2017年7月20日 (木)

「弾道ミサイル防衛」で国民を守れるか?

増え続ける防衛費
 先日の3連休最後の日に日経は次のように報じました。
 ・防衛省が2018年度予算の概算要求で過去最高額を計上する方針であること
 ・概算要求のポイントの第一は北朝鮮への対応である弾道ミサイル防衛で、その主な中身は、
   ・陸上配備型「イージス・アショア」の研究費増額
   ・イージス艦搭載の迎撃ミサイル「SM-3ブロック2A」の生産
(日経 2017年7月17日「防衛費4年連続5兆円超 来年度予算、過去最高要求へ 」より)

イージス・アショアとは
 イージス・アショア(Aegis Ashore)とは、イージス・システムの陸上配備です。イージス・システムは弾道ミサイル防衛を含む艦載用の兵器システムで、これを搭載する艦船をイージス艦と言います。このイージス・システムを陸上で使おうというのがイージス・アショアです。
 イージス・システムはアメリカ製で、中身はブラックボックス(マル秘)です。価格は500億円とも言われています(ウィキペディア「イージス・システム」より)。
 防衛省の平成24年度中央調達実施概況には「イージス艦へのBMD機能の付加(器材等調達)1式 341億円 米海軍省(契約相手方)」という記載があります。
 (注)BMD:弾道ミサイル防衛(ballistic missile defence)

SM-3ブロック2Aとは
 SM(スタンダード・ミサイル)はアメリカ製の艦対空ミサイル。その中で、SM-3シリーズは弾道ミサイルを迎撃するための艦船発射型迎撃ミサイルです。その中でも、「SM-3ブロック2A」は大陸間弾道ミサイルの迎撃を目的に日米共同で開発されました。日米共同開発には三菱重工も参画しています(詳細は「日本の軍需産業 2016 (5)ミサイル防衛システム」をご参照ください)。
 イージス・アショアも「SM-3ブロック2A」も、早期警戒衛星をはじめとする米軍の情報システムのもとで運用されますから、日本の自衛隊が米軍に深く組み込まれることを意味します。

どうなる日本のミサイル防衛
 NHK NEWS WEB(7月3日)「どうなる日本のミサイル防衛」は、日本のミサイル防衛の現状と新しいシステムを導入する意味を伝えています。
 ・日本は現在、日本海に展開するイージス艦に搭載された迎撃ミサイル「SM3」と、東京・新宿区の防衛省などに配備されている迎撃ミサイル「PAC3」を組み合わせた2段階の態勢をとっています。防衛省の担当者は「ミサイル防衛は着実に整備が進められており、万全に対応できるので大丈夫だ」と言いますが、「『2層防衛』となっているのは日本のごく一部で、十分とはいえない」という指摘もあります。
 ・新システムとしてTHAAD(高高度地対空ミサイル)の導入が検討されています。THAADは、同時に飛んでくる複数の弾道ミサイルへの対処能力が高いとされ、「2層防衛」から「3層防衛」となることから、防衛省は、これらのシステムが導入されれば、迎撃態勢が強化されるとしています。
 ・さらに革新的な技術として「高出力レーザー」と「レールガン」の研究も進められていますが、日本で弾道ミサイル防衛に活用されるまでには、まだまだ時間が必要で、20年以上はかかると見られています。
 ・多額の費用がかかることも紹介しています。
   イージス・アショア1基当たりの価格は800億円程度
   SM3を改良した新型の迎撃ミサイルは、1発あたりが40億円程度
   THAADも1基当たりの価格は800億円程度、迎撃ミサイル1発の価格が10億円余り
 ・さらに大きな問題を紹介しています。防衛省関係者は「(THAADを導入する)新型の迎撃ミサイルシステムを運用できるようになるには、5年くらいかかるだろう。だが、運用が開始されたときに北朝鮮のミサイルの能力が、迎撃能力を上回っていればシステムを導入する意味がない」と。
 ・最後に、自民党が安倍総理大臣に提出した提言に盛り込まれている「敵基地反撃能力」の保有を紹介しています。

当たるのか? 米ミサイル防衛
 日経ビジネス(2017年7月10日)「当たるのか? 米ミサイル防衛」は、ミサイル防衛先進国アメリカの事情を紹介しています。
 まず、現行の米ミサイル防衛システムで北朝鮮からの弾道ミサイル攻撃を迎撃できる「確かな保証は存在しない」こと。そのため、米政権は次世代システムの開発・テストを急いでいると。
 そして、どんなにミサイル防衛を強化しても、迎撃能力を超える多数のミサイルによる攻撃(飽和攻撃)には太刀打ちできないということ。
 オペリングMDA元局長は、もし北朝鮮が明日攻撃を仕掛けてきたら、迎撃ミサイルが敵の弾頭を本当に迎撃できるかどうか誰にも分らないと認めていると。

対北朝鮮「ミサイル防衛」も「敵基地攻撃」も驚くほど非現実的である
 現代ビジネス(講談社 2017年4月5日 半田 滋)は「対北朝鮮『ミサイル防衛』も『敵基地攻撃』も驚くほど非現実的である」と説得力を持って喝破しています。
 まず、自衛隊のミサイル防衛システムは、イージスアショア(陸上配備型イージスシステム)やTHAAD(高高度地対空ミサイル)で充実させても、守ることができない実情を具体的に示しています。
 「軍事的合理性や費用対効果の面から当初、自衛隊の制服組はMD(ミサイル防衛)導入に反対した。これに対し、2002年当時の守屋武昌防衛事務次官は『米国はMD開発に10兆円かけた。同盟国として支えるのは当然だ』と主張して導入の旗を振り、『防衛庁の守護神』といわれた山崎拓元防衛庁長官が後押しする形でMD導入は翌03年に閣議決定された。きっかけは対米追従だったのだ」。
 「一から導入するイージスアショア、THAADが極めて高額の防衛費を必要とするのは自明だろう。しかも米政府の提示する価格、納期で購入が義務づけられる対外有償軍事援助(FMS)となるのは確実なため、『いつ、いくらでどう提供するか』は米政府次第となり、武器を媒介にした米国による日本支配が強化されるのは間違いない」。
 今回の自民党の提言にある「敵基地反撃」も、潜水艦発射弾道ミサイルの開発や北朝鮮の基地は7割が地下化されていることなどから北朝鮮の戦闘能力を容易に壊滅することはできず、全面戦争に発展しかねないと警告しています。
 「結局、日本がやるべきことは」北朝鮮が米朝間の平和協定締結を望んでいることから、「安倍政権に求められるのは、以下のように米国を説得することだろう。『北朝鮮との対話に乗り出し、交渉の過程で核放棄とミサイル開発の中止を求め、見返りに平和協定を結んで北朝鮮に《米国は攻撃しない》という保障を与えるべきだ』と」。

際限ない軍拡競争
 日本がアメリカに組み込まれる形で進められている「弾道ミサイル防衛」は非現実的で、際限ない軍拡競争と言えるようです。米ソ冷戦時代の核兵器開発競争の悪夢が思い出されます。

    日本共産党三菱重工広製支部 2017年7月20日

2017年7月13日 (木)

