いと推測されます。その辺りに、日本の労働生産性が低い原因の一つがあるのではないでしょうか。
 日本経済の長期にわたる低迷を見事に表しているグラフがあります。それは、三菱重工の「グローバル・グループ経営への移行」(2018年10月31日)という説明資料のp.4 に出ているグラフです。

 このグラフは、日本のGDP成長が長期にわたって停滞して世界及び米、独との差が拡大しているから、日本市場への依存度が高い三菱重工の売上も低成長化している。低成長を打ち破るには飛躍的なグローバル化が必要ということを示しています。
 このグラフは、日本の経済成長の長期にわたる停滞、ドイツの順調な経済成長、さらに大きいアメリカの経済成長、さらにダントツに急上昇した中国、それらを1枚のグラフが見事に示しています。
 日本の経済政策を根本的に変えて、国民の懐を温めて消費を増やし、内需を拡大しないと、国民の暮らしも経済の発展もないのではないでしょうか。

   日本共産党三菱重工広製支部 2019年7月8日

 参院選が公示されました。投票日は7月21日です。
 新しい政治を切り開くチャンスです。

2019年6月 7日 (金)

三菱重工のジェット旅客機(MRJ)の開発状況

 三菱重工は、国産初のジェット旅客機・MRJ(三菱リージョナルジェット)を開発しています。これまで5回にわたって納期が延期されてきましたが、現在は2020年半ばに初号機を全日空に納入する予定に変わりはないようです。
 この事業に関してニュースが飛び込んできましたので、これまでの経過などを簡単に振り返ってニュースを見ておきたいと思います。
 
MRJ開発の経過
 国産初のジェット旅客機の開発は政府主導で始まったと言われています。2003年に経済産業省の「環境適応型高性能小型航空機研究開発」がそれだと言われています。2008年になると三菱重工が中心になって三菱航空機(株)を設立し、MRJの開発事業が本格的に始まりました。
 当初計画では、2013年に初号機納入の予定でしたが、初飛行がおこなわれたのは2015年11月でした。この時は日本中に大きな期待が広がりましたが、その後も設計変更による納期遅れが発生しました。その間に世界の小型旅客機の競争環境は変わり、三菱重工にとっては非常に厳しくなったようです。
 現在、MRJはアメリカで型式証明(TC)取得審査に当たるTC飛行試験に取り組んでいます。
 
三菱重工にとってMRJ開発の意義
 三菱重工は、ボーイング社の下で民間機航空機の開発・製造をおこなってきましたが、「中長期的な成長を見込む民間機航空機産業で、完成機インテグレーターの地位構築により将来収益基盤を確立する」ことを目指しています(航空・防衛・宇宙ドメイン説明会資料 2018年6月5日)。
 MRJの開発は難航して、すでに6,000億円超の開発費を投入したと報じられています。
 これまでに約450機を受注し、その後の納期延期の影響で40機がキャンセルされたようです。価格は1機50億円程度と言われていますから、6,000億円超の開発費回収は長期にわたると考えられています。
 
座席数70席のMRJの開発
 現在、TC(型式証明)飛行試験に取り組んでいるのは座席数90席のMRJです。その初号機は全日空に納入されることになっています。
 しかし、最大の市場であるアメリカでは操縦士の労働組合との協定で各航空会社とも座席数70席の航空機でなければ運航できないために、かねてから70席の機体の開発が検討され、主力は70席とも言われていました。
 これに関連して日経が5月29日と5月30日に次のように報じました。
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 三菱重工業傘下の三菱航空機(愛知県豊山町)は事業方針を大幅に見直す。初の国産ジェット旅客機として開発している座席数90の「三菱リージョナルジェット(MRJ)」事業を事実上縮小。代わりに最大市場の米国の需要に合う一回り小型の70席の機種を開発する。(日経 2019年5月29日「MRJ、70席型投入へ 三菱航空機、米国需要狙い「90席」見直し」)
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 すでに受注した「90席」のMRJは「70席」への変更が可能な契約になっているために、今後「70席」への変更が多くなることが考えられ、「90席」の事業は事実上縮小するのではないかと予想されているようです。
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 70席モデルは「国産」の看板にこだわらない方針だ。米国での部品調達や生産も検討し、コストを抑える。(日経 2019年5月30日「MRJ、事業化遅れの懸念 新主力機納入、22~23年に」)
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 米国での部品調達や生産となれば、日本の中部地方の産業界に大きなマイナスの影響が生じることになりそうです。
 このような報道に関して三菱重工は「本日、一部報道において、当社のグループ会社である三菱航空機株式会社が開発するMRJに関する報道がありましたが、これは当社グループが発表したものではありません」(重要なお知らせ 2019年5月29日)と発表しました。
 
名前を「スペースジェット」に
 5月30日の日経は、MRJは名前を変更して、90席、70席ともに「スペースジェット」という名前に変えてイメージを一新すると伝えました。
 「スペース」の意味として「機内の広さ」をアピールする狙いがあるようですが、「新たな名称が航空業界で好意的に受け取られるかは未知数」(Aviation Wire 2019年6月5日)とも報じられています。
 
ボンバルディア社と買収交渉 小型旅客機の保守事業
 こんなニュースも飛び込んできました。
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 三菱重工業がカナダ・ボンバルディアの小型ジェット旅客機「CRJ」事業を買収する交渉に入った。機体メンテナンスなどサービス部門を中心に譲り受けたい考え。CRJの顧客ネットワークなどを手に入れることで、三菱航空機(愛知県豊山町)を通じて開発を進める「三菱リージョナルジェット(MRJ)」の事業基盤を強化する。(日経 2019年6月5日「三菱重工、ボンバルと買収交渉 小型旅客機の保守事業」)
(注)CRJ:Canadair Regional Jet; カナディア・リージョナル・ジェット
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 報道によれば、ボンバルディアの航空機部門は不振におちいり、100-150席クラスの小型旅客機の事業はすでにヨーロッパを拠点とするエアバス社が買収(2018年7月)。そのほかの航空機部門も売却の話が進んでいるそうです。
 他方、アメリカのボーイング社はブラジルのエンブラエル社から民間機事業を買収し、年内に合弁会社を発足させる見通しと伝えられています。これらの買収が進みますと、これまでMRJの競争相手と考えられていたボンバルディア社からもエンブラエル社からも航空機事業がなくなって、小型機から大型機まで一貫して手掛けるボーイング社とエアバス社の2強対新参の三菱重工という構図が浮かび上がってきます。MRJにとっては、ますます厳しい競争環境になりそうです。
 
