2018年4月 6日 (金)

トルコへの原発輸出 その後

これまでの経過
 トルコへの原発輸出は、2013年5月にトルコを訪問した安倍首相とエルドアン首相(当時)との首脳会談で合意。黒海沿岸のシノップで、三菱重工がフランスのアレバと共同開発する新型炉「アトメア1」4基(出力合計は約450万キロワット)を建設する計画がスタートしました。計画内容は三菱重工のニュースリリース「トルコ共和国 シノップ原子力発電所プロジェクトへの取り組みを加速」(2013年5月7日)に出ています。

 2013年10月には商業契約で大枠合意。2014年2月1日、三菱重工業は新組織「トルコ原子力IPP推進室」を設置してフィージビリティスタディ(事業化調査)などを進めてきました(ニュースリリース「トルコ原子力IPP推進室を新設」2014年1月7日)。

建設事業費2倍に
 フィージビリティスタディを開始して4年が経過した今年3月、「総事業費の試算額が5兆円超と想定から2倍以上に膨らんだ」ことを各紙が伝えました(2016年3月16日 日経ほか)。
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 官民で進めている原発のトルコへの輸出計画の総事業費が、安全対策の強化などで当初想定していた2兆円の2倍以上に膨らむ可能性があることが、15日分かった。目標としていた2023年の稼働開始も困難な情勢。政府は成長戦略として進める原発輸出で、費用負担も含めた計画の見直しを迫られそうだ。
   ・・・
 トルコへの原発輸出は安倍晋三首相がエルドアン大統領との直接会談を重ねて受注にこぎ着けただけに、日本側も簡単には撤退できない。事業費の負担割合などをめぐり、今後トルコ政府との難しい交渉を余儀なくされそうだ。
  (2018年3月16日 東京新聞)
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 ここで、「事業費の負担割合などをめぐり」という部分は公的資金の投入を意味しているのでしょう。それは国民の負担であり、万一の事故の場合には耐えきれない巨額になることも考えられます。
 なお、三菱重工からはまだ何も発表されていません。

地元では住民の過半数が反対
 地元シノップの市長は原発反対を掲げて当選しました。市民の根強い反原発意識が次のように伝えられています。
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多数派は原子力発電所建設に反対
 2013年4月にKonda Research and Consultancy(訳注:同社はトルコの大手世論調査・コンサルタント企業)が行なった調査によれば、原子力発電所建設反対派は63.4%だった。この比率は東京電力福島第一原子力発電所事故後には一時80%にものぼった。政府が報道機関の相当部分を支配していることや、電力会社や建設会社と報道機関の重役たちが密接な関係を作り上げている今のトルコのメディア事情にもかかわらず、市民の根強い反原発意識はなくなっていない。
 (原子力資料情報室 2014年1月31日「トルコの原発事情 シノップに原子力発電所はいらない」)
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三菱重工は原発輸出を推進
 日本国内での原発新設は、圧倒的な反対世論の前にあきらめざるを得ない状況になっています。それだけに、原発輸出に望みをかけているのかもしれません。
 三菱重工の「パワードメイン事業戦略説明会(2017年6月)」資料の「原子力」のページ(p.30)には「戦略」の一つに「海外プラントはリスク管理強化し推進」を、「施策」には「トルコシノップPJ(ATMEA1)の推進」を掲げています。
 しかし、福島の事故の翌年に「原子力事業本部 事業説明会(2012年6月)」で「ビジョンと基本戦略」に「世界をリードする『原子力総合カンパニー』」を掲げるなど鼻息が荒かったときに比べると大きく後退しています。

     ◇
 地球温暖化を進める火力発電の需要が世界的に急減して三菱重工の経営は苦境に追い込まれています。原子力も火力発電も世論に逆らって推進しようとしたために、再生エネルギーなどへの方針転換に思い切った手を打てなかったのではないでしょうか。株主ファーストで短期的利益を追い求める株主資本主義は反道徳的であるだけでなく、経営上も三菱重工を弱体化させていると言えそうです。

   日本共産党三菱重工広製支部 2018年4月6日

2018年3月21日 (水)

武器輸出 その後の状況

安倍政権は2014年4月1日、「武器輸出三原則」を撤廃して「防衛装備移転三原則」を決定し、武器輸出の禁止から推進の道に踏み出しました。その後これまで国家安全保障会議(NSC)で審議した結果、海外移転(他国への売却・貸与・無償供与)を認め得る案件に該当することを確認した案件が公表されています。それらは次のとおりです。
(1)ペトリオットPAC-2の部品(シーカージャイロ)の米国への移転(2014年7月17日)
 開発元であるアメリカのレイセオン社と契約した三菱重工が製造している部品です。米軍 はPAC2を使っておらず、レイセオン社も製造を中止していますが、アメリカはPAC2を中東のカタールに輸出するために日本側に輸出を求めてきました。
(注)ペトリオット(patriot):報道などではパトリオットと言っていますが自衛隊などでは英語の発音に近いペトリオットと言っています。
(2)英国との共同研究のためのシーカーに関する技術情報の移転(2014年7月17日)
 イギリスの空対空ミサイルの技術に、日本(三菱電機)の目標を探査・追尾する技術を組み合わせる研究で、来年度は試作品の作成段階に入る方針です。詳細はブログ「日英ミサイル共同開発―歯止めない武器輸出―」をご覧ください。
(3)豪州との潜水艦の共同開発・生産の実現可能性の調査のための技術情報の移転(2015年5月18日)
 オーストラリアの次期潜水艦の共同開発・生産のパートナー選びの話は安倍政権の前から始まっていました。一時は三菱重工と川崎重工が建造している「そうりゅう型」潜水艦が最有望に浮上という報道もありましたが、最終的にはフランス政府系造船会社DCNSに決まりました。詳細はブログ「日本の軍需産業 2016 (4)オーストラリアとの潜水艦共同開発と三菱重工」をご覧ください。
(4)イージス・システムに係るソフトウェア及び部品等の米国への移転(2015年7月23日)
 次期イージス・システムのディスプレイシステム(イージス艦内で作戦に必要な情報を表示させるシステム)です。
(5)豪州将来潜水艦の共同開発・生産を我が国が実施することとなった場合の構成品等の豪州への移転(2015年11月26日)
 上記(3)から連続する案件です。
(6)TC-90等のフィリピンへの移転(2016年9月6日)
 海上自衛隊の練習機TC-90を最大5機フィリピン海軍へ有償貸与します。
(7)F100エンジン部品の米国への移転(2017年12月18日)
 F100はF15・F16戦闘機のエンジンで、アメリカで開発されて日本のIHIがライセンス生産しています。その部品の製造業者がアメリカでは撤退しているためにアメリカからの要請で日本からアメリカに輸出し、アメリカで製造したF100エンジンは他国に輸出されます(2017年12月19日 日経)。
(注)(1)~(6)は「防衛装備の海外移転の許可の状況に関する年次報告書(2017年10月)」に出ています。
 (7)は「F100エンジン部品の米国への移転」に出ています。