三菱重工、川崎重工、IHIの1人当り売上高など

売上高
        三菱重工    川崎重工      IHI
2010年度 2兆9037億円  1兆2269億円  1兆1872億円
2011年度 2兆8209億円  1兆3037億円  1兆2218億円
2012年度 2兆8178億円  1兆2888億円  1兆2560億円
2013年度 3兆3495億円  1兆3854億円  1兆3040億円
2014年度 3兆9921億円  1兆4861億円  1兆4558億円
2015年度 4兆0468億円  1兆5410億円  1兆5393億円
2016年度 3兆9140億円  1兆5188億円  1兆4863億円

 売上高は景気に左右されますが、この間3社とも増加傾向と言えます。その要因の一つにM&A(合併・買収)による事業拡大があります。

従業員数
        三菱重工    川崎重工      IHI
2010年度  8万1347人   3万2706人   2万6035人
2011年度  8万2259人   3万3264人   2万6915人
2012年度  8万2285人   3万4010人   2万6618人
2013年度  9万6055人   3万4620人   2万7562人
2014年度  9万8442人   3万5471人   2万8533人
2015年度  10万0784人   3万4605人   2万9494人
2016年度  9万9340人   3万5127人   2万9659人

 M&A(合併・買収)で事業と人を吸収・拡大してきたために従業員数も増加傾向が見られます。
 三菱重工は、事業と人を吸収・拡大したあと、固定費削減と言って人員を削減しています。
 従業員数にどの範囲まで含めているかは前回のブログの(注)をご参照ください。

1人当り売上高(売上高÷従業員数)
        三菱重工    川崎重工      IHI
2010年度 3569万円/人  3751万円/人  4560万円/人
2011年度 3429万円/人  3919万円/人  4539万円/人
2012年度 3424万円/人  3789万円/人  4718万円/人
2013年度 3487万円/人  4001万円/人  4731万円/人
2014年度 4055万円/人  4189万円/人  5102万円/人
2015年度 4015万円/人  4453万円/人  5219万円/人
2016年度 3940万円/人  4323万円/人  5011万円/人

 従業員数に臨時従業員数を含む・含まないの違いがあります。外注率の違いもあります。そのため1人当り売上高を企業間で比較するのはあまり意味がないように思われますが、3社とも同じくらいの規模と言えます。
 一方、同一企業における推移を見てみますと、1人当り売上高がはっきりと増加傾向にあることがわかります。上記の表の、初めの3年(2010~12年度)とあとの3年(2013~16年度)を単純平均で比較しますと次のようになります。

          三菱重工    川崎重工     IHI
2010~12年度 3474万円/人 3819万円/人 4605万円/人
2013~16年度 4003万円/人 4321万円/人 5110万円/人
 増加率     1.15倍     1.13倍      1.11倍

 1人当り売上高の増加には、設備投資による自動化・効率化もありますが、仕事量が増加して労働がきつくなっているも考えられます。これだけのデータから断ずることはできませんが、搾取のレベルが上がったと言うべきかもしれません。

営業利益の推移
       三菱重工  川崎重工   IHI
2010年度 1012億円  426億円  613億円
2011年度 1119億円  574億円  433億円
2012年度 1635億円  420億円  421億円
2013年度 2061億円  723億円  532億円
2014年度 2961億円  872億円  632億円
2015年度 3095億円  959億円  220億円
2016年度 1505億円  459億円  473億円

 営業利益の推移も見てみました。この間、三菱重工と川崎重工は2015年度に最高を、IHIは2014年度に最高を記録しています。営業利益は創出した利益ですから、製造業にとっては重要ですが、安値受注や見通しの間違いなど思わぬミスなどがあって期待どおりには行かないところがあると思います。
 当然のことですが、株主資本主義にとっては資本効率向上のために営業利益の向上は重要な課題です。
 
労働分配率について

 労働分配率は、人件費÷付加価値 で求められますが、企業は人件費を公表していませんので有価証券報告書などから求めることはできません。

    日本共産党三菱重工広製支部 2017年7月13日

2017年7月 6日 (木)

三菱重工、川崎重工、IHIの内部留保と配当

 日本の大手3重工と言われる三菱重工、川崎重工、IHIの内部留保と配当はこれまで見て来ましたが、2016年度の各社の有価証券報告書が出ましたので、最近のデータを整理しておきたいと思います。

内部留保
        三菱重工  川崎重工    IHI
2012年度 11,053億円  2,529億円  1,877億円
2013年度 12,353億円  2,718億円  2,257億円
2014年度 13,523億円  3,079億円  2,070億円
2015年度 13,770億円  3,340億円  1,992億円
2016年度 14,184億円  3,418億円  2,033億円

 三菱重工は、客船の赤字やMRJの開発遅れなど苦しい部分があっても、利益を出し、内部留保を着実に積み上げ続けています。
 ここでは、内部留保=利益剰余金+資本剰余金 としています。

従業員数
       三菱重工  川崎重工    IHI
2012年度  82,285人  34,010人   26,618人
2013年度  96,055人  34,620人   27,562人
2014年度  98,442人  35,471人   28,533人
2015年度  100,784人  34,605人   29,494人
2016年度  99,340人  35,127人   29,659人

 三菱重工は、M&A(合併・買収)で事業と人を吸収・拡大したあと、固定費削減と言って人員を削減しています。
 従業員数にどの範囲まで含めているかは下記の(注)をご参照ください。

1人当り内部留保(内部留保÷従業員数)
        三菱重工    川崎重工     IHI
2012年度 1,343万円/人  743万円/人  705万円/人
2013年度 1,286万円/人  785万円/人  818万円/人
2014年度 1,373万円/人  868万円/人  725万円/人
2015年度 1,366万円/人  965万円/人  675万円/人
2016年度 1,427万円/人  973万円/人  685万円/人

 こんなに会社に貢献してきました。この内の何%かを賃上げにまわしてもらってもいいんじゃないでしょうか。

1株当り配当と配当総額
        三菱重工   川崎重工    IHI
        1株  総額    1株  総額  1株 総額
2012年度  8円  268億円  5円   83億円 5円 73億円
2013年度  8円  268億円  6円 100億円 6円 92億円
2014年度 11円 369億円 10円 167億円 6円 92億円
2015年度 12円 403億円 12円 200億円 3円 46億円
2016年度 12円 403億円  6円  100億円 0円  -

 三菱重工は株主偏重の高配当を続けています。このような傾向は全国的に強くなっています。

1人当り配当額(配当総額÷従業員数)
        三菱重工  川崎重工     IHI
2012年度 32,5万円/人 24.4万円/人 27.4万円/人
2013年度 27.9万円/人 28.8万円/人 33.3万円/人
2014年度 37.4万円/人 47.0万円/人 32.2万円/人
2015年度 39.9万円/人 57.7万円/人 15.5万円/人
2016年度 40.5万円/人 28.4万円/人  -

 株主にも、こんなに貢いできました。

(注)従業員数について
  従業員数にどの範囲まで含めているかは各社の有価証券報告書の「第一部 企業情報」の「第1 企業の概況」の「5 従業員の状況」に(注)で示されています。

  三菱重工の(注)
   1.従業員数には、グループ外から当社グループ(当社及び連結子会社)への出向者を含み、当社グループからグループ外への出向者を含まない。また、臨時従業員数は[ ]内に年間の平均人員を外数で記載している。
   2.臨時従業員には、定年退職後の再雇用社員、嘱託契約の従業員及びパートタイマー等を含み、派遣社員等は含まない。
 (上記の三菱重工の従業員数は、年間平均の臨時従業員数を含んでいます。)

