2017年8月17日 (木)

勢いづく軍産複合体

 「よみがえる軍産複合体の幻影」と題する記事(2017年8月11日 日経)は、米軍需「ビッグ5」の株価が大きく上昇していることを伝えました。今年7月4日に北朝鮮が1発目の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射して以来、米朝間の緊張が高まる中で、最大の武器製造企業であるロッキードの株価は11%上昇し、この間のS&P500(アメリカの株価指数の一つ)の0.3%高を大幅に上回っていると伝えました。さらに、ロッキードだけでなく、米軍需「ビッグ5」の株価がすべて上昇していること、その背景にはトランプ大統領が2月に18会計年度(17年10月~18年9月)予算案で軍事費を17会計年度の10%増(540億ドル/約6兆円増)の方針を打ち出したがあると言っています。ということは、米朝間の緊張がやわらいだとしても米軍需企業の活況は続くことになりそうです。

米軍需「ビッグ5」のデータ
 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)発表の「世界の軍事企業上位100社(中国を除く)」から米軍需「ビッグ5」のデータを見てみますと、2015年については次のようになっています。なお、米軍需「ビッグ5」とは次の5社です。
  ロッキード・マーチン
  ボーイング
  レイセオン
  ノースロップ・グラマン
  ゼネラル・ダイナミクス
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 米軍需「ビッグ5」2015年のデータ(金額の単位:100万ドル)
  
順位  企業名 武器の 全社の  比率  全社の    全社の
           売上高 売上高   (注)  利益 (%)  従業員数
1位 ロッキード 36440   46132  79%  3605( 7.8%) 12万6000人
2位 ボーイング 27960   96114  29%  5176( 5.4%) 16万1400人
4位 レイセオン 21780   23247  94% 2067(11.2%) 6万1000人
5位 ノースロップ20060   23256  86% 1990( 8.6%)  6万5000人
6位 ゼネラル.D 19240   31469  61%  2965( 9.4%)  9万9900人
    合計   125480   220218  57%  15803( 7.2%)  51万3300人
 

  (注) 比率=武器の売上高÷全社の売上高×100
  全社の利益の(%)は、全社の利益÷全社の売上高×100
  金額の単位は100万ドルです。ロッキードの武器の売上高は364億4000万ドル、全社の売上高は461億3200万ドルとなります。
  順位は、「世界の軍事企業上位100社(中国を除く)」の順位です。3位が抜けていますが、3位はイギリスの BAE Systems です(ご参考:ウィキペディア「BAEシステムズ」)。
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 ロッキードの武器の売上高364億4000万ドルは、1ドル110円で換算しますと約4兆円ですから、三菱重工の全社売上高と同規模で、三菱重工の軍需部門の約10倍です。
 5社の武器売上高合計 1254億8000万ドルは約140兆円。5社の従業員数が51万3300人。さらに、「世界の軍事企業上位100社(中国を除く)」の中には5社を含めてアメリカの企業が全部で43社含まれています。さらに、その周りには部品の加工・供給など広いすそ野が広がっていますし、大学などにはばく大な軍事研究資金が注がれています。このように巨大な武器業界・軍事ビジネスがアメリカの社会、政治、経済に大きな影響力を持っていても不思議ではありません。

(ご参考)世界の軍事企業トップ100(中国を除く)への行き方
  ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)のHome→
  Databases→ 
  SIPRI Arms Industry Database→
  Data for the SIPRI Top 100 for 2002-15 (Excel)
  データはエクセルで表示されます。

軍産複合体
 冒頭で紹介した記事はアメリカの軍需産業と政権の結びつき・癒着の一端を次のように述べています。
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 マティス国防長官はビック5の一角、ゼネラル・ダイナミクスの元取締役。トランプ政権の政府高官への米軍需産業の浸透度合いはかなりのものだ。トランプ政権には軍人出身も多く、特に国防・安全保障分野は軍・軍需産業出身者が幅を効かせる。
  「よみがえる軍産複合体の幻影」(2017年8月11日 日経)より
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 このあと同記事は、冷戦時代に「軍需産業が政官と一体となり国の政策を動かした勢力『軍産複合体』」の復活は考えずらいと書いていますが、はたしてそうでしょうか? 巨大な武器業界・軍事ビジネスが、ときには日が当たらないことがあっても基本的にはずっと続いてきていて、アメリカ軍部との結びつきも継続していることでしょう。
 「しんぶん赤旗」は冷戦終結後も「軍産複合体」の危険性に警鐘を鳴らしています。
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 「軍産複合体」というのは、アイゼンハワー米大統領が1961年の離任演説でのべた警告で、アメリカ資本主義の危険な側面の一つをえぐり出した名言として知られています。アメリカでは、軍部と産業界が幾重にも結び、何百万という人間と、何十億ドルというばく大な金を駆使し、全米の都市、州議会、連邦政府の各機関、マスメディアなどに浸透し、影響力を行使。イラク戦争でもばく大な利益をあげています(軍産複合体って? 赤旗 2004年11月25日 より)。
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 そして今、軍産複合体はトランプ軍拡と米朝間の緊張を受けて勢いづいているのではないでしょうか。
 
日本の場合

 このような動きに日本は決して無関係ではありません。安倍政権が北朝鮮との軍事的な対決姿勢を強める中で、軍事関連企業の株価が急騰しています。
 より根本的には安倍政権がアメリカへの追従を強めながら軍拡志向を明確にしていることがあります。その結果、日本の軍需企業はアメリカの軍産複合体により深く組み込まれながら増強することが考えられます。
 三菱重工の軍需部門は2018年度から「従来枠組みを打破し事業規模拡大」という戦略を打ち出しています(防衛・宇宙事業戦略説明会 2016年6月10日 p.26)。

    日本共産党三菱重工広製支部 2017年8月16日

2017年8月10日 (木)

敵基地攻撃能力は全面戦争能力

自民党の提言
 自民党政務調査会は今年3月末、「北朝鮮の新たな段階の脅威」に対処するためとして、敵のミサイル基地などをたたく「わが国独自の敵基地反撃能力の保有」を直ちに検討するよう求める提言(「弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な強化に関する提言」)をまとめ、安倍晋三首相に提出しました。
 提言は、「弾道ミサイル防衛能力強化のため」として「常時即応体制の確立や、ロフテッド軌道の弾道ミサイル及び同時多発発射による飽和攻撃等からわが国全域を防衛するに足る十分な数量を検討し、早急に予算措置を行うこと。また、将来のわが国独自の早期警戒衛星の保有のため、関連する技術開発をはじめとする必要な措置を加速すること」などを求めています。
 この提言をまとめたのは自民党政務調査会の「弾道ミサイル防衛に関する検討チーム」で、チームの座長は今回の内閣改造で再び防衛相になった小野寺五典氏です
 