武器輸出に関する最近の報道
 次に、昨年1月以降に新聞などで報じられた武器輸出に関する主な記事を拾い出してみました。これがすべてではありませんが、武器輸出を巡ってさまざまな動きや商談があり、政府が積極的に推進していることがわかります。
・自衛隊機輸出へNZと交渉(2017年1月3日 日経)
 政府はニュージーランドに自衛隊のP1哨戒機とC2輸送機を輸出する交渉に入った。ともに製造の中心となるのは川崎重工業。欧米の機種も候補に挙がり、今夏にも調達先が決まる。整備を含めた長期契約になり、数千億円規模のビジネスを見込む。
・日仏、機雷探知共同研究で合意(2017年1月6日 日経)
 フランスを訪問中の稲田朋美防衛相は5日、パリでルドリアン仏国防相と会談し、水中に設置された機雷の探知技術について、日仏両国で共同研究を開始することで合意した。
・ASEANに陸自車両を無償供与へ(2017年2月19日 日経)
 政府は東南アジア諸国連合(ASEAN)に、陸上自衛隊の中古の輸送車両を無償提供する方針を固めた。フィリピンやベトナム、タイ、マレーシア、インドネシアが候補。装備品協力は、相手国と防衛面の結びつきを強める。
・哨戒機 マレーシアに無償供与へ(2017年5月5日 日経)
 政府は海上自衛隊のP3C哨戒機のうち、使わなくなった中古品をマレーシアに無償で供与する方針だ。南シナ海での同国の監視能力の向上を後押しし、海洋進出する中国をけん制する狙いだ。
・三菱電機、富士通が米企業とミサイル防衛レーダー共同開発を検討(2017年5月23日 ニューズウィーク日本版)
 米レイセオンと三菱電機、米ロッキード・マーチンと富士通の2陣営がそれぞれ、弾道ミサイル防衛の要であるイージスシステムのレーダーの共同開発を検討していることがわかった。
・東南アジア5カ国と協議(2017年6月15日 日経)
 防衛装備庁は15日、千葉市で東南アジア5カ国と防衛装備・技術協力に関する会合を開いた。会合は非公開で、日本の装備や技術に期待する声が出たという。
・哨戒機「P1」輸出へ布石(2017年6月21日 ニュースイッチ)
 防衛装備庁は航空宇宙産業展「パリ国際航空ショー」で19日(現地時間)、海上自衛隊の固定翼哨戒機「P1」を実機展示した。フランス政府の要請を受けての出展で、自衛隊機が民間機中心の海外航空ショーに実機を出展するのは初めて。
・インド、高性能潜水艦導入へ始動=三菱重、川崎重など関心か(2017年7月25日 時事ドットコムニュース)
 インドの主要メディアは25日までに、政府が高性能のディーゼル潜水艦6隻を新造する計画を始動させたと報じた。インド洋への進出を進める中国や、対立が続くパキスタンを念頭に置いているとみられる。
・自衛隊輸送機の輸出検討 政府、UAEに(2017年8月27日 日経)
 政府が航空自衛隊の新型輸送機「C2」をアラブ首長国連邦(UAE)へ輸出する検討をしていることが分かった。同国の要請を受け、輸送性能などの情報提供を既に始めた。
・空自レーダー タイで入札参加 政府承認(2018年3月11日 日経)
 政府は航空自衛隊の防空レーダーの輸出手続きに着手した。国家安全保障会議(NSC)の閣僚会合が今月、タイ空軍が月内にも実施する入札に参加することを承認した。製造する三菱電機が参加する。
 
官民挙げて武器輸出
 このように政府が積極的に武器輸出を推進しているのはアベノミクスの成長戦略に武器輸出が含まれているからと言えるでしょう。第2次安倍政権発足の8カ月後、産経は次のように伝えています。
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 政府が防衛装備品の輸出を成長戦略の柱であるインフラ輸出と位置付け、関連施設の建設や保守・運用も一体的に売り込むパッケージ型として輸出することが15日、分かった。武器輸出三原則に抵触しないよう装備品を民間転用して輸出に道を開き、輸出活性化による経済成長と防衛産業の底上げを図る。
  (産経ニュース 2013年8月16日「防衛装備をインフラ輸出 政府、経済成長と産業活性化」より)
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 ここでは「武器輸出三原則に抵触しないよう」となっていますが、この9カ月後の2014年4月、安倍政権は「防衛装備移転三原則」を決めて自由に武器輸出ができるようにしました。
 昨年(2017年)11月に防衛装備庁が東京都内で開いた「技術シンポジウム」で、同庁の林美都子国際装備課長が「アジア諸国との防衛装備・技術協力」について講演し、同庁が軍事企業を引き連れてアジア諸国を駆け巡り武器輸出の仕掛けづくりに躍起になっている実態を語っています(赤旗 2017年11月16日「防衛装備庁 武器輸出へ アジア諸国“営業”」より)。
 三菱重工は安倍政権のこのような政策を歓迎して武器輸出を拡大しようとしています。しかし、なかなか思うようには進んでいないようです。この際、武器輸出はやめるという方針を出してはどうでしょうか。そうすれば、世界の人々から尊敬される三菱重工になるのではないでしょうか。
 
   日本共産党三菱重工広製支部 2018年3月21日

2018年3月10日 (土)

トランプ政権の「国家防衛戦略」と安倍軍拡

新たな「国家防衛戦略」
 トランプ政権が初めて作った「国家防衛戦略」を、1月19日、マティス米国防長官が発表しました。その内容について日本経済新聞が報じた主な点は次のとおりです。
・中国やロシアを「戦略上の競争相手」と位置づけ
・核抑止力やミサイル防衛など米軍の体制強化が必要
・北朝鮮とイランを「ならず者国家」としている
・伝統的な同盟国に加えて他国との協力関係も強化する
・日本を含むインド太平洋地域で連携を進める
・国防予算を増やして米軍再建を進める必要がある
  (日経 2018年2月20日「トランプ政権、国防戦略を初策定 中ロ対抗へ米軍強化」より)
 これまでのアメリカの「対テロ」戦争については、「国家防衛戦略」を発表したときのマティス米国防長官の発言が次のように伝えられています。
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 マティス長官は新戦略の発表にあたり「われわれはテロリストとの戦いを遂行し続けるが、現在の米国の国家安全保障の優先課題はテロリズムではなく、大国間の競争だ」と語った。
  (ワシントン発 2018年1月19日 ロイター「米軍の新国防戦略、中ロとの競争を柱に 対テロから転換」より)
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 このように、アメリカは「対テロ」から「中ロとの競争」に戦略の軸を変え、軍事予算を増やして軍拡をさらに進め、インド太平洋地域を重視して同盟国日本などと連携をさらに強めようとしているようです。
 一方、アメリカがオバマ政権のとき、2014年3月に発表した「4年ごとの国防計画の見直し」の中では、中国と軍事的に対決し、中国に対して決定的優位となる新兵器の開発方針を掲げました。
(注)これについては、ブログ「新兵器開発・アメリカの戦略」を参照ください。

 これに比べると今回の「国家防衛戦略」は中国やロシアを「戦略上の競争相手」と表現して軍事的対決が後退した印象を受けます。しかし同時に、米軍の体制強化を求めたり、「核態勢の見直し」では「核の使用条件の緩和」と「新たな核兵器の開発」を進めようとしています。
(注)「核態勢の見直し」については前回のブログを参照ください。

 