  川崎重工の(注)
   1 従業員数は就業人員のみを対象としている。なお、臨時従業員数については従業員総数の100分の10未満であるため記載を省略している。
   2 従業員数は再雇用従業員を含んでいる。

  IHIの(注)
   従業員数は就業人員数(当社グループからグループ外への出向者を除き,グループ外から当社グループへの出向者を含む。)であり,臨時従業員数については,従業員数の100分の10未満であるため記載していません。

(注)有価証券報告書について
 有価証券報告書は株式上場企業が法律に基づいて毎年作成します。インターネットで見ることができます。量が多いのと、独特の用語がありますが、書いてある項目順(目次)が決まっていますので見たいところだけ見ることができます。
 配当総額は、「第一部 企業情報」の「第4 提出会社の状況」の「3 配当政策」の中にでています。
 利益剰余金と資本剰余金は、「第一部 企業情報」の「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等」のトップに出ている「連結貸借対照表」のおしまいの方「純資産の部」の中に出ています。
 なお、主要な項目については、各社がホームページでIR情報(株主・投資家への情報)として公開しています。

    日本共産党三菱重工広製支部 2017年7月6日

2017年6月29日 (木)

三菱重工、川崎重工、IHI、JMUの軍需生産

 日本の大手3重工(三菱重工、川崎重工、IHI)+JMUの軍需生産を、防衛装備庁の中央調達から抜き出して整理しておきたいと思います。防衛装備庁のホームページの中に「調達実績及び調達見込(中央調達分)」というページがあります。そこから各年度の「調達実績及び調達見込」を見ることができます。
 中央調達とは、自衛隊の装備(武器など)や防衛装備庁の研究開発などの調達で、要求機関としては、「陸幕、海幕、空幕、装備庁、防大、防医大、内局等」が記載されています。企業の軍需生産としては、中央調達のほかには地方調達や輸出が考えられます。
 大手3重工の一つIHIは、もとの社名が石川島播磨重工業(株)で、2007年に(株)IHIに変更しました。JMU(ジャパン マリンユナイテッド(株))は、IHI、JFEホールディングス、日立造船の3社が造船部門を統合して2013年に設立した会社です。IHIは護衛艦、掃海艦などの武器を生産していましたが、それらはJMUに引き継がれていますので、重工関連の軍需生産として一緒に見ておきたいと思います。

武器生産の大手企業
 各年度の「調達実績及び調達見込」の「3 上位20社の契約実績」に「過去5ヵ年の順位」が出ています。大手3重工とJMUは次のようになっています。
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     中央調達額の順位
   (平成)  三菱重工 川崎重工 IHI  JMU
2016(28)年度 1位     2位    7位   6位
2015(27)年度 2位     1位    3位   7位
2014(26)年度 1位     2位    6位   20位
2013(25)年度 1位     3位    5位   17位
2012(24)年度 1位     3位    9位   6位
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 川崎重工は、2015(27)年度に1位になっていますが、これは固定翼哨戒機(P-1)を20機まとめて契約した金額(2,073億円)が大きかったためです。同じ年度にIHIの順位も3位と上がっていますが、これは同じ固定翼哨戒機(P-1)20機のエンジン(80基)をまとめて契約した金額(708億円)が大きかったためです。
 JMUは護衛艦を受注した年(2016(28)年度、2015(27)年度、2012(24)年度)に順位が上がっています。そうでない年(2014(26)年度、2013(25)年度)は、三菱重工が護衛艦を受注しています。
 大手3重工とJMUに並んで調達額が大きいのは、探知・追尾・制御・通信などに関する武器を生産している三菱電機、日本電気、富士通、東芝などです。
 各社が生産している装備(武器など)にどのようなものがあるかは、「3 上位20社の契約実績」に「主な調達品」として出ています。それらの金額は「2 中央調達の主要調達品目」に主なものが出ています。

大手3重工とJMUへの調達額
 各年度の「調達実績及び調達見込」の「2 上位20社の契約実績」に各社の契約実績が出ています。
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    4社の中央調達契約額
   (平成)    三菱重工  川崎重工    IHI    JMU
2016(28)年度 4,532億円  994億円  355億円 410億円
2015(27)年度 1,998億円 2,778億円 1,147億円 389億円
2014(26)年度 2,632億円 1,913億円  619億円 102億円
2013(25)年度 3,165億円  948億円  483億円 116億円
2012(24)年度 2,403億円 1,480億円  277億円 740億円
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上記4社の合計が中央調達年度契約額に占める割合を見てみますと次のようになっています。
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    中央調達年度契約額に占める4社の割合
         中央調達  
  (平成)    年度契約額  4社合計   割合
2016(28)年度 18,397億円 6,291億円 34.2%
2015(27)年度 18,126億円 6,312億円 34.8%
2014(26)年度 15,717億円 5,266億円 33.5%
2013(25)年度 12,693億円 4,712億円 37.1%
2012(24)年度 15,287億円 4,900億円 32.1%
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 4社で中央調達の3分の1超を占める状態が続いています。護衛艦はJMUと三菱重工の2社、戦闘機は三菱重工1社、などのように、高額な装備は競争がほとんどない独占状態であることがわかります。
 中央調達の年度契約額が、2015年度からドッと上がっています。2,500億円規模の増額です。2015年は戦争法(安保法制)が強行可決され、防衛装備庁が作られた年です。アメリカと一緒に戦う準備が具体的に進められていることがわかります。アメリカと一緒に戦う準備は、アメリカから高額な装備の購入にも表れています。

アメリカから高額兵器の購入
 「2 中央調達の主要調達品目」の契約相手方の中に「米海軍省」、「米空軍省」などアメリカから購入している高額な装備があります。
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    アメリカから購入している高額な装備
2016(平成28)年度
  ティルト・ローター機(V-22)       1式  754億円
  戦闘機(F-35A)             1 式 1,091億円
  新早期警戒機(E-2D)          1式  260億円
  新空中給油・輸送機          1式  231億円
  滞空型無人機(グローバルホーク) 1式  145億円
                       合計  2,481億円
2015(平成27)年度
  ティルト・ローター機(V-22)       1式  585億円
  戦闘機(F-35A)              1式 1,065億円
                       合計  1,650億円

2014(平成26)年度
  戦闘機(F-35A)                1式  750億円
                       合計   750億円
2013(平成25)年度
  イージス装置等のプログラム維持管理1式 73億円
  戦闘機(F-35A)              1式  355億円
                       合計   428億円
2012(平成24)年度
  イージス艦へのBMD機能の付加  1式  341億円
  戦闘機(F-35A)             1式  569億円
                        合計   910億円
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 これも2015年度から急増しています。