パリ航空ショー(6月17日~)で発表か?
 三菱重工はボンバルディア社との買収交渉について次のように発表しました。「ボンバルディア社のリージョナルジェット機事業について交渉を進めているのは事実ですが、現時点で決定した事実はありません」(重要なお知らせ 2019年6月5日)。
 別の報道によれば、「いずれも正式発表は、6月17日に開幕する世界最大の航空ショー『パリ航空ショー』になるとみられる」(Aviation Wire 2019年6月6日)ということです。

株主資本主義との関係は?
 MRJの開発は、これまで10年以上にわたって開発費をつぎ込み続けてきました。その回収には今後長くかかることが予想されます。将来性のある完成機の事業とは言え、資本効率は非常に悪いと言わざるを得ません。
 他方、三菱重工は資本効率の向上を重視する株主資本主義路線を突き進んでいます。三菱重工の株主資本主義は、このように長く利益を生まない、資本効率の悪い完成機事業をいつまで続けることを認めるのか、気になるところです。
 MRJの初飛行には日本中から大きな喝采が沸き起こりました。日本でも完成機の事業は続けてほしいと願う国民は多いのではないでしょうか。
 
   日本共産党三菱重工広製支部 2019年6月7日

2019年5月24日 (金)

三菱重工の好調な決算と経営計画


 三菱重工は「2018事業計画推進状況(2018~2020年度)」の中で、「2018年度の実績」、「主要施策の推進状況」などを発表しました(2019年5月9日)。
 
財務の実績と計画
 財務の実績と計画に関する主なものを取り出しますと、次のようになっています。
                     (単位:億円)
       2017年度  2018年度  2018年度  2019年度  2020年度
       実績   期首計画  実績    計画    計画
 受注    38,687   41,000   38,534   43,000  50,000
 売上    40,856   42,000   40,783   43,000  50,000
 事業利益   581   1,600   1,867   2,200   3,400
 (利益率)  (1.4%)   (3.8%)   (4.6%)    (5.1%)  (6.8%)
 純利益    △73    800    1,013   1,100   1,700
 ROE     △0.5%   6%    7.2%     8%   11%
 配当(円/株) 120円   130円   130円   150円   180円
 
 2018年度の期首計画と実績を比べて見ますと、受注・売上の計画は未達成ですが、事業利益と純利益は超過達成していますから好調と言ってよいのではないでしょうか。受注の未達成には「期ズレ」があると書いてありますから、今年度に受注する可能性が大きいのでしょう。
 今年度(2019年度)は受注も売上も伸ばす計画になっています。今年度はすでに始まっていますから、この計画は根拠のある見通しと言えるのかもしれません。
 配当は150円/株(1株50円の時代なら15円配当)と、株主に大サービスする計画になっています。2020年度には180円/株と驚くような計画です。これはもう行き過ぎた株主偏重ではないでしょうか。
 
今後もM&Aを続けて事業拡大する計画
 上の表を見ますと、2019年度から2020年度へ受注・売上ともに4兆3,000億円から5兆円へと、一気に7,000億円(16%)伸ばす飛躍的な事業拡大が計画されていますが、この数値は昨年立案した「2018事業計画」の数値そのままです。
 そして、この飛躍的な事業拡大を達成する施策として「非オーガニック成長(+4,000億円)を含めて事業規模拡大」という計画を掲げています。これも「2018事業計画」に書かれています。
 ここで、「非オーガニック成長」とは吸収合併(M&A)などで事業拡大することです。
 
中量産品事業でM&Aを計画か
 「非オーガニック成長」(M&A)をどの分野で計画しているかですが、「2018事業計画推進状況(2018~2020年度)」の「成長戦略 - 短期① 中量産品事業」に「M&Aを含む重点的な成長投資」と出ています(p.13)。この事業分野でM&Aが計画されているのかもしれません。
 中量産品事業とは、ターボチャージャ、冷熱・カーエアコン、物流機器(フォークリフトなど) ですが、最近この事業分野で三菱重工は拡大を続けています。中量産品事業が含まれている「インダストリー&社会基盤ドメイン」の2020年度の受注目標は 2兆1,000億円と、2018年度の受注実績1兆8,520億円から13%増の目標になっています。ただし、その数値には「非オーガニック成長(+4,000億円)」が含まれていません(p.26)。もしこれが中量産品事業に含まれるとこの分野が三菱重工の中で大きな割合を占めることになりそうです。
 
MHPS(三菱日立パワーシステムズ)の人員対策
 次に「主要施策の推進状況」(p.8)を見ますと、第1が「MHPSの構造転換」です。その背景には世界的な火力発電の後退があります。すでに受注している案件で工事量は2020年度までは高操業ですが、2021年度以降に大幅な人員削減の計画を持っていることが発表されています。
 p.10にはMHPSの固定費削減計画が出ていますが、すでにMHPSの人員を2018年4月までに15%減らし、さらに2021年以降に30%減らす計画になっています。2万人規模の人員を45%減らすわけですから9,000人規模の人員対策になります。
 「減らす」と言っても「首切り」ではなくて「人員シフト」という再配置が中心のようですが、勤務地変更、職種変更など働く者へのしわ寄せが大きいですし、変更に応じることができずにやむなく退職していく人もいると思います。