防衛相「敵基地攻撃能力」の保有を検討

 小野寺五典防衛相は、就任の翌日、次のように話しました。
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 小野寺五典(いつのり)防衛相は8月4日、報道各社のインタビューで、北朝鮮の弾道ミサイル発射への対応強化の一環として、敵のミサイル発射拠点を破壊する「敵基地攻撃能力」の保有を検討する考えを示した。小野寺氏は就任前、能力保有の検討を政府に求める提言を、自民党の検討チーム座長としてまとめた経緯があり「提言の観点を踏まえ、対処能力向上の検討を進めたい」と話した。(2017年8月5日 朝刊 東京新聞)
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防衛大綱の見直しを指示
 安倍晋三首相は8月6日、広島市での記者会見で防衛大綱の見直しが必要との認識を示し、すでに小野寺五典防衛相に指示したことを表明しました。日経は次のように伝えています。
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 防衛省が検討する敵基地攻撃能力については「現時点で具体的な検討を行う予定はない」としながらも「国民の生命と財産を守るために何をすべきかの観点から、常に現実を踏まえながら様々な検討を行っていくべきだ」と説明した。
  (首相、防衛大綱見直し表明 敵基地攻撃「現実踏まえ検討」2017年8月7日 日経)
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 敵基地攻撃能力の保有については、以前から議論がありましたが、安倍政権は議論を超えて実際に踏み出すことを本気で考えているようです。

防衛省防衛研究所の研究論文
 少し古い資料ですが、2005年に発表された防衛省防衛研究所の研究論文が防衛省のホームページに出ています。
   専守防衛下の敵地攻撃能力をめぐって
   ―弾道ミサイル脅威への1つの対応―

     防衛研究所紀要第8巻第1号(2005年10月)
 ここには、防衛省内の専門家が敵基地攻撃をどのように考えているのか、その一端が示されています。17ページにわたる研究論文の中からポイントと思われるところを拾い出してみました。
・わが国が他国の弾道ミサイル発射基地に対する攻撃を検討する場合、中距離弾道ミサイルのほとんどが移動式ランチャーから発射されることに注意しなければならない。移動式ランチャーはリアルタイムで追尾しなければ位置が把握できないし、リアルタイムで高精度の攻撃兵器を使って攻撃しなければ破壊できない。これは決して容易な作戦ではない。
・1991年の湾岸戦争において、スカッドミサイルを地上で撃破するための大規模な空爆を展開した。しかし、移動式ランチャーを発見することは予想以上に難しく、戦後に行われた調査では、そのほとんどがデコイやタンクローリーなどを誤認したものと結論づけられた。ただし、大規模な空爆を繰り返すことによって、ランチャーを破壊することはできなくとも、彼らの自由な行動を制約し、発射される数を減らすことはできた。
・その後、米軍は情報革命を基盤に軍事能力を大きく高め、移動目標攻撃能力は大きな改善を見せた。2003年のイラク戦争においては、開戦前にイラクが保有していたランチャー約80基のうち、46基を空爆で破壊することに成功した。その結果、ミサイルの発射そのものを先制的に阻止することはできなかったが、湾岸戦争と異なり、かなりの損害を相手に対して強いることができた。ただし、当時のイラク空軍は戦力レベルがきわめて低くなっていたこと、ランチャーの位置を特定するために投入された特殊部隊が隣接するクウェートからの支援を受けることができたという特殊条件の下で行われた戦争であることにを留意しておく必要がある。
・わが国が敵地攻撃能力の保有を考える場合、こちらからの第一撃によって相手の弾道ミサイル攻撃戦力を無力化しようとしても、残存ランチャーから報復攻撃が加えられるか、わが国が第一撃を発動する前に相手国が先制攻撃を行うことが考えられる。
・弾道ミサイルに対する防衛システム全体の1つの構成要素として敵地攻撃能力を位置づければ、弾道ミサイルの飛来そのものを食い止めることはできなが、敵地攻撃能力が制圧効果を発揮して相手の行動を制約して飛来する弾道ミサイルの数を減らすことができる。ただし、相手は初期の段階で集中的にミサイルを発射しようとするだろうから、迎撃システムだけでなく、民間防衛などを含めて備えておかなければならない。
・結論:「弾道ミサイルおよびWMD(大量破壊兵器)の拡散は進み、脅威としての深刻さを増している。しかし、これらの脅威を一挙に低減するワイルドカード(万能の策)は存在しない。結局のところ、我が国にとっての最適解とは、我が国の周辺で弾道ミサイルを配備している国家についての情報収集・分析能力を強化するほか、軍備管理、不拡散、地域情勢安定のための信頼醸成をはじめとする安全保障協力のような外交的努力と、高性能のミサイル防衛システム開発や日米防衛協力をさらに進めることによる抑止力の強化などの軍事的努力を並行して一歩ずつ進めていくことであろう。弾道ミサイルの脅威が増大していく中で、我が国の安全保障政策に求められているのは、政治的、戦略的な創造性を持って、これらの手段をうまく組み合わせていくことなのである」。
    ◇
 防衛省のこの研究者は日米同盟を不動のものとする前提に立って考えていると思われますが、それでも、「外交的努力」や「政治的、戦略的な創造性」が必要であり、弾道ミサイル防衛も敵基地攻撃能力もそれだけでは国民を守ることができないと考えているようです。

ご参考:
対北朝鮮「ミサイル防衛」も「敵基地攻撃」も驚くほど非現実的である
 現代ビジネス(講談社 2017年4月5日 半田 滋)
対北朝鮮の「敵基地攻撃論」には実効性がない
 東洋経済ONLINE(2017年04月05日 薬師寺 克行 :東洋大学教授)
ブログ:「弾道ミサイル防衛」で国民を守れるか?

    日本共産党三菱重工広製支部 2017年8月10日

2017年8月 3日 (木)

子会社への事業継承・分社化・事業統合がめじろ押し

 三菱重工グループ内の事業継承や事業統合に関する発表が4件、NTTデータへの事業移管の発表が1件、立て続けにありました。すべて三菱重工の「ニュースリリース 2017年度」に出ています。
 発表の文面は長くはありませんが慣れない用語を含んでいますので、わかりにくいところがあります。それで、要点と思われるところを書いてみました。

<2017年7月31日発表>
(1) 当社油圧機械の製造、品質保証及び調達機能の会社分割による当社子会社への承継に関するお知らせ
 下関地区で生産している油圧機械事業のうち、油圧機械に係る品質保証、調達機能については、三菱重工メカトロシステムズに承継させ、既に承継させている営業、設計、建設と一体となった事業体制強化に取り組む。
 製造機能については、平成30年1月1日付で設立予定の造船新会社(注:(2)の造船新会社です)に承継させ、下関 地区の商船事業と一体となって安定した操業を確保することを狙いとするもの。

(2) 当社船舶海洋事業の会社分割による当社子会社への承継に関するお知らせ
 平成27年10月1日付で、三菱重工船舶海洋(ガス運搬船に建造を集中)と三菱重工船体(大型船体ブロックの生産に特化)を設立して生産合理化投資等を推進してきた。さらに、下関の艤装技術力と長崎の船体技術力を融合して艤装主体船の伸長を図ると共に環境対策関連事業の拡大に取り組んでいく。
 これらの新たな事業推進体制の整備として、艤装主体船の建造、アライアンス先との協業、設計供与、新事業の展開等を営む造船新会社を平成30年1月1日付で設立する予定。そのための準備会社を設立する方針を決定した。
 同時に、平成30年1月1日付で三菱重工船体を承継会社として大型船建造並びに船体ブロック及び大型鉄構構造物の製造を主体とする新会社を設立する予定。