今年度も高額の装備が目白押し
 中央調達の「平成28年度調達実績及び平成29年度調達見込」の中に「5 平成29年度中央調達の主要調達予定品目」が出ています。それを見ますと次のような高額装備が並んでいます。
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    2017(平成29)年度の主要調達予定品目から抜粋
ティルト・ローター機(V-22)             4機
水陸両用車(AAV7)               11両
10式戦車                       6両
潜水艦(8128)                    1隻
弾道ミサイル防衛用誘導弾SM-3        1式
戦闘機(F-35A)                    6機
滞空型無人機等(RQ-4Bグローバルホーク)1機
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 これらの内、ティルト・ローター機(V-22)と滞空型無人機等(RQ-4Bグローバルホーク)を除く他の5つは三菱重工に関係があります。水陸両用車(AAV7)はアメリカ製で2016(平成28)年度に11両(81億円)を住商エアロシステムが納入していますが、三菱重工が日本製水陸両用車を開発していることがネットで伝えられています。10式戦車は三菱重工が作っています。弾道ミサイル防衛用誘導弾SM-3については能力向上型迎撃ミサイル(SM-3 ブロックⅡA)の日米共同開発に三菱重工が参加しています。戦闘機(F-35A)の国内製造に三菱重工が参加しています。

パリ航空ショーに固定翼哨戒機(P-1)が参加
 2014年4月に安倍内閣が武器輸出を原則解禁する「防衛装備移転三原則」を閣議決定してからいろいろな動きがありましたが、最近のニュースとしては今年のパリ航空ショー(6月19日~6月25日)に川崎重工が自衛隊に納入した固定翼哨戒機(P-1)が展示されたことではないでしょうか(Aviation Wire 2017年6月23日)。自衛隊機がパリ航空ショーに参加したのは初めてのことと伝えています。
 武器輸出が本格的に始まると軍需生産は飛躍的に拡大して、日本経済の軍事化が大きく進むことになります。

    日本共産党三菱重工広製支部 2017年6月29日

2017年6月15日 (木)

三菱重工、川崎重工、IHIの決算

 日本の大手3重工と言われる三菱重工、川崎重工、IHIの2016年度決算を見ておきたいと思います。
 各社が発表した決算説明資料を中心に、決算短信(決算概要)と2015年度の有価証券報告書から抜き出しました。有価証券報告書は2016年度のものがまだ発表されていませんので、従業員数は少し古いデータになっています。

三菱重工
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        2015年度実績 2016年度実績 2017年度計画
 受注     44,855億円   42,756億円   45,000億円
 売上     40,468億円   39,140億円   41,500億円
 営業利益   3,095億円    1,505億円    2,300億円
 純利益      638億円     877億円     1,000億円
 ROE         3.7%       5.1%       5.5%
 従業員数   100,784人     -        -

 配当       12円/株     12円/株     12円/株
 配当総額     403億円      403億円     403億円
 配当性向      61.3%       45.9%       40.3%
 1人当り
  配当額   40.0万円/人      -        -

 内部留保   13,770億円   14,184億円      -
 1人当り
  内部留保  1,366万円/人     -         -
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(注)ROE:純利益÷株主資本(%)
(注)配当性向:配当総額÷純利益(%)
(注)従業員数:有価証券報告書より
  1.従業員数には、グループ外から当社グループ(当社及び連結子会社)への出向者を含み、当社グループからグループ外への出向者を含まない。また、臨時従業員数は年間の平均人員を外数で記載している。
  2.臨時従業員には、定年退職後の再雇用社員、嘱託契約の従業員及びパートタイマー等を含み、派遣社員等は含まない。
 (2015年度末における正規従業員数は83,932人、年間平均の臨時従業員数16,852人、合計100,784人)
(注)配当性向:配当総額÷純利益(%)
(注)1人当り配当額:配当総額÷従業員数
(注)内部留保:利益剰余金+資本剰余金
(注)1人当り内部留保:内部留保÷従業員数

川崎重工
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        2015年度実績 2016年度実績 2017年度計画
 受注    1兆6936億円   13,487億円   15,600億円
 売上    1兆5410億円   15,188億円   15,550億円
 営業利益     959億円      459億円      580億円
 純利益       460億円     262億円      360億円
 ROE        10.6%        6.0%       8.0%
 従業員数    34,605人       -        -

 配当       12円/株     6円/株      6円/株
 配当総額    200億円     100億円      100億円
 配当性向     43.5%      382%        27.8%
 1人当り
  配当額   57.8万円/人     -        -

 内部留保   3,340億円   3,418億円      -
 1人当り
  内部留保  965万円/人      -          -  
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(注)従業員数:有価証券報告書より
  1.従業員数は就業人員のみを対象としている。なお、臨時従業員数については従業員総数の百分の十未満であるため記載を省略している。
  2.従業員数は再雇用従業員を含んでいる。

IHI
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        2015年度実績  2016年度実績 2017年度計画
 受注       1兆 6053億円  13,898億円  15,000億円
 売上        1兆5393億円  14,863億円  15,500億円
 営業利益        220億円    473億円    650億円
 純利益          15億円       52億円    230億円
 ROE          0,5%      1.7%      7.4%
 従業員数     29,494人     -       -

 配当        3円/株     0円/株    6円/株
 配当総額   46.32億円       -     92.6億円
 配当性向    303.0%         -       40.3%
 1人当り
  配当額   15.7万円/人      -       -

 内部留保   1,992億円    2,033億円    -
 1人当り
  内部留保 675万円/人      -       -
---------------------------------
(注)従業員数:有価証券報告書より
  従業員数は就業人員数(当社グループからグループ外への出向者を除き,グループ外から当社グループへの出 向者を含む。)であり,臨時従業員数については,従業員数の100分の10未満であるため記載していません。
     ◇
 従業員1人当りの配当額は年間・数十万円にのぼっています。それだけ株主に貢いでいるということです。IHIは、2015年度の純利益が15億円なのに配当総額は46.32億円ですから、貯めていた利益を取り崩してまでして株主に支払ったということです。
 内部留保は、税金を払ったあとの純利益から株主への配当などを支払って、最後に残った金額の累計です。内部留保の金額がどれだけかは、外部から完全に把握することはできませんが、少なくとも利益剰余金と資本剰余金の合計と見ることができます。これらは企業が正当に蓄えたものですから自由に使うことができます。働く人たちの汗と涙の結晶でもありますから、大幅賃上げにも使ってもらいたいものです。

    日本共産党三菱重工広製支部 2017年6月15日

2017年6月 1日 (木)

2015事業計画の見直しと対策(その3 飛躍を狙う)

 前回と前々回のブログで「2015事業計画推進状況」(2017年5月9日)のⅠ~Ⅳを見ました。そこには、受注規模と営業利益が目標に達していないが高配当は続けるという方針と、大規模な「人員対策」(人員削減)の計画を持っていることが書かれていました。
 今回は、Ⅴ以降を見ていこうと思います。
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「2015事業計画推進状況」の主な項目
 Ⅰ. 2016年度の実績
 Ⅱ. 2017年度数値計画の見直し
 Ⅲ. 2015事業計画の全体進捗評価
 Ⅳ. 主な対策の推進状況
 Ⅴ. 「改革の総仕上げ」としての組織・制度の補強
 Ⅵ. まとめ
 [参考資料]
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Ⅴ. 「改革の総仕上げ」としての組織・制度の補強
 この章の項目は次のとおりです。項目の上に、「- 2018事業計画における飛躍への準備 -」とありますが、これは、「2015事業計画」で掲げた事業の選択と集中が進み、さまざまな課題も克服するメドがついたので新しい飛躍を狙う、という考えのようです。
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 - 2018事業計画における飛躍への準備 -
  1. グローバル/ローカル経営の最適化
  2. 生産部門の革新
  3. アセットマネジメントの更なる強化
  4. イノベーション推進研究所(仮称)
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1. グローバル/ローカル経営の最適化