MRJ(三菱リージョナルジェット)は計画どおり進捗
 「主要施策」の2番目にMRJが出ていますが、「2020年半ば MRJ90初号機引渡し」、その後「MRJ70の開発本格化」という計画は、今のところスケジュールどおりに進んでいるようです。
 
中長期の成長戦略は変化を読むだけ?
 中長期の成長戦略がp.17から出ています。社会の変化・技術の変革など「メガトレンド変化の理解」を基に「既存事業の中長期転換策を創出」と書いてあります。これは当然のことと思いますが、これだけでは受け身的で目先の利益だけを追っていることにならないでしょうか? もっと主体的に倫理の観点を含めて「グローバル企業として当社はどうあるべきか」を考えてもらいたいと思います。
 倫理の観点がないと、二酸化炭素(CO2)の排出量が多い石炭火力でも利益が出る間はやるということになって、欧米で進んでいる脱石炭の動きに遅れるなどということになるのではないでしょうか。
 
   日本共産党三菱重工広製支部 2019年5月24日
   日本共産党三菱重工広製支部のホームページ
http://mitubisi.la.coocan.jp/

2019年5月11日 (土)

高速炉開発会議も破綻状態に

万策尽きた高速炉開発
 昨年のブログ「高速炉開発にブレーキ」でお伝えしましたが、経済産業省の「高速炉開発会議」の下に設置した「戦略ワーキンググループ」がその後の高速炉開発を進めるための「戦略ロードマップ」を策定することになっていました。
 すでに高速増殖炉「もんじゅ」は破綻して2016年12月には廃炉が決定。行き詰まった中でフランスのASTRID計画に相乗りを決めて「戦略ロードマップ」を描こうとしていた2018年6月、ASTRID計画の大幅縮小の方針が伝えられて万策尽きた状態になりました。
 
それでも「戦略ロードマップ」を策定
 そのような状況の中で、「戦略ワーキンググループ」は高速炉開発の「戦略ロードマップ(案)」をまとめ、高速炉開発会議の審議をへて、原子力関係閣僚会議(2018年12月21日)で(案)がとれた「戦略ロードマップ」が決定されました。
 
三菱重工はインセンティブを要求
 経済産業省の「高速炉開発会議」には三菱重工の宮永社長が参加、「戦略ワーキンググループ」には三菱重工の原子力事業部長などが参加しています。
 「戦略ロードマップ」を決定したときの高速炉開発会議(2018年12月20日)で三菱重工の宮永社長は次のように発言しています。
 「ロードマップに従って目標にお応えできるよう、今後とも技術と人材の強化に努め、貢献してまいりたいと考えております。他方、高速炉開発は長期にわたりますため、開発を継続できるよう、ロードマップにも記載いただきましたとおり、適切な規模の財政支援など予算の確保や開発に対するインセンティブが得られる国の制度を考えていただけましたら、まことにありがたく存じます」。
 「インセンティブ」とは「誘引」とか「刺激策」と言われますが、結局はおカネ。三菱重工としては高速炉開発という研究開発をしても商品化して販売するようなことは考えられないので、研究開発だけで確実に利益が出るようにしてくれということでしょう。
 
「戦略ロードマップ」に書かれていること
 万策尽きた状況の中で書かれた「戦略ロードマップ」は、これまでの経緯や外国の状況などを述べた後、今後の進め方を書いていますが、やはり具体的なものはありません。「戦略ロードマップ」そのものは長くて専門用語も多いので、興味のある方は、第9回原子力関係閣僚会議(2018年12月21日)の議事概要を見られることをお勧めします。
 議事概要には、世耕経済産業大臣がロードマップのポイント4点を報告し、そのあと河野外務大臣が「今回のロードマップを国際社会に対して説明していく立場から3点申し上げる」と、次のようなちょっと厳しい(?)発言をしています。
 ・「第一に、・・・当面10年程度は研究開発に徹するものと理解」。
  〈具体的な方策は何もないということ〉
 ・「第二に、・・・あらゆる観点から実現可能性を検討の上、場合によっては今後の開発の在り方についてしっかりと見直しを行うこととなっていること。 特に使用済燃料の処分ができないから再処理を行うという本末転倒と言われるようなことにならないためのものであると理解」。
  〈じゃあ何のため? 放射性廃棄物の減容化が大きな目的ですから、すでに本末転倒では?〉
 ・「最後に、プルトニウムは削減する必要があること」。
  〈その見通しは今のところありません〉
 ・「いずれにしても、高速炉については、多額の税金を投入した「もんじゅ」の反省を真摯に踏まえることが大前提」
  〈1兆円以上の費用をかけて廃炉になった「もんじゅ」の反省を真摯に踏まえるなら、見通しのない高速炉開発を進めることはできないのでは?〉
 このように、高速炉開発会議も破綻状態となりました。
 
やめられない理由
 原発反対の国内世論、すべて破綻した原発輸出、海外での再エネ技術の急速な進歩と普及、その上に万策尽きた高速炉開発。それでも安倍政権は原発をやめようとはしません。世論に逆らって原発の再稼働を進め、見通しのないまま高速炉開発を進めようとしています。
 なぜ安倍政権は原発をやめないのか? その理由は推測するしかありませんが、ひとつは日米原子力協定にからんだ米政府からの圧力に屈していること、国内的には原発推進勢力(原子力ムラ)の神輿(みこし)に乗っていることなどが考えられます。
 いずれにしろ、市民と野党の共闘で安倍政権を倒し、国民の声が届く政府、アメリカと対等にものが言える政府を作ることが急務ではないでしょうか。
 
   日本共産党三菱重工広製支部 2019年5月11日

2019年4月27日 (土)