軍拡競争は続く
 ロシアのプーチン大統領は、アメリカの「核態勢の見直し」に対する回答ともいえる新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を発表。これは複数の核弾頭を搭載して米国のミサイル防衛網を突破でき、世界中どこでも到達可能であると誇示した、と伝えられました(日経 2018年3月2日「ロシア、新型ICBM開発」より)。
 中国については、イギリスの国際戦略研究所(IISS)が世界の軍事情勢をまとめた年次報告書「ミリタリー・バランス2018」の中で、兵器の近代化を進める中国が配備能力で米国を急速に追い上げていると伝えています(日経 2018年2月15日「中国の兵器近代化が懸念 米空軍の優位性揺らぐ」より)。
 このような軍拡競争ともいえるような動きはトランプ政権の前から始まっていますが、トランプ政権になっても弱まることはないようです。

安倍政権は「敵基地攻撃能力」保有へ
 第2次安倍政権発足後6年連続で日本の軍事費は増加を続けています。新兵器の研究も進められています(ブログ「防衛省概算要求5.2兆円に含まれる新兵器研究」)。

 昨年11月、トランプ大統領が来日したときにはアメリカから武器を大量に購入する要求が突きつけられました。安倍政権はすでにアメリカから高額兵器を購入していますが、今後も多額の購入を続けるようです。
 その上、3月2日の参院予算委員会では、海上自衛隊最大の艦船「いずも」を「攻撃型空母」に改修して、F35Bステルス戦闘機を運用可能にする調査・研究が行われているという衝撃的な事実が明らかになりました(赤旗 2018年3月5日)。これは「敵基地攻撃能力」の保有であり、憲法9条改悪の先取りとも言えるのではないでしょうか。同時にこれは、トランプ政権が「国家防衛戦略」で目指す「伝統的な同盟国」である日本と協力関係を強化して「日本を含むインド太平洋地域で連携」を進めて、「米軍の体制強化」を補完することでもあると言えるのではないでしょうか。

   日本共産党三菱重工広製支部 2018年3月10日

2018年2月24日 (土)

トランプ新戦略「核態勢の見直し」

 

 トランプ政権は2月2日、新たな核戦略の指針となる「核態勢の見直し(NPR)」を発表しました。
 このニュースはテレビでも新聞でも取り上げられましたが、日本経済新聞(日経)は今回の「見直し」のポイントとして「核の使用条件の緩和」と「新たな核兵器の開発」を指摘し、「核開発競争が再燃しかねないとも懸念される」と報じました。
 今回のブログでは、トランプ政権の「核態勢の見直し(NPR)」の中身を見てみたいと思います。

「核態勢の見直し(NPR)」の日本語訳(要約)
 NPRのフルネームは「Nuclear Posture Review」。前回のものと区別するために「2018 Nuclear Posture Review」をインターネットで検索して、出てきたものの中から「2018 Nuclear Posture Review - United States Department of Defense」をクリックすると、アメリカ国防総省( United States Department of Defense)のホームページの中にある「核態勢の見直し(NPR)」 のページが表示されます。そこで「日本語」を選択すると、表紙にアメリカ国防総省の丸い鷲のマークが付いた「核態勢の検討 2018年2月」(要約) が表示されます。
 要約といってもPDFで18ページあります。翻訳文のためにわかりにくいところもありますが、抜粋しながら紹介させていただきます。

潜在的な敵対国からの脅威
 まず、「序論」(2/18)で「潜在的な敵対国からの一層明白な核脅威を含めて、世界的な脅威の状況は明らかに悪化してきた」と「脅威」を強調しています。
 ここで「潜在的な敵対国」とはどの国か? それは、次の章「進化しつつも不確定な 国際安全保障環境」(2/18)で、ロシア、中国、北朝鮮、イランの名前が出てきます。
・ロシア・中国については、「米国は核兵器の数と重要性を削減し続けてきたが、ロシアと中国を含む他国は反対の方向に進んできた」。
・北朝鮮については、「北朝鮮は国連(UN)安全保障理事会の決議に直接違反して非合法な核兵器やミサイル能力の追求を続けている」。

核抑止論
 次の章「米国の核能力の価値」(4/18)では、「核・非核攻撃の抑止」には「米国の核能力」が必須だと核抑止論を掲げて次のように断言しています。「米国の核能力と抑止戦略が米国、同盟国、パートナー国の安全保障に必要であるという根本的理由は明白である。米国の核能力は、核・非核攻撃の抑止に必須の貢献をしている。それが提供する抑止効果は敵対国の核攻撃を防止する上で独特かつ必須であり、米国の最優先課題である」と。
 このあとも、核抑止論がお題目のように度々出てきます。

核兵器による先制攻撃を考慮
 「抑止に失敗した場合でも米国の目的を達成」(6/18)では、「米国は、米国、同盟国、パートナー国の重要な利益を守るために極端な状況においてのみ核兵器の使用を考慮する」と明言しています。「核で攻撃されたら核で反撃する」ではありません。攻撃が開始されなくても「極端な状況」と判断したら「核兵器の使用を考慮する」、先制攻撃もあり得るということです。

米軍の絶大な攻撃力を誇示
 「三本柱:現在と将来」(8/18)では、米軍の絶大な攻撃力を示しています。「三本柱」とは次の3つです。
・潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を装備した潜水艦(SSBN)
・陸上配備型大陸間弾道ミサイル(ICBM)
・無誘導爆弾および空中発射式巡航ミサイル(ALCM)を運搬する戦略爆撃機
 (注)無誘導爆弾とは、航空機から投下する核・非核の爆弾。
 これらについて次のような具体的な数字も示しています。
・14隻のオハイオ級SSBN
・地下サイロに格納された単弾頭式ミニットマン3型ミサイル400基
・46機の核爆弾搭載可能なB-52Hおよび20機の核爆弾搭載可能なB-2A“ステルス”戦略爆撃機
などなど、これらの兵器の近代化を進めながら当面は現有の三本柱体制を持続すると書いています。

米国の歴史上最大の国防予算
 「柔軟かつ安全な核能力: 支払い可能な優先課題」(10/18)では、核戦力維持・運用、近代化に必要な予算規模を大したことではない金額(支払い可能)と書いていますが、昨年トランプ大統領は「米国の歴史上最大の国防予算を議会に要求する」と言いましたから、アメリカの経済にも影を落とすような軍拡を続けることになるのではないでしょうか。
 なお、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)のデータベースによれば、アメリカの軍事費はダントツで、6,000~7,000億ドル規模(70兆円規模)です(ブログ「各国の軍事費(SIPRI軍事費データベース)」をご参照方)。

 

小型核兵器の開発・配備
 「非戦略的な核能力による抑止の強化」(10/18)では、「いま、低出力オプションをも含めるよう柔軟な米国の核オプションを拡大することは、地域侵略に対する信ぴょう性のある抑止力の維持にとって重要である」。「国防総省と国家核安全保障庁(NNSA)は、敵対国の防衛を突破することが可能な迅速対応を保証するための低出力SLBM弾頭を配備用に開発する」と明言しています。
 「低出力オプション」とは、小型核兵器を開発して核の選択肢を広げることを意味しています。それは、「迅速対応」して「敵対国の防衛を突破する」ため。まるで、核兵器を強力な通常兵器のように使おうとしているようです。
 結局、抑止力だと言って、使える小型核兵器を開発・配備するということです。このブログの冒頭で紹介した日経の「核の使用条件の緩和」と「新たな核兵器の開発」という2つのポイントは的を射ていると言えます。
 もっとも、悪いのはアメリカだけではないでしょう。しかし、圧倒的な軍事力を持って、自国から何千キロメートルも離れた他国で軍事力行使をしてきたアメリカが使える核兵器を開発・配備することにまさる脅威はないのではないでしょうか。その結果、「核開発競争が再燃しかねない」という懸念も日経が言うとおりです。