 三菱重工グループの拠点は各国・各地にありますので、それら全体を統制のとれた一つの経営体として高効率に運営していくとともに、各地域(特に海外)の経営と営業を強化するという方針のようです。

2. 生産部門の革新
 IoTAIなど技術の急速な進歩を積極的に取り入れていく方針のようです。
 (注)IoT:Internet of Things(さまざまな機器をインターネットにつないで実現する保守・点検など)
 (注)AI :Artificial Intelligence(人工知能)
 「パワー及び機械事業」については、「グローバル生産拡大による国内生産縮小」が進んだので「拠点の集約/再編」をし、「Iot/AIを活用」して30%以上の生産性向上をはかるとしています。
 これとは対照的に、「航空宇宙事業」については国内生産を拡大するために、「国内主体の最適再編」をおこなうとしています。

3. アセットマネジメントの更なる強化
 低操業工場はグループ内シェアまたは他社へリース、低利用オフィスも他社へリースするなど、「従来の枠を超えたアセットマネジメント」を推進して、「将来的に数百億円/年の安定的CF創出」をはかるとしています。
 (注)CF:Cash Flow(現金の出入り)

4. イノベーション推進研究所(仮称)
 新しく「当社100%出資の研究開発専業法人」を設立して、大学や外部研究機関などを活用しながら「外部の最先端知見やアイデアを吸収」して技術開発・製品開発に活用する方針です。「従来にない発想とアプローチ」で研究開発を進める方針のようです。

 このような新しい方針を見ますと、これまでのやり方にとらわれずに、より強大な多国籍企業を目指して新しい飛躍を狙っていることがわかります。株主ファーストの利益追求のために。

Ⅵ. まとめ
 ここでは、「改革の総仕上げ」をおこなって、「2018事業計画(持続的成長ステージ)への円滑な移行」をはかり、2019年度に達成する数値目標をかかげています。この数値は、2015事業計画の2017年度の数値目標とほぼ一致しますので、計画は2年遅れで進んでいることになります。
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  2019年度の数値目標
 受注     5.5兆円
 売上     5.0兆円
 営業利益 4,500億円
 純利益   2,000億円
 ROE     10%
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 2015事業計画は3年計画ですから、2年遅れということは厳しい状況が続いているととらえることができます。それには、前回のブログで見ましたように、「2016年度に想定を超える課題が発生」したことと、その背景として「世界経済の不透明感」があるということができます。
 その底流には、各国の多国籍企業(グローバル企業)が株主ファーストの利益追求を推進しているために、先進資本主義国の経済低迷と貧富の格差がますます深まっていることがあるのではないでしょうか。

[参考資料]
 おしまいに、参考資料として、すでに見ました「名古屋地区の中期低操業対策」(p.41)、「仏/AREVA関連出資」(p.42)、その他が出ています。

防衛事業については何も書かれていません
 2015事業計画(p.25)には「防衛・宇宙ドメインの新事業強化- 従来枠組みを打破し事業規模拡大 -」、そのための「成長戦略①」は「防衛装備移転三原則を梃に海外展開」などがかかれていますが、「2015事業計画の見直しと対策」には何も書いてありません。
 何も書いてないということは順調に進んでいることかもしれません。数値を見ますと次のように順調です。
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    防衛・宇宙ドメインの目標と実績
       2015事業計画    2016年度の
       2017年度の目標    実績
 売上    4,000億円     4,706億円
 営業利益  250億円      279億円
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    日本共産党三菱重工広製支部 2017年6月1日

2017年5月25日 (木)

2015事業計画の見直しと対策(その2 人員削減)

 前回のブログで「2015事業計画推進状況」(2017年5月9日)のⅠとⅡを見ました。そこでは外部環境の変化によって受注規模と営業利益が目標に達していないこと、それでも高配当は続ける方針であることがわかりました。
 今回はⅢから見ていこうと思います。ここには「人員対策」(人員削減)が大きく出ています。
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「2015事業計画推進状況」の主な項目
 Ⅰ. 2016年度の実績
 Ⅱ. 2017年度数値計画の見直し
 Ⅲ. 2015事業計画の全体進捗評価
 Ⅳ. 主な対策の推進状況
 Ⅴ. 「改革の総仕上げ」としての組織・制度の補強
 Ⅵ. まとめ
 [参考資料]
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Ⅲ. 2015事業計画の全体進捗評価
 この章は「2015事業計画」が計画どおりに進んでいるかどうかを問題にしています。その結論は、簡単に言いますと、「構造改革は、事業の選択と集中等、概ね予定通りに進捗」と評価する一方で、「2016年度に想定を超える課題が発生」したので「抜本的改善策に着手」した、ということです(p.11)。
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 2016年度に発生した想定を超える課題(p.11)
 ・ 商船事業 → LNG船/コスト目標未達と工期遅れ (5隻)
 ・ 民間機(
Tier1) → 円高と減産加速 (B777・ボンバルディア機)
 ・ MRJ → 開発の更なる遅れと費用の大幅な増加
 ・
MHPS → 事業規模拡大とPMIの両方の遅れ
 (注)Tier1:ボーイング社・ボンバルディア社向けの事業(1次下請け)
 (注)MHPS :三菱日立パワーシステムズ(株)
 (注)PMI :Post Merger Integration/事業統合プロセス(統合の効果を出すために重複排除・人員削減などを進める)

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 これらの課題の多くは前回(2017年2月2日)の「2015事業計画推進状況」で対策が出されていましたが、今回「想定を超える課題」が発生した新しい状況のもとで「Ⅳ. 主な対策の推進状況」として対策がまとめられています。
 なお、前回(2017年2月2日)は、対策の中に「ドメインの再編」もあって、4月から3ドメインに再編されています。

Ⅳ. 主な対策の推進状況
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   主な対策の推進状況の項目(p,16)
 1. MRJ及びTier1対策(緊急対策)
 2. 商船事業構造改革の強化(緊急対策)
 3. MHPSの経営改善(緊急対策)
 4. M-FETのPMI
 5. PTのPMI
 6. アセットマネジメントの進捗
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 上記の1~5はどれも大幅な人員対策(人員削減)を伴っています。

1. MRJ及びTier1対策(緊急対策)
 「民間機事業の基盤強化(Tier1,MRJ共通)」を打ち出していますが、その中には「名古屋地区の中期低操業対策」という大規模な人員削減が書かれています(p.17)。

名古屋地区の中期低操業対策
 Tier1事業における減産とMRJの開発遅れによって人員対策が必要になったということです(参考資料 p.41)。
 Tier1事業では約6,600名の方が働いていましたが、2017年4月には「約700名規模の対応を実施済(社内他部門や社外への派遣等)」。さらに、2018年4月までに30%(約2,000名)を減らす計画です。
 MRJ事業では、三菱航空機(MITAC)を含めて、現在約2,850名が働いていますが、2018年4月までに20%(約600名)を減らす計画です。