原発に しがみついてる 経団連

経団連の提言
 「本提言は日本のエネルギー、とりわけ電力が危機に直面しているという問題意識の下に検討し、取りまとめを行いました」。これは、経団連が発表した提言「日本を支える電力システムを再構築する」(2019年4月16日)の冒頭に掲げられている中西会長の言葉です。
 
電力が危機に直面しているとは
 提言は、電力が直面している危機として次の4点をあげています。
  ① 化石燃料依存度が高止まりし、国際社会からは批判も。
  ② 温暖化対策で期待される再エネが、送電制約等により拡大できない。
  ③ 原子力の安全対策が強化された一方、再稼働は低調。
  ④ 国際的に遜色ない電気料金水準が確保できていない。
 上品な言い方になっていますので言い換えたいのですが、このように言ったら過激でしょうか?
  ① 二酸化炭素(CO2)などの排出を減らすよう国際社会から強く言われるけれど政府も電力会社も本気にならない。
  ② 送電を電力会社が握っていて邪魔するので再エネも進まない。
  ③ 原発の安全対策は進んだけれど、原発ノーの世論が強くて再稼働も思うように進まない。
  ④ そんなこんなで電気料金は下がらない。
(注)提言は、「本文」と「概要」が公表されています。引用した4点は「概要」に出ている表現です。
 
原発の再稼働も新増設も期間延長も
 提言はこんなことも言っています。
 ・「政府は、安全性が確認された原子力発電所の再稼働に向けた取り組みを一層強化するとともに」・・・「リプレース・新増設を政策に位置づけるべきである」(本文 p.16)。
 ・「震災から現在までに経過した8年間という期間は」・・・「40年ないし60年の運転期間から控除すべきである」(本文 p.17)。
 ・「米国では運転期間を80年間まで延長する申請も行われ始めている。運転期間を60年間よりもさらに延長した場合の安全性についても、技術的観点から検討を行うべきである」(本文 p.17)。
 
安全より もうけ優先
 さらに、原発を再稼働して60年以上運転したい理由をあけすけに言っています。
 ・「原子力は極めて大きな初期投資によって特徴付けられる。その投資を長期の安定稼働を通じて回収することが基本的な事業モデルであり、稼働率の向上や長期間の運転など、安定的な事業環境の確立が投資収益性の改善に繋がる」(本文 p.17)。
 
環境対策より もうけ優先
 二酸化炭素(CO2)の排出が多い石炭火力についてはダンマリです。石炭火力をやめるとは書いていません。むしろ環境対策にかこつけて、原発を推進する姿勢を鮮明にしていると言えます。
 
原子力事業から撤退することも??
 経団連の中西会長は、提言を公表したときの記者会見で「原子力も、投資回収ができなければ、経営判断として、事業から撤退することになる」と発言しました。彼としては危機感をあおるつもりで言ったのでしょうが、まるで駄々っ子のようです。
 「どうぞ、どうぞ、撤退してください。電気は余ってますから」と言ったらどう言うでしょうか?
 「もう投資してしまっているから、回収して利益を上げるまでは撤退できない」と正直に言うでしょうか?

     ◇
規制する側と規制される側の癒着?
 経団連の提言の話からそれますが、こんなニュースが飛び込んできました。
 大手電力会社や原子力関連メーカーが設立した原子力エネルギー協議会が「原子力規制委員会と産業界が対話する窓口を担う」というのです(日経 2019年4月22日「原子力安全で規制側との対話目指す 原子力エネ協議会理事長」)。原子力エネルギー協議会理事長は三菱重工出身、規制される側です。規制される側に立つ原子力エネルギー協議会が、同じく規制される側の産業界の窓口になって規制する側の原子力規制委員会と対話をする。行き着くところは、規制する側と規制される側の癒着(ゆちゃく)ではないでしょうか。
 そもそも、大資本を代表する経団連と安倍政権は癒着していると言えばそれまでかも知れませんが、原子力規制委員会はそうならないでほしいものです。原子力規制委員会は環境省の外局としてそれなりの独立性を持っていますから。
 
   日本共産党三菱重工広製支部 2019年4月27日

2019年4月14日 (日)

石炭火力はモラルの問題

脱石炭が加速するESG投資


 ESG投資とは、投資家が投資対象企業の財務状況や経営状態だけでなく、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)にどれだけ取り組んでいるかを考慮して投資すること言われています。
 企業に環境への配慮などを求める「ESG投資」の流れを受けて欧米で脱石炭が加速し、新興国で石炭火力発電所を新設する日本企業に投資マネーの厳しい目が向けられていると日経が報じました(日経 2019年4月6日「アジア発電、遠い脱石炭 設備輸出の日本に批判も」)。
 世界のESG投資の運用額は、1年半前の時点ですが、過去5年間で2倍に急増し、日本円でおよそ2,500兆円。世界の投資の4分の1を占めるまでに膨らんでいるそうです(NHKクローズアップ現代 2017年9月27日「2500兆円超え!?世界で急拡大“ESG投資”とは」)。
 
石炭火力、東南アジアで増加


 石炭火力は、液化天然ガス(LNG)の約2倍の二酸化炭素(CO2)を排出しますが、発電コストは比較的安く、さらに石炭の価格は下落傾向にあるようです。そのため、電力需要が急増している東南アジアでは、再生可能エネルギーと石炭火力が増加していると前出の日経が伝えています。
 
石炭火力のメーカー


 石炭火力の発電設備を輸出している国の第1位は中国、第2位は日本(日経 前出)。日本で石炭火力のメーカーと言えば三菱重工。詳しくは、三菱重工の子会社・三菱日立パワーシステムズ(MHPS)で、インドネシアのチレボン石炭火力発電所やタンジュン・ジャティB石炭火力発電所などの建設に参画しています。
 