核抑止力は人類をもてあそぶギャンブル
 「核態勢の見直し(NPR)」は、もう少し続きますが割愛して、「ミュンヘン安全保障会議」での国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のベアトリス・フィン事務局長の発言を紹介します。
 フィン氏は、誤解や事故が原因で核兵器が使われる瀬戸際に世界が追い込まれたことが何度もあり、「核兵器が存在する限り、使われる危険がある。核保有国の政策は人類をもてあそぶギャンブルだ。それはすべての人が敗北するギャンブルだ」。
 特に、トランプ米政権が発表した「核態勢の見直し(NPR)」で核兵器使用の敷居を下げたと強調し、「核兵器の近代化、核軍縮の約束遂行の拒否によって核兵器の使用へと向かっている」。
 「安全保障を強め、理性的で責任のある唯一の核政策は、核兵器を禁止し廃絶することだ」。(2018年2月20日 赤旗「核兵器廃絶こそ理性的政策 抑止力論は人類敗北の賭博」より)

   日本共産党三菱重工広製支部 2018年2月24日

2018年2月10日 (土)

三菱重工社長「今は戦闘状態」・第3四半期決算発表で

 三菱重工の第3四半期(2017年10月~12月)決算が発表されました。「説明会動画」でCFO(最高財務責任者)の小口正範氏が説明をしていますが、基本的には3か月前に発表した「見通し」どおりに進んでいて、「2017年度業績見通し」に変更はないということです。

 しかし、3か月前には「2017年度業績見通し」を大幅に下方修正しています。その背景などについては、3ヶ月前のブログ「三菱重工 業績見通しを下方修正」でお伝えしました。そのときと同じデータですが「実績と見通し」を再掲します。三菱重工の経営は、経営陣の思いどおりにはいかない厳しい状況が続いていることがわかります。
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  三菱重工の業績 実績と見通し
    14年度 15年度 16年度 17年度
         実績  実績  実績 見通し
受注高   46,991 44,855 42,756 40,000
売上高   39,921  40,468  39,140 40,500
営業利益   2,961  3,095  1,505  1,800
純利益     1,104   638   877   800
             (単位:億円)
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ドメイン別の2017年度業績見通し
 「2017年度第3四半期 決算説明資料」のp.12に今年度のドメイン別業績見通しが出ています。これも3か月前から変更はありません。

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  2017年度業績見通し セグメント別内訳(p.12)
             受注高 売上高 営業利益 
パワー        14,500 15,500 1,000 
インダストリー& 19,000 18,500  800
    社会基盤
航空・防衛・宇宙  6,000  6,500  100
             (単位:億円)
(注)ドメインのほかに「その他」と「消去または共通」がありますので、各ドメインの合計は全社の合計に一致しません。
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 2014、2015年度には2兆円レベルにあったパワードメインの受注高が大きく落ち込み、好調なインダストリー&社会基盤ドメインが主役交代の位置に来ています。パワードメインの落ち込みは世界的な火力発電の後退で、「宮永社長は『火力発電市場は弱含みというより構造的に厳しい状況にある。苦しい状況は少し長くなるのでは』と語った」(日経 2018年2月7日「三菱重工『宮永改革』延長戦へ 続投で背水の陣」より)。
 さらに、「三菱重工子会社の三菱日立パワーシステムズでは、主力の高砂工場(兵庫県高砂市)を中心とした国内拠点で従業員の配置転換など構造改革を進める。ドイツの拠点では全体の3割にあたる約300人の削減にも着手」(同)と伝えられています。

「今は戦闘状態」
 前出の記事は、宮永社長が決算記者会見で続投する意向を表明したこと、続投の理由として「今は大きな問題に会社全体で取り組む『戦闘状態』にある」と社長が語ったことを伝えています。社長がいう「大きな問題」とは、火力発電市場の後退、納期がこれ以上遅れることが許されないジェット旅客機MRJが考えられますが、商船事業や民間航空機も含んでいるかもしれません。さらに、財務に関しては、日立製作所に7000億円あまりの支払いを求めている「南ア問題」も解決していません。
 「今は戦闘状態」という言葉に、社長がどれだけの意味を込めているのかわかりませんが、「今は戦闘状態だから」と、働いている人たちや下請けに厳しいしわ寄せが来なければいいのですが。

人と技術を大切にする経営を
 宮永社長は続投して三菱重工を成長軌道に乗せようと考えているようですが、それはこれまで通り「株主ファースト」経営です。株主の利益を第一にして短期の利益を追うために株主資本利益率の向上を目指し、利益率の高い事業を吸収合併して利益率の低い事業を売り払うやり方です。そのために労働者を将棋の駒のように動かすやり方です。
 他方では、厳しい経営環境の下で利益が下がっても株主への高配当を維持しています。せめて、利益が低い間は配当を減らし、短期の利益を追う経営から人と技術を大切にする経営に注力してもらいたいものです。

   日本共産党三菱重工広製支部 2018年2月10日

2018年1月26日 (金)

官民挙げて輸出を目指す次世代原子炉「高温ガス炉」は安全か?

 「政府はインフラ輸出戦略の一環として、より安全性が高いとされる次世代原子炉『高温ガス炉』(HTGR)の輸出の検討に入った」(日経 2017917日)。輸出先の候補はポーランド。「日本は官民を挙げて受注を目指す方針で、日立製作所、三菱重工業、富士電機など関連技術を持つ企業にも協力を呼びかける」(同上)。

 政府は高温ガス炉の安全性を強調していますが、本当に安全なのでしょうか?

 

高温ガス炉とは

 三菱重工のホームページの「製品情報」に高温ガス炉が出ています。

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高温ガス炉はセラミックス(炭化ケイ素等)被覆の燃料と化学的に不活性なヘリウムガスを冷却材として使用することで、約1,000℃の高温の熱エネルギーを取り出すことが可能な原子炉です。日本では、核熱の多目的利用を目標に、独立行政法人 日本原子力研究開発機構殿( 日本原子力研究所殿)において昭和44年(1969年)より研究・開発が進められ、高温工学試験研究炉(HTTR)が建設されました。

このプロジェクトにおいては、(三菱重工は)幹事会社として、その推進に主導的役割を果たし、・・・

   (三菱重工のホームページの高温ガス炉 より)

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 「高温ガス炉」というネーミングは、高温の熱エネルギーを取り出す「高温」と冷却材に使用するヘリウムガスの「ガス」と原子炉の「炉」からきているようです。

 高温ガス炉の技術的解説が、三菱重工技報 第46(2009)4号の技術論文「低炭素社会実現に合致した高温ガス炉 」に詳しく出ています。

 そこに示されている「図1 高温ガス炉HTTR(高温工学試験研究炉)の原子炉構造」を見ますと、圧力容器があって、その上には制御棒スタンドパイプがあります。その点は軽水炉と同じようです。燃料は、形状は違いますが、ウラン燃料を使用し、放射性廃棄物(核のゴミ)が残る点は軽水炉と同じです。