2. 商船事業構造改革の強化(緊急対策)
 ここでは、昨年度から検討している「新体制移行」が対策の中心になっています。そのために今年7月には「新体制移行の第1ステップ」をスタートさせ、「LNG船のコスト低減と工期改善」などを進め、それと並行して、すでに進めている「他社とのアライアンス協議」を前進させて「新体制移行」を図るとしています(p.19)。
 「新体制」の中身としては「分社化含め検討中」とだけ記載していますが、「他社とのアライアンス」と「分社化」を組合わせると、商船事業を事実上切り離すこともあり得るということではないでしょうか。
 ところで、今回は書いてありませんが、前回(2017年2月2日)の「2015事業計画推進状況」 (P.13)には「新体制の狙い」の中に「2018~20年度の長崎低操業の克服」が含まれていますので、どうなるか心配なところです。

3. MHPSの経営改善(緊急対策)
 ここでは、2016年度の収益低下の原因を「円高と規模拡大遅れに加え、固定費削減に時間を要した結果、当期収益が急減」と説明しています。その対策の第一に、2020年度までに20%の固定費削減を掲げています(p.20)。
 ここでは「人員対策」という言葉を使っていませんが、「固定費削減」といえば「人員削減」が第一に考えられます。しかも20%もの大幅な固定費削減ですから、大幅な人員削減が含まれていると考えられます。

4. M-FETのPMI
 M-FET(三菱重工フォークリフト&エンジン・ターボホールディングス)については、「PMI加速」によって、「固定費削減 △10%」と「営利率向上 4 → 8%」を狙っています(p.23)。ここでも「人員対策」という言葉を使っていませんが、大幅な「人員対策」を伴っていると考えられます。PMI(Post Merger Integration/事業統合プロセス)は統合の効果を出すために重複排除・人員削減などを進めることですから。

5. PTのPMI
 PT(Primetals Technologies 製鉄機械の新会社)は、受注が少なくなっていましたが、「緩やかな回復傾向」にあるものの、「世界全体の設備過剰は当分継続」するためにPMIを推進して「人員最適化(8,000 → 7,100人)」を図るとしています(p.24)。

6. アセットマネジメントの進捗
 アセットマネジメントとは、資本効率向上のために、売却を含む土地などの資産活用ですが、割愛します。

人員削減
 上記に出てきました今後の「人員対策」計画に関係するものを抜きだしますと次のとおりです。
 ・名古屋地区の中期低操業対策 2600名
 ・2018~20年度の長崎低操業の克服
 ・MHPS  20%の固定費削減
 ・M-FET 10%の固定費削減
 ・PT   人員最適化(8,000 → 7,100人) 900名

 これらを合計しますと、5,000名を超える「人員対策」が計画されていると推測されます。これらがそのまま人員削減ではなくて、「名古屋地区の中期低操業対策」に出ていますように「社内他部門や社外への派遣等」も考えられます。しかし、「社内他部門」への派遣は転勤によるストレスもありますし、家族にとっても大きな問題です。「社外への派遣」は就職先を斡旋した人員削減と考えることもできます。表面的にはわからなくても不本意な「自己都合退職」に追い込まれる人もおられることでしょう。
 正社員がこのような状況になれば、非正規の人はすでに「削減済」で、下請けの人たちも厳しい状況になっていることが推測されます。
 三菱重工が推進している株主偏重の経営方針は、働く人たちや下請けを苦しめ、国内産業の空洞化につながっています。とはいえ、それは三菱重工だけではありません。各国の多国籍企業も株主偏重の経営方針を推進していますが、その結果、先進資本主義国の経済低迷と貧富の格差がますます深まっています。

    日本共産党三菱重工広製支部 2017年5月25日

2017年5月18日 (木)

2015事業計画の見直しと対策(その1)

 三菱重工は5月9日に5回目となる「2015事業計画推進状況」を発表しました。その中で、「2015事業計画」の最終年度である2017年度の数値計画を見直すとともに、さまざまな対策や制度の補強を掲げています。
 「2015事業計画推進状況」(2017年5月9日)の主な項目は次のとおりです。
---------------------------------
 Ⅰ. 2016年度の実績
 Ⅱ. 2017年度数値計画の見直し
 Ⅲ. 2015事業計画の全体進捗評価
 Ⅳ. 主な対策の推進状況
 Ⅴ. 「改革の総仕上げ」としての組織・制度の補強
 Ⅵ. まとめ
 [参考資料]
---------------------------------
 
Ⅰ. 2016年度の実績
 まず、昨年度と今年度の実績を比較しています(p.4)。
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       2015年度実績  2016年度実績
 受注    44,855億円   42,756億円
 売上    40,468億円   39,140億円
 営業利益   3,095億円    1,505億円
 純利益     638億円     877億円
 
ROE       3.7%       5.1%
 配当     12円/株    12円/株
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 ・受注が減少した理由は「MHPS他、海外受注の減速(原油安等による投資減)」と外部要因(外部環境の変化)をあげています。
 ・営業利益が約1,500億円減少していますが、関係する事業は、LNG船、MRJTier1、MHPSをあげています。これらの事業については、Ⅳに対策が示されています。
 ・純利益が増加したのは、資産売却など「アセットマネジメント効果」としています。それがなければ大きな減益です。
 (注)Tier1:ボーイング社向けの事業
 (注)MHPS:三菱日立パワーシステムズ
 (注)ROE:純利益÷株主資本
 
配当は出血サービス
 このように厳しい状況でも、配当は12円/株を維持しています。配当総額は、「平成28年度決算概要」(p.11)に約403億円と出ています。これは純利益の45.9%に当ります。2015年度は61.3%でしたから、2年続けて株主への大サービスです。資産売却をしていることを考えると出血サービスと言うべきかもしれません。
 
南アフリカプロジェクト問題
 2016年度の実績をかかげたページ(p.4)には「除く南ア」という文字が3ヵ所に出ています。これは、三菱重工と日立がMHPS(三菱日立パワーシステムズ)を設立するときに、すでに日立側が南アフリカで受注していた火力発電プロジェクトの赤字に関する問題です。これの清算として三菱重工が日立に請求していますがまだ決着していません。そのため、例えば有利子負債は9,255億円ですが、この問題がなければ約6,255億円という意味で「(除く南ア)約6,255億円」と「2015事業計画推進状況」(p.4)に記載しています。
 この問題の経過と三菱重工の見解が「平成28年度決算概要」(p.15)に「南アフリカプロジェクトに係る資産」として記載されています。三菱重工から日立への請求額は約7,634億円という大きな金額ですから、両社とも簡単には譲れないのかもしれません。MHPSの中で働く人たちが気まずい思いをしなくてよいよう円満に解決してほしいものです。
 
ドメイン別の実績
 従来の4ドメインが、今年度から3ドメインに再編されました。
 「2015事業計画推進状況」(p.5)には従来の4ドメイン別と新しい3ドメイン別に2016年度の売上・営業利益の実績が出ています。
 そのうち、再編後の新しいドメイン別の実績は次のように示されています。
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         2016年度 実績
    新ドメイン      売上    営業利益
 ①パワードメイン  14,484億円  1,081億円
 
 ②インダストリー& 17,470億円   500億円
  社会基盤ドメイン
 ③航空・防衛・宇宙  7,034億円    9億円
     ドメイン
 (注)このほかに「その他」と「消去または共通」がありますので、ドメイン別の合計は全社の数値と一致しません。
---------------------------------