チレボン石炭火力発電事業に反対する住民グループ
 インドネシアのチレボン石炭火力発電所は、商社の丸紅などが出資して石炭火力発電所の建設と発電事業をおこなうものですが、地球環境問題だけでなく、住民の暮らしを破壊しているとして、住民グループが法廷闘争を行い丸紅にチレボン事業からの撤退を要請しています(国際環境NGO FoE Japanのホームページ「インドネシア・チレボン石炭火力 住民グループが丸紅にチレボン事業からの撤退を要請」2018年10月15日)。

 
それでも三菱重工は石炭火力をやめない


 このブログの冒頭で、ESG投資が脱石炭を加速していることを紹介しましたが、その背景には世界的な環境意識の高まりがあるからでしょう。火力発電の大手メーカーで、三菱重工が追いつきたいとしている競争相手・アメリカのGEやドイツのシーメンスなどは石炭から天然ガスへと軸足を移しているのに対して、三菱日立パワーシステムズ(MHPS)は、あえて最新鋭の石炭火力発電機器向け製造設備を新設したことが伝えられています(日経 2018年6月22日「あえて石炭火力 三菱日立PS、覚悟の落ち穂拾い」)。
 
三菱重工は石炭火力で大きな利益


 日経(同上)は次のように伝えています。「MHPSは売上高全体の6割、約6000億円を石炭火力が占め、特に東南アジアでは強固な営業網を持つ」。「MHPSの親会社である三菱重工は20年度に火力発電設備中心とした『パワー部門』で1兆8千億円の受注を目指している。これは17年度実績比25%増にあたり、石炭がけん引役を担っている。競合他社がガスシフトを進めており、現場からは『石炭の需要全体は下がったがライバルが減り営業がしやすくなった』との声も漏れる」。このようにして、三菱重工は先進国でダントツの石炭火力のメーカーになり、石炭火力で大きな利益を上げようとしています。
 しかし、この報道の後、それほど思うようには進んでいないようです。三菱重工の「2018年度第3四半期 決算説明資料」(2019年2月6日)には、「受注高はパワーの大型石炭火力案件取り消し等の影響により減少」と出ています。具体的には、パワードメインの受注高は昨年度比で2,580億円減少し、全社の「2018年度業績見通し」の受注高は「今回見通し」を2,000億円減少、としました。
 
石炭火力はモラルの問題
 三菱重工の経営も厳しいとは思いますが、世界的な環境意識の高まりに逆行するのはモラルの問題、倫理観の欠如といえるのではないでしょうか。そのようにして利益を上げても働いている人たちはやりがいを見い出すことはできないのではないでしょうか。長い目で見れば、将来技術に乗り遅れて業績も上がらず、会社が衰退という結果につながる心配もあります。
 
   日本共産党三菱重工広製支部 2019年4月14日

2019年3月23日 (土)

武器輸出 次は艦船に期待

 「造船各社が自衛隊や海上保安庁向けに建造してきた艦船の輸出に商機を見いだそうとしている」(日経 2019年3月8日「三菱重工、艦船輸出に期待 大型巡視船が進水」)。


大型巡視船が長崎で進水

 大型巡視船の進水式が三菱重工長崎造船所で行われ、「れいめい」と命名。「全長約150メートル、幅約17メートル。総トン数6500トンで、海上保安庁の巡視船としては最大級」。「建造費は約262億円」(長崎新聞 2019年3月9日「ヘリコプター搭載型巡視船「れいめい」進水」)。

 これがなぜ、艦船の輸出と結びつくのでしょうか?


日本の巡視船は高評価

 「巡視船は速力や航続距離、荒天時の機動など様々な高い性能が求められる。日本の船はそれらの点で評価が高く、外国政府から供与を求める声は多い」(日経 同上)。

 解役した巡視船をマレーシアへ供与した例もあります。

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解役巡視船のマレーシアへの供与について ~当庁から外国海上保安機関への初の巡視船供与~(17/01/05)

 平成29年1月に解役となる巡視船「えりも」「おき」が、マレーシア政府の要請を受けて、マレーシアの海上法執行機関であるマレーシア海上法令執行庁(MMEA)に供与されることとなりました。
 当庁から外国海上保安機関への巡視船供与は初めてになります。
  (海上保安庁のホームページより)
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 このほか、フィリピン、ベトナムなどへ巡視船供与の話もあります。


新型護衛艦の輸出PR

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 フランス・パリで昨年10月に開いた海軍関係の見本市「ユーロ・ナーバル」。三菱重工は「30DX」と名付けた船の大型模型を展示した。

  (日経 同上)

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 この「30DX」は、「防衛省向け3,900トン型護衛艦(新艦艇)」として三菱重工のホームページのニュース(2018-11-01 発行 第5978号)や防衛装備庁のホームページの「お知らせ」・「新艦艇に係る調達の相手方の決定について」(2017年8月9日)にも出ています。

 これらに掲載されている新艦艇の画像を見ますと、レーダーで発見されにくいように船体を斜めの平面で構成し、ミサイルなどは甲板の下に格納して、異様なほどシンプルな形になっています。レーダーで発見されにくいようになっていますのでステルス艦と呼ばれます。三菱重工は、これを輸出しようとPRしています。

 これとは別に、ジャパンマリンユナイテッドは、イギリスの海軍補給艦の入札に参加して最終選考に残ったことが伝えられています(日経 同上)。

(注)「護衛艦」という名称は自衛隊用語で、駆逐艦や巡洋艦などを全てまとめて「護衛艦」と呼称しています(ウィキペディアより)。


武器輸出・その後の状況

 ちょうど1年前に、ブログ「武器輸出 その後の状況」(2018年3月21日)を書きました。そのときは、共同開発・無償供与・入札参加などの情報があり、防衛装備庁が武器輸出の仕掛けづくりに奔走しているという情報もありました。しかし、その後大きなニュースがありませんから、武器輸出は思うようには進んでいないようです。