 しかし、上記の技術論文は「機能的な特徴」として“高い固有の安全性”、“高い熱効率”、“高い経済性”をあげています。

 

世界の高温ガス炉の開発状況

 前出の技術論文「低炭素社会実現に合致した高温ガス炉」には、高温ガス炉開発の歴史が書いてありますが、早くも1942年にはアメリカで臨界に達しています。その後、アメリカ、ドイツで開発が進められますが、「いずれもトラブルに遭遇し運転中止となった」ということです。

 その後、1990年以降には「小型モジュール炉を基本概念とした高温ガス炉の設計研究が開始され,南アフリカ,米国,ロシア,日本,中国で」進められますが、2005年時点で「運転中」は日本の試験研究炉と中国の発電用実験炉のみです。

 その内、日本の試験研究炉は東日本大震災のあと運転を停止し、現在運転再開を目指しています(HTTR 高温工学試験研究炉のホームページより)。

 

 

三菱重工の取組み

 三菱重工は、上記で見ましたように、日本原子力研究開発機構の高温工学試験研究炉(HTTR)建設の幹事会社として取組んできました。

 2004年と2005年には南アフリカから小型原子炉に関する基本設計などを受注し、2010年にはMOU(了解覚書)を締結して高温ガス炉を「共同で開発することを検討していくことで合意」しています(ニュースリリース 201024日「小型高温ガス炉PBMRの開発でMOUを締結」)。

 

日本政府の取組み

 上記で見ましたように、日本原子力研究開発機構( 日本原子力研究所)1960年代から「高温ガス炉」の研究・開発を進めています。日本原子力研究開発機構は文部科学省の所管で、既に廃炉が決定された「もんじゅ」を運転していました。

 安倍政権は「エネルギー基本計画」(2014411日 閣議決定)の中で「固有の安全性を有する高温ガス炉など、安全性の高度化に貢献する原子力技術の研究開発を国際協力の下で推進する」(p.74)としています。

 「未来投資戦略」(201769日 閣議決定)では「ⅶ)安全性が確認された原子力発電の活用」の中で高温ガス炉の研究開発推進を決めています(p.69)。

 

「高温ガス炉」は安全か?

 政府は「固有の安全性を有する高温ガス炉」と安全性を強調しています。

 しかし、文部科学省の高温ガス炉技術研究開発作業部会・第5回(201491日)の配布資料「高温ガス炉技術開発に係る今後の研究開発の進め方について(案) 」を見ますと、「5.今後の進め方について」の中で、安全性についても経済性についても検証が必要と書いてあります。

 ということは、「高温ガス炉」は未完成の技術であって、安全性・経済性を含めて断言的に言えることはまだ何もないということです。

 その上、放射性廃棄物(核のゴミ)の処理は、軽水炉と同様にどうすることもできない危険きわまりないものが半永久的に残ることは確かです。

 すでに何十年も研究開発が進められていてもまだ実用化できないということは技術的な難しさがあることを示しています。軽水炉のような水素爆発はない、メルトダウンしないと言っても、高温状態で強い放射能を出し続けることになりますから、どのような事故が起こり得るのかわかってはいません。

 日本の電力会社はそのことを十分知っているのではないでしょうか。どこも「高温ガス炉」を進めようとはしていませんから。

 そのようなものを官民挙げて輸出してよいのでしょうか?

 

   日本共産党三菱重工広製支部 2018126

2018年1月12日 (金)

世界の軍事企業上位100社・2016年度のデータ

 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)がホームページに2016年度の世界の軍事企業上位100社(中国を除く)を発表しました。世界のトップ5は次のとおりです。いつもの顔ぶれが並んでいますが、アメリカの軍事企業の売上が急上昇しています。
https://www.sipri.org/sites/default/files/SIPRI-Top-100-2002-2016.xlsx

トップ5の2016年度の売上
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順位 企業名       国  武器の売上  前年度比
1 ロッキード社      米 408,30億ドル +10.7%
2 ボーイング社     米 295,10億ドル + 4.2%
3 レイセオン社     米 229,10億ドル + 3.9%
4 BAEシステムズ社   英 227,90億ドル + 0.4%
5 ノースロップ
    グラマン社 米 214,00億ドル + 5.4%
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 別のページ(Global arms industry: First rise in arms sales since 2010, says SIPRI)には次のことが書かれています。
 (1)トップ100に上場している米国企業の武器販売は2016年に4.0%増加
 (2)トップ100の売上高における米国のシェアが57.9%に増加  
 (3)2016年のトップ100の合計は、2015年に比べて1.9%増加し、5年連続で減少したあと最初の増加となった
(注)昨年度のデータは、今年度のデータなどと比較しやすいように為替変動などを加味した2016年度のドル価格で表示されています。その数値を使って、表の「前年度比」の計算をしています。昨年発表の数値を使ってはいません。

 上記(3)に関するデータとして、2002年度以降のトップ100の合計が別の表(Data for total arms sales for the SIPRI Top 100 for 2002-16)に出ています。

 

日本企業の2016年度の売上
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順位 企業名  武器の売上  前年度比
21 三菱重工  3,670億ドル  - 4.8%
49 川崎重工  1,730億ドル  -16.3%
64 IHI          1,290億ドル  + 8.5%
86 NEC        830億ドル  +22.4%
99 三菱電機   700億ドル  -29.2%
   合計      8,220億ドル  - 6.4%
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 このように2016年度の日本企業の武器生産は減少しましたが、日本の軍事費(防衛費)は急上昇を続けています。その第一の要因としてアメリカから高額な武器を多数購入していることがあげられます。アメリカからの高額武器購入は安倍政権の軍拡と対米追従によると言ってよいと思いますが、2017年度になると、トランプ政権からの高額武器の押し売りと安倍首相のトランプファーストが加わってさらに進んでいます。
 各国の軍事費も表(Data for all countries 1949-2016)になって出ています。日本はこの表(エクセル)の101行に出ています。そこには2016年度の日本の軍事費が5.0224E+12yenと記載されています。E+12は10の12乗を意味しますので5兆0224億円ということです。

 なお、前年度(2015年度)の売上金額は、その後の見直しによる修正と2016年度のドル価格での表示となっています。その結果、順位も変動しています。そのため、これまでの一連の経過を見る場合は最新のデータを見る必要があります。
 なお、ストックホルム国際平和研究所のホームページの見方についてはブログ「世界の軍事企業上位100社・最新データ(2017年1月 5日)」の末尾をご覧ください。

     ◇
三菱重工社長の年頭あいさつを読んで
 「2018年 宮永社長 年頭挨拶(要旨)」が三菱重工のホームページに出ています。そこには次のことが書かれています。

(1) 「規模の拡大」と「収益性の向上」を大きなテーマとして掲げ取り組んできたこと
(2) 掲げていた経営数値目標が未達になる見通しであること
(3) 人類共通の課題である「持続可能な地球の実現」や「持続可能な開発目標(SDGs)」の解決・克服にも取り組むこと
(4) 持続的成長に向けた飛躍のステージに上がるためには従業員一人一人の力とチームワークが必要であること
などなど
 民間企業ですから「規模の拡大」と「収益性の向上」に取り組むことは当然ですが、M&A・事業の切出し・組織再編などを矢継ぎ早におこなうことが、従業員やその家族にとって大変な負担になったり、不本意な退職に追い込んだりすることを社長はわかっていないのでしょうか。経営数値目標が未達になるのは世界経済の低迷から来る需要減という外部環境の影響も大きいのですから、世界の需要動向を見ながら、職場や従業員の声を聞きながら実情にあった速度で進めてもらいたいものです。それなしで従業員一人一人の力とチームワークを期待するのはあつかましいのではないでしょうか。
 さらに、(3)の「持続可能な開発目標(SDGs)」に本気で取組もうとするのなら、せめて石炭火力発電の推進だけはやめてほしいものです。石炭火力発電はCO2の排出が多く地球環境を破壊します。