 従来の交通・輸送ドメインの売上げは5,153億円、営業利益は△519億円の赤字でしたが、これらのほとんどが新しいドメイン②と③に振り分けられた形になっています。従来の交通・輸送ドメインの商船部門が②に、MRJとTier1が③に移っているために、そのような結果になったと考えられます。
 
Ⅱ. 2017年度数値計画の見直し
 ここで言う「見直し」とは、「2015事業計画」に掲げた2017年度の目標値を見直すことを意味しています。見直した結果は次のとおりです(p.7)。海外比率が思いどおりに上がらなかったことが一つのポイントではないでしょうか。
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           2017年度   2017年度
           従来計画   今回見直し
 受注      55,000億円  45,000億円
 (海外比率)    (64%)       (55%)
 売上      50,000億円  41,500億円
 営業利益     4,500億円   2,300億円
 (営業利益率)  (9.0%)      (5.5%)
 純利益      2,000億円   1,000億円
 ROE         10.2%      5.5%
 配当       配当性向   12円/株
           30%±5%
 (注)配当性向:配当総額÷純利益
---------------------------------

 受注が計画値に達しない理由(差異理由)を次のように書いています。
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 差異理由:世界経済の不透明感や市場見通しを反映
  MHPS      △3,500億円
  交通システム △2,200億円
  民間機     △2,000億円
  PT(製鉄)    △1,200億円
  コンプレッサ  △1,100億円
    受注計   △10,000億円
 (注)民間機:MRJとTier1
---------------------------------

 このように受注が減少すれば売上げが減り、営業利益も減少するのは当然のことです。受注減少は「世界経済の不透明感や市場見通しを反映」という外部要因によるのですから、営業利益が上がらないからといって、このあと出てきますが、働く者にしわ寄せするのはお門違いと言えます。
 
配当は目標以上
 配当は、2017年度も12円/株としていますが、配当総額は約403億円ですから、純利益1,000億円の40.3%(配当性向40.3%)になります。従来計画では「配当性向30%±5%」ですから、純利益の目標値が下がっても株主への大サービスは続けるということです。
 
    日本共産党三菱重工広製支部 2017年5月18日
 

2017年4月27日 (木)

三菱重工はなぜアレバを救済

 福島の原発事故以後経営難に陥っているフランスのアレバからの要請に応えて「三菱重工業と日本原燃が仏原子力大手のアレバへの約10%の出資で最終調整に入った」とき、日経は「三菱重工、仏アレバに苦渋の出資 原子力から引くに引けず」(2016年12月8日 日経)と報じました。三菱重工と取引のあるサプライヤーは「正常な経営判断とは思えない」と言ったことも伝えられました(2017年3月14日 日経)。

出資の経過
 2015年10月:日本政府とフランス政府による原子力分野における日仏協力に関するハイレベル対話。
 対話結果を受けて、三菱重工は「今回の日仏間対話の結果に従い、原子力産業の一員として、両国の協力関係の更なる発展と強化に貢献し、・・・」と態度表明しました(2015年10月5日 重要なお知らせ)。

 2015年11月:三菱重工、「仏アレバNP社への出資に向けた具体的提案の検討を開始」(2015年11月6日 ニュースリリース)と発表。
 アレバNP社は、アレバ社のグループ会社で原発プラントの設計・製造をしています。今後、フランス電力会社(EDF社)の傘下となる予定です。
 アレバNP社と三菱重工は2007年に合弁会社ATMEA社を設立しています。

 2016年 6月:三菱重工はフランス電力会社(EDF)と原子力発電事業での協調に向けた覚書を締結(2016年6月28日 ニュースリリース)。
 フランス電力会社(EDF)は世界最大の原子力発電事業者で、アレバの救済にも深くかかわっています。
 覚書の協調関係強化には、フランス電力会社(EDF)がATMEA社に出資することも検討されることになっています。
 三菱重工の宮永社長は覚書の締結に当たって、「ATMEA社の事業に対するEDFの参画は、その将来に向けた開発、および高い競争力を持つ技術によるグローバル市場での展開にとって、非常に重要な一歩です」と述べています。

 2017年 2月:三菱重工、「仏アレバグループ新会社への出資に向けた条件で大枠合意」と発表(2017年2月3日 ニュースリリース)。
 三菱重工は、アレバグループが設立する新会社(仮称:NewCo)に約2億5,000万ユーロ出資することで大枠合意しました。
 新会社(仮称:NewCo)は、アレバ社がウランの採掘、濃縮、転換や使用済み燃料の再処理を中核とする燃料サイクル事業を分社して新たに設立する会社です。

 2017年 3月:三菱重工、「仏アレバグループ新会社(NewCo)向け出資に係る最終合意について」を発表(2017年3月21日 ニュースリリース)。
 三菱重工の出資額は、大枠合意の際に決定したとおり、総額約2億5,000万ユーロで、出資比率5%の株主になります。

 なお、日本原燃も同額の出資を決めています(日本原燃のホームページ トピックス2017年3月21日 )。
 
さらに400億円を出資

 4月になると、新たに設立するアレバの原子炉子会社「アレバNP」に三菱重工が約400億円を出資することでフランス電力会社(EDF)と大筋で合意したことが報じられました(「三菱重がアレバ追加出資 総額700億円に、原発継続の意思示す」2017年4月24日 日経)。この「アレバNP」にはフランス電力会社(EDF)が51%以上を出資して筆頭株主に就くことも伝えられました。
 なお、この出資は前から出ていた話によるもので、新しく出てきたものではありません。
 
原発継続の意思示す

 出資対象に「アレバNP」と「NewCo」があって、フランス政府もフランス電力会社(EDF)も関係していますので話が大変ややこしいですが、三菱重工は総額700億円の出資を決めたというのが一つの結論です。
 これは日経も書いたように、原発継続の意思を示していると言ってよいのではないでしょうか。それも、世界的に原発建設が低調になっているときに、経営難に陥っているアレバに出資するとはどう考えたらいいのでしょうか。
 三菱重工の宮永社長は、「独シーメンスは原子力事業から撤退しました」が、という記者からの問いかけに次のように答えました。
 「当社は事業を続けていく。国のエネルギー安全保障という意味でも長期的に必要な事業と考えている。安全性を追求しながら、原子力のコア技術を維持しておくことが重要だ。自社が持つ能力で施工しきれればビジネスとしても十分に成り立つ。トルコで事業可能性調査を進めているのは原発建設の能力を維持するという目的もある」(三菱重工社長「原発事業、続ける」2017年4月15日 日経)。

国のエネルギー安全保障のため?
 社長が原子力事業を続ける理由の第一にあげたのが「国のエネルギー安全保障」です。風力発電など再生エネルギーの重要性が増しているときに原子力が本当に必要でしょうか。
 理由の第2が「自社が持つ能力で施工しきれればビジネスとしても十分に成り立つ」ということですが、なんとも歯切れの悪い感じがします。「2015事業計画」の基本方針との関係はどうなんでしょう。基本方針の2「財務基盤の更なる強化と高収益性追求」との整合性はどう説明するのでしょうか。700億円の出資はフリーキャッシュフローの減少になりますから。