(3) 当社化学プラント及び交通製品に係るエンジニアリング事業の会社分割による当社子会社への承継に関するお知らせ
 平成28年4月にエンジニアリング関連事業を集約してエンジニアリング本部を設立したが、事業責任及び権限の明確化並びに意思決定の迅速化をはかるために平成29年9月を目処に100%出資子会社を設立し、平成30年1月1日付で当社の営む化学プラント及び交通製品に係るエンジニアリング事業を承継させる方針を決定した。

(4) 情報システム分野におけるNTTデータと三菱重工との提携について 新会社「株式会社NTTデータMHIシステムズ」を発足
 NTTデータと三菱重工は、本年3月30日に発表した三菱重工の完全子会社であるMHI情報システムズ(株)を母体とした新会社設立に関する基本合意に基づいて、三菱重工が設立した準備会社にMHI情報システムズ(株)の全事業を移管後、その株式の51%をNTTデータが取得し、新会社「株式会社NTTデータMHIシステムズ」を10月1日付で発足させる。
新会社の概要
 社名    株式会社NTTデータMHIシステムズ
 本社所在地 東京都港区港南2-13-34
 代表者の役職・氏名 代表取締役社長 椎名 雅典
 事業内容  三菱重工グループ向けITインフラの運用・保守、業務系アプリケーション開発など
 従業員数  約930名
 資本金(出資比率) 40百万円(NTTデータ:51%、三菱重工:49%)
 発足年月日 2017年10月1日

<2017年7月28日発表>
(5) 当社インダストリー&社会基盤ドメインにおける製造、品質保証及び調達機能の一部の会社分割による当社子会社への承継に係る吸収分割契約の締結に関するお知らせ
 中小規模事業強化策として、平成29年10月1日付で三菱重工メカトロシステムズに、三菱印刷紙工及び三菱重工マシナリーテクノロジーのゴム・タイヤ 機械事業を統合する。この統合に併せて、統合対象事業の製造、品質保証及び調達機能を三菱重工メカトロシステムズに承継させる。
 
三菱重工マシナリーテクノロジーからゴム・タイヤ機械事業がなくなると

 上記の(5)に、三菱重工マシナリーテクノロジーのゴム・タイヤ機械事業を三菱重工メカトロシステムズに統合すると書かれています。
 三菱重工マシナリーテクノロジーは、MECエンジニアリングサービス、広島菱重エンジニアリング、リョーセンエンジニアズの3社を統合して2012年4月1日に発足しました。その後、2015年10月1日には搬送システムが住友重機械搬送システムに吸収されるなど主要事業が次々なくなり、ついにゴム・タイヤ機械もなくなると、あとに残るのはホントにわずかな感じになります。
 子会社への事業継承・分社化・事業統合などは多くの場合、人の移動も伴います。それは、本人や家族にとって大きな苦痛になったり、さらには、自己都合退職を余儀なくされたりすることもあり得ます。株主偏重の経営は働く者へしわ寄せの経営です。

ご参考:三菱重工を分析するブログ「(4)広島の新会社は不安がいっぱい」

    日本共産党三菱重工広製支部 2017年8月3日

2017年7月20日 (木)

「弾道ミサイル防衛」で国民を守れるか?

増え続ける防衛費
 先日の3連休最後の日に日経は次のように報じました。
 ・防衛省が2018年度予算の概算要求で過去最高額を計上する方針であること
 ・概算要求のポイントの第一は北朝鮮への対応である弾道ミサイル防衛で、その主な中身は、
   ・陸上配備型「イージス・アショア」の研究費増額
   ・イージス艦搭載の迎撃ミサイル「SM-3ブロック2A」の生産
(日経 2017年7月17日「防衛費4年連続5兆円超 来年度予算、過去最高要求へ 」より)

イージス・アショアとは
 イージス・アショア(Aegis Ashore)とは、イージス・システムの陸上配備です。イージス・システムは弾道ミサイル防衛を含む艦載用の兵器システムで、これを搭載する艦船をイージス艦と言います。このイージス・システムを陸上で使おうというのがイージス・アショアです。
 イージス・システムはアメリカ製で、中身はブラックボックス(マル秘)です。価格は500億円とも言われています(ウィキペディア「イージス・システム」より)。
 防衛省の平成24年度中央調達実施概況には「イージス艦へのBMD機能の付加(器材等調達)1式 341億円 米海軍省(契約相手方)」という記載があります。
 (注)BMD:弾道ミサイル防衛(ballistic missile defence)

SM-3ブロック2Aとは
 SM(スタンダード・ミサイル)はアメリカ製の艦対空ミサイル。その中で、SM-3シリーズは弾道ミサイルを迎撃するための艦船発射型迎撃ミサイルです。その中でも、「SM-3ブロック2A」は大陸間弾道ミサイルの迎撃を目的に日米共同で開発されました。日米共同開発には三菱重工も参画しています(詳細は「日本の軍需産業 2016 (5)ミサイル防衛システム」をご参照ください)。
 イージス・アショアも「SM-3ブロック2A」も、早期警戒衛星をはじめとする米軍の情報システムのもとで運用されますから、日本の自衛隊が米軍に深く組み込まれることを意味します。

どうなる日本のミサイル防衛
 NHK NEWS WEB(7月3日)「どうなる日本のミサイル防衛」は、日本のミサイル防衛の現状と新しいシステムを導入する意味を伝えています。
 ・日本は現在、日本海に展開するイージス艦に搭載された迎撃ミサイル「SM3」と、東京・新宿区の防衛省などに配備されている迎撃ミサイル「PAC3」を組み合わせた2段階の態勢をとっています。防衛省の担当者は「ミサイル防衛は着実に整備が進められており、万全に対応できるので大丈夫だ」と言いますが、「『2層防衛』となっているのは日本のごく一部で、十分とはいえない」という指摘もあります。
 ・新システムとしてTHAAD(高高度地対空ミサイル)の導入が検討されています。THAADは、同時に飛んでくる複数の弾道ミサイルへの対処能力が高いとされ、「2層防衛」から「3層防衛」となることから、防衛省は、これらのシステムが導入されれば、迎撃態勢が強化されるとしています。
 ・さらに革新的な技術として「高出力レーザー」と「レールガン」の研究も進められていますが、日本で弾道ミサイル防衛に活用されるまでには、まだまだ時間が必要で、20年以上はかかると見られています。
 ・多額の費用がかかることも紹介しています。
   イージス・アショア1基当たりの価格は800億円程度
   SM3を改良した新型の迎撃ミサイルは、1発あたりが40億円程度
   THAADも1基当たりの価格は800億円程度、迎撃ミサイル1発の価格が10億円余り
 ・さらに大きな問題を紹介しています。防衛省関係者は「(THAADを導入する)新型の迎撃ミサイルシステムを運用できるようになるには、5年くらいかかるだろう。だが、運用が開始されたときに北朝鮮のミサイルの能力が、迎撃能力を上回っていればシステムを導入する意味がない」と。
 ・最後に、自民党が安倍総理大臣に提出した提言に盛り込まれている「敵基地反撃能力」の保有を紹介しています。