 一方、日本の造船業界は韓国・中国との競争に押されて厳しい経営状況になっていますから、巡視船や護衛艦の輸出に大きな魅力を感じているようです。


日本の新造船受注シェア急落

 「造船市場の現状」(国土交通省 2017年12月)に日本の造船業界の厳しい状況が出ています。それを見ますと、(1)現在、世界的な造船供給能力過剰に陥っていること、(2)日本の受注量・シェアは2015年に比べて激減している(韓国シェア 45%、中国シェア 30%、日本シェア 7%)ということです。日本の手持工事量は2017年11月時点で2.6年分ということですから、このまま行けば2020年以降は建造する船がないということにもなりかねません

 だからと言って武器輸出を推進してよいわけはありません。日本の経済政策を根本的に転換しなくてはならないのではないでしょうか。


   日本共産党三菱重工広製支部 2019年3月23日

          

知事選挙(4月7日投票)の立候補者のうち日本共産党が公認・推薦・支援している立候補者は次のとおりです。

  北海道  石川ともひろ  鉄路残し自然エネ推進
  神奈川県 岸 牧子    県民の楯となる知事に
  福井県  かねもと幸枝  原発再稼働させず廃炉
  三重県  鈴木 かなこ  戦争ダメ10%ノー発信
  奈良県  前川きよしげ  教育の充実
  大阪府  小西ただかず  「都」構想議論終わらす
  鳥取県  福住ひでゆき  原発・産廃処分場に反対
  島根県  山崎 やすこ  第1次産業生かし発展
  徳島県  天羽 あつし  利権ただし県民第一に
  福岡県  しのだ 清   四つのチェンジを実現
  大分県  山下 かい   国いいなり県政変える

2019年3月10日 (日)

宇宙の軍事利用競争

新しい防衛大綱

 安倍政権は昨年12月18日に新しい防衛大綱を閣議決定しました。
 新しい防衛大綱の冒頭に掲げられている「策定の趣旨」には、安倍政権から見える安全保障環境と大軍拡の必要性が次のように書かれています。

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新しい防衛大綱「策定の趣旨」より
・現在、我が国を取り巻く安全保障環境は、極めて速いスピードで変化している。国際社会のパワーバランスの変化は加速化・複雑化し、既存の秩序をめぐる不確実性は増大している。
・特に、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域については、我が国としての優位性を獲得することが死活的に重要となっており、陸・海・空という従来の区分に依拠した発想から完全に脱却し、全ての領域を横断的に連携させた新たな防衛力の構築に向け、従来とは抜本的に異なる速度で変革を図っていく必要がある。
・日米同盟は引き続き我が国の安全保障の基軸であり続ける。
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 朝鮮半島における平和への動きは、安倍政権の視野から意識的にはずされているようです。
 
宇宙を重視

 最初の防衛大綱は1976年に三木内閣によって閣議決定され、その後アメリカの戦略に合わせて改定されてきました。
 昨年12月に閣議決定された新しい防衛大綱は、上記で見ましたように「宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域」を重視しています。その中でも宇宙についてはトランプ大統領が昨年、宇宙軍を2020年までに創設するという方針を打ち出したことに呼応しているようです。
 さらにトランプ政権は、今年1月17日に「ミサイル防衛見直し(MDR)」を発表し、極超音速兵器を開発するロシアと中国への対抗策として宇宙空間を積極的に活用していく方針を打ち出しました。ただし、極超音速兵器はロシア・中国だけでなくアメリカも日本も開発を進めています。
 このような新兵器開発競争と、新兵器を監視・追尾するための宇宙の軍事利用競争が繰り広げられようとしています。
 
宇宙基本計画工程表を改定

 宇宙の軍事利用競争の先頭を走るトランプ政権の動きに呼応するかのように安倍政権は昨年12月に宇宙基本計画工程表を改定しました。

 工程表の大もとになっている宇宙基本計画は2015年に安倍内閣の宇宙開発戦略本部が決定しました。昨年12月に改定された新しい工程表の特徴は軍事色がますます濃くなっていると言えます。
 宇宙空間の利用は、「測位」、「情報収集」、「気象観測」などに分類されていますが、軍事利用だけでなく平和利用にも必要です。新しい工程表は53の施策ごとに、安保(軍事利用)、民生(平和利用)、基盤(共通基礎)の用途区分を示しています。ただし、安保、民生、基盤のどれか1つだけでなく、2つ含むものも3つ含むものもあります。53の施策のそれぞれに書かれている安保・民生・基盤の数をかぞえてみますと、安保が25、民生が22、基盤が31と安保(軍事利用)の多さを感じます(重複がありますので合計は53を超えます)。
 
ミサイル防衛見直し(MDR)の理屈は複雑?


 トランプ大統領は北朝鮮と平和への道を進め、韓国との合同軍事演習も縮小していますが、「ミサイル防衛見直し(MDR)」では、「北朝鮮には平和への新たな道が存在しているが、絶大な脅威を与え続けており、米国は警戒を続けなければならない」と言って北朝鮮を宇宙の軍事利用強化の口実の一つにしています(Missile Defense ReviewのExecutive Summaryの中)。

 中国に対しては、上記で見ましたように、極超音速兵器を開発しているとして宇宙の軍事利用強化の口実の一つにしています。しかし、今繰り広げられている米中貿易戦争は、アメリカが中国をたたけばアメリカも痛手を負うという経済的には切っても切れない関係にあることをだれの目にも明らかにしています。
 このような環境の下で、なぜアメリカ・ロシア・中国が軍事的対決姿勢をとるのか、単純な理屈では説明がつかないように思います。見えないところでさまざまな勢力が動いているのではないかと思いますが、そこには軍事的対決姿勢をやめるヒントも隠されているかもしれません。
    ◇
 かつて、宇宙は平和利用に限られていました。ところが、2008年、自公政権によって「安全保障に資するよう」という文言が入った宇宙基本法が制定され、それと整合性を取るとして2012年、民主党野田政権の下で、それまで平和目的に限るとされていた独立法人宇宙航空研究開発機構法(JAXA法)から「平和の目的に限り」という規定が削除されました。
 三菱重工は、宇宙の軍事利用競争が進めばロケット打ち上げ事業で利益を得ることでしょう。しかし、軍事利用には協力しないと宣言すれば国民から大きな尊敬を受けることになるのではないでしょうか。
 