 

   日本共産党三菱重工広製支部 2018年1月12日

2017年12月22日 (金)

三菱重工 この1年

 三菱重工の経営は、経営陣の思いどおりにはいかない状況が続いています。そこには三菱重工独自の問題もありますが、GEやシーメンスなど世界の重工業に共通する問題もあります。世界的な経済低成長の下で、火力発電の需要急減は重工業の経営陣にとって深刻なようです。その問題の根には株主資本主義―目先の利益を追う株主偏重経営―があるのではないでしょうか。CO2を発生する火力発電をやめて再生エネルギー発電重視の経営戦略に早くから方向転換していたら、利益がどうなっているかは別にして、世界中の人びとから尊敬される企業になっていたことでしょう。
 安倍政権は、株主の利益を重視するコーポレートガバナンスコードの導入など株主資本主義の応援団をしていますから、新しい年は安倍政権を退陣させる年にしたいものです。

4ドメイン制から3ドメイン制へ再編(4月1日発足)
 三菱重工は3年前の2014年4月に、それまで続けてきた事業本部制にかわって「顧客・市場を重視した4ドメイン」編成に移行しました。それから3年後の今年4月には3ドメイン制へ再編しました。
 3ドメイン制への再編計画を発表したのは昨年10月31日。このとき発表した2016年度中間決算で業績見通しを下方修正しなければならなくなり、その対策として発表しました「2015事業計画の推進状況」(2017年10月31日)

 業績見通しの下方修正が必要になったのは、(1)Tier1(主にボーイング向けの事業)、(2)商船、(3)MRJ(三菱リージョナルジェット)の業績悪化で、これが組織再編の引き金になったようです。

5,000名を超える「人員対策」(5月9日発表)
 今年5月に発表した「2015事業計画推進状況」(2017年5月9日)には、ずばり「人員対策」と、ほとんど「人員対策」と考えられる「固定費削減」の計画が5つの部門に出ています。それらを抜き出しますと次のとおりです。
http://www.mhi.co.jp/finance/library/plan/pdf/h29_05keikaku.pdf
 (1)名古屋地区の中期低操業対策 2600名
 (2)2018~20年度の長崎低操業の克服
 (3)MHPS  20%の固定費削減
 (4)M-FET 10%の固定費削減
 (5)PT   人員最適化(8,000→7,100人) 900名
 この内、(1)の「名古屋地区」とは前出のTier1(主にボーイング向けの事業)とMRJ(三菱リージョナルジェット)の関係です。(2)の「長崎低操業」は前出の商船関係です。
 (3)MHPS(三菱日立パワーシステムズ)は、世界的に火力発電の需要が縮小するなかで「従来レベルの売上で10%以上の営業利益を2年以内に確保」するとして、その対策の第一に「20%の固定費削減」を掲げています。
 (4)M-FET(フォークリフト事業)は、ニチユとユニキャリアを吸収合併した統合効果を出すために固定費を10%削減して営業利率を4%から8%に向上させる計画です。
 (5)PT(Primetals Technologies)も統合効果を出すために900名の削減を掲げています。
 これらを合計しますと、5,000名を超える「人員対策」が計画され、実施中と推測されます。

再び業績見通しを下方修正(10月31日発表)
 昨年度の中間決算で昨年度の業績見通しを下方修正したのに続いて、今年度の中間決算でも今年度(2017年4月~2018年3月)の業績見通しを下方修正しました。今回の下方修正のほとんどは、前出(3)のMHPS(三菱日立パワーシステムズ)に関するようです。

 三菱重工の宮永社長が12月15日の記者会見で「主力の火力発電所向けガスタービンの不振が少なくとも今後2年は続く見通しを明らかにした」ことを各紙が伝えました(日経 2017年12月15日「三菱重、火力不況が直撃」ほか)。
 火力発電は世界的に需要が減少していますので、業績悪化は三菱重工だけではありません。火力発電部門を持ち重工業の世界代表のようなアメリカのGEやドイツのシーメンスも大幅な人員削減を計画していることが伝えられています。
 ただ宮永社長は「日本の企業にレイオフはなじまない」とリストラを否定し、全国5カ所にある製造拠点の再編や効率化に活路を見いだす考えと伝えられています(日経 同上)。これはリストラとは違いますが、転勤や職種変更を伴いますので働く本人や家族にとって大きな負担になります。もし、それを契機に不本意な自己都合退職に追い込まれたら事実上のリストラということになります。
 このような厳しい状況にもかかわらず、配当は2017年度も12円/株としています。配当総額は約403億円ですから、純利益1,000億円の40.3%(配当性向40.3%)になります。従来計画では「配当性向30%±5%」ですから、業績見通しを下方修正しても株主への大サービスは続けるということです。

商船事業の建て直し(進行中)
 客船については、巨額の赤字を出したアイーダ向けクルーズ客船の2番船を今年4月27日に引き渡して終了しました。残る商船事業はLNG運搬船やフェリーなどです。造船分野は中国・韓国との激しい受注競争が続いています。
 昨年の「2015事業計画推進状況」(2016年10月31日)の中で「商船事業の抜本改革」として「他社も含めた水平統合型ビジネスへの転換」をかかげ、提携の相手方として今治造船、大島造船所、名村造船所をあげました。
 その後、昨年度末には今治造船、名村造船所と基本合意し(ニュースリリース 2017年3月31日)、大島造船所とは今年6月に基本合意したと発表しました(ニュースリリース 2017年6月14日)。これらの基本合意に基づいて、「具体的な事業への反映については、個別に契約を締結していく予定」としています。
 一方、三菱重工内の組織として、来年1月1日付で「三菱造船と三菱重工海洋鉄構の2社を設立」すると発表しました(ニュースリリース 2017年12月1日)。

 造船部門の再編はこれで一段落かも知れませんが、今後もいろいろな可能性があるのではないでしょうか。厳しい受注競争が続いていますから。

MRJ(三菱リージョナルジェット)の開発加速中
 初号機の納入時期はこれまでに5回延期されて、現在の納入時期は「2020年半ば」となっています(ニュースリリース2017年1月17日「MRJの開発状況について」)。

 12月15日の社長記者会見では、受注キャンセルの可能性も出ています。これ以上遅れないように、多数の外国人技術者も活用しています。さらに、試験を早く完了させるため、来年中に新たに試験機を3機投入し合わせて8機体制で開発を加速させる方針を固めたと伝えられています(NHK NEWS WEB 12月15日「納入遅れのMRJ 試験機増やし開発加速へ」)。

 