当たるのか? 米ミサイル防衛
 日経ビジネス(2017年7月10日)「当たるのか? 米ミサイル防衛」は、ミサイル防衛先進国アメリカの事情を紹介しています。
 まず、現行の米ミサイル防衛システムで北朝鮮からの弾道ミサイル攻撃を迎撃できる「確かな保証は存在しない」こと。そのため、米政権は次世代システムの開発・テストを急いでいると。
 そして、どんなにミサイル防衛を強化しても、迎撃能力を超える多数のミサイルによる攻撃(飽和攻撃)には太刀打ちできないということ。
 オペリングMDA元局長は、もし北朝鮮が明日攻撃を仕掛けてきたら、迎撃ミサイルが敵の弾頭を本当に迎撃できるかどうか誰にも分らないと認めていると。

対北朝鮮「ミサイル防衛」も「敵基地攻撃」も驚くほど非現実的である
 現代ビジネス(講談社 2017年4月5日 半田 滋)は「対北朝鮮『ミサイル防衛』も『敵基地攻撃』も驚くほど非現実的である」と説得力を持って喝破しています。
 まず、自衛隊のミサイル防衛システムは、イージスアショア(陸上配備型イージスシステム)やTHAAD(高高度地対空ミサイル)で充実させても、守ることができない実情を具体的に示しています。
 「軍事的合理性や費用対効果の面から当初、自衛隊の制服組はMD(ミサイル防衛)導入に反対した。これに対し、2002年当時の守屋武昌防衛事務次官は『米国はMD開発に10兆円かけた。同盟国として支えるのは当然だ』と主張して導入の旗を振り、『防衛庁の守護神』といわれた山崎拓元防衛庁長官が後押しする形でMD導入は翌03年に閣議決定された。きっかけは対米追従だったのだ」。
 「一から導入するイージスアショア、THAADが極めて高額の防衛費を必要とするのは自明だろう。しかも米政府の提示する価格、納期で購入が義務づけられる対外有償軍事援助(FMS)となるのは確実なため、『いつ、いくらでどう提供するか』は米政府次第となり、武器を媒介にした米国による日本支配が強化されるのは間違いない」。
 今回の自民党の提言にある「敵基地反撃」も、潜水艦発射弾道ミサイルの開発や北朝鮮の基地は7割が地下化されていることなどから北朝鮮の戦闘能力を容易に壊滅することはできず、全面戦争に発展しかねないと警告しています。
 「結局、日本がやるべきことは」北朝鮮が米朝間の平和協定締結を望んでいることから、「安倍政権に求められるのは、以下のように米国を説得することだろう。『北朝鮮との対話に乗り出し、交渉の過程で核放棄とミサイル開発の中止を求め、見返りに平和協定を結んで北朝鮮に《米国は攻撃しない》という保障を与えるべきだ』と」。

際限ない軍拡競争
 日本がアメリカに組み込まれる形で進められている「弾道ミサイル防衛」は非現実的で、際限ない軍拡競争と言えるようです。米ソ冷戦時代の核兵器開発競争の悪夢が思い出されます。

    日本共産党三菱重工広製支部 2017年7月20日

2017年7月13日 (木)

三菱重工、川崎重工、IHIの1人当り売上高など

売上高
        三菱重工    川崎重工      IHI
2010年度 2兆9037億円  1兆2269億円  1兆1872億円
2011年度 2兆8209億円  1兆3037億円  1兆2218億円
2012年度 2兆8178億円  1兆2888億円  1兆2560億円
2013年度 3兆3495億円  1兆3854億円  1兆3040億円
2014年度 3兆9921億円  1兆4861億円  1兆4558億円
2015年度 4兆0468億円  1兆5410億円  1兆5393億円
2016年度 3兆9140億円  1兆5188億円  1兆4863億円

 売上高は景気に左右されますが、この間3社とも増加傾向と言えます。その要因の一つにM&A(合併・買収)による事業拡大があります。

従業員数
        三菱重工    川崎重工      IHI
2010年度  8万1347人   3万2706人   2万6035人
2011年度  8万2259人   3万3264人   2万6915人
2012年度  8万2285人   3万4010人   2万6618人
2013年度  9万6055人   3万4620人   2万7562人
2014年度  9万8442人   3万5471人   2万8533人
2015年度  10万0784人   3万4605人   2万9494人
2016年度  9万9340人   3万5127人   2万9659人

 M&A(合併・買収)で事業と人を吸収・拡大してきたために従業員数も増加傾向が見られます。
 三菱重工は、事業と人を吸収・拡大したあと、固定費削減と言って人員を削減しています。
 従業員数にどの範囲まで含めているかは前回のブログの(注)をご参照ください。

1人当り売上高(売上高÷従業員数)
        三菱重工    川崎重工      IHI
2010年度 3569万円/人  3751万円/人  4560万円/人
2011年度 3429万円/人  3919万円/人  4539万円/人
2012年度 3424万円/人  3789万円/人  4718万円/人
2013年度 3487万円/人  4001万円/人  4731万円/人
2014年度 4055万円/人  4189万円/人  5102万円/人
2015年度 4015万円/人  4453万円/人  5219万円/人
2016年度 3940万円/人  4323万円/人  5011万円/人

 従業員数に臨時従業員数を含む・含まないの違いがあります。外注率の違いもあります。そのため1人当り売上高を企業間で比較するのはあまり意味がないように思われますが、3社とも同じくらいの規模と言えます。
 一方、同一企業における推移を見てみますと、1人当り売上高がはっきりと増加傾向にあることがわかります。上記の表の、初めの3年(2010~12年度)とあとの3年(2013~16年度)を単純平均で比較しますと次のようになります。

          三菱重工    川崎重工     IHI
2010~12年度 3474万円/人 3819万円/人 4605万円/人
2013~16年度 4003万円/人 4321万円/人 5110万円/人
 増加率     1.15倍     1.13倍      1.11倍

 1人当り売上高の増加には、設備投資による自動化・効率化もありますが、仕事量が増加して労働がきつくなっているも考えられます。これだけのデータから断ずることはできませんが、搾取のレベルが上がったと言うべきかもしれません。

営業利益の推移
       三菱重工  川崎重工   IHI
2010年度 1012億円  426億円  613億円
2011年度 1119億円  574億円  433億円
2012年度 1635億円  420億円  421億円
2013年度 2061億円  723億円  532億円
2014年度 2961億円  872億円  632億円
2015年度 3095億円  959億円  220億円
2016年度 1505億円  459億円  473億円

 営業利益の推移も見てみました。この間、三菱重工と川崎重工は2015年度に最高を、IHIは2014年度に最高を記録しています。営業利益は創出した利益ですから、製造業にとっては重要ですが、安値受注や見通しの間違いなど思わぬミスなどがあって期待どおりには行かないところがあると思います。
 当然のことですが、株主資本主義にとっては資本効率向上のために営業利益の向上は重要な課題です。
 
労働分配率について

 労働分配率は、人件費÷付加価値 で求められますが、企業は人件費を公表していませんので有価証券報告書などから求めることはできません。

    日本共産党三菱重工広製支部 2017年7月13日

2017年7月 6日 (木)