   日本共産党三菱重工広製支部 2019年3月8日

2019年2月16日 (土)

三菱重工「定常収益は堅調に推移」

第3四半期決算

 三菱重工は第3四半期(2018年10月~12月)決算と「2018年度業績見通し」を発表しました。
 決算説明資料の決算実績の冒頭には「定常収益は堅調に推移(MRJ開発投資も計画内で進行中)」と書かれています。
 ちょうど1年前、2017年度第3四半期決算発表の記者会見で宮永社長は「今は戦闘状態」と語りました。当時、三菱重工は火力発電の需要後退による業績の落ち込み、納期がこれ以上遅れることが許されないMRJ(三菱リージョナルジェット)の開発など厳しい事情があると考えられました。それに比べると今回は楽観的な感じです。厳しい事情がなくなったわけでもないようですが、ある程度の見通しがついたのかも知れません。
 第3四半期決算の内容は割愛して、残り僅かになった今年度の業績見通しを見ておきたいと思います。

今年度(2018年度)の業績見通し

 三菱重工は今年度から国際会計基準を適用していますので、昨年度までとは表現も数値も違っています(注)。
              2017年度実績    2018年度
              (国際会計基準) 期首見通し   現時点の見通し
受注高      38,687億円       41,000億円    38,000億円
売上収益    40,856億円       42,000億円      同左
事業利益      581億円         1,600億円      同左
親会社の所有者に
帰属する当期利益 △73億円    800億円   同左
ROE              △0.5%      6%        同左
配当             12 0円/株   130円/株  同左
(注)日本会計基準における「売上」は国際会計基準の「売上収益」に、「営業利益」は「事業利益」にほぼ一致しています。「純利益」は「親会社の所有者に帰属する当期利益」に対応していますが、数値は大きく異なる可能性があります。三菱重工の2017年度の「純利益」は704億円ですが、国際会計基準の「親会社の所有者に帰属する当期利益」では上記のとおり△73億円という赤字になっています。

受注高見通しが後退

 受注高が期首見通しの4兆1000億円から3兆8000億円に後退していますが、これについて決算説明資料は「受注高はパワードメインの大型石炭火力案件取り消し等の影響により減少」と説明しています。
 他方、受注残(注文を受けてまだ納品していないもの)についてはパワードメインの製品の工期は比較的長いので、2018年12月末でパワードメインの受注残が3兆0251億円あると記載されています。そのため、パワードメインの仕事も今のところまだあるようですが、この先大規模な人員対策が計画されています。
 三菱日立パワーシステムズ(MHPS)の安藤健司社長(三菱重工副社長)は次のように語っています。
 「予想以上のスピードで(風力や太陽光などの)再生可能エネルギーが伸びていることに加え、石炭火力への逆風の認識を新たにしている」
「石炭火力が小さくなるのは明らかだ。19年3月期から3カ年の事業計画では、固定費の10%削減を指示した」(2019年2月5日 日経「三菱日立パワー社長「固定費削減一段と」、石炭火力に危機感」)。

「定常収益は堅調に推移」とは

 会計基準に「定常収益」という項目はありません。三菱重工は「定常」ではない一時的な費用のために利益が減少している場合にその費用がなかったときの利益を「定常収益」と呼んでいるようです。「定常収益」の数値は、実際の利益に一時的な費用を加えた金額になっています。
 決算説明資料では「定常収益」の見通しを記載しています。それによりますと、一時的な費用として「MRJ投資」900億円(2018年10月31日現在)をあげ、もしこれがなかったら事業利益(上記の1,600億円)は900億円プラスの2,500億円に、親会社の所有者に帰属する当期利益(上記の800億円)は1,700億円になると記載しています。それが冒頭に書いた「定常収益は堅調に推移」の中身です。

ほとんど意味がなくなった「TOP比」という目標

 この「定常収益」を説明しているページには、「2018事業計画」で大きく打ち出した「TOP比」の現状を小さな字で次のように説明しています。
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●定常収益におけるTOP(※1)比… 1 : 1.2 : 0.7
(売上…4.2兆円、総資産…5.1兆円、時価総額…2.8兆円 (※2))
(※1) TOP:Triple One Proportion(売上:総資産:時価総額=1:1:1とする経営目標)

(※2) 時価総額は親会社の所有者に帰属する当期利益の16.7倍(資本コスト:6%)
        として算定

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 時価総額は株価の合計(株価×発行済株数)ですが、最近の三菱重工の株価4300円弱をもとに計算しますと、4300円/株×3.37億株=1.4~1.5兆円となります(3.37億株は発行済株数です)。上記の「時価総額…2.8兆円」のほぼ半分です。
 しかし、三菱重工は「一時的な費用であるMRJ投資の900億円がなかったら株価はもっと高くて、時価総額は定常的な当期利益1,700億円の16.7倍(=2.8兆円)くらいになっているはず」と言いたいようです。その時の株価を逆算して求めると、2.8兆円÷3.37億株=約8300円/株と現状の2倍近くになります。
 そのような架空の株価を計算するために、わかりにくい「資本コスト:6%」の逆数(1÷0.06=16.7)を持ち出しています。ただし、16.7という数値は株価収益率(=株価÷1株当たり当期利益=時価総額÷当期利益)の平均的な数値にほぼ一致していますから根拠のない話ではありませんが、株価は企業業績以外の動向にも左右されますし、日本の株価は公的資金に支えられていますから、経営目標とするには不適当と言わざるを得ません。それに、時価総額を当期利益の16.7倍というくらいなら、当期利益の目標値をかかげた方がよほどわかり易いのではないでしょうか。ただし、利益向上はROE向上とほとんど重なりますから意味がないかも知れません(ROE:株主資本利益率=当期利益÷株主資本×100)。
 株価を目標にすることもROEを目標にすることも株主偏重の考えですが、株の売買による利益も考えると株価を目標にする方がよりあからさまな株主偏重と言えるかもしれません。