軍事生産は今後大きく伸びる可能性
 ストックホルム国際平和研究所のデータベース「世界の兵器生産トップ100社」に三菱重工は、2016年度、21位、3670百万米ドルと出ています。前年度から1位下がり、金額も少し減少しています。

 今年8月には防衛装備庁が、2018年度以降の新型護衛艦(新艦艇)調達の主事業者に三菱重工業、下請負者に三井造船を選定したと発表しました(29.8.9 防衛装備庁「新艦艇に係る調達の相手方の決定について」)。その中に「1隻当たり約500億円の建造費用を前提とした企画提案契約を締結」と書かれていますから、今後大きな売上になると思われます。

 武器輸出についても、政府・防衛省が海外に働きかけを行っていますから今後大きく伸びる可能性があります。

原子力・核燃料サイクルは続ける
 アメリカの原発企業と争っていた損害賠償問題は、三菱重工の主張が通って約141億円の支払いで済みました(「米国サンオノフレ原子力発電所に係る仲裁裁定受領に関するお知らせ」2017年3月14日)。

 核燃料サイクルについては積極的に進めています。3月にはフランスの原子力事業会社アレバのグループ新会社に出資を決定しました(重要なお知らせ 2017年3月21日「仏アレバグループ新会社(NewCo)向け出資に係る最終合意について」)。

 経済産業省の下にある「高速炉開発会議」の「戦略ワーキンググループ」にも参画しています。
 国内の原発再稼働支援、原発輸出も続けています。
 これまでの軽水炉の原発に代わって「高温ガス炉」を2030年までにポーランドで建設するというニュースが入りました。「東芝や三菱重工業などの企業と日本原子力研究開発機構が中心となり、出力16万キロワットの商用炉を新設する。年明けにも両国間で正式に合意する見通し」(日経 2017年12月21日「ポーランドに次世代原子炉 日本の官民、輸出の軸に」)。これの安全性、廃棄物処理などに注目しなくてはなりません。

風力発電と石炭火力発電
 三菱重工業とデンマークのヴェスタス社との折半出資による洋上風力発電設備合弁会社・MHIヴェスタスが大規模な風力発電設備を受注し、建設しています(ニュースリリース 2017年1月17日「MHIヴェスタス、世界最大出力の洋上風力発電設備V164-8.0MWを56基受注」)。

 このような再生エネルギーとはCO2排出で対極にある石炭火力発電も、安倍政権の支援を得て進めていることはブログ「石炭火力発電と三菱重工」でお知らせしました。

 

広島はすっかり変わりました
 吸収合併や分社化などは引き続き進められました。広島の三菱重工マシナリーテクノロジーのゴム・タイヤ 機械事業は10月1日付で新会社・三菱重工機械システムに統合されました(ニュースリリース 2017年9月1日「インダストリー&社会基盤ドメインの子会社を統合 新会社名「三菱重工機械システム」・・・」)。5年前のブログ「広島の新会社は不安がいっぱい」で書いた働く人たちの不安が思い出されます。

 一方、三菱重工広島の観音工場には大きなビルが2つ並んで建ちました。そこには三菱重工コンプレッサとプライメタルズテクノロジーズジャパンの本社が入りました(ニュースリリース 2017年11月15日「広島製作所 新事務所棟が竣工」)。

   ◇
 株主資本主義は株主資本利益率を引上げることが第一の目標です。そのためなら兵器生産も原発も石炭火力もやる。国内の産業空洞化には関心を示しません。そいう点で倫理欠如の経営と言えます。
 働く人たちや国民のためになる事業を進めさせるには、政府の産業政策を変えさせることが一つの方法ではないでしょうか。原発や石炭火力をやめて、再生エネルギー重視に舵を切る。トランプ軍拡への追随をやめる。新しい年には、そのような政府を作りたいものです。

 今年もご愛読ありがとうございました。よいお年をお迎えください。
    日本共産党三菱重工広製支部 2017年12月22日

2017年12月13日 (水)

日英ミサイル共同開発―歯止めない武器輸出―

共同研究から共同開発へ

 日本とイギリスが共同で研究している空対空ミサイルについて、来年度から試作品作成というステップに進む方針であることを小野寺防衛大臣が明らかにしました。

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・・・小野寺防衛大臣は閣議の後の記者会見で、「今年度までは、イギリスの技術に目標を探査・追尾するための日本の技術を組み合わせて、性能を分析する共同研究を行ってきた」と説明しました。そのうえで、「来年度は技術の確立のため、試作品を作って性能評価を行う」と述べ、来年度から6年間かけて、小型化や長射程化を進めた試作品の作成段階に入る方針を明らかにしました。

  (20171124日 NHK NEWS WEB 日英ミサイル共同研究 防衛相「来年度から試作品作成」より)

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 上記のニュースに出ている「目標を探査・追尾するための」装置はシーカーと呼ばれます。この日英ミサイル共同開発は、日本側からはシーカーに関する技術情報の移転(輸出)になります。

 イギリスの空対空ミサイル技術に日本のシーカーに関する技術を組み合わせる共同研究を国家安全保障会議が決定したのは20147月。安倍政権が「防衛装備移転三原則」という武器輸出の原則自由化を閣議決定した3カ月後という速さでした。

 その決定内容は、英国との共同研究のためのシーカーに関する技術情報の移転について2014717日)に出ています。

 この共同研究が来年度から試作品作成というステップに進むことになりました。

 

シーカーは三菱電機の高性能レーダー

 日経は、(1)対象となっているシーカーは三菱電機製の高性能レーダーでイギリスの空対空ミサイル・ミーティアに組み込んで新しい空対空ミサイルを開発する、(2)開発後は航空自衛隊の最新鋭ステルス戦闘機F35などへの搭載が見込まれる、(3)量産に至ればドイツやフランスへの輸出も検討する、と伝えています(日経 20171124日「日本、英国とミサイル共同開発 防衛装備政策に転機」)。

 

ミーティアとは

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 ミーティア(Meteor)は、イギリス空軍、ドイツ空軍、スペイン空軍、イタリア空軍のユーロファイター、フランス空軍のラファール、スウェーデン空軍のサーブ グリペンなどに搭載するためにMBDA社が開発しているアクティブレーダー誘導の長距離空対空ミサイル。視界外射程空対空ミサイル。

 2000年から本格開発が開始され、強力な電子妨害を受ける環境においても、遠距離の多目標攻撃能力を有することを目標としている。

  (ウィキペディアより)

  (注)MBDA社とは、ヨーロッパのミサイル製造企業

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ステルス戦闘機F35に搭載したら

 F35はアメリカのロッキード社を中心に9ヵ国で共同開発され、イスラエルを含む多くの国への輸出が考えられています。そのため、共同開発された新しい空対空ミサイルも一緒に各国に輸出されるでしょう。それも、空対空ミサイルという攻撃型の兵器です。

 安倍政権が閣議決定した「防衛装備移転三原則」は、歯止めのない武器輸出と言えそうです。

 

三菱電機の軍需生産

 三菱電機は、ウィキペディアの「概要」の中で「宇宙・防衛分野に強みを持っており、防衛エレクトロニクス分野での防衛省契約実績は長年にわたり第1位を維持している」と説明されています。