三菱重工、川崎重工、IHIの内部留保と配当

 日本の大手3重工と言われる三菱重工、川崎重工、IHIの内部留保と配当はこれまで見て来ましたが、2016年度の各社の有価証券報告書が出ましたので、最近のデータを整理しておきたいと思います。

内部留保
        三菱重工  川崎重工    IHI
2012年度 11,053億円  2,529億円  1,877億円
2013年度 12,353億円  2,718億円  2,257億円
2014年度 13,523億円  3,079億円  2,070億円
2015年度 13,770億円  3,340億円  1,992億円
2016年度 14,184億円  3,418億円  2,033億円

 三菱重工は、客船の赤字やMRJの開発遅れなど苦しい部分があっても、利益を出し、内部留保を着実に積み上げ続けています。
 ここでは、内部留保=利益剰余金+資本剰余金 としています。

従業員数
       三菱重工  川崎重工    IHI
2012年度  82,285人  34,010人   26,618人
2013年度  96,055人  34,620人   27,562人
2014年度  98,442人  35,471人   28,533人
2015年度  100,784人  34,605人   29,494人
2016年度  99,340人  35,127人   29,659人

 三菱重工は、M&A(合併・買収)で事業と人を吸収・拡大したあと、固定費削減と言って人員を削減しています。
 従業員数にどの範囲まで含めているかは下記の(注)をご参照ください。

1人当り内部留保(内部留保÷従業員数)
        三菱重工    川崎重工     IHI
2012年度 1,343万円/人  743万円/人  705万円/人
2013年度 1,286万円/人  785万円/人  818万円/人
2014年度 1,373万円/人  868万円/人  725万円/人
2015年度 1,366万円/人  965万円/人  675万円/人
2016年度 1,427万円/人  973万円/人  685万円/人

 こんなに会社に貢献してきました。この内の何%かを賃上げにまわしてもらってもいいんじゃないでしょうか。

1株当り配当と配当総額
        三菱重工   川崎重工    IHI
        1株  総額    1株  総額  1株 総額
2012年度  8円  268億円  5円   83億円 5円 73億円
2013年度  8円  268億円  6円 100億円 6円 92億円
2014年度 11円 369億円 10円 167億円 6円 92億円
2015年度 12円 403億円 12円 200億円 3円 46億円
2016年度 12円 403億円  6円  100億円 0円  -

 三菱重工は株主偏重の高配当を続けています。このような傾向は全国的に強くなっています。

1人当り配当額(配当総額÷従業員数)
        三菱重工  川崎重工     IHI
2012年度 32,5万円/人 24.4万円/人 27.4万円/人
2013年度 27.9万円/人 28.8万円/人 33.3万円/人
2014年度 37.4万円/人 47.0万円/人 32.2万円/人
2015年度 39.9万円/人 57.7万円/人 15.5万円/人
2016年度 40.5万円/人 28.4万円/人  -

 株主にも、こんなに貢いできました。

(注)従業員数について
  従業員数にどの範囲まで含めているかは各社の有価証券報告書の「第一部 企業情報」の「第1 企業の概況」の「5 従業員の状況」に(注)で示されています。

  三菱重工の(注)
   1.従業員数には、グループ外から当社グループ(当社及び連結子会社)への出向者を含み、当社グループからグループ外への出向者を含まない。また、臨時従業員数は[ ]内に年間の平均人員を外数で記載している。
   2.臨時従業員には、定年退職後の再雇用社員、嘱託契約の従業員及びパートタイマー等を含み、派遣社員等は含まない。
 (上記の三菱重工の従業員数は、年間平均の臨時従業員数を含んでいます。)

  川崎重工の(注)
   1 従業員数は就業人員のみを対象としている。なお、臨時従業員数については従業員総数の100分の10未満であるため記載を省略している。
   2 従業員数は再雇用従業員を含んでいる。

  IHIの(注)
   従業員数は就業人員数(当社グループからグループ外への出向者を除き,グループ外から当社グループへの出向者を含む。)であり,臨時従業員数については,従業員数の100分の10未満であるため記載していません。

(注)有価証券報告書について
 有価証券報告書は株式上場企業が法律に基づいて毎年作成します。インターネットで見ることができます。量が多いのと、独特の用語がありますが、書いてある項目順(目次)が決まっていますので見たいところだけ見ることができます。
 配当総額は、「第一部 企業情報」の「第4 提出会社の状況」の「3 配当政策」の中にでています。
 利益剰余金と資本剰余金は、「第一部 企業情報」の「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等」のトップに出ている「連結貸借対照表」のおしまいの方「純資産の部」の中に出ています。
 なお、主要な項目については、各社がホームページでIR情報(株主・投資家への情報)として公開しています。

    日本共産党三菱重工広製支部 2017年7月6日

2017年6月29日 (木)

三菱重工、川崎重工、IHI、JMUの軍需生産

 日本の大手3重工(三菱重工、川崎重工、IHI)+JMUの軍需生産を、防衛装備庁の中央調達から抜き出して整理しておきたいと思います。防衛装備庁のホームページの中に「調達実績及び調達見込(中央調達分)」というページがあります。そこから各年度の「調達実績及び調達見込」を見ることができます。
 中央調達とは、自衛隊の装備(武器など)や防衛装備庁の研究開発などの調達で、要求機関としては、「陸幕、海幕、空幕、装備庁、防大、防医大、内局等」が記載されています。企業の軍需生産としては、中央調達のほかには地方調達や輸出が考えられます。
 大手3重工の一つIHIは、もとの社名が石川島播磨重工業(株)で、2007年に(株)IHIに変更しました。JMU(ジャパン マリンユナイテッド(株))は、IHI、JFEホールディングス、日立造船の3社が造船部門を統合して2013年に設立した会社です。IHIは護衛艦、掃海艦などの武器を生産していましたが、それらはJMUに引き継がれていますので、重工関連の軍需生産として一緒に見ておきたいと思います。

武器生産の大手企業
 各年度の「調達実績及び調達見込」の「3 上位20社の契約実績」に「過去5ヵ年の順位」が出ています。大手3重工とJMUは次のようになっています。
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     中央調達額の順位
   (平成)  三菱重工 川崎重工 IHI  JMU
2016(28)年度 1位     2位    7位   6位
2015(27)年度 2位     1位    3位   7位
2014(26)年度 1位     2位    6位   20位
2013(25)年度 1位     3位    5位   17位
2012(24)年度 1位     3位    9位   6位
-----------------------------------------

 川崎重工は、2015(27)年度に1位になっていますが、これは固定翼哨戒機(P-1)を20機まとめて契約した金額(2,073億円)が大きかったためです。同じ年度にIHIの順位も3位と上がっていますが、これは同じ固定翼哨戒機(P-1)20機のエンジン(80基)をまとめて契約した金額(708億円)が大きかったためです。
 JMUは護衛艦を受注した年(2016(28)年度、2015(27)年度、2012(24)年度)に順位が上がっています。そうでない年(2014(26)年度、2013(25)年度)は、三菱重工が護衛艦を受注しています。
 大手3重工とJMUに並んで調達額が大きいのは、探知・追尾・制御・通信などに関する武器を生産している三菱電機、日本電気、富士通、東芝などです。
 各社が生産している装備(武器など)にどのようなものがあるかは、「3 上位20社の契約実績」に「主な調達品」として出ています。それらの金額は「2 中央調達の主要調達品目」に主なものが出ています。