引くに引けない?
 このブログの冒頭に紹介した日経の記事、「三菱重工、仏アレバに苦渋の出資 原子力から引くに引けず」(2016年12月8日 日経)というのが真実味を持って響いてきます。
 原子力事業から引くに引けない背景を次のように指摘する記事もありました。
 「同社の決断の背後には、苦境に喘ぐアレバが「中国核工業集団」(CNNC)に支援を求め、その代償として最先端の原子力関連技術が中国に流出することを恐れる日本政府からの強いプレッシャーがあったとも囁かれている」(瀕死の仏原子力大手「アレバ」に巨額出資する「三菱重工」への疑問 - 杜耕次 新潮社フォーサイト 2016年12月27日)。
 今回の出資が、2015年10月の「日仏協力に関するハイレベル対話」から始まったように政府側から強い力がはたらいていることは間違いありません。

    日本共産党三菱重工広製支部 2017年4月27日

2017年4月20日 (木)

三菱重工の原子力事業戦略の変遷

アメリカの原子力政策のもとで
 1955年、日米原子力協定調印。その後の改定や新しい協定の調印によってアメリカから日本への濃縮ウランの提供などが取り決められ、アメリカの原子力政策のもとで日本の原発建設・運転が進められました。

三菱重工の原子力事業始まる
 3重工が合併して三菱重工が発足したのは1964年。それより前の1958年に三菱25社が共同出資して三菱原子力工業(MAPI)を設立。1961年にMAPIはウェスチングハウス社(WH)と技術援助契約を締結。1967年に関西電力が美浜1号機を発注し、その主契約者は1次系がWH、2次系がMAPI、三菱重工は格納容器・タービン・据付などを担当(三菱重工業社史より)。
 1969年になると三菱重工はMAPIから原発に関する営業権の移管を受け、1970年には三菱重工が初の主契約者となって関西電力から高浜2号機を受注。その後、三菱重工は日本で原発メーカーの第一人者として原発の建設と輸出の道を進みます。しかし、1975年頃にはアメリカと日本で原発建設の需要減退が始まり、1979年にはスリーマイルアイランドで、1986年にはチェルノブイリで原発事故が発生し、ヨーロッパでも原発への見直しが進むことになりました。

「原子力ルネッサンス」と活気付く
 ところが、21世紀に入って、新興国での電力需要や地球温暖化対策を背景に再び増加する様相を見せ始め、原発推進勢力は「原子力ルネッサンス」と言って活気付きました。2006年には、経済産業省が「原子力立国計画」を策定し、国内だけでなく官民一体の原発輸出を目指すことになります。この年、東芝は巨額の資金を使って、三菱重工と密接な関係にあったWHを買収。三菱重工はフランスのアレバと、日立製作所はアメリカのGEと提携関係を強めることになります。
 
三菱重工は「原子力総合カンパニー」を目指す

 三菱重工の2008事業計画(2008年4月)は、「重点施策」の一つに「世界をリードする『原子力総合カンパニー』の実現」をかかげ、「燃料、プラント建設、保守、燃料サイクルに至るまで、原子力事業の全てに対応」するとして次のような方針を打ち出しました。
 ・世界戦略炉のシリーズ展開
  (大型戦略炉を欧米で、中型戦略炉を東欧・アジアで拡販などの方針でした)
 ・AREVA社とのATMEA1開発
  (ATMEA1は、AREVA社と三菱重工の合弁会社であるATMEAが中型戦略炉として開発。まだ契約ゼロです)
 ・FBR開発で世界をリード
  (FBRは、高速増殖炉。楽観的な方針をかかげましたが、「もんじゅ」は廃炉になり、難航しています)
 
原発は経済的に成り立たず

 原発推進勢力が「原子力ルネッサンス」と言っても、すでに原発は経済的に成り立たなくなっていました。原発大国アメリカにおいて新規の原発建設が停滞しており、その背景には、火力発電のコストが十分に安価になっていること、電力需要の伸びが鈍化すると見通されることを、日本エネルギー経済研究所の村上朋子氏は東日本大震災の前に発行した著書「激化する国際原子力商戦」の中で述べています。
 東日本大震災における福島原発事故によって原発の危険性が世界的に再認識され、原発建設の停滞傾向はさらに深まりました。

それでも推進?
 福島原発事故後も、原発メーカー3社(三菱重工、東芝、日立)は原子力事業を推進しました。
 三菱重工は、福島原発事故から1年余り過ぎた2012年6月の原子力事業本部事業説明会においても、「世界をリードする『原子力総合カンパニー』」をかかげ、原子力事業の受注目標を、2012年度:2,100億円、2014年度:4,000億円、中長期目標:6,000億円としました。
 しかし、現実はそうなっていないことにやっと気がついたのか、2015年6月のエネルギー・環境ドメイン説明会では『原子力総合カンパニー』という字は消えて、次のような控えめな方針になりました。
 1.再稼働への貢献
 2.トルコ・ベトナムプロジェクト推進
 3.軽水炉デコミプロジェクト室設置
 (注:デコミとは、廃炉/Decommissioning furnace)

三菱重工が現在かかげている原子力事業戦略
 その後も再稼働はなかなか進まず、ベトナムの原発建設計画もなくなります。
 三菱重工が現在かかげている原子力事業戦略は2016年6月のエネルギー・環境ドメイン事業戦略説明会で出されたもので、次のようになっています。
 ・国内プラントの再稼働支援
 ・海外プロジェクトの推進
 ・原子燃料サイクルへの対応
 ・東電福島第一の安定化支援
 ※SONGS仲裁申立への対応
 海外プロジェクトとして今進められているのはトルコのプロジェクトのフィージビリティスタディ(事業の実現可能性調査)のみです。
 SONGS仲裁申立とは、米国サンオノフレ発電所の損害賠償請求に関するもので、その結果は三菱重工の言い分が認められて約141億円の支払いですみました(需要なお知らせ 2017年3月14日)。
 原子燃料サイクルについては、国策である高速炉開発に中核企業として参画するものです(前回のブログ)。
 前年にかかげた「廃炉」については何も書かれていませんが、これから実作業が進むのではないでしょうか。
 
アレバへの出資

 フランスのアレバ社はフランス政府が資本の大半を出資している世界でトップの原子力事業会社で、三菱重工と合弁会社アトメア社を設立して中型戦略炉・ATMEA1を共同開発しました。しかし、世界的な原発建設の停滞を受けてアレバ社は経営危機に陥り、支援を求めていました。それに応えて、三菱重工は約2億5,000万ユーロの出資に合意しました(ニュースリリース 2017年2月3日)。
 これについて三菱重工の宮永社長は次のように述べています。「当社は事業を続けていく。国のエネルギー安全保障という意味でも長期的に必要な事業と考えている。安全性を追求しながら、原子力のコア技術を維持しておくことが重要だ」。「アレバとは燃料などで長く協力関係にあり、日仏友好にも資する。中型原子炉『アトメア1』は合弁会社でアレバと共同開発し、人的資源も多く割いている。アレバが持つ世界市場の販路により、ビジネスチャンスを安定して増やせることも大きい」(2017年4月15日 日経)。

 社長は「原子力事業を続ける」と言っていますが、具体的な展望を示すことができていません。三菱重工がかかげていた「世界をリードする『原子力総合カンパニー』」という看板も降ろしました。三菱重工の原子力事業戦略は狙いどおりには進まなくなっています。

    日本共産党三菱重工広製支部 2017年4月20日

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