社長交代

 三菱重工は4月1日付で社長が交代すると発表しました。次期社長は泉澤清次氏。2011年4月に三菱重工の技術統括本部技術企画部長、その後「2013年、軽自動車エンジンのオイル漏れ不具合で混乱していた三菱自動車に送り込まれる。組織のしがらみにとらわれず改善点を直言。課題対応力が宮永社長の目に留まり、トップマネジメント候補として再招集された」(2019年2月7日 日刊工業新聞)ということですから現在の宮永社長の路線を引き継いで行かれることでしょう。

   日本共産党三菱重工広製支部 2019年2月16日

2019年1月25日 (金)

三菱重工の原子力事業・その後

トルコへの原発輸出は完全には消えていません

 三菱重工業はトルコに原子力発電所を新設する計画の事業化調査(FS:フィージビリティスタディ)を2018年3月末までの計画で実施してきましたが、総事業費の試算が当初の2倍以上の5兆円超に膨れ上がると伝えられました。
 その後の状況をたどってみました。
・4月10日: 同計画の責任者である三菱重工の飯田執行役員は「トルコ側とまだ話し合うべき点が残っているため」「まだFSを続けている」と発言(2018年4月11日 日経)。
・6月20日: 三菱重工業の宮永社長は「日本とトルコの政府間できちんと話をして、それぞれの関係企業も入り、全員の意見が一致しないと難しい」と述べ、早期の着工に慎重な姿勢を示した(2018年6月20日 朝日新聞デジタル)。
・7月末 : 三菱重工業はトルコ政府に対し、事業化に向けた調査結果を提出(2018年8月1日 日経)。
・11月15日: トルコのバイラクタル・エネルギー天然資源副大臣は「1年以内に結論を出す」との見通しを明らかにした(2018年11月16日 東京新聞)。
・12月1日: 安倍晋三首相とトルコのエルドアン大統領がアルゼンチンで会談しており、原発計画も協議したもよう(2018年12月12日 産経新聞)。
・12月12日: 三菱重工業の宮永社長は「経済合理性の範囲内で対応する」との考えを改めて強調した。最終判断について宮永氏は「(計画は)政府間協定だ」と指摘し、両国の協議に委ねる考えを示した(2018年12月12日 産経新聞)。
 これ以降に情報は入っていませんので、暗礁に乗り上げたままトルコ政府の出方を待っていると考えられます。

原子力燃料サイクル事業


 高速増殖炉(原型炉)「もんじゅ」の廃炉決定後も三菱重工は政府と一体になって高速炉開発会議の中で原子力燃料サイクルを進めようとしてきました。しかし、2018年6月には頼りにしていたフランスの高速炉開発計画(ASTRID)を縮小することが伝えられ、12月になると、フランス政府は2020年以降は計画を凍結する方針という報道も流れました。これはまだ正式には決定されていないようですが、暗礁に乗り上げていることは間違いないようです。
 経産省の第5回 高速炉開発会議(2018年12月20日)は高速炉開発の「戦略ロードマップ」を取りまとめましたが、今後どうするか具体的なことは何も書かれていません。
物は残るという現在の科学技術ではどうしようもないものと言われています。

三菱重工の思惑は完全にはずれました

 振り返って見ますと福島の事故の翌年、三菱重工が「原子力事業本部事業説明会(2012年6月4日)」で発表した原発の事業計画は、福島の事故は「大したことではない」と言わんばかりに、いったん受注は減少するもののその後は以前の見通しどおりに伸びていくという計画でした。
 原子力事業の実績と目標
        ―受注実績―
       2009年度  2,700億円
       2010年度  3,100億円
       2011年度  2,500億円
  

          ―受注目標―
       2012年度  2,100億円
       2014年度  4,000億円
      中長期目標 6,000億円
(上記は受注に関するものですが、売上げも同規模と考えられます)

 現実は、原発ゼロを求める国民の声で再稼働は思うように進まず、国際的にも原発建設に反対する声は多く、その結果、2017年度の三菱重工の原子力事業の売上げ実績は、推定約1,800億円となりました。目標6,000億円の3分の1以下です。三菱重工の思惑は完全にはずれたと言えます。

なぜ思惑ははずれたか


 福島の事故の前でも、アメリカのファンドは原発建設に投資をしなくなっていました。廃炉の費用や事故時の補償を含めると採算に合わなかったのです。それでも原発を建設するのは、「経済合理性」以外の力が働いていたとしか考えられません。
 福島の事故の後は、安全とは言えないものの安全を高める費用が大きくなったために、どんな力が働いても原発建設は無理という事態になっています。
 なぜ思惑ははずれたか。それは、世論を軽視したからか、世論に沿うような倫理観がなかったからか、いずれにしろ目先の利益を追い求める株主資本主義のなせるわざと言えるのではないでしょうか。
 一方、福島の事故の翌年、三菱重工の中には佃会長(当時)のように「自国で危ないと判断したものを海外に販売はできない」(SankeiBiz 2012.8.22)という発言もありました。この発言を、当時私たちは「一つの見識」と高く評価しましたが、このような考えが三菱重工の経営陣を支配していたら、状況はすっかり違っていたのではないでしょうか。
     ◇
 原発再稼働反対、原発ゼロを願う各地の運動は続いて、原発推進勢力を追いつめています。
 中国地方でも「さよなら原発ヒロシマの会」、「原発ゼロ金曜日行動・松江」などが毎週金曜日にアピールウォークをしています。

   日本共産党三菱重工広製支部 2019年1月25日

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