大手3重工とJMUへの調達額
 各年度の「調達実績及び調達見込」の「2 上位20社の契約実績」に各社の契約実績が出ています。
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    4社の中央調達契約額
   (平成)    三菱重工  川崎重工    IHI    JMU
2016(28)年度 4,532億円  994億円  355億円 410億円
2015(27)年度 1,998億円 2,778億円 1,147億円 389億円
2014(26)年度 2,632億円 1,913億円  619億円 102億円
2013(25)年度 3,165億円  948億円  483億円 116億円
2012(24)年度 2,403億円 1,480億円  277億円 740億円
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上記4社の合計が中央調達年度契約額に占める割合を見てみますと次のようになっています。
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    中央調達年度契約額に占める4社の割合
         中央調達  
  (平成)    年度契約額  4社合計   割合
2016(28)年度 18,397億円 6,291億円 34.2%
2015(27)年度 18,126億円 6,312億円 34.8%
2014(26)年度 15,717億円 5,266億円 33.5%
2013(25)年度 12,693億円 4,712億円 37.1%
2012(24)年度 15,287億円 4,900億円 32.1%
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 4社で中央調達の3分の1超を占める状態が続いています。護衛艦はJMUと三菱重工の2社、戦闘機は三菱重工1社、などのように、高額な装備は競争がほとんどない独占状態であることがわかります。
 中央調達の年度契約額が、2015年度からドッと上がっています。2,500億円規模の増額です。2015年は戦争法(安保法制)が強行可決され、防衛装備庁が作られた年です。アメリカと一緒に戦う準備が具体的に進められていることがわかります。アメリカと一緒に戦う準備は、アメリカから高額な装備の購入にも表れています。

アメリカから高額兵器の購入
 「2 中央調達の主要調達品目」の契約相手方の中に「米海軍省」、「米空軍省」などアメリカから購入している高額な装備があります。
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    アメリカから購入している高額な装備
2016(平成28)年度
  ティルト・ローター機(V-22)       1式  754億円
  戦闘機(F-35A)             1 式 1,091億円
  新早期警戒機(E-2D)          1式  260億円
  新空中給油・輸送機          1式  231億円
  滞空型無人機(グローバルホーク) 1式  145億円
                       合計  2,481億円
2015(平成27)年度
  ティルト・ローター機(V-22)       1式  585億円
  戦闘機(F-35A)              1式 1,065億円
                       合計  1,650億円

2014(平成26)年度
  戦闘機(F-35A)                1式  750億円
                       合計   750億円
2013(平成25)年度
  イージス装置等のプログラム維持管理1式 73億円
  戦闘機(F-35A)              1式  355億円
                       合計   428億円
2012(平成24)年度
  イージス艦へのBMD機能の付加  1式  341億円
  戦闘機(F-35A)             1式  569億円
                        合計   910億円
-----------------------------------------

 これも2015年度から急増しています。

今年度も高額の装備が目白押し
 中央調達の「平成28年度調達実績及び平成29年度調達見込」の中に「5 平成29年度中央調達の主要調達予定品目」が出ています。それを見ますと次のような高額装備が並んでいます。
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    2017(平成29)年度の主要調達予定品目から抜粋
ティルト・ローター機(V-22)             4機
水陸両用車(AAV7)               11両
10式戦車                       6両
潜水艦(8128)                    1隻
弾道ミサイル防衛用誘導弾SM-3        1式
戦闘機(F-35A)                    6機
滞空型無人機等(RQ-4Bグローバルホーク)1機
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 これらの内、ティルト・ローター機(V-22)と滞空型無人機等(RQ-4Bグローバルホーク)を除く他の5つは三菱重工に関係があります。水陸両用車(AAV7)はアメリカ製で2016(平成28)年度に11両(81億円)を住商エアロシステムが納入していますが、三菱重工が日本製水陸両用車を開発していることがネットで伝えられています。10式戦車は三菱重工が作っています。弾道ミサイル防衛用誘導弾SM-3については能力向上型迎撃ミサイル(SM-3 ブロックⅡA)の日米共同開発に三菱重工が参加しています。戦闘機(F-35A)の国内製造に三菱重工が参加しています。

パリ航空ショーに固定翼哨戒機(P-1)が参加
 2014年4月に安倍内閣が武器輸出を原則解禁する「防衛装備移転三原則」を閣議決定してからいろいろな動きがありましたが、最近のニュースとしては今年のパリ航空ショー(6月19日~6月25日)に川崎重工が自衛隊に納入した固定翼哨戒機(P-1)が展示されたことではないでしょうか(Aviation Wire 2017年6月23日)。自衛隊機がパリ航空ショーに参加したのは初めてのことと伝えています。
 武器輸出が本格的に始まると軍需生産は飛躍的に拡大して、日本経済の軍事化が大きく進むことになります。

    日本共産党三菱重工広製支部 2017年6月29日

2017年6月15日 (木)

三菱重工、川崎重工、IHIの決算

 日本の大手3重工と言われる三菱重工、川崎重工、IHIの2016年度決算を見ておきたいと思います。
 各社が発表した決算説明資料を中心に、決算短信(決算概要)と2015年度の有価証券報告書から抜き出しました。有価証券報告書は2016年度のものがまだ発表されていませんので、従業員数は少し古いデータになっています。

三菱重工
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        2015年度実績 2016年度実績 2017年度計画
 受注     44,855億円   42,756億円   45,000億円
 売上     40,468億円   39,140億円   41,500億円
 営業利益   3,095億円    1,505億円    2,300億円
 純利益      638億円     877億円     1,000億円
 ROE         3.7%       5.1%       5.5%
 従業員数   100,784人     -        -

 配当       12円/株     12円/株     12円/株
 配当総額     403億円      403億円     403億円
 配当性向      61.3%       45.9%       40.3%
 1人当り
  配当額   40.0万円/人      -        -

 内部留保   13,770億円   14,184億円      -
 1人当り
  内部留保  1,366万円/人     -         -
---------------------------------
(注)ROE:純利益÷株主資本(%)
(注)配当性向:配当総額÷純利益(%)
(注)従業員数:有価証券報告書より
  1.従業員数には、グループ外から当社グループ(当社及び連結子会社)への出向者を含み、当社グループからグループ外への出向者を含まない。また、臨時従業員数は年間の平均人員を外数で記載している。
  2.臨時従業員には、定年退職後の再雇用社員、嘱託契約の従業員及びパートタイマー等を含み、派遣社員等は含まない。
 (2015年度末における正規従業員数は83,932人、年間平均の臨時従業員数16,852人、合計100,784人)
(注)配当性向:配当総額÷純利益(%)
(注)1人当り配当額:配当総額÷従業員数
(注)内部留保:利益剰余金+資本剰余金
(注)1人当り内部留保:内部留保÷従業員数

川崎重工
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        2015年度実績 2016年度実績 2017年度計画
 受注    1兆6936億円   13,487億円   15,600億円
 売上    1兆5410億円   15,188億円   15,550億円
 営業利益     959億円      459億円      580億円
 純利益       460億円     262億円      360億円
 ROE        10.6%        6.0%       8.0%
 従業員数    34,605人       -        -