 さらに、「事業領域」の中に「防衛機器」があって、次のように書かれています。

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防衛機器

・誘導機器 - 鎌倉製作所:防衛省関連の製品としてミサイルを製造している。戦闘機用の中距離空対空ミサイルで、ライセンス生産ではレイセオンのスパローミサイル (AIM-7F) 、自社開発では99式空対空誘導弾 (AAM-4) 、地対空ミサイルでは03式中距離地対空誘導弾 (SAM-4) がある。他にパトリオットミサイルやイージス艦に搭載されるシステムやJ/FPS-5(通称「ガメラレーダー)等、TMD関連の業務も行っている。

  (ウィキペディアより)

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 防衛省の平成28年度中央調達の調達実施概況を見ますと、「3 平成28年度上位20社の契約実績」の中で、三菱電機は5位、金額は767億円、主な調達品には地対空誘導弾(ミサイル)や各種のレーダーが記載されています。

 しかし、三菱電機のホームページには、ミサイルや防衛省向けの製品が出てきません。民生用、平和産業というイメージを傷つけたくないのかも知れませんが、平和を望む国民の強い気持ちがそうさせているのかもしれません。

 

    日本共産党三菱重工広製支部 201712月13

2017年11月25日 (土)

石炭火力発電と三菱重工

 ドイツのボンで開かれていたCOP23(国連気候変動枠組み条約第23回締約国会議)で、トランプ政権のパリ協定脱退に多くの国々から批判が上がりました。それだけでなく、石炭火力発電所建設を官民一体ですすめている安倍政権も国際的な批判の的になっています。
 日経は次のように報じています。
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・・・(COP23)の交渉で日本は存在感を示せず「石炭火力発電の推進国」という点ばかりが注目された。温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」離脱を決めた米国と並び、温暖化ガス削減を妨げる勢力とも見られ始めている。
 (日経 2017年11月19日「脱石炭、見誤った日本」)
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 温暖化対策は待ったなしの課題になっています。しかし、安倍政権の下で三菱重工は石炭火力発電を国内外に売り込んでいます。
 今回は、国際的な問題になっている石炭火力発電について安倍政権の政策と三菱重工の状況を調べてみました。
 
エネルギー基本計画における石炭火力
 石炭火力発電に関する政府の考えは「エネルギー基本計画」(平成26年4月)に出ています。
 それを見ますと、各所で石炭火力発電を肯定的に述べていますが、「(3)石炭」(P.22)には考え方がまとめられていますので、かいつまんで転記します。
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エネルギー基本計画(平成26年4月)
(3)石炭(P.22)
①位置付け
「温室効果ガスの排出量が大きいという問題があるが」、「熱量当たりの単価も化石燃料の中で最も安いことから」、「重要なベースロード電源の燃料として再評価されており、高効率石炭火力発電の有効利用等により環境負荷を低減しつつ活用していくエネルギー源である」。
②政策の方向性
「発電量当たりの温室効果ガス排出量を抜本的に下げるための技術(IGCCなど)等の開発をさらに進める。こうした高効率化技術等を国内のみならず海外でも導入を推進していくことにより、地球全体で環境負荷の低減と両
立した形で利用していく必要がある」。
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 要するに安倍政権は、技術開発によって環境負荷の低減と石炭の利用は両立できるという前提に立って、石炭火力発電を国内だけでなく輸出も積極的に推進するという考えです。
 しかし、この前提が完全に破たんしているというのが現実のようです。
 
石炭火力発電のCO2排出量
 長年の技術開発によって石炭火力発電のCO2排出量は低減していきていますが、日本総合研究所理事の足達英一郎氏は、発電種類別の二酸化炭素(CO2)の排出は現状では次のような状態で、今後さらに進んだとしても「約530g/kWhどまり」だと述べています。
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 発電種類別の二酸化炭素(CO2)排出
  発電の種類    CO2排出原単位
亜臨界圧石炭火力発電   約900g/kWh
超臨界圧石炭火力発電   約850g/kWh
超々臨界圧石炭火力発電 約800g/kWh
石油火力発電           約700g/kWh
革新型石炭ガス化複合
発電/石炭ガス化燃料電
池複合発電             約530g/kWh
LNG汽力発電           約480g/kWh
LNGコンバインド発電 約375g/kWh
(出所)総合資源エネルギー調査会資料より作成)
(日経産業新聞2015年9月10日「世界で進む脱石炭の流れ」より)
(注)g/kWh:グラム/キロワット時
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三菱重工の技術
 三菱重工のホームページには、前出のエネルギー基本計画にも出ているIGCC(石炭ガス化複合発電プラント)が説明されています。
 それを見ますと、IGCCは「発電効率と環境性能を飛躍的に向上させた次世代の火力発電システムです。大型IGCC では従来型石炭焚き火力発電方式と比べ、発電効率を約20%向上させ、CO2の低減も図ることができます」。
 発電効率を約20%向上させるのでそれだけ石炭の使用量が減り、CO2の低減になるという説明ですが、IGCC(石炭ガス化複合発電プラント)は上記の表の約530g/kWhに対応していますから、LNGに比べるとまだまだ排出量が多すぎると言わざるを得ませんし、LNGの排出レベルなら良いというわけでもありません。
 三菱重工はCO2回収装置も手がけていますが、ホームページにはどれだけの効率で回収できるのか、その数値は書かれていません。このよいな実情が、上記の日本総合研究所理事・足達英一郎氏の「今後さらに進んだとしても約530g/kWhどまり」という言葉の裏付けになっているのではないでしょうか。このあと出てきます世界最新鋭という勿来(なこそ)のIGCCは約680g/kWhと推測されます。
 
三菱重工の取組み
 三菱重工にとって、火力発電は目玉事業とも言えるものです。「パワードメイン事業戦略説明会」(2017年6月12日)の説明資料の「主要事業別売上高」(p.4)には火力発電がパワードメインの4分の3を占めているグラフが出ています。その大部分はガス火力と石炭火力です。石炭火力ではIGCC(石炭ガス化複合発電プラント)を積極的に進めています。
 説明資料の「施策④ 低炭素社会への貢献」(p.25)には「IGCC積極展開:国内で培った世界一の技術を海外へ展開」と書いています。「約530g/kWhどまり」のIGCCを「低炭素社会への貢献」と言っています。
 同じページ(p.25)に、常磐共同火力株式会社勿来(なこそ)発電所に建設したIGCCの長期運転でノウハウを蓄積したと書かれています。このプロジェクトは東京電力・三菱重工ほか計5社によるもので三菱重工のニュースリリース(2015年8月19日)「福島復興に向けた世界最新鋭の石炭火力発電所プロジェクトの推進に関する基本合意書の締結について」に発表されていますが、その中で国の支援があることも書かれています。
 なお、その中には「従来型石炭発電方式(超々臨界圧)よりも高効率であり、約15%の二酸化炭素排出量を削減」と書かれています。上記に見た表では超々臨界圧石炭火力発電のCO2排出は約800g/kWhですから、その15%減は約680g/kWhとなって、LNGコンバインド発電・約375g/kWhの1.8倍になります。
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 気候ネットワーク
は、IGCCは「高コストで、大量のCO?を排出」と訴えています(「世界中で失敗が続く IGCC (石炭ガス化複合発電)」)。
 気候ネットワークの「石炭発電所ウォッチ」によりますと、現在国内で42基の石炭発電所の建設が計画されています。
    日本共産党三菱重工広製支部 2017年11月25日

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