 配当       12円/株     6円/株      6円/株
 配当総額    200億円     100億円      100億円
 配当性向     43.5%      382%        27.8%
 1人当り
  配当額   57.8万円/人     -        -

 内部留保   3,340億円   3,418億円      -
 1人当り
  内部留保  965万円/人      -          -  
---------------------------------
(注)従業員数:有価証券報告書より
  1.従業員数は就業人員のみを対象としている。なお、臨時従業員数については従業員総数の百分の十未満であるため記載を省略している。
  2.従業員数は再雇用従業員を含んでいる。

IHI
---------------------------------
        2015年度実績  2016年度実績 2017年度計画
 受注       1兆 6053億円  13,898億円  15,000億円
 売上        1兆5393億円  14,863億円  15,500億円
 営業利益        220億円    473億円    650億円
 純利益          15億円       52億円    230億円
 ROE          0,5%      1.7%      7.4%
 従業員数     29,494人     -       -

 配当        3円/株     0円/株    6円/株
 配当総額   46.32億円       -     92.6億円
 配当性向    303.0%         -       40.3%
 1人当り
  配当額   15.7万円/人      -       -

 内部留保   1,992億円    2,033億円    -
 1人当り
  内部留保 675万円/人      -       -
---------------------------------
(注)従業員数:有価証券報告書より
  従業員数は就業人員数(当社グループからグループ外への出向者を除き,グループ外から当社グループへの出 向者を含む。)であり,臨時従業員数については,従業員数の100分の10未満であるため記載していません。
     ◇
 従業員1人当りの配当額は年間・数十万円にのぼっています。それだけ株主に貢いでいるということです。IHIは、2015年度の純利益が15億円なのに配当総額は46.32億円ですから、貯めていた利益を取り崩してまでして株主に支払ったということです。
 内部留保は、税金を払ったあとの純利益から株主への配当などを支払って、最後に残った金額の累計です。内部留保の金額がどれだけかは、外部から完全に把握することはできませんが、少なくとも利益剰余金と資本剰余金の合計と見ることができます。これらは企業が正当に蓄えたものですから自由に使うことができます。働く人たちの汗と涙の結晶でもありますから、大幅賃上げにも使ってもらいたいものです。

    日本共産党三菱重工広製支部 2017年6月15日

2017年6月 1日 (木)

2015事業計画の見直しと対策(その3 飛躍を狙う)

 前回と前々回のブログで「2015事業計画推進状況」(2017年5月9日)のⅠ~Ⅳを見ました。そこには、受注規模と営業利益が目標に達していないが高配当は続けるという方針と、大規模な「人員対策」(人員削減)の計画を持っていることが書かれていました。
 今回は、Ⅴ以降を見ていこうと思います。
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「2015事業計画推進状況」の主な項目
 Ⅰ. 2016年度の実績
 Ⅱ. 2017年度数値計画の見直し
 Ⅲ. 2015事業計画の全体進捗評価
 Ⅳ. 主な対策の推進状況
 Ⅴ. 「改革の総仕上げ」としての組織・制度の補強
 Ⅵ. まとめ
 [参考資料]
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Ⅴ. 「改革の総仕上げ」としての組織・制度の補強
 この章の項目は次のとおりです。項目の上に、「- 2018事業計画における飛躍への準備 -」とありますが、これは、「2015事業計画」で掲げた事業の選択と集中が進み、さまざまな課題も克服するメドがついたので新しい飛躍を狙う、という考えのようです。
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 - 2018事業計画における飛躍への準備 -
  1. グローバル/ローカル経営の最適化
  2. 生産部門の革新
  3. アセットマネジメントの更なる強化
  4. イノベーション推進研究所(仮称)
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1. グローバル/ローカル経営の最適化

 三菱重工グループの拠点は各国・各地にありますので、それら全体を統制のとれた一つの経営体として高効率に運営していくとともに、各地域(特に海外)の経営と営業を強化するという方針のようです。

2. 生産部門の革新
 IoTAIなど技術の急速な進歩を積極的に取り入れていく方針のようです。
 (注)IoT:Internet of Things(さまざまな機器をインターネットにつないで実現する保守・点検など)
 (注)AI :Artificial Intelligence(人工知能)
 「パワー及び機械事業」については、「グローバル生産拡大による国内生産縮小」が進んだので「拠点の集約/再編」をし、「Iot/AIを活用」して30%以上の生産性向上をはかるとしています。
 これとは対照的に、「航空宇宙事業」については国内生産を拡大するために、「国内主体の最適再編」をおこなうとしています。

3. アセットマネジメントの更なる強化
 低操業工場はグループ内シェアまたは他社へリース、低利用オフィスも他社へリースするなど、「従来の枠を超えたアセットマネジメント」を推進して、「将来的に数百億円/年の安定的CF創出」をはかるとしています。
 (注)CF:Cash Flow(現金の出入り)

4. イノベーション推進研究所(仮称)
 新しく「当社100%出資の研究開発専業法人」を設立して、大学や外部研究機関などを活用しながら「外部の最先端知見やアイデアを吸収」して技術開発・製品開発に活用する方針です。「従来にない発想とアプローチ」で研究開発を進める方針のようです。

 このような新しい方針を見ますと、これまでのやり方にとらわれずに、より強大な多国籍企業を目指して新しい飛躍を狙っていることがわかります。株主ファーストの利益追求のために。

Ⅵ. まとめ
 ここでは、「改革の総仕上げ」をおこなって、「2018事業計画(持続的成長ステージ)への円滑な移行」をはかり、2019年度に達成する数値目標をかかげています。この数値は、2015事業計画の2017年度の数値目標とほぼ一致しますので、計画は2年遅れで進んでいることになります。
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  2019年度の数値目標
 受注     5.5兆円
 売上     5.0兆円
 営業利益 4,500億円
 純利益   2,000億円
 ROE     10%
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 2015事業計画は3年計画ですから、2年遅れということは厳しい状況が続いているととらえることができます。それには、前回のブログで見ましたように、「2016年度に想定を超える課題が発生」したことと、その背景として「世界経済の不透明感」があるということができます。
 その底流には、各国の多国籍企業(グローバル企業)が株主ファーストの利益追求を推進しているために、先進資本主義国の経済低迷と貧富の格差がますます深まっていることがあるのではないでしょうか。

[参考資料]
 おしまいに、参考資料として、すでに見ました「名古屋地区の中期低操業対策」(p.41)、「仏/AREVA関連出資」(p.42)、その他が出ています。

防衛事業については何も書かれていません
 2015事業計画(p.25)には「防衛・宇宙ドメインの新事業強化- 従来枠組みを打破し事業規模拡大 -」、そのための「成長戦略①」は「防衛装備移転三原則を梃に海外展開」などがかかれていますが、「2015事業計画の見直しと対策」には何も書いてありません。
 何も書いてないということは順調に進んでいることかもしれません。数値を見ますと次のように順調です。
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    防衛・宇宙ドメインの目標と実績
       2015事業計画    2016年度の
       2017年度の目標    実績
 売上    4,000億円     4,706億円
 営業利益  250億円      279億円
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    日本共産党三菱重工広製支部 2017年6月1日

2017年5月25日 (木)

2015事業計画の見直しと対策(その2 人員削減)

 前回のブログで「2015事業計画推進状況」(2017年5月9日)のⅠとⅡを見ました。そこでは外部環境の変化によって受注規模と営業利益が目標に達していないこと、それでも高配当は続ける方針であることがわかりました。
 今回はⅢから見ていこうと思います。ここには「人員対策」(人員削減)が大きく出ています。
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「2015事業計画推進状況」の主な項目
 Ⅰ. 2016年度の実績
 Ⅱ. 2017年度数値計画の見直し
 Ⅲ. 2015事業計画の全体進捗評価
 Ⅳ. 主な対策の推進状況
 Ⅴ. 「改革の総仕上げ」としての組織・制度の補強
 Ⅵ. まとめ
 [参考資料]
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Ⅲ. 2015事業計画の全体進捗評価
 この章は「2015事業計画」が計画どおりに進んでいるかどうかを問題にしています。その結論は、簡単に言いますと、「構造改革は、事業の選択と集中等、概ね予定通りに進捗」と評価する一方で、「2016年度に想定を超える課題が発生」したので「抜本的改善策に着手」した、ということです(p.11)。
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 2016年度に発生した想定を超える課題(p.11)
 ・ 商船事業 → LNG船/コスト目標未達と工期遅れ (5隻)
 ・ 民間機(
Tier1) → 円高と減産加速 (B777・ボンバルディア機)
 ・ MRJ → 開発の更なる遅れと費用の大幅な増加
 ・
MHPS → 事業規模拡大とPMIの両方の遅れ
 (注)Tier1:ボーイング社・ボンバルディア社向けの事業(1次下請け)
 (注)MHPS :三菱日立パワーシステムズ(株)
 (注)PMI :Post Merger Integration/事業統合プロセス(統合の効果を出すために重複排除・人員削減などを進める)

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 これらの課題の多くは前回(2017年2月2日)の「2015事業計画推進状況」で対策が出されていましたが、今回「想定を超える課題」が発生した新しい状況のもとで「Ⅳ. 主な対策の推進状況」として対策がまとめられています。
 なお、前回(2017年2月2日)は、対策の中に「ドメインの再編」もあって、4月から3ドメインに再編されています。

Ⅳ. 主な対策の推進状況
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   主な対策の推進状況の項目(p,16)
 1. MRJ及びTier1対策(緊急対策)
 2. 商船事業構造改革の強化(緊急対策)
 3. MHPSの経営改善(緊急対策)
 4. M-FETのPMI
 5. PTのPMI
 6. アセットマネジメントの進捗
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 上記の1~5はどれも大幅な人員対策(人員削減)を伴っています。

1. MRJ及びTier1対策(緊急対策)
 「民間機事業の基盤強化(Tier1,MRJ共通)」を打ち出していますが、その中には「名古屋地区の中期低操業対策」という大規模な人員削減が書かれています(p.17)。

名古屋地区の中期低操業対策
 Tier1事業における減産とMRJの開発遅れによって人員対策が必要になったということです(参考資料 p.41)。
 Tier1事業では約6,600名の方が働いていましたが、2017年4月には「約700名規模の対応を実施済(社内他部門や社外への派遣等)」。さらに、2018年4月までに30%(約2,000名)を減らす計画です。
 MRJ事業では、三菱航空機(MITAC)を含めて、現在約2,850名が働いていますが、2018年4月までに20%(約600名)を減らす計画です。

2. 商船事業構造改革の強化(緊急対策)
 ここでは、昨年度から検討している「新体制移行」が対策の中心になっています。そのために今年7月には「新体制移行の第1ステップ」をスタートさせ、「LNG船のコスト低減と工期改善」などを進め、それと並行して、すでに進めている「他社とのアライアンス協議」を前進させて「新体制移行」を図るとしています(p.19)。
 「新体制」の中身としては「分社化含め検討中」とだけ記載していますが、「他社とのアライアンス」と「分社化」を組合わせると、商船事業を事実上切り離すこともあり得るということではないでしょうか。
 ところで、今回は書いてありませんが、前回(2017年2月2日)の「2015事業計画推進状況」 (P.13)には「新体制の狙い」の中に「2018~20年度の長崎低操業の克服」が含まれていますので、どうなるか心配なところです。

3. MHPSの経営改善(緊急対策)
 ここでは、2016年度の収益低下の原因を「円高と規模拡大遅れに加え、固定費削減に時間を要した結果、当期収益が急減」と説明しています。その対策の第一に、2020年度までに20%の固定費削減を掲げています(p.20)。
 ここでは「人員対策」という言葉を使っていませんが、「固定費削減」といえば「人員削減」が第一に考えられます。しかも20%もの大幅な固定費削減ですから、大幅な人員削減が含まれていると考えられます。

4. M-FETのPMI
 M-FET(三菱重工フォークリフト&エンジン・ターボホールディングス)については、「PMI加速」によって、「固定費削減 △10%」と「営利率向上 4 → 8%」を狙っています(p.23)。ここでも「人員対策」という言葉を使っていませんが、大幅な「人員対策」を伴っていると考えられます。PMI(Post Merger Integration/事業統合プロセス)は統合の効果を出すために重複排除・人員削減などを進めることですから。

5. PTのPMI
 PT(Primetals Technologies 製鉄機械の新会社)は、受注が少なくなっていましたが、「緩やかな回復傾向」にあるものの、「世界全体の設備過剰は当分継続」するためにPMIを推進して「人員最適化(8,000 → 7,100人)」を図るとしています(p.24)。

6. アセットマネジメントの進捗
 アセットマネジメントとは、資本効率向上のために、売却を含む土地などの資産活用ですが、割愛します。

人員削減
 上記に出てきました今後の「人員対策」計画に関係するものを抜きだしますと次のとおりです。
 ・名古屋地区の中期低操業対策 2600名
 ・2018~20年度の長崎低操業の克服
 ・MHPS  20%の固定費削減
 ・M-FET 10%の固定費削減
 ・PT   人員最適化(8,000 → 7,100人) 900名

 これらを合計しますと、5,000名を超える「人員対策」が計画されていると推測されます。これらがそのまま人員削減ではなくて、「名古屋地区の中期低操業対策」に出ていますように「社内他部門や社外への派遣等」も考えられます。しかし、「社内他部門」への派遣は転勤によるストレスもありますし、家族にとっても大きな問題です。「社外への派遣」は就職先を斡旋した人員削減と考えることもできます。表面的にはわからなくても不本意な「自己都合退職」に追い込まれる人もおられることでしょう。
 正社員がこのような状況になれば、非正規の人はすでに「削減済」で、下請けの人たちも厳しい状況になっていることが推測されます。
 三菱重工が推進している株主偏重の経営方針は、働く人たちや下請けを苦しめ、国内産業の空洞化につながっています。とはいえ、それは三菱重工だけではありません。各国の多国籍企業も株主偏重の経営方針を推進していますが、その結果、先進資本主義国の経済低迷と貧富の格差がますます深まっています。

    日本共産党三菱重工広製支部 2017年5月25